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第二次スパロボバトルロワイアル7

1 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 19:59:08 ID:vMq8JcKz
※初めて来た人はまずはここを読んでください。
【原則】
リレー企画ですのでこれまでの話やフラグを一切無視して書くのは止めましょう。
また、現在位置と時間、状況と方針の記入は忘れずに。
投下前に見直しする事を怠らないで下さい、家に帰るまでが遠足です。
投下後のフォローも忘れないようにしましょう。
初めて話を書く人はまとめサイトに行ってルールや過去のお話にしっかり目を通しましょう。
当ロワは予約制です。投下する前にスレでトリップを付けて使うキャラを宣言しましょう。
予約の期限は三日です。
【ルール】
EN・弾薬は補給ポイントを利用することで補給することができます。
補給ポイントは各キャラの所持するマップにランダムに数個ずつ記載されています。
機体の損傷は、原則として機体が再生能力を持っていない限り直りません。
再生能力も制限で弱体化しています。
特定の機体がスパロボのゲーム内で持っている「修理装置」「補給装置」はありません。
DG細胞が登場していますが、機体の過度の変質、死者のゾンビ化は制限により禁止されています。
機体の再生、感染、「生きている人間」の身体の補強のみが行われるようです。
マシンセルによる機体の変質や環境操作も制限を受けています。
唯一メディウスロクスのみ機体が変質していますが、これはスーパーロボット大戦MXの展開に準拠したものです。
乗り換えは自由です。
参加者へロワ参加者の名簿は支給されていません。
【備考】
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
おやつは三百円までです、ただしクスリはダメ、ゼッタイ。
スパロボでしか知らない人も居るので場合によっては説明書きを添えて下さい。
水筒の中身は自由です、未成年者も多いのでアルコールは控えてください。
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
作品の保存はマメにしておきましょう、イデはいつ発動するか分かりません。 ( 凸 _)<1本(SSを因果地平の彼方に)いっとく?

前スレ
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1209040285/
前々スレ
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1187103340/
前々々スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1176030907/

旧本スレ
第二次スパロボバトルロワイアル3
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1170806726/
第二次スパロボバトルロワイアル2
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1161702283/l50
第二次スパロボバトルロワイアル感想・議論スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149764572/
第二次スパロボバトルロワイアル
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149350054/
第2次スパロボロワイヤル企画スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1148890280/

まとめwiki
http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/
携帯用簡易まとめ
http://srwbr2.nomaki.jp/SRWBRi/index.html
旧まとめサイト(停止)
ttp://2nd.geocities.jp/s2matome/main.html
仮まとめサイト(停止)
ttp://srwbr2.nomaki.jp/index.html

2 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 22:43:25 ID:l3nyS4sS
>>1

支援待機

3 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 22:59:58 ID:bJSgKADi
静まり返った何の飾り気も無い無機質な通路。病院のそれによく似た機能のみが優先されたその空間に、靴音が高く鳴り響く。
仰々しい衣装を身に纏い靴音も高く通路を歩く男――ユーゼス=ゴッツォが静寂を振り払い歩いていた。
向かう先は格納庫の脇に設置されている事務室のような部屋。
最初にこの基地に腰を下ろして以来、すっかり集合場所として馴染んでしまったそこを目指していた。
時間だ。あと僅か数分で放送が始まる。
この首に繋がれた忌々しい首輪の解析と疲れを癒すための休息、特に休息の必要を感じている。
一戦を交え、一つの重要な実験を終えた直後。疲れは重なってきている。だが、集合を命じたのは自らであった。
例え相手がとりあえず協力者であろうともここは行かねばならない。
情報は必要だ。
誰が死に、何人が生き残り、何処が禁止エリアとされるのか。
カミーユ=ビダンが何を見、何が起こり、そして何故キョウスケ=ナンブがいないのか。
それらは重要だ。
それに、一先ずの解析はAI-1に任せている。
解析結果のバックアップの為に管制塔に位置する司令室を探し当て、取り合えずの防壁を施した上でメインコンピューターと有線で繋いでもいる。
不測の事態が起こらなければ手を下す必要はなく、仮に起こってもそれは基地内のネットワークを通じてユーゼスに知らされる。開発室のほうも同様だ。
口元が笑う。
極めて順調。道は開けている。ならば一時的に目を離し、手を離しても問題は無い。
そう思い広大な基地内部を足早に歩いているときだった。
赤が目に留まった。
僅かな蛍光灯に照らし出されたまだ薄暗い通路。そこに赤い粒が点々と続いている。
――血。
誰のだ、と思い立ちめぐらせた頭に一人の男の顔が思い起こされる。
――バーナード=ワイズマン。
不運にも瓦礫の下敷きとなり死に絶えたはずの男。
あの男が生きていたのか――いつからだ? いつ奴は瓦礫の底から抜け出して動き始めた?
湧き上がる疑問に対する答えはユーゼスの中にはない。明るく開けているはずの道にほんの僅かな影が射す。
死んでいるものと決め付けていた。だから確認を怠った。
それは幾ら疲れていたとは言え失態だ。あの男がベガやカミーユに接触すれば事態がどう転ぶのか。
予測は難しい。だが、良いほうに転ぶ可能性は極めて稀。いや、それよりも奴がメディウスを見つければどうなる?
優先すべきはベガ達との合流か、ワイズマンの追跡か。
時間が経てば経つほど追跡は困難になる。あの男に渡した首輪のメモもある。野放しには出来ない。
膝を付き、溜まりを成している血に触れてみた。粘り気を帯びた血が手先に付着する。
まだ固まっていない。
そう遠くはないな。追跡は可能か……仕方がない。
僅かな逡巡を得て追跡を取ることを決める。
問題はこの血の道しるべ。どちらの端が奴へと続いているのかだった。

「手間を取らせてくれるものだな」

 ◆

『まずは長い夜を越え生き延びられたこと、お祝い申し上げますの』

幼い少女の声が響き渡る中、一人の青年――バーナード=ワイズマンは息を切らしつつ細い通路を進んでいた。
目指す場所はあるが、どこに向かっているのかが分からない。
前回の放送の前、ブラックゲッターの整備を行なったときに基地内の見取りは一通り頭に叩き込んではいる。
だが、気絶中に動かされたことが災いし現在位置を見失っていた。
今いる場所が分からなければ、地図など何の役にも立ちはしない。だから、指標となる場所を闇雲に探していた。
一人、また一人、死者の名が読み上げられていく。
聞きたくなかった。聞きたくはなかった。
死んだ人間の名を聞くごとに『自分は本当に生き残れるのか』という疑問が沸き立つ。
ついていただけだ。
既に三度も気を失い機体も失った。そのどこで死んでもおかしくはなかった。
ついていただけだ。それは誰よりも自分自身で身に染みて分かっていることだ。
失血からくるものか、頭がくらりと揺れた。歩みを止め、うつむき、壁に手をついて崩れ落ちようとする体を支える。
そのとき、一つの名を耳にして弾けるように天を仰いだ。


4 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:00:59 ID:bJSgKADi
「嘘だろ……」

知らない名の中に混ざり込んでいたただ一つ耳に覚えのある名――シャア=アズナブル。
赤い彗星の異名を持ち、戦艦五隻をただ一人で沈めてみせたルウム戦役の英雄。
会った事はない。だが『通常の三倍の速度』の性能を引き出すとまで言われた彼は、生きながらの伝説となりつつある。
そんな男でも死んだ。
そのことがお前程度では生き残れない、と告げてくる。
歴戦の勇士に比べ撃墜数ゼロの新兵である自分はあまりにもちっぽけだった。

「なぁ、アル……こんな俺でも本当に生き残れるのかよ……」

弱音。滲んだ視界の向うにサイド6の光景が見える。
ホンの僅かな時間だけ滞在したその場所。里心が込み上げる。
中立コロニーでの戦闘。撃墜。アルとの出会い。再会。クリス。所属部隊の壊滅。核。
そして、ガンダム。
そこは余りにも濃密な時間を過ごした場所だった。
あの連邦の男は言った。サイド6にジオンの核攻撃はなかった、と。
だったらもう一度あそこに戻りたい。
約束したんだ。運よく生き延びて戦争が終わったら帰ってくると、会いに行くと。
それにアルやクリス、自分が守ったものを見てみたいんだ。見栄や虚栄心からじゃなく誇りたいんだ。
今度は嘘じゃなく、俺は本当に凄いんだぞってことをアルに言ってやるんだ。
生き残りたい。帰りたい。あの場所に帰りたい。……そうだ。

「俺は帰るんだ、あいつらが待っている……あの場所に」

言葉の最後は無理という思いに押しつぶされ涙声となって消えていった。

 ◆

「そんな……」

沈痛な面持ちで放送に聞き入っていたベガは、格納庫の一角に間借りしている事務所のような建物の中で突然発せられた声に振り返った。
「知っている人?」と言葉を発しかけて異常に気づく。
顔に色が無い。口を開け、呆然とした状態のままでカミーユは立ちすくんでいた。

「カミーユ」

呼びかけるが返事がない。もう一度。

「カミーユ!」

やはり返事は無い。反応一つ返ってこない。
思わず歩み寄り、肩を掴んで揺さぶりつつ叫んだ。

「カミーユ、しっかりしなさい!! カミーユ!!!」

それでようやく顔がこちらを向く。しかし、焦点が定まっていない。
そのままどこを見ているのか分からない目、虚空を仰ぎ見る目でカミーユはぽつりと呟いた。

「戻らなきゃ……」
「えっ?」

急にもがき始めたカミーユを押さえ込もうと手に力を込める。

「カミーユ、落ち着きなさい」
「早く戻らなきゃ……」
「何を言って」
「だってそうでしょ!? あの人も、クワトロ大尉もいない。百式もない。そうだ、俺がここにいるってことはZだって無いかもしれない。
 それでどうしてティターンズやアクシズの連中と戦えるって言うんだッ!! 離してくださいよ。早くエゥーゴに、アーガマに戻らないと」


5 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:01:37 ID:K0i8FI6Z
支援

6 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:01:59 ID:bJSgKADi
何処を見ているのか分からない目。いや、カミーユの目はただ出口だけを見ていた。
そこだけを目指し、出て行こうと必死でもがいている。扉の先に何があるのかなんて考えていない。
ただ扉があるからそこに向かっている。その先はここよりも元いた場所に近いと思い、何とかそこに辿り着こうとしている。
押しとめようとして突き飛ばされ、応対用のソファーに仰向けにひっくり返った。
起き上がったときにはカミーユは既に扉を開け、事務室から格納庫の中へと進んでいる。慌てて後を追う。

「カミーユ、待ちなさい!」

その間にもカミーユは格納庫から通路へ、狭い通路を突き進みまた別の建物へ、と脇目も振らずに進んで行く。
何度も繰り返し名前を呼ぶ。聞こえていないのか、無視しているのか、返事は無い。
VF-22に向かうわけでもなく。その動きに一貫性はない。何となく目に付いた場所を横切り、ただ外を目指しているように見えた。
突き当たりの角を曲がったカミーユの背が消える。
追いかけて曲がったとき目の眩むような光が辺りを満たした。その眩しさに思わず手を翳す。
細めた視界に建物の出口と、その先で立ち止まり呆然としているカミーユの後姿が見えた。
清々しい朝の空気の中、太陽が昇っていた。
一歩基地の外へと歩み出し、格納庫や機体と遠ざかった場所に出ていることにホッとした。
もし外に出た目の目に機体があれば、そのまま何処かへ飛び去ってしまいかねなかったのだ。
そんな勢いだった。
それも今はなりを潜め、ただ呆然と朝陽の昇る空を眺めている。
若干弾む息を整えてからゆっくりと側に寄って行った。
寄って行ってなんて声をかけていいか分からずに焦った挙句「綺麗な朝陽ね」と的外れな言葉を投げかけてしまう。
反応はない。しまったと思ったが、もう遅かった。無言のまま五分十分と時間が流れていく。
何度か声をかけようとしたが、かける言葉がやはり見つからない。
そして、ベガが途方に暮れ始めた頃、もう諦めていた返事がきた。

「……そうですね」

息をするように零れた言葉。何の考えも込められていないようなその言葉に優しい響きを何となく感じた。
放送直後とはうって変わった平静の光をその瞳に認めて安堵の息を吐く。
朝陽を眺めたまま無言の時間がまた流れていく。しかし、その空気が幾分か軽くなっている気がした。
しかし、そうではなかった。

「勝手なんですよ、あの人はいつも」

平静? とんでもない。触れれば崩れ去ってしまうような表情がそこにはあった。
処理しきれない感情を押し隠そうとしてどうにもならず、どうしていいのか分からなくなっている。
訥々と静かに語られる言葉の裏でどれほどの激情が渦を巻いているのか……。

「自分勝手で、臆病者で。大人の責任ばかりを押し付けてくるくせして、一人前の大人として扱おうともしない。
 人に夢みたいなことばかりを説きながら、その気になれば戦争を終わらせられるだけの立場にありながら、大人の責任を果たそうともしない。
 あなたにはまだやることがあったはずだ! あなたにはまだやるべきことがあったはずだ!! あなたはまだ果たすべき責任を全うしてない!!!
 なのにッ!! なのに……こんなところで死んでどうするんですか……」

次第に激を増していった語調は、しかし急速に閉じられて擦れた様な声で幕をおろした。
不安定だ。そして、子供だ。置いて逝かれてしまった感情を愚痴に変換することで処理しようとしている。
そうする他無いその身が不憫に思え、引き寄せて慰めようとして――突っぱねられた。

「カミーユ?」
「同じだ、あなたもあの人と。俺にやるべきことや責任ばかり求めるくせに、そうしてすぐ子ども扱いしようとする。
 なのに、そのくせして自分では何もしようとしない」
「そんなことは……」

やり場の無い感情が次なる捌け口を見つけた。
とめどなく湧き出てくる感情が自己の不満へと姿を変え、ベガに襲い掛かってくる。

「だったら何ですか? あの男の、ユーゼスのいいようにさせている。汚いやり口から目を塞いで自分は見ない振り、気づかない振りをしている」
「違……」
「違うと言うのなら何故、好きにさせているんです?」


7 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:02:16 ID:MeAzRyYA
>>1乙&支援

8 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:02:59 ID:bJSgKADi
カミーユのユーゼスに対する不満や反発は知っていた。ユーゼスの行動や発言も知っている。
しかし、その殆んどは一応の筋が通っているものばかりである。合理性を突き詰めればそうなるというものが多い。
ただ彼に抜けているのは、人を思いやるという行為。
それを説くことは出来た。でもしなかった。今理屈を説いてもおそらく逆効果。
感情に流された頭を余計熱くさせるだけのように思えて、ベガは言葉が見つからなかった。

「答えることも出来やしないじゃないか。そうやって反発の一つもしないで、物分りがいい大人を演じて。
 それが汚い大人のやり方だって言うんですよ」

カミーユは捨て台詞を残し踵を返すと、基地の内部へと戻り始める。
何もしてない大人。そのように思われ、見られていたということが痛かった。自分は自分なりにやってきたという思いはある。
集団を集団として機能させるため、ユーゼスの力を十二分に発揮させるために、陰日向無く頑張ってきた。
それがまさかあのように見られ、不満を募らせているとは思いもよらなかった。
カミーユが絶対的な味方として自分を自分の側に置きたがっているような気はしてた。
しかし、それを子供の甘えと判断し、努めて中間に位置しようとしてきたのは自分だ。
それが間違いだったのだろうか? それとも知らず知らずのうちに少しユーゼスの側に寄りすぎていたのだろうか?
答えは出ない。出せばカミーユか、ユーゼス、どちらかを切り捨ててしまうように思えた。
それにこの後、二人が顔を会わせるとき、私はどうすればいいのだろうか? どうしたいのだろうか?
そう、私は――

意を決した顔が前を向く。カミーユの消えた基地内部へと続く入り口、そこを見据える。
自分がどうすべきなのか。自分がどうしたいのか。答えは単純だった。

私は――守りたい。
今のこの絆を、手の届く仲間を。
そして、導きたい。
例え自分は嫌われても、間違った大人にならないように人として正しい方向へと。

足を踏み出し入り口から基地の中へ、一歩一歩前へ。
そうやって消えていくその背中には母親の強さが滲み出していた。

「カミーユ、待ちなさい」

 ◆

「見つけた」

薄暗い司令室の中、無機質なモニターの明りが燦然と並び立ち無数の文字の羅列を浮かび上がらせている。
襲撃や占拠に備えた迷路の如く入り組んだ造りに迷いに迷い、どうにかこの司令部を見つけ出したのが十数分前。
そこから僅かな時間で目的のシステムを探り当てた。それは性質的に咄嗟に発動できないような造りにはなってはいないとはいえ、まずは上出来と言える。
瓦礫の底から抜け出した後、バーナード=ワイズマンは何よりも優先したことがある。それは機体の確保でもなく、傷の手当てでもない。
その優先するものの為に基地のシステムにアクセスできるポイントを探し、ここを見つけた。
その目的の目途は立った。しかし――

上げた視界がメインモニターを捉えた。
そこでは無数の数式や文字の羅列が表れては消え、消えては表れている。
目で追う暇もないほど目まぐるしく書き換えられていく文字列。
「これは……なんだ」と首を傾げた瞬間、耳が靴音を捉えた。同時に響く聞き覚えのある声。

「解析結果だよ。開発室で行っている首輪の解析とはまた違う役目、バックアップと万が一に備えた解析結果の保存、それが私がここに与えた役割だ。
 まさか生きていたとはな。不運な男と思っていたが、存外に悪運が強いものだ」

硬質な音を響かせゆっくりと規則正しく誰かが迫って来る。背筋が凍りつくのを感じた。
迷いに迷い歩いても誰にも出くわさなかった。だからここに、少なくともこの棟に人がいる可能性は低いと思っていた。
それは単なる幸運な思い違いだった、と知る。その思い違いが一番会いたくなかった人間をここに運んだ。
怖気の走るような雰囲気を纏った男。奴とは顔を会わせたくは無かった。苦みばしった声が漏れる。

「ユーゼス=ゴッツォ!!」
「その通り。この私だ」

9 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:03:23 ID:K0i8FI6Z
支援〜

10 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:03:59 ID:bJSgKADi
「どう……」
「どうやって生きていると知った? どうしてここが分かった? 簡単だ。放送に名前が無いようではすぐに分かる。
 もっとも放送以前に気づいていたがね。
 それに、その出血。何と言ったかな? 獣が狩人に追われているときに足跡を重ねて戻り、大きく跳ねて離れ、逃げるあの性質。狼などイヌ科の仲間によく見られるあれだよ。
 二股に道を分ける。突然跡を消す。血の跡を自覚し、それと似たようなことはしていたようだが無駄な足掻きだ。その程度のことで私を撒けるはずがない」

質問に先んじて与えられた答えに臍を噛む。急く足を抑えて施した術が撹乱にもなっていない。
悔しかった。貴様の浅知恵など何の役にも立たないと言われている様で、それは悔しい。だが、まだ手はある。

「動くな! これ以上俺に近づくな」

警告。
しかし、それに頓着することなく、一切の気を払うことなくユーゼスが歩を進める。ゆっくりゆっくり、しかし確実に間合いが詰まってくる。

「そういえば、まだ答えを聞いていなかったな。三度目だ。返答を聞こう。この私に協力するか否かをな」

くぐもった声でユーゼスは愉しげに笑う。
こちらが敵愾心を抱き始めているのを承知の上で、それを意にも介していない。こちらの答えなどどちらでもいい。
最初からこいつはそうだ。自分以外の人間など認めていない。自分さえいれば何でも出来ると思っている。
ゆえに人を駒と断じて臆すことも、恥じることもない。人に手駒となれというのにいささかの躊躇も持たない。
そんな人間について行けるはずが無い。だから答えは――

「答えはノー! 絶対にノーだッ!!」

答えると同時に手元のキーボードを叩く。手順は簡潔。既に確認済み。後はエンターキーを押すだけだ。

「俺は警告したぞ、ユーゼス。これ以上俺に近づくなって」

基地内に赤色ランプが灯り、警報が鳴り響き始める。一拍遅れて機械の駆動音が響き、ユーゼスの真上に位置する天井が動いた。

「何だと!?」

隔壁が直上から落下する。ユーゼスと自分の間に降ろされる隔壁の数は二枚。
ユーゼスはその二枚目の真下だ。手前の一枚目が重音を鳴らして降り切り、視界を塞いだ。
これでいい。例え、直撃を免れても一枚目と二枚目に挟まれ、ユーゼスは行き場を失う。
終わりだ、ユーゼス。もうお前はどうすることも出来ない。
同質の重低音が続いて鳴り響く。連鎖的に巻き起こり基地全体が震えたかのような”ズン”と腹に響く重い音は司令室にいても十分に感じ取れた。
開閉機能にロックをかけてほっと息を付く。
基地内のそこここに設置され有事の際には使用される隔壁を全て降ろした。これで基地内部にいるはずの人間の行動は著しく制限される。
ユーゼスと言わず全ての人間は閉じ込められたはずだ。後は現状を維持したまま機体を手に入れれば、全てにかたがつく。
不安なのは外部に人がいて内部の異変に気づくことだが、ここから確認できる動きは今の所は無い。
気づいていないだけなのかもしれないが、それは上手く閉じ込めたことを祈る他なかった。
気を取り直して上げた顔、その耳に耳障りな機械音が聞こえた。
先ほどと全く同じ機械音。降り切っていなかった隔壁がまだ残っていた? 馬鹿な。音はすぐ背後から聞こえてくる。
隔壁が巻き上がっていく。

「嘘だろッ!! ロックはかけたはずだ……向こう側にも端末があるにしてもこんなに素早く隔壁の解除なんて出来るはずが……ない」
「全く度し難い愚かさだな。基地の全ては掌握している」

分厚く重厚な弾丸すら通さないその壁体の向うに冷え冷えとした鋭い眼光を感じた。

「君程度の浅知恵で私を閉じ込められると思っていたのか、この空間からの脱出を謀る私を」

通れるようになるまでにはまだ間があったが、そのどす黒い声に全身の肌が音を立てて粟立つのを感じた。
逃げなければと半ばパニックになった頭が働き、隠れ場所を求めて指令所内部をグルリと見渡す。
青白く浮かび上がるディスプレーと端末が整然と並び立ち、その後ろはぽっかりと穴が空いたように空間の開けている指揮所。
隠れる場所などない。あって精々デスクの下、という程度である。
それでも視線は世話しなく動き逃げ場所を探す。


11 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:05:00 ID:bJSgKADi
指揮所の出入り口は一つ。そこは隔壁で塞いでしまった。なによりもその間にユーゼスがいる。
何か、何かあるはずだ。それでもその思いが視線を巡らせ、メインコンピューターから束になって外へと向かっている有線ケーブルに気づかせた。

――外に何かある。

振り返る。丁度その時、潜り抜けられる高さまで上がった隔壁の闇に青白い仮面が浮かび上がった。

――ユーゼス=ゴッツォ。

迷っている暇は無かった。
度重なる戦闘で割れた窓枠に手をかけ外を覗く。伸びるケーブルの先、巨大な機体がそこに佇んでいる。
ついていると思う余裕も無く腕に飛び移り、つんのめる様にコクピットに身を滑り込ませる。
途端に首輪から脳内へと湧き上がってくる情報の束。疑いも不審がる暇も無くその情報そのままに起動シーケンスを踏んでいく。
スタンバイ状態から復旧したメディウス・ロクスの瞳に光が灯ったその瞬間に、間髪入れず上昇。
とにかくその場から離れたかった。
上空を目指しながら、ディスプレイに次々と表示される機体のコンディションに目を通す。
損傷多数。ENの残量も50%未満。余り状態は芳しくない。
しかし、何だ? 損傷修復中? EN回復中? メンテナンスフリーを実現した機体だとでも言うのか?
だとすれば永久機関が搭載されている? そんなこと可能なのか?
いや、今はそれより……。
湧き上がる疑問を一先ず隅に置き、すっかり全景が視界に収まりきるようになった眼下の基地を見下ろす。
目視で確認できる機体は数機。ユーゼスは仲間が三人いると言っていたが、その数よりも遥かに多い。
破損の激しいものから無傷なものまで様々。だが、あの機体が見当たらない。
あいつはこうも言っていた『内二人は此処にはいないがな』と。

「なら、いないのは……あいつか」

そこに一抹の不安を覚えたが、今現在起動している機体はこのメディウス・ロクスだけ。
つまり残りの機体は未稼働。恐らくここにいるパイロットは隔壁内に閉じ込められている。ならば――

顔が苦渋に歪む。
抗う術はなく、何が起こったかさえ分からないまま人が死ぬ。
人の、生き物の尊厳を無視したその考えを憎悪し、嫌悪し、嫌忌し、そしてそれを行なうことを受け入れた。
初めての機体。万全とは言い難いコンディション。
エネルギーゲインを一目見れば、メディウス・ロクスがMSやMA、ブラックゲッターと比較してさえも規格外な程の性能を秘めているのは分かる。
分かるが、それでも今はまともに一戦を交えたくは無かった。
なによりもあのコロニーに、あいつらの元に帰るためになるべく確実な手段を……だから。

「……すまない」

搾り出すように漏れた言葉が空気を揺らし、メディウスの胸に明かりが灯る。
その明りは大きく赤黒い残照を一瞬吐き出すと、一際鋭く中央に集約されていく。
一撃だ。一撃で中にいる人ごと基地を薙ぎ払う。その準備が整った。
後はトリガーを引き絞るだけ。
出来ることなら誰か止めてくれ、と願った。本当はこんなことしたくないんだ、と思った。
そう念じつつ指をかけた。
震える指でゆっくりとゆっくりと躊躇いがちにトリガーが引き絞られ、願う邪魔者は現れず閃光は解き放たれた。
ターミナス・ブレイザーと呼ばれるそれが、地獄の業火と呼ぶに相応しい赤黒い奔流を伴って降り注ぐ。
予想外の威力に僅か機体が揺らぎ目標にズレが生じたが、それはもたらされる結果からすれば無視して構わない程度の誤差に過ぎない。
大地と言う遮蔽物に遮られたそれは一瞬地表でマグマの吹き溜まりのような光球となり、爆ぜ、広域に広がっていく。
建ち並ぶ倉庫群。基地らしく質素にして剛健に誂られた建物達。あらゆるものが薙ぎ払らわれ焦土と変わる。
膨大な熱量に晒されたモノは粟立ち、瞬く間に熔けて消えて行く。蒸発という言葉がピタリと当てはまる破壊。
直撃を免れた建物も高圧空気の衝撃波に押し潰され、粉微塵となって吹き飛んでいく。
砕かれた破片は渦を巻く爆風に遥か高くまで舞い上がり、上空1000mの高さで佇むメディウス・ロクスの装甲を叩いた。
その破壊が過ぎ去った後、眼下に残されていたのもまた破壊だった。
瓦礫の山が散乱している。そこここで火災が発生し、飛び火した火の粉が被害を免れた火薬に燃え移り、爆ぜ、連鎖的に爆発が続いている。
遺棄された機動兵器達に残されていた弾薬が爆ぜているだけでこの惨状なのだった。
通常、二重三重の防護が施されている弾薬庫とはいえ、そこが空であったことは不幸中の幸いと言えるだろう。


12 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:05:12 ID:l3nyS4sS



13 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:05:27 ID:K0i8FI6Z
支援

14 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:05:59 ID:bJSgKADi
それでも巻き上がる膨大な量の黒煙は周囲を満たし、燃え上がる炎の熱量が機体を焦がす。観測されている外部温度は場所によっては鉄すら溶かす。
僅か数秒前から様変わりした景色。焦土と言うに相応しい情景。
辛うじて原型を留めているのは、司令室の存在する管制塔とあと幾つかだけ。それも無傷とはとても言い難い。
それを改めて丁寧に壊しなおす気力はなかった。
剥き出しの鉄骨、鉄筋、砕かれひび割れたコンクリートの塊、それらが何処といわず混ざり合い散乱し、千に砕けた硝子がそこに混じって煌いている。
呆然と全てを眺めた後、顔が苦悩に歪む。自責の念に駆られて――愕然とした。
生き残りたいと願った。あの場所へ帰りたいと願った。
その為に人を殺すしかないのなら殺す覚悟を決めたのも自分だ。
だがしかし、その代償がこれなのか? 人を殺すのにこんな馬鹿げたモノが必要なのか?
MSが誇る火力とは比にならない。大量破壊兵器。その言葉で収まりきらないほどの強大な火力。
人一人の手には有り余る。人と言わず目に映る景色そのものをこの力は壊してしまう。
そんなものが、こんなものが人を殺すのに本当に必要なのか?
手が震え、未だトリガーにかけられたままの指に気づき、慌てて引き剥がした。
おぞましいモノを握っているような気がした。
何かが間違っている。
生き残る代償とはわかってはいても、目の前には人の生き死にとはまた別次元の破壊が横たわっている。
こんなもの徒手空拳の人間相手にふるっていいはずがない。それをやってしまった。
核が何故禁忌とされているのか、分かった気がした。
あまりに破壊が大きすぎる。人を殺すため、戦争を終わらせるため、その目的に対して相応な域を逸脱している。
何よりもその巨大な爪跡を背負える人間がいないのだ。
自らが押したボタン一つで眼下の光景が様変わりする。それを喜々として行なえる人間はもはや常人とは呼べない。
大なり小なり心が壊れてしまうのが人というものだ。だからその重荷を人は分けて背負う。
核を作った者、決断を下した者、命令を伝達した者、最後にボタンを押した者。
皆が皆、その重荷を感じ、少しずつ他の者に押し付けて軽くする。それでも耐え切れず潰れてしまう者はいるのだろう。
大き過ぎる力は人を狂わせてしまう。
無論、ターミナス・ブレイザーの一撃がもたらした被害は核に及ぶべくも無い。
それでも人と言わずあらゆる物が瓦礫と化したこの光景は、あまりに重い。気が進まない。
何よりも重荷を共に背負うべき存在がここにはいない。全ての重圧に自分一人で耐えねばならない。
だけどその一方で、生き残るためにはこの力が必要だという事実を自覚している。
もう自分では止められない。この力を行使せざる得ない自分が分かる。
生き残りたいんだ。帰りたいんだ。こんな光景を撒き散らしてでも……。
それほどに望郷の念は強い。荷が重い。自分で自分を呪い殺したくなってくる。それでも自分はきっとこの力を振るい続ける。

「嘘を言い通す根性もないクセに……か。どこで耳にした言葉だったかな。
 ハハ……その通りだ。アルやクリスにだけじゃない。自分についた嘘ですら俺は……」

卑怯者だと思う。根性無しだとも思う。こんなことをしたって俺がしたことが許されるわけじゃない。
『いつ』じゃなく。『どこ』でもなく。『今』俺はきっと道を間違えたんだと思う。自分に誇れるモノがこの道の先にはきっとない。
でも、もう戻れない。進むしかないんだ、この道を……なのに自分ひとりでは背負いきれない。だから――

ひどく震える指先でゆっくりと通信のスイッチを入れる。
ランプに通信可能を示すグリーンの光がゆっくりと灯るのを確認して、バーニィは渇き切ったその口を開いた。

「こちらジオン軍サイクロプス隊所属バーナード=ワイズマン。もし――」

 ◆

髪を焦がし、凄まじい熱波がうなじを灼いていた。帯電した空気が爆ぜ、衝撃波となって吹き荒れる。
背にしていた隔壁が粉々に砕け、飛び散る破片に弾き飛ばされる。
仰向けにひっくり返るような格好で、したたかに後頭部を打ちつけた。鼻から脳天に痛みが突き抜ける。
鼻の奥がきな臭い。吸い込んだ空気が熱い。
何が起きたのかは分からなかった。何故こんなことになったのかわからなかった。
警報が鳴り響き、赤色灯が点ったかと思うと、隔壁が猛然とした勢いで降ってきたのだ。
そして、次に起こったのがこの急な爆発だ。暫くは身を小さくしておさまるのを待つしかなかった。
そんな状況で正確な状況が飲み込めるはずも無い。

15 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:06:38 ID:K0i8FI6Z
支援

16 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:07:00 ID:bJSgKADi
だから今は、砕けた隔壁の代わりに比較的大きな瓦礫を見つけると、その影にほうほうの体で逃げ込んでいた。
そのまま身を潜め、じっとしている。そのまま致命的な爆発が起こらないことだけを祈っている。
どれほどの時間そうしていただろう。実際には大した時間ではなかったのかもしれない。
だが、動くに動けず、近くで爆音が起こるたびにその身を竦ませて、逃げ出したい衝動を押さえ込んでいる立場からすればそれは永久の長さに感じた。
全ての喧騒が遠くなり、自らの荒い息遣いが感じられるようなって、やっとカミーユは瓦礫の下から這い出した。
盾にしていた頭上の大きな瓦礫から小さな破片がパラパラと頭に降ってくる。見上げてみるとそれは壊れた隔壁の一部だった。
崩れた豆腐のように不規則に粗い断面。そこから突き出している鉄筋と鉄骨を足場にして、大きな瓦礫の上によじ登る。
よじ登って広がった視界にカミーユは息を忘れて立ち尽くした。
コンクリートの瓦礫、むき出しの鉄筋と鉄骨、帯電したケーブル、硝子の砂。それらからなる瓦礫の荒野が遠くまで広がっていた。
ここはこんなに見晴らしがよかったか? どうにか動いた思考が考えられたのはそれだけだ。
僅かな建物が申し訳なさ気に佇んでいる。
爆発前と変わらない物はそれぐらいのもので、おそらく無事であるだろう起動兵器も瓦礫に埋もれてしまったのか見当たらなかった。
呆然と見回す視界の中、遠くで時折小規模な爆発が巻き起こる。その爆風に運ばれてオゾン臭と焦げ付くような臭いが流れてきた。
そう、何かが焼ける臭い。
植物やゴムといったものではなく、どちらかと言えば魚よりも肉に近いような……ハンバーガー店の厨房から漂ってくるようなこの臭い。
そこまで考えて強烈な吐き気が込み上げてきて、戻した。
ここで焼けるような肉など一つしかない。ここはこれまでに数度の戦闘を繰り返してきた場所だ。
死んだ者の中にはきれいさっぱり蒸発してしまった者もいただろうが、そうでない者も当然いたに違いない。
胃液と唾が混ざり合った苦い唾液を吐き出して、口の中の嫌な味をごまかす。
そこで、ふと気づいた。

ベガ……さんは?

周辺を見回す。
身を隠せそうな程大きな瓦礫。堆く積もっている小さな硝子の破片。盾に使えそうな壁。千切れて大蛇のようにうねっているケーブルの脇。
どこにも動くモノはない。何もない。時折細かい破片がパラパラと音を立てるだけ。
――死。
脳内に湧き上がってきたそれを振り払うように、喉を震わせて声を張り上げた。

「ベガさん、何処ですか? 返事をしてください!!」

自分の声が山彦のように反響するだけで何の返事もない。
余計に死が色濃くなり、それを拭い去ろうと躍起なって搾り出すように声を張り上げる。
張り上げながら、思い出そうと混線する記憶の糸を必死に手繰っていた。
何をしていた? 爆発の起こったとき、起こる前、隔壁が下りたとき、何処にあの人はいた?
思い出せ!! 何処だ? 何処に、あの人は――

そして、思い出す。
通路を足早に歩く自分を追いかけ、五月蝿く纏わりつき、口をすっぱくして小言を漏らしていた彼女。
それに反発を覚えて、罵声を浴びせていた。そのまま口論に鳴りかけたときに警報が鳴り響き、出し抜けに突き飛ばされたのだ。
それで隔壁を一枚隔てて左右に分かれることになった。
そのときは隔壁の下敷きにならずにすんだことにも気づかず、突き飛ばされたことにただ腹を立てて、顔をつき合わせずに済むようになったことに清々してて。
それで何か壁越しに言い募るあの人の言葉を聞こうともしないで。そして、あの爆発が……。
はっとして今自分が足場にしている壊れた隔壁を見下ろした。
この隔壁だ。この隔壁が自分とあの人を左右に分けた。だったら、あの人は直ぐそこに。
滑るように隔壁を伝い瓦礫の中に足をつく。細かく砕けた破片が砂利のような音を立てた。
分かってはいる。この周辺で原型を保っている隔壁はこの一枚と背後の一枚。そのただ二枚しか存在しない。
その中で無事な隔壁に運良く挟まれた自分を除いてどうして人が生存など出来るのだろうか。
分かってる。全て分かってる。それでも、それでも掘り出す作業を続けずにはいられなかった。
重い瓦礫を持ち上げ、細かい硝子の破片を掻き分ける。腕で持ち上がらないモノは全身を使い脚で蹴り出す様にして押し出す。
それでも無理なモノは折れた鉄筋を梃子にして横にどけた。

17 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:07:31 ID:atecv7N2



18 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:07:56 ID:l3nyS4sS



19 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:07:59 ID:bJSgKADi
だがどうやっても持ち上がらないものがある。動かないものもある。中には熔けて断面が灼熱しているものすらある。
一人の力で全ての瓦礫をどかして一人の人間を見つけようなど土台無理な話であった。
それでも動かずにはいられない。いられなかった。傷を拵え、汗を拭い、肩で息をしながらカミーユは思う。
何も聞いていなかった。
あの人は何を言っていた? 何を必死で説いていた?
拗ねて当り散らすだけ当り散らした俺に何を教えようとしてた?
邪険に扱われ、粗末に扱われ、それでも何かを伝えようとしてたあの人の言葉を俺はどれだけ真剣に聞いていた?
腕が震える。視界が濁る。
駄目だ……何も思い出せない。俺はあの人の言うことを何も聞いていなかった。
俺は馬鹿にしてただけだ。あの人の言う注意も何もかも、自分ならもっと上手くやってやると自惚れて。
あの人は何て言っていた? 隔壁が閉じた後、爆発が起こる前。耳には届いていた。届いていたはずなのに、何も思い出せない。
壊れたスピーカーの立てる砂嵐のようなノイズ音がやけに耳についた。耳について気づいた。

――人の声が混ざってる?

『――ロプス隊所属バーナード=ワイズマン。もし……もし誰か生きているのなら聞いてくれ。
 こんなことを言ったところで俺のやったことはなくならないし、許してもらえやしないのは分かってる』

言葉が区切られる。ノイズ音だけになったスピーカーに苛立つ。
誰だ? いやそれより、何だ? 何を言っている?

『俺は生き残りたい。帰りたい……すまない。俺のやっていることは間違っているのだと思う。
 生きて帰りたいからといってこんな……災害を巻き起こして許されるはずがない。でも仕方がないんだ』

ワイズマンと名乗る男はところどころ息を呑み込みながら、苦渋に満ちた声で話している。
だが、カミーユのその相手の様子に気づく余裕はない。自己を喪失しそうになりながら呆然と話を聞いている。
今……何て言った? 貴様のやったことか?

『俺には……帰りたい場所がある。帰って会いたい人がいる。だから……俺はこの間違った光景を振りまき続けると思う。
 自分では止められない。帰りたいんだ。会いたいんだ……どうしようもなく。あいつらの顔が見たいんだ。
 だから、お願いだ。誰でもいい。誰か……俺を、俺を止めてくれ……』
「ふざけるなッッ!!!」

頭が熱くなるのが分かる。カッとしたものが込み上げ来るのを自覚しながらも、自分ではどうにもできない。

「生きて帰りたい? 会いたい人がいる? 何でその気持ちでもう少し下に居る人達のことを考えてあげられなかったんだッ!!
 殺しちゃいけなかったんだよ! この人にも帰る場所があった!! 帰りを待ちわびている人がいた!!! まだしなきゃならないことがあったんだッ!!!!
 死んでいい人じゃなかったんだよッ! それをお前は殺したんだッッ!! 一方的に!死んだという自覚すら与えずにッ!! 命を奪ったんだよッッ!!!
 それで自分は間違っているから止めてくれだって? ふざけるのも大概にしろ! そんなに死にたきゃ一人で勝手に死ねよッッ!!! 死んじまえよッッッ!!!!」

固く拳を握りこみ、一息に言い終えて息が切れる。荒い息継ぎをしながら落ち着かない。
許せなかった。許せるはずがなかった。
気持ちが治まらずに見上げた視界には遥かな高度に佇む機体が一つ。たしかゼストと言ったか? ユーゼスの機体だ。
その空を赤い閃光が南北に駆け抜けるのを、そのときカミーユは目撃した。

 ◆

「馬鹿な男だ」

管制塔の天上にぽっかりと空いた大穴からユーゼスは上空を眺めていた。
視界の先にはメディウス・ロクス――バーナード=ワイズマンがいる。司令室内部の通信機器はその声を伝えている。
既にメインコンピューターの損傷度合いは確認していた。出力は落ちているが電装系統に狂いはない。
AI1の行なっていた解析結果も高い解析率の元がバックアップに残されている。後の処理はAI1でなくとも可能だ。首輪の解析に支障はない。
そして、最も重要な手を加えようとしていた謎のナノマシン。本体の首輪こそ持て行かれたが、一部をサンプリングし手元に残していた。
重ねて思う。馬鹿な男だ、と。
こうして何の得にもならないどころか、自身の不利になるようなことを口走っていることもそうだが、それ以上に自分に刃を向ける道を選んだということに対してである。
そのことの愚かしさが、ユーゼスに前述の感想を漏らさせていた。
ユーゼスに言わせてみれば、ここで生き残るには自分の手駒となる他に道はないのである。
自惚れではない。これは確定事項だ。

20 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:08:19 ID:atecv7N2



21 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:08:49 ID:K0i8FI6Z
支援

22 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:08:59 ID:bJSgKADi
ここには奴がいない。自分を止めるべき宿命を帯びた宿敵がいない。奴以外に私は止められず。止められてやる己でもない。
だから、だ。だから、勝者は既に決している。一人勝ち残ろうと思えば間違いなく勝ち残れる。
例え、あの化け物に刃向かおうとも己が死ぬことなど有り得はしない。
ならば、全ては己の胸のうち一つ。この世界を支配しているのは実はアインストではなく己である。
強烈な自負心を持ってユーゼスはそれを確信している。だからこそ、バーニィを愚かと断じることにいささかの迷いもない。
しかし、少々の厄介さは感じている。生き残れる。だが、それだけでは意味がない。
アインスト細胞、AI1、ラズムナニウム、TEエンジン、Gストーン、オーラ力、NT、そしてゲッター線にDG細胞。
これらの知識はこの世界で得たものだ。どれもこれもが素晴らしい。幾度転生を繰り返せばこれほどの知識を得ることが出来ただろうか。
それらを持ち帰ることは出来る。しかし、しかしだ。まだ最大の獲物が残っている。
ノイ=レジセイア――次元すらも自在に超え、これだけの素材を集めることの出来る存在。最も欲しいのは奴の力。
それを得るには少なくとも奴に並ぶ必要がある。その為には優れた技術を取り込み、高い効率で進化が行なえる機体が必要不可欠。
それが、メディウス・ロクス。それが、AI1。それは取り戻さなければならない。メディウスに多少なりとも抗える機体が必要だった。
視線を頭上から眼下に広がる瓦礫の荒野へと落す。
カミーユのいる地表面付近よりも遥かに高い管制塔。その高さから見下ろせば地上では確認できない瓦礫に埋没しかけている機体も目に留まる。
メリクリウスでは力不足。マディウスの再生能力を考えれば向うの損傷は気にしなくてもいい。稼動が可能な軽度の損傷、且つ高い戦闘力を誇る機体は――

「ローズ・セラヴィ……いや、ブラックゲッターといったところか。流竜馬と言ったか?あの男が残した斧もまだ使えるな」

当りをつけ、再び見上げた視界に真紅の閃光が南北に奔った。ほう、と口元を歪め――

「随分とのんびりとしたものだが……戻ったか、キョウスケ=ナンブ」

――丁度いい、と笑った。
貴様の撒いた種だ。一度ならず二度までも止めを刺し損ねた相手だ。そして、貴様の甘さが招いた結果がこれだ。
私の見ている前で落とし前をつけさせてやる。自分で始末をつけてみろ。あの男を止めてやるのが貴様の役目だ。

 ◆

「エクセレンのようにはいかんか……ままならんな」

彼方の空。まだ上空に小さく佇む機体を狙ったオクスタンライフルの一撃は軸がズレ、彼方へと消えていった。
その真紅のオクスタンライフルの光跡を見つめて苦々しく呟いた。

「……外れだな」
「射撃は苦手なんでな。だが、一応の効果はあった」

先ほどまでありとあらゆる周波数で通信機を鳴らし続けていた独白が途切れている。こちらに気づいたのだろう。
注意をこちらに向ける。それが目的。それが狙い。当れば、それは儲けものという程度しかない。
後は声の主をキョウスケ=ナンブは止めなければならない。この声をキョウスケは知っている。
ここに来て最初に出会ったのが奴ならば、奴に止めを刺さずに放置したのも自分だ。
ならば、この敵機の真下に横たわる惨たらしいまでの光景――基地が壊滅状態に陥ったことの責任の半ばは自身にある。
だが、残りの半分は――ユーゼス=ゴッツォ、貴様にある。睨みを利かせた瞳が鋭く光った。
貴様は言った。生存者は全機体ともなしだ、と。あの黒い機体を確認しに行った貴様が言ったのだ。
確認したときには既にいなかったでは通じん。貴様ほどの男が死亡を確認しもせずに不確かなことを口にするはずがあるまい。
ならばこれは、この惨状は貴様が仕掛けたことか。
根拠は薄い。主観的なのも分かっている。それでもそうとしか考えられない。ならば――

「その落とし前はつけさせてもらうぞ」

怖気の走るような凄みを伴って思わず口をついて漏れた言葉に「どうした?」と声がかかった。それに軽く「なんでもない」と返し、言葉を繋げる。
今、ユーゼスのことを話せる状況にはいない。まずは目の前の敵とケリを付け、自身の責を負わなければならない。
ユーゼスのことを話すのも、奴に奴自身の責を負わすのもその後でいい。

「向うもこちらに気づいた。そろそろ通信圏内も抜ける。お前はそのまま隠れていろ」
「……元よりそのつもりだ。悔しいが、今の俺ではただの足手まといにしかならん。
 あんたに死なれると俺が困る。死ぬなよ」
「死ぬつもりはない……まだな」


23 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:09:25 ID:atecv7N2



24 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:10:00 ID:bJSgKADi
それを最後に通信が途切れ、通信はノイズを伝えるのみとなる。
これでいい。今のあの男の状態では戦闘には耐え切れない。本人の言うように足手まといになる。
それに自分がケリを付けるべき相手だ。無駄に他者を危険にさらす必要はない。
これでいい、と再度結論付けたキョウスケがブーストを焚く、アルトアイゼンを遥か後方の森林に残し、ファルケンが低空を舐めるように飛んでいく。
速力は音速を超えて上昇を続け、周囲の景色が瞬く間に遠くなる。まだ互いに当る距離ではない。牽制もない。
しかし、時期に当る距離になる。その間合いへと僅かな怖れも見せずに隼は、全速で飛び込んで行った。



【バーナード・ワイズマン 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:頭部から出血、その他打ち身多数
 機体状況:第二形態、損傷多数、EN残り40%、自己修復中、EN回復中
 現在位置:G-6基地上空
 第一行動方針:新手の敵に対応する
 最終行動方針:生き残る
 備考1:ユーゼスが行なった首輪の解析結果を所持しています
 備考2:首輪を手に入れましたが気づいていません(DG細胞感染済み) 】
 
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:なし
 パイロット状態:若干の疲れ
 現在位置:G-6基地管制塔司令室内部
 第一行動方針:戦闘を観戦
 第二行動方針:AI1の奪取
 第三行動方針:首輪の解除
 第四行動方針:サイバスターとの接触
 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルU(マクロス7)
 パイロット状況:心理状態不安定
 機体状況:不明
 現在位置:G-6基地跡
 第一行動方針:動く機体を探す
 第二行動方針:マサキの捜索
 第三行動方針:味方を集める
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊
 備考:ベガ、キョウスケに対してはある程度心を開きかけています】
 ※機体の損傷状態については次の方にお任せします。

【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲、ユーゼスに対する不信
 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし)
      背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み
 現在位置:G-8南部
 第一行動方針:バーニィとのケリを付ける
 第ニ行動方針:アキトの保護
 第三行動方針:首輪の入手
 第四行動方針:ネゴシエイターと接触する
 第五行動方針:信頼できる仲間を集める
 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?)
 備考1:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています
 備考2:謎の薬を1錠所持】


25 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:10:47 ID:K0i8FI6Z
支援

26 :家路の幻像 ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:10:59 ID:bJSgKADi
【テンカワ・アキト 搭乗機体:アルトアイゼン(スーパーロボット大戦IMPACT)
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態
 機体状態:胸部に軽度の損傷。3連マシンキャノン2発消費、スクエアクレイモア2発消費
 現在位置:G-8南部
 第一行動方針:キョウスケに情報を提供して同行する
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を4錠所持】

【ベガ 搭乗機体:なし
 パイロット状態:死亡】

【残り22人】

【二日目6:35】


27 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:11:05 ID:l3nyS4sS



28 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:13:36 ID:atecv7N2



29 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/16(火) 23:14:50 ID:bJSgKADi
投下終了です。支援ありがとうございました。
今回のメインはバーニィとカミーユのつもりです。
八月末に予約した時点に比べて中盤からかなり内容は変わりました。
そのため遅くなってしまいすみませんでした。

きっちり一分間隔での投下を狙ってみたんですが存外難しいものですね。


30 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:15:52 ID:atecv7N2



31 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:16:49 ID:atecv7N2



32 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:18:14 ID:atecv7N2



33 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:22:46 ID:atecv7N2
GJ!

34 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:23:01 ID:vMq8JcKz


35 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:26:08 ID:atecv7N2
失敗、途中送信……
ベガさん、やばいやばいと思ってたけどここで退場か……この集団唯一の良心で、止めうる人だったのにこれ泥沼になりそうだ
ユーゼスも他人を使い捨てる気満々だしカミーユも原作のキレモード、背中から打つ気のアキト……死臭がする
この話自体もいいし、これから先も楽しみないい話GJ!

36 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:27:05 ID:K0i8FI6Z
>>29
投下乙でした。
読み応え充分で次の展開にwktkです。
GJ!!

37 :それも名無しだ:2008/09/16(火) 23:56:50 ID:vMq8JcKz
うおお、ベガさん……なんてこったい。最後まで良い人だった。
良い人なだけに貧乏籤引いてしまった……。
それにしてもカミーユが良い。すごく良い。
生の感情剥き出しで周りに当り散らしたり愚痴を零したりといった行動の醸し出す気持ち悪さが実に気持ち良い。
バーニィに喚き散らす辺りなんか自然に頭の中で声が再生されてしまった。
なんというか、このままならない感じというか、何もかもが悪い方向に向かってしまう感覚というか、
とにかくもう大好きだこの話。

38 :それも名無しだ:2008/09/17(水) 00:17:17 ID:qvNlGZJX
おおお投下乙!
ベガさんが死んじゃったか…でもバーニィの心情も痛いくらいに分かって切ないなあ…
そしてシャアの影響が思いのほかすごいw

39 :それも名無しだ:2008/09/17(水) 00:54:49 ID:T1+zwkWb
投下乙!GJです!後の展開が楽しみだ。
そして誤字発見です。キヨウスケが現れた辺りでメディウスがマディウスとなってます。

40 :それも名無しだ:2008/09/17(水) 06:58:12 ID:P+weVvwE
キョウスケ、またメディウスとやるのかwwwwww

因縁深いもんだねえ。とりあえず腹立ってきた。バーニィ死ね

41 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/09/17(水) 22:44:14 ID:xaSmJ53F
感想とご指摘ありがとうございました。
ご指摘をいただいた箇所も含めて誤字や表現の重複が多数見つかりましたので訂正させていただきます。

>>3
×仰々しい衣装を身に纏い靴音も高く通路を歩く男――ユーゼス=ゴッツォが静寂を振り払い歩いていた。
○仰々しい衣装を身に纏い悠然と闊歩するその男――ユーゼス=ゴッツォが静寂を振り払い歩みを進めていた。

>>6
外に出た目の目に→外に出た目の前に

>>16
起動兵器→機動兵器
×胃液と唾が混ざり合った苦い唾液を吐き出して、
○胃液と唾液が混ざり合った苦い唾を吐き出して、

>>19
高い解析率の元→高い解析率のモノ

>>22
マディウス→メディウス

>>24
×それを最後に通信が途切れ、通信はノイズを伝えるのみとなる。
○それを最後に通信が途切れ、ノイズを伝えるのみとなる。

以上です。誤字は毎度の事ながら何か切腹ものに量が多い……すみません。
おまけに白状すると、ベガさんの仮面が割れてなかったらカミーユに被せてシャアもどきにしてみようかなって冗談半分で考えていたのも私だ!

42 :それも名無しだ:2008/09/24(水) 11:24:54 ID:G/ar9BUg
スパロボZフラゲ祭りに備えて保守だ!
ビッグオー、保守ターイム!

43 :それも名無しだ:2008/09/26(金) 11:55:42 ID:iwsPxpEy
スパロボZ買えてない……orz
代わりというわけじゃないが今X視聴中
やっぱりガロード良いキャラしてるなー、シャギアは……w

44 :それも名無しだ:2008/09/26(金) 23:17:18 ID:WWag5pVt
ソシエがロジャーのことを交渉よりも実力行使の面で評価してることに吹いたw

45 :それも名無しだ:2008/09/27(土) 07:27:29 ID:f1sjoQOb
>>44
問題無い。序盤からの依頼をさっぱりこなせてないんだからwwwwwww

まあそれでこそロジャーだよね!!

46 :それも名無しだ:2008/09/27(土) 16:54:53 ID:lEptKOXz
>>45
いや、Zでそういう話があるのよ

47 :それも名無しだ:2008/09/27(土) 23:08:38 ID:H3y1Mq/H
そういやキラ、ロジャー、ソシエのJアーク組はみんなZに出てるんだよな
なんかクロスオーバーとかあったりしたんだろうか

48 :それも名無しだ:2008/09/29(月) 19:17:21 ID:ByFKv4pD
果たしてロジャーが本ロワでまともなネゴシエイトをすることはあるのだろうかw

まああれだ、ロジャーがこうもヘタレ交渉人のイメージが付き纏うのは
原作第一話冒頭、キャラのイメージを決定付ける最初の依頼で
盛大に大失敗ぶっこいてるせいだろうなw
しかも開き直りのモノローグときたwww

49 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:32:45 ID:07ECalLL
第152話「家路の幻像」まで
死亡者編
・『死亡者名(搭乗機)/殺害者名(搭乗機)』 キャラ辞典より抜粋&コメント
 なお順番は死亡順

・エクセレン=ブロウニング(搭乗機なし)/アインスト=ノイ=レジセイア(搭乗機なし)
 アインスト=ノイ=レジセイアに最初の見せしめにされ首輪を吹き飛ばされ死亡。
 このことによりキョウスケはアインスト達を倒しアルフィミィを解き放ちエクセレンを迎えに行くこと
 を覚悟する。

・メルア=メルナ=メイア(ジム・カスタム)/グ=ランドン・ゴーツ(ラフトクランズ)、流 竜馬(大雷凰)
 グ=ランドンに機体を串刺しにされ竜馬に機体を爆散されロワ参加者(除くエクセレン)初の死亡者となる。
 早々にテニアとの合流を果たすも彼女の目の前で死亡。このことがきっかけでテニアがゲームに
 乗ってしまいカティアを殺害、統夜も乗っているので彼女の死は報われない。

・グ=ランドン・ゴーツ★(ラフトクランズ)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 竜馬の大雷凰に機体をライジングメテオ・インフェルノで真っ二つにされる。
 それでも生存していたがテニアを挑発、そのまま彼女に撃ち殺される。
 だが彼の言葉は彼女の心に絶望を植えつける。

・ラクス=クライン EVA零号機)/ヒイロ=ユイ(レイダーガンダム)
 EVA零号機を操ってヒイロを追い詰め、説得しようとするも常識外れの攻撃により零号機を破壊され、死亡。
 版権作品初の死亡者となる。似た思考の持ち主であるリリーナとは遭遇できなかった。

・木戸 丈太郎(クロスボーン・ガンダムX2)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
 知恵と技術でサイコガンダムを撃破するものの、相羽シンヤがテッカマンに変身できるとは見抜けず、
 PSYボルテッカにてコクピットブロックごと蒸発させられる。
 彼が放送で名を呼ばれてもたいして影響がないことも考えると可哀想な死に様である。

・神名 綾人(アルトロンガンダム)/テンカワ=アキト(YF-21)
 ロジャーとリリーナを奇襲するも、割り込まれたアキトにマーダーとみなされコクピットに拳を
 打ち込まれ死亡。だが、彼との戦闘で凰牙のENがなくなったためリリーナの死にも関与している。

・カティア=グリニャール(VF22S・Sボーゲル2F)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 テニアと再会するも、すでに彼女はゲームに乗っており絞殺される。テッカマンに殺られたキッドを
 除けば当ロワで生身で殺られた人、第一号である。なお、友人に殺されるという最後をとげた一番欝な
 死に方である。

・ジョシュア=ラドクリフ(クインシィ・グランチャー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 アイビスと行動中に統夜に御大将を擦り付けられる。そのまま戦闘中にクインシィに邪魔され
 シャイニングフィンガーを喰らい機体が大破、アイビスと共に逃げるものの既に彼は爆死していた。
 なお、彼の死はラキに影響を与えるため彼女の今後が心配である。

・リリーナ=ドーリアン(セルブースターヴァルハラ)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
 機体をばらばらにされ連れ攫われテッカマンにコックピットの ハッチをこじ開けられ首を跳ね飛ばされる。
 おとなしく凰牙にENを供給していればもっと違った展開が待っていたかもしれない。

・ギャリソン時田(ガンダムレオパルド・デストロイ)/ガウルン(マスターガンダム)
 ガウルンと再び交戦、激戦を繰り広げるもガウルンの宗介の愛の前に敗れ去る。
 すごい執事だけに序盤でおしい人が逝ってしまったのは残念。

<<第一回目の放送で上記10名の死亡が伝達>>

50 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:33:35 ID:07ECalLL
・ユウキ=コスモ(ジガンスクード・ドゥロ) /ジョナサン=グレーン(ガンダムF91)
 ギャリソンの死を悲しみバサラの歌に心を癒されている
 最中にジョナサンの奇襲を受ける。機動性の高いF91を倒すため広範囲攻撃の
 G・サークルブラスターを放とうとするも生きていたバサラがいたため躊躇。
 そのままコクピットにヴェスバーを撃ち込まれ蒸発、死亡する。

・九鬼 正義(ドラグナー2型カスタム)/バーナード=ワイズマン(ブラックゲッター)
 ブラックゲッターの強襲を受け、あっさりと撃墜されてしまう。
 ラーゼフォン系は全滅、薄氷同盟最初の死者となった。

・アスラン=ザラ(ファルゲン・マッフ)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
 カテジナに盗られたラーゼフォンと遭遇。
 バサラが乗っていると思い込んだまま交戦。だが、ドラグナ−系の力ではデウスエクス・マキナに
 一歩及ばずに機体を両断され敗北。最後に思いを親友に託しながら死亡してしまう。

・神 隼人(YF-19)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
 同行していたクインシィがエイジに襲いかかり、続いて現れた竜馬も加わり混戦状態に陥る。
 その中、クインシィ・ガロードに3人目を探せと言い押し切る形で離脱させた。
 さらに竜馬の説得を試みるも失敗。最後はクルツの狙撃で被弾、そのまま地表に墜落死となった。

・アルバトロ=ナル=エイジ=アスカ(ガナドゥール)/流 竜馬(大雷鳳)
 消えたラキを探している途中でクインシィに襲われる。
 途中乱入してきた竜馬によって一度は気絶するも意識を回復。
 壊れたフォルテギガスからガナドゥールを分離して、逃走を試みるが追い詰められる。
 最後は大雷鳳と正面からぶつかり合い敗れ去った。

・ヒイロ=ユイ★★(搭乗機なし)/ベルナルト=モンシア(搭乗機なし)
 一度交戦をしたモンシアとG-6基地で再び遭遇する。
 モンシアがヘビーアームズを自爆させた結果、機体を失う。
 基地の状態を調べ、格納庫へ一応の確認しに行く途中にまたもやモンシアに遭遇。
 白兵戦で彼を追い詰めるも自爆に巻き込まれ帰らぬ人となる。
 なお彼の死を持って薄氷同盟は全滅となった。
 
・ベルナルト=モンシア★(搭乗機なし)/ヒイロ=ユイ(搭乗機なし)
 大破したヘビーアームズを有効利用しヒイロの乗るレイダーを破壊。
 しかし、外の様子をうかがいに行く途中に実は生きていたヒイロと遭遇する。
 子供と舐めた結果追い詰められて、ヒイロを巻きこんで自爆死する。

・孫 光龍(レプラカーン)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 機体の整備にと立ち寄ったG-6基地でバーニィを発見。これに襲いかかる。
 戦闘中、ゼクス・キョウスケが現れて場が複雑化。
 そんな中でキョウスケと戦闘となり、念の暴走の果てにオーラコンバーターを貫かれて死亡した。

・シャア=アズナブル(核ミサイル)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
 アムロとの合流を目指し、F-2補給ポイントで待機中、カテジナと遭遇。
 機転を利かせ、一度はカテジナの撃退に成功するもラーゼフォンの長距離狙撃を受けてしまう。
 アイビスを逃がし、彗星は地に落ちる。だがその意志は確かに受け継がれていた。
 死亡後も、窮地のアムロと共振する、アイビスの悪夢に出てくると大活躍である。

・相羽 シンヤ★★(テッカマンエビル)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
 ロジャーから受けた痛手を癒すべくD-8にあるコンビニの食糧を根絶やしにする。
 続いて機体の奪取を目指し、移動してきていたクルツに戦闘を仕掛ける。
 テッカマンの能力を活かし終始優勢に戦闘を進めていたが、最後の最後でクルツの策にかかり死亡。
 テッカマンとしての傲りが最大の敗因であったのは間違いない。


51 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:34:19 ID:07ECalLL
・ゴステロ(スターガオガイガー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 アムロを追いつめるも、ブンドル、ギンガナムに乱入され、勝機を逃してしまう。
 そのままギンガナムと戦闘になるが、彼には「勇気」が足りなかった。
 純粋な力比べに負け、死亡。

・ゼクス=マーキス(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 キョウスケと共に基地の制圧に成功するも、直後に機体制御をAI1に乗っ取られてしまう。
 が、メディウス内部からキョウスケをサポート。
 オクスタンライフルに撃ち抜かれ死亡するも、その魂は最後まで気高かった。

・カズイ=バスカーク(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 ゼクスの操縦技術をAI1に学習させ、メディウスの制御を奪う。
 圧倒的な力でキョウスケを追いつめるが、最後には人の力に破れることとなる。
 オクスタンライフルを撃ち込まれ死亡。

・マサキ=アンドー(アルトアイゼン)/ガウルン(マスターガンダム)
 キラたちと共にダイへと戦闘を仕掛ける。
 ガウルンと戦闘になり、ボロボロのアルトアイゼンで善戦するも一歩及ばず、コクピットブロックをもぎ取られ死亡。
 彼の持っていた小石がある人物の運命を大きく変えることとなる。

・ミスマル=ユリカ(無敵戦艦ダイ)/ガウルン(マスターガンダム)
 Jアーク組と交戦。地盤を崩すという荒技で戦況を一変させたが、その直後にガウルンによってダイの艦橋は大破。
 外に投げ出されアキトと再会を果たすも、マスターガンダムに踏まれ圧死。
 彼女の死はアキトに多大な影響を及ぼすことになる。

・巴武蔵(RX-78ガンダム)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 戦艦三隻総勢14名が入り乱れる大混戦の中、一度は気を失うもフロスト兄弟・ガウルン相手に健闘する。
 だが彼は最も信頼していた仲間テニアの姦計に陥る。彼がテニアの裏切りに気づいた瞬間、彼の生は終わりを告げた。
 人が良すぎたのが、彼にとって災いしたのかもしれない。

・カテジナ・ルース★★(ラーゼフォン)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
 水中での休憩中にキョウスケ・カミーユの二人組に見つかり接触する。
 誤った情報を与え穏便に事を運び離脱するが、その離脱中に悲劇は起こった。
 同じように水中で休んでいた統夜の不意打ちでラーゼフォンは大破し、彼女は火に包まれる。
 それでも生きていたのだが、救助中に潰される最期となった。

・クルツ・ウェーバー★★(ラーズアングリフ)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 ギンガナムと交戦状態に入ったアイビスをフォロー。残弾が少ない中、牽制・狙撃にサポートと戦場を駆け回る。
 最後はラキと行動不能に陥ったアイビスを離脱させ、ギンガナム相手にコードATAによる自爆で一人散っていった。
 最初から最期まで他人のサポートに奔走するのが、彼の生き様であったといえるだろう。

・グラキエース★(ネリー・ブレン)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 ギンガナムと交戦中のクルツを見つけ戦闘に割り込む。そしてその戦場に彼女の探し人は存在した。
 一時は負の感情に支配されながらもブレンを感じ、ジョシュアを信じ、アイビスとクルツに支えられて彼女は戦い抜く。
 しかし、ギンガナムを制しきれずにクルツが自爆。ラキもまたアイビス一人を残して戦地へ赴く。
 相打ち覚悟で挑んだ勝負で狙い通り禁止エリアへと跳びギンガナムと共に散っていった。

・ギム・ギンガナム★★★★(シャイニングガンダム)/グラキエース(ネリー・ブレン)
 ブンドルと共に訪れた中央市街地でアイビスに襲われ、そのままクルツ・アイビスとの戦闘状態に入る。
 途中さらにラキが加わり苦戦を強いられるも、満足の行く戦いにヒートアップ。テンションが最高潮に達する。
 そして、突き上げる衝動のままに二機のブレンを圧倒。ヒメ・ブレンを仕留め、クルツの自爆にも耐え抜いてみせた。
 しかし、ラキとの一騎打ちの末、禁止エリアへと追いやられ死んでいく。最後の最後までギンガナムらしい暴れっぷりであったと言えるだろう。

<<第二回目の放送で上記20名(+その他生死不明1名)の死亡が伝達>>

52 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:35:16 ID:07ECalLL
・ジョナサン・グレーン★(真ゲッター)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
 ガロードとの合流待ちの間に統夜に見つかり、これに襲われる。
 一度は動きを読まれ敗れるも救援に駆けつけたガロードのピンチに復活。真ゲッター2を乗りこなし決死の攻勢に出るも遅すぎた。
 既に致命傷を負っていたジョナサンは最後の攻撃に出る。だが命届かず燃え尽き散っていった。
 最終目標であるクインシィの生還はガロードに託されたが、それが果たされる日は来るのだろうか。 

・ベガ(月のローズセラヴィー)/バーナード=ワイズマン(メディウス・ロクス)
 第二回放送直後、我を失ったカミーユを心配し気にかけるも罵声を浴びせられることになる。
 そのときに受けた言葉に苦悩するもカミーユを人として正しい方向へ導きたいという想いを胸に再度前を向いて立ち上がる。
 しかし、その言葉はカミーユに届かずバーニィの仕掛けた攻撃によって基地と共に最期を迎えることとなった。
 常に集団全体のことを考え、一人一人を気遣い、板ばさみに会いながらも前を向き続けた彼女はやはり強い母であったのかもしれない。

<<第三回目の放送で上記2名の死亡が伝達予定>>
以上、死者の説明を終わりますの。

53 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:36:12 ID:07ECalLL
生存者編
●小隊(最新エピソード時の場所と時刻)状況コメント
   ・『生存者名(搭乗機)タイプ分け』備考&一口コメント
   自衛協力型(自衛はするが友好的。対マーダー予備軍)
   無差別型(見敵必殺・問答無用)
   猫被り型(友好的に見えるが、攻撃の機会を狙っている)
   策士型(知略戦で漁夫の利狙い。攻撃は最終手段)
   対マーダー(マーダーは攻撃。他には協力的)
   自衛戦闘型(敵対するなら相手を殺す気あり)
   協力暴走型(基本は自衛協力的だが、状況によって暴走してしまう)
   平和解決型(攻撃されても話し合いで解決したい)


●アイビス(D-3/二日目5:30)
  精一杯生き抜くことを目標に動き始める。
・アイビス・ダグラス(ネリー・ブレン) 自衛戦闘型
  ジョシュアの仇であるギンガナムを急襲。ラキ・クルツを巻き込んだ混戦となる。
  その激闘の中でヒメ・ブレンが倒れ、クルツが死に、ラキが散り、一人生き残る結果となった。
  そして、死んでいった者たちに立ち止まらないことを誓い、彼女は前に歩き始めた。
  現在のところただ一人第二回放送後の登場がないため、その足取りが気になる。
  
●カミーユ(G-6/二日目6:35)
  G-6基地の壊滅で辛くも生き残るもベガの死による衝撃は大きい。
・カミーユ・ビダン(VF-22S・SボーゲルU)自衛協力型
  Zガンダムと同じ可変機のバルキリーに搭乗。
  本人の操縦センスと相まってその戦力が期待されているが、VF-22の機体状態は現在不明。
  放送でシャアの死亡を知り、湧き上がる感情を生のままベガにぶつけた。結果、後味の悪い別れを味わう。
  ユーゼスの非人道的な行いを嫌悪し、バーニィの理不尽な行いによるベガの死に激怒している。

●キョウスケ&アキト(G-6/二日目6:35)
  互いに似通ったもの感じつつも保護と利用と言う反する関係を築く。
・キョウスケ・ナンブ★★★(ビルトファルケン(L))自衛協力型
  エクセレンを殺されたにも関わらずマーダー化せず、打倒主催者とアルフィミィの開放を目指す。
  またアインストの情報を持っている貴重な人物でもある。
  ユリカを失ったアキトと自身を重ね合わせ、彼を保護するために基地の帰還を大幅に遅らせた。
  現在、基地を壊滅させたバーニィ&メディウスとの因縁にケリをるけるべく機体を走らせている。

・テンカワ・アキト★(アルトアイゼン)無差別型
  ユリカの蘇生を目指し、マーダーに転向。
  ボソンジャンプの使用が首輪爆破条件に追加されたが、ぼろぼろの身体でも戦闘が可能になる薬を所持。
  しかし、その薬の正体にはまだ気づいてはいない。
  キョウスケに保護されているが、アキトとしては似たものを感じつつも彼を利用するつもりである。
  よって戦闘の流れ次第でG-6基地の混戦にどのような影響を及ぼしてくるのか非常に楽しみだ。

●ユーゼス(G-6/二日目6:35)
  自身が生き残ることに絶対の自信を持ちG-6基地の戦闘を静観している。
・ユーゼス・ゴッツォ(なし)自衛戦闘型
  スパロワで主催者なのは伊達ではなく、アインストの力を手に入れようと画策中。
  G-6基地で首輪の解析に着手し未知の技術に振り回されながらも地道に解析を続けているようだ。
  また手塩にかけて育てていたAI1を掻っ攫われ、バーニィに交渉を蹴られたのに妙に自信満々である。
  DG細胞感染済みの首輪は盗まれたがDG細胞のサンプルという爆弾を依然かかえ続けているのも私だ。

●バーニィ(G-6/二日目6:35)
  帰りたい。ただひたすらに帰りたい。
・バーナード・ワイズマン★★(なし)無差別型
  ユーゼスの交渉を蹴り、メディウスを手に入れ、基地を壊滅状態に追い込んだ。
  しかし、メディウスのMSとは比にならない攻撃力を怖れ嫌悪している。
  だがそれでも帰りたいが為にその力を行使せざる得ない自分を感じ、苦悩を深めている。
  その結果、自分を止めてくれる力を求め通信機のスイッチを入れた。

54 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:37:18 ID:07ECalLL
●キラ(E-2/二日目6:55)
  ナデシコ組との話し合いを目的に動き出す。
・キラ・ヤマト(Jアーク)対マーダー型
  ラクスの墓を見つけ放送でアスランの死を知り心が混乱の極みに一度は達した。
  しかし、ロジャーに諌められ、ソシエに慰められ、前向きに立ち上がることに成功する。
  現在はロジャーにナデシコ組との会談を依頼し、一人でも多くの人間を集めるために動き出す。
  彼の勇気にJアークが答える日は来るのだろうか。

●ロジャー&ソシエ(E-4/二日目6:55)
  Jアークとガイ(アキト)の足取りを求めてD-7市街地を目指す。
・ロジャー・スミス(騎士凰牙)平和解決型
  D-7の交戦後、Jアークに押しかけたがキラの依頼を機に別行動を取る。
  受けた依頼はJアーク組とナデシコ組の会談。そのお膳立ての為にナデシコを探して現在移動中。
  しかし、ちゃっかり潜り込んでいたソシエに振り回され気味である。
  実はこのネゴシエイター、関わった人間の死亡率が高すぎる。

・ソシエ・ハイム(なし)自衛協力型
  放送後落ち込むキラを慰め、またどうせ人を集めるのなら多いほうがいいと提案した。
  ついでに予備のギアコマンダーとロジャーの腕時計を巻き上げたりもしている。
  そして、ちゃっかり凰牙に潜り込みロジャーと行動を共にする。
  データウェポンが会場に散らばっておりギアコマンダーを持っている為、契約する可能性もゼロではない。

●シャギア&比瑪&甲児&バサラ(C-8/二日目7:15)
  ガロードとクインシィという因縁深い相手とついに遭遇。
・シャギア・フロスト(ヴァイクラン)自衛戦闘型
  オルバと共に生き残るためにゲームには乗らない。ただし、他人は容赦なく利用する。
  コスモの頭部を潰すことで首輪を手に入れたが、潰したことは現在甲児達には隠している。
  威厳失墜しまくりな兄であるが、統夜を艦砲射撃で退けるなどの活躍で最低限の威厳は保てて……いない。
  ガロードとの接触を果たしたため両者の関係が今後どう作用してくるかが見もの。

・兜甲児(旧ザク)自衛協力型
  熱血単純な主人公。フロスト兄弟の所為で裏切られフラグを持っているが、意外とシャギアと仲が良い。
  甲板に新たに係留された旧ザクをもしかして使う気かと思ってたら本当に使った。
  しかし、その方法は通信の中継ぎである。
  他の二者がガロード・クインシィ組と因縁持ちなので、信頼関係を得られるかどうかは彼の双肩にかかっている。

・宇都宮比瑪(ナデシコ)平和解決型
  甲児が旧ザクを持ち出したため、ナデシコを現在一人で動かしている。
  戦闘を嫌い、出来る限り話し合いで解決したいと思っている様子。
  テニアを信頼し、彼女の身を案じている。
  探していたクインシィとの接触がどのような結果になるのか非常に楽しみである。

・熱気バサラ(プロトガーランド)
  壊れたプロトガーランドから発見され、現在はナデシコの医務室に安置されている。
  意識がはっきりとしない状態でフロスト兄弟の会話を聞いており、今後どう作用してくるかが見もの。
  ただし、現在は喉を潰しており、歌はおろか話すことさえままならない。
  当分起きなさそうなどころか下手すればもう二度と起きてこないような雰囲気さえ漂いはじめている。

55 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:38:02 ID:07ECalLL
●ガロード&クインシィ(C-8/二日目7:15)
  ジョナサンを失い、その戦闘で割り込んできたナデシコ組と接触。
・ガロード・ラン(ガンダムF91)自衛協力型
  機体が不調を起こしたアムロに先行してクインシィ達の救援に駆けつけ、統夜と戦闘を繰り広げる。
  その中で追い込まれるもジョナサンの決死の反撃と宿敵シャギア=フロストの助勢に助けられ事なきを得る。
  しかし、まだ落ち着いた話し合いを持てていないので信頼に至っている可能性は低いと言える。
  年上の女性に振り回されやすい性質なので、クインシィが気を取り戻したとき苦労する様子がどうにも目に浮かぶ。

・クインシィ・イッサー(真ゲッター)協力暴走型
  ジョナサンに最後の一人を目指せと言われたがこれを拒み、ガロードと共に帰る道を選択した。
  その後、襲い掛かってきた統夜と戦闘となり、劣勢を強いられるもガロードによって助けられる。
  さらにジョナサンの決死の反撃で統夜を追い込むも自身はその強烈なGにより気絶。ジョナサンを失う。
  現在は気絶中であるが比瑪の集団との接触が起こっているため、目が覚めたときに一悶着ありそうである。

●オルバ&テニア(C-7/二日目7:30)
  互いが互いを信用してないが一先ず表面上の関係は良好のようだ。
・オルバ・フロスト(ディバリウム)自衛戦闘型。
  兄を裏切った弟の機体に乗せられるも兄弟間の信頼度NO.1である。
  MAP兵器持ちであり合体も可能なので強力な機体を運用する。
  シャギアと共に生き残るためにゲームには乗らない。ただし、他人は容赦なく利用する。
  自重しない兄の奇行に頭を悩ませているが、きっと深い考えがあってのことなのだろうと一応は信頼している。

・フェステニア・ミューズ★★★(ベルゲルミル(ウルズ機))猫被り型
  彼女自身の戦闘能力は高くはないが猫被りマーダーとしての器量に期待できる。
  武蔵の殺害に成功し、D-7の修羅場を潜り抜け、ナデシコに取り入ることにも成功した。
  現在は別行動中で共にしているオルバに取り入ろうとしているが、その裏で本隊では根も葉もない噂が立ちつつある。
  今では統夜を殺す事も今では構わないと感じ、好感を持った比瑪を自分の手で殺そうと思っているようだ。

●ブンドル(D-8/二日目7:35)
  小集団の形成を一つの目標に動いている。
・レオナルド・メディチ・ブンドル(サイバスター)自衛協力型
  美しいサイバスターを駆り、会場の脱出手段に当たりを付け、対主催者のため首輪解除の情報を集めている。
  彼ではサイバスターの全能力を引き出せないため相応しい操者を求めカミーユに興味を抱いている。
  ガウルンの手によって劣勢を強いられていたアムロを助け、ガウルンを退けた。
  現在はアムロと情報交換を経て解散しC-8にいるはずのガロードとその仲間との合流を急いでいる。  

●アムロ(D-8/二日目7:35)
  ガロードをブンドルに任せ、自身はアイビスを探して南下を始める。
・アムロ・レイ(ガンダムF91)自衛協力型
  ガロードと乗機を乗り換えガウルンの敵意に一人気づきガロードを逃がし、これと対峙。
  戦闘は熾烈を極め追い込まれる場面もあったが、ブンドルの救援によって事なきを得た。
  その後はブンドルと情報を交換し分かれることに、彼はアイビス・カミーユとの合流を目的に動き始める。
  首輪を手に入れ、技術者としての技能も持っている為、首輪解析に期待がかかる。

●ガウルン&統夜(C-8/二日目7:50)
  命を狙ってもいいという一風変わった協力体制を築く。
・ガウルン★★★(マスターガンダム)無差別型
  方々で暴れまわり様々な人間にちょっかいを出してロワを満喫している。
  直近の戦闘ではマスターガンダムを駆りアムロと渡り合い、その後統夜と同盟関係を結んだ。
  またアキトとの再戦、統夜の才能の開花を楽しみにもしている。
  しかしこの男、一体いくつの因縁を作り上げれば気が済むのか……。

・紫雲統夜★★(ヴァイサーガ)無差別型
  未だ心揺れ動くも、迷いを振り払うようにて襲ったジョナサン達を一度は追い込む。
  しかし、次々と現れる救援に次第に劣勢となり、シャギアに追い詰められ、辛くもこれを脱する。
  だが彼の不運は続く。逃げ延びた地下道で休憩中を襲われガウルンに捉えられ、半ば強引に協力を関係を結ばされる。
  その後も襲い掛かっては肩をはずされたりとまさに踏んだり蹴ったりの男である。

56 :アルフィミィちゃんの観察日誌:2008/09/29(月) 19:38:48 ID:07ECalLL
●竜馬(???/???)
  生死不明。AI1を介してゲッター線に取り込まれている。
・流 竜馬★(大雷凰)無差別型
  元の世界に戻り隼人や早乙女博士を殺すためマーダーとなる。
  体も機体もぼろぼろの状態で基地にたどり着き、ベガ・ユーゼスと死闘を繰り広げる。
  しかし、ユーゼスの駆るメディウス・ロクスに一歩及ばずその身はAI1を経てゲッター線に吸収されることとなった。
  現在状況が全くの不明。主催者サイドであるアルフィミィでさえも死亡したものと思い込んでいる。

以上、時系列順に二十二名の紹介と状況説明を終わりますの。

57 :それも名無しだ:2008/09/29(月) 19:42:35 ID:AOb8lHOn
観察日誌作成GJ!
どこのパートも今後が気になるなぁ

58 :それも名無しだ:2008/09/29(月) 19:43:12 ID:07ECalLL
遅くなったけど観察日誌投下終了。
流れちょん切ってしまって正直すまんかった。

>>48
ロジャーよりくっついていってるソシエのほうがまともな交渉しそうな気がして仕方がないw
ナデシコ組とJアーク組の和解はなるんだろうか心配だ。

59 :それも名無しだ:2008/09/30(火) 00:22:53 ID:tQmCq/P2
観察日記乙です
あと>>55のガロードの機体はF91ではなくストレーガですね

60 :それも名無しだ:2008/10/05(日) 15:43:04 ID:0FZfSV09
保守

61 : ◆YYVYMNVZTk :2008/10/07(火) 22:34:10 ID:0I3tIY7a
さすがに過疎っぷりに焦ってきたので景気づけの意味も込めてシャギア、甲児、比瑪、バサラ、ガロード、クインシィで予約します。
ぶっちゃけた話、プロットだけは出来ているものの執筆自体はまったく手をつけてないような状況なので、書けたところまでで投下、という中途半端なことになってしまうかもしれませんが……

話は変わりますが、したらばにネタ出しスレでも作ってみようかと思うんですがどうでしょう?
何か書きたいけどネタが浮かばないという人や、ネタはあるけど上手く文章に落とすことが出来ないという人もいると思うんです。
スレが動いていない今の状況だと過疎化が進むだけだろうし、なんらかの刺激を与える必要があるんじゃないでしょうか。
というか、どうせならネタ出しスレの賛否についてだけでなく、スレを良い方向に持っていくための色んなアイディアを住人同士で出し合ってみたいんですけどいかがでしょう?

62 :それも名無しだ:2008/10/08(水) 21:07:51 ID:BPNdfEb7
三週間ぶりの予約キター!!
ネタ出しスレは賛成は賛成なんですが

・出したからといって必ず書かれるわけではない(スルーされても泣かない)
・出したネタを元にして展開が変わることがある
・密かに隠してたネタを先に出されても文句を言わない

なんかこのへんはっきりさせとかないともめそうな気がしないでもない

63 : ◆YYVYMNVZTk :2008/10/10(金) 01:25:17 ID:PuAqcGwj
ネタはあるけど文章に落とせない……書きたいのにネタの神様に見放されてる……
ここはそんな人たちのためのスレです
丸々一話分のプロットからクスリとくる小ネタ、没ネタのリサイクルなどネタ投下に関して特に決まりはありません、好き勝手やっちゃってください
ただし、ネタを出したからといって必ず書かれるわけでもなく、少し形を変えて利用される可能性もあるということを忘れない、秘蔵のネタを出されても泣かない
以上のルールが守れる人だけ自己責任で利用してください


ネタ出しスレ、こんな感じで立てちゃおうかと思ってるんですがどうでしょう?
ネタ潰しの側面もあるんで、賛否についてはもうちょっと聞いておきたいんですけどねー
特に書き手の皆さんに

64 :それも名無しだ:2008/10/10(金) 10:50:33 ID:fQy8Fdv3
執筆と並行してのテンプレ作成乙です
テンプレについてはそれで大丈夫だと思います

盛り上げるための案ですけど、書き手さんにモチベーションを上げてもらうために以前にもやった感想大会やるのもいいかなと思ったり
作品一つ一つではなく、書き手に注目して感想をつけるってのは書き手さんとしても嬉しいだろうし

65 : ◆YYVYMNVZTk :2008/10/12(日) 00:55:11 ID:wbTpncWO
本っ当に申し訳ないのですが、予約期間延長してもよろしいでしょうか……orz
明日(というかもう今日ですね)急用が入り、執筆時間が確保出来なくなってしまいました。
月曜日を執筆に充てれば多分SSの形には纏めれると思うので……なんかもう御免なさい。

66 :それも名無しだ:2008/10/12(日) 08:39:48 ID:8iMGyU5J
予約延長大丈夫だと思いますよ
投下楽しみにお待ちしてます

67 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:29:48 ID:Z9ECRAgB
目前の二人が不穏な空気を撒き散らしていることに関して、兜甲児は頭を悩ませる。
どうやらここに連れてこられる前からの知人ではあるらしいのだが、その関係は良好というにはほど遠いようなものだったらしい。
ガロード=ランという少年はシャギア=フロストという人物に対して大きな思い違いをしているのではないか、というのが甲児の正直な考えだった。
年上の人間に対してこんな感想を持つのは失礼ではあるのだろうが、シャギアは、その……
頼りにはなる。ノリも良く、親しみやすい。親戚にこんな兄ちゃんがいれば、さぞ楽しかったことだろう。
だが……どう見たって悪役というキャラではない、むしろ三枚m(ry と、甲児はそう思う。
実はガロードが勝手にライバル認定しちゃって追っ駆け回しちゃってるんじゃないかしらんとまで思っているのも甲児だ。

まぁ、そんな邪推はどこかに置いておいてだ。
この険悪な空気は甲児も好むところではない。出来れば和やかな雰囲気の中ガロードとも仲良くやっていきたいのだが……
と、そのとき甲児の頭上で電球が輝いた。
ポン、と手を打ちながら二人にこう話しかける。

「まぁまぁ二人とも、あんまり喧嘩腰になるのも良くないって。
 こんなときはやっぱり……」
「やっぱり?」
「レッツゴー・ゲキ・ガンガー3!」



  夢が明日を呼んでいる

        魂の叫びさレッツゴーパッション



「うおおおおおおお! ゲキ・ガンガー!」
「いいのかね甲児君? 確かもう13話まで視聴完了していたはずだが……」
「何言ってるんだよシャギアさん、名作ってのは何度見ても俺達の心を震わせてくれるんだ!
 それに、最初から見ないとガロードだって話についていけなくなっちゃうじゃないか」
「フフ、それもそうだな。……というわけだガロード=ラン。なに、気にすることはない。
 ゲキガンガーの熱いパッションが私たちの間の些細な問題など吹き飛ばしてk(ry

ダン! と、ちゃぶ台が揺れた。
湯飲みからこぼれた茶が手を濡らしたことにも気付かず、物凄い形相でシャギアを睨みつけるガロードがそこにいた。
「……別に、あんたたちのやり方に反対するわけじゃない。いや、俺だって本当ならその輪に入ってたと思うよ。
 でも……! やっぱり俺は、あんたを信用できない。あんた達兄弟を信用できないんだ」
まっすぐ見つめてくるガロードの視線をそのまま受け止め、シャギアは先ほどまでのテンションとは打って変わって真剣な表情で言葉を返した。
「君の言い分はよく分かる。……私も、少々羽目を外しすぎたようだな。
 ここからの私はシリアスモードだ。それでは……積極的情報交換、といこうか」

甲児が一人、気まずい思いをしていたのは言うまでもない。

 ◇

改めてちゃぶ台に座りなおし、二人は茶をすすりながら話の切り口を探していく。
まず動いたのはガロードだ。

「まずはじめに確認しておきたいのは、あんた達兄弟がどう動くつもりなのか、ってことだ。
 これを聞かないことには情報交換をするわけにもいかないからな」
「ふむ、それについてだが……少なくとも、今のところは君が邪推しているような物騒な考えは持ち合わせていない。
 私は……いや、私たちは生きて帰ることが出来ればそれ以上を望むつもりはない。
 少なくともこの点に関しては君とも協力できると思うのだが……どうかね?」
「……確かに一人しか生き残れないっていうんなら、あんた達がこの殺し合いに乗るという選択はないのかもしれない」
「分かってくれたのなら何よりだ。さて、早速情報交換と……」
「でも、だ」

68 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:30:48 ID:Z9ECRAgB
と、ガロードはそこで一旦言葉を切り、甲児のほうをチラリと見た。
ガロードの懸念は、甲児の存在だ。
甲児は今のところ、フロスト兄弟のことを全面的に信用し、微塵も疑っていないようだ。
もし本当にフロスト兄弟がおとなしく協力するというのならば、これ以上シャギアの本質に踏み込み、甲児に要らぬ悪印象を与える必要はない。

「いや……やっぱりいい。先に話を進めよう」
「ああ。それではまず、クインシィのことについて教えてもらおうか。私としても見ず知らずの人間を艦に乗せておきたくないのでね」
「でもシャギアさん、あの人は比瑪さんの知り合いらしいぜ? 気を失ってるあのお姉さんの看護を自分から申し出るくらいだ、全く信用できないということはないと思うけどな」
「確かにそれはそうだが……こんな場所だ。ストレスの過負荷は精神の異常を引き起こす。ここは現在のクインシィについても聞いておく必要があるだろう」

戦闘の終了後もクインシィは目を覚まさなかった。今は格納庫から発見された身元不明の男と共に、医務室で寝ている。
二人の看護は比瑪がやると申し出、二人が起きてきた場合危険が伴うとの反対意見も出されたが、ペガスを緊急時の備えとすることで話は決着した。

「お姉さんは……確かに短気なところもあって、気難しいところもあるけど……大丈夫だ。俺が保証する」
「どちらにしろ、私がこの目で確かめるつもりではあったが……いいだろう。彼女が意識を取り戻すまで、ナデシコで保護することを約束する」
「ってわけだ。だからそんなに心配するなよガロード。このナデシコの中にいればどんな奴が襲ってきたって平気だって!」

ひとまずクインシィと自分の身の安全を確保し、ほっと一息つくガロードであった。
しかしまだ気は抜けない。相手はさんざフリーデンを苦しめ、ティファを付け狙ってきたフロスト兄弟の片割れ。
この非常事態のさなかで何かしらの行動を起こすかと言われれば、決して否定出来ないのもシャギア=フロストだ。
元の世界に戻る算段さえあれば、混乱に乗じガロードの殺害を目論む……ということも十分に考えられる。
シャギアが身の安全のためにクインシィの安全性を確かめるように、ガロードもまたフロスト兄弟の危険性について再度知る必要があった。

「それでシャギア……今、オルバはどうしてるんだ? さっきの口ぶりだとオルバとも合流してたみたいだけど……?」
「……フフ、弟の心配をしてくれているのか? あれでなかなか可愛げのある弟だ。そう思ってくれたことに対して悪い気はしないな。
 オルバには今、フェステニア=ミューズという少女と共に別行動を取ってもらっている。別行動の理由については後々の情報交換の際に教えるつもりだ。
 一つヒントを出しておくと、はぁとまぁくな話題……といったところか。いや、これではヒントではなく殆ど答えになってしまっている……なぁ、甲児君?」
「ちょっとちょっとシャギアさん、この手の話はもっと引っ張っておかなくちゃ!w ガロードには秘密にして二人でニヤニヤしたかったのにさ!」

……甲児と和やかに笑い合うシャギアの姿を、ガロードはどことなく白けた目で見ていた。
ここには、厄介な敵だったフロスト兄弟はいない。……もしかして、これがヘイコン世界ってヤツなのか?
いやいや、そんなことはないはずだ。きっとこれも周りを騙すための演技のはず……多分。

「ま、まぁオルバが無事だってんならそれでいいさ。それじゃようやくだけど、情報交換といこうか」
「共有しておきたい情報は、それぞれの接触者の情報と、ここまでの道程だ。それと……“これ”についても、何か知っていること、気づいたことがあれば教えてもらいたい」

そう言ってシャギアは自分の首筋を指さす。“これ”とは首輪を示す代名詞。
首輪がここからの脱出の一番のネックになるということは、ガロードだって気づいている。
軽く頷くと、まずはシャギアの言葉の前半部について話し始める。

69 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:31:48 ID:Z9ECRAgB
「俺が最初に会ったのはお姉さんだ。お姉さんは俺の前にも誰かと会ってたみたいだけど……これはお姉さんが起きてから聞いてくれ。
 場所はB-1で、その後周囲の探索をしている途中で、ギンガナムが乗ってるガンダムが……」
「ギム=ギンガナムのことか? 二回目の放送でその名前が呼ばれていた」
「ああ、それだ。んで、そいつがいきなり襲いかかってきて戦闘になって……あっ! あいつ……! どこかで見たことがあると思ったら、あの時仕掛けてきた機体か!
 ついさっき戦闘した、剣を使うあの機体、あれが戦闘に割り込んできたんだ」
「やっぱりさっきの奴は、この殺し合いをやる気なヤツってことなのか?」
「……それは分からない。あいつは、なんというか……確かにやる気なのかもしれないけど、決してそれを望んでない。どこか諦めてる感じがする」
「それは仕方のない選択とも言えるだろう。あのような超常の力を持つ異形に歯向かうというのは、一歩間違えればただの無謀にしか過ぎない」
「確かにそうかもしれないけど……でもさ、俺は分かってほしいよ。無理だと諦めてちゃ出来ないことは世の中にはいっぱいあるけど、やろうと思って出来ないことは、俺たちが思っているよりもずっと少ないってことをさ」

二度の戦闘を交わした相手に対して、ガロードは何かを期待していた。もしかしたら、あの少年はまだやり直せるかもしれないと。
人は変われる――成長することが出来るということを、ガロードはフリーデンでの長い旅路の中で知った。
例えば自分の殻を破り、外へ向かって歩き出した少女のように、或いは自らの過ちを知り、その贖罪のために街に残った少年のように。

「……現実的ではないn「教えてやれるさ! やろうと思って出来ないことは少ない、なんだろ?」

シャギアの否定の言葉を、甲児の陽気な声がかき消した。
甲児の能天気な言葉に内心苦笑するシャギアだったが、太陽のような、と形容するのが相応しい甲児の人柄は人を集める船の艦長としては最適である、とも考えている。
だからここは強く言い下がらずに、甲児に賛同しておくことにした。
ただでさえガロードとの内輪話についていけてなかった印象もある。無下に扱うことで甲児の発言力を奪っているとガロードに勘違いされては要らぬ誤解の種になりかねない。
シャギアはそう考え、甲児の言葉にガロードが強く頷き、話の続きを始めるまで沈黙する。

「次に会ったのが神隼人さん。お姉さんが乗ってたゲッターロボと同じ世界から連れてこられた人で、俺たちにゲッターの扱い方を教えてくれた。
 だけど……青い機体が接近してきた途端、お姉さんが急に暴れ出して、そのままなし崩し的に戦闘になっちまった。
 その途中で竜馬とかいう隼人さんの知り合いも混じってきて、俺とお姉さんはその場を神さんに任せて戦線離脱」

神隼人――それもまた、二回目の放送で呼ばれた名前だ。ガロードの顔を見れば、何があったのかそれなりには推測できた。

「そして逃げている途中で、今度はジョナサン――さっきお姉さんを守って死んだ、あの男――と会ったんだ。
 その後、俺はジョナサンが乗ってたガンダムに乗り換えて、隼人さんを助けにB-1へと再び向かった。
 今度はギンガナムとブンドルってお兄さんが戦ってるのに出くわして、まぁその場はブンドルが丸く収めたんだけどね」
「ギンガナムを殺した――のか?」
「いや、違う。なんと……説得でギンガナムを味方に引き込んだんだ。で、俺は二人と別れて、ようやくB-1に到着。
 そこでブンドルの仲間のアムロさんと会って、機体をアムロさんと交換して、アムロさんはマシントラブルでその場に残って俺だけお姉さんの救援に向かって……その後は知ってのとおりさ」

ガロードの話を聞き、シャギアは冷静に戦力を計上する。
こちらの仲間となってくれそうな人物はブンドルとアムロの二人。
同行しているはずのギンガナムが死亡していることからブンドルの安否が気遣われるが、ガロード曰く相当の戦闘狂であるらしいギンガナムの説得に成功したという手腕から判断するに、相当に能力の高い人物であるらしい。
ブンドルに関してはあまり心配する必要もないだろうとシャギアは考える。
アムロについては、合流も容易であるようだし、合流後に詳しい話を聞くつもりだ。
そして、敵対者。先程戦闘となった剣を使う青い機体は、今後もナデシコの敵になる可能性が高い。
戦闘力ならばナデシコの敵ではないが、ガロードと甲児はなんとか味方にしたいと考えているようだ。ナデシコの大火力で戦うのは難しいだろう。

70 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:32:34 ID:Z9ECRAgB
「それでは今度はこちらの話をしよう。まず私とオルバは、初期位置が近かったことが幸いし、かなり早い段階で合流することができた。
 その後は甲児君と比瑪と合流。最初は微笑ましい勘違いもあったがね、今は見ての通りの仲だ。
 二人と合流した後は、ある艦と戦闘を行った。――君たちが同行していたジョナサン=グレーン操るJアークとだ」

シャギアの言葉に、ガロードは目を丸くする。ジョナサンは――そんなことは言っていなかったはずだ。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! ……その時、キラって奴は?」
「勿論いた。……私がクインシィを信用できないと言った理由が分かったか? ジョナサンが限りなく黒に近いからといってクインシィまで黒と見るつもりはない。
 だが、ジョナサン=グレーンが私たち……正確には、ジョナサンのことを知る比瑪のことを襲ったという事実は覚えておくことだ」
「まぁまぁシャギアさん、あの時は誰も怪我もなにもしなかったし、過ぎたことは一旦忘れようじゃないか。
 ジョナサンは別として……俺、ガロードのことは信用していいと思ってるんだ」
「ありがとな、甲児。……話を続けてくれ」
「その後しばらく、他の参加者との接触はなかった。……いや、正確にはなかったと考えていた、というべきだろうな。
 ある戦闘の跡地にて使えそうな機動兵器を発見したため、ナデシコに回収した。ちなみに他にあったものは大破した巨大な機体と死体が一つずつだ。
 ……実は、回収した機動兵器の中には気絶した参加者が乗り込んでいた。クインシィと共に医務室で眠る男がそれだ。
 いやはや、延々と眠り続けるあの男がここまで生き残れたのはまさに幸運というほかないだろうな。
 そして、次に遭遇したのは――ミスマル=ユリカの乗る無敵戦艦ダイ一派とキラの操るJアーク一派、それに謎の黒いガンダムを加えた大乱戦だ。
 結果としてミスマル=ユリカは死亡し、ダイは大破。Jアークに属するものも二人ほど死んだようだ。
 テニアの話によれば、Jアークに乗るものはキラ=ヤマトとソシエ=ハイムの二人とのことだ」
「まぁ、テニアを仲間にできたし、悪いことばっかりじゃなかったぜ。肝心のJアークがどこに行ったのかは分からないけど……」
「そのことについて話しておきたいことがある。今まで私だけのヒ・ミ・ツ☆ だったわけだが……実は、ロジャー=スミスがJアークを追っている」
「ロジャーって……あの場所で一番目立ってた全身真っ黒の男か!?」
「ちょっとシャギアさん、さっきはそんなこと言ってなかったじゃないか!?」
「元々いつまでも秘密にするつもりはなかったのだがな。ひとまず、放送でロジャーの生存も確認したことだし、皆にも知ってもらうことにした。
 ネゴシエイターと言っていたか、あの男は。おそらくは、Jアークに対して交渉にいったのだろう。豪気な男だ」

驚く二人を尻目にシャギアは更に言葉を重ねていく。

「その後は特に大きな事柄もない。放送を迎え――さっきの戦闘だ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。ということはつまり、ロジャーはいまJアークと一緒にいるってことなのか?」
「交渉人が本当にJアークを追いかけていったのかどうかは私にも分からない。だが……九割方そうなっているだろうとは考えているがね」

と、ここでシャギアは話すのを止め、少々考え込む。
その間に、ガロードと甲児は今後の行動について話し始めた。

「それでガロード、この後どういう風に動くつもりなんだ?」
「ひとまずはお姉さんとアムロさん待ち……かな。三人揃ってからどうするかはまだ考えてない。
 やっぱり、“これ”をどうにかしないといけないんだろうけど、どうすりゃいいのか全く分からないしな……」
「こっちも“これ”については全然だなぁ。一応ナデシコには設備も揃ってるみたいだし、どうにか出来ないこともないんだろうけど……
 専門の人がいないんじゃ、下手に弄るのも危ないだろうしな」
「アムロさんはそういうのに強いって感じの口ぶりだったから、ちょっと期待してもいいかもしれないぜ。……まぁ、俺らが役に立てそうにないのは変わらないんだけどな」

首輪について頭を悩ます二人だった。残念なことに、二人とも機械系の専門知識は持っておらず、どちらかといえば頭より体を動かすタイプの人間。
ガロードにはアムロという心当たりがあるものの、アムロでさえも手を出せないような複雑なものだとしたら本当にお手上げだ。

71 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:33:21 ID:Z9ECRAgB
「私もチャレンジはしてみるつもりだが……分不相応ということも分かっている。他に役者がいるならばその役は彼に譲るのもやぶさかではない」
「そんな言い方は他人任せみたいで嫌なんだけどな……でも仕方ないか。俺たちは俺たちに出来ることをやればいいんだ」
「そうそう、適材適所ってやつさ。それでシャギアさん、ちょっと考え込んでたみたいだけど何か気になることでもあったのかい?」
「私たちが他の参加者をどれだけ把握しているのかを考えてみた。甲児君には二度目の話にはなるのだが……最初のあの場所にいたのが50〜60人といったところだろう。
 そこから放送で名前が呼ばれた者たちの数を引けば、残りは20〜30人といったところ……更にこのナデシコを中心に確認したものを数えていく。
 私、オルバ、甲児君、比瑪、テニア、眠り男、キラ=ヤマト、ソシエ=ハイム、ロジャー=スミス」
「俺が会ったうち、まだ生きているのが……俺、お姉さん、ブンドル、アムロさん、それにあの剣を使う機体の持ち主か。あ、さっき言い忘れてたけど、アムロさんがアイビスって女の人を探してるらしいんだ。
 何かてがかりみたいなもの……ないかな?」
「残念ながら。既に死亡したジョナサンを加えれば、放送時点で生きていたと思われる参加者の半数は私達で確認できているわけか……
 逆に言えば、未だ把握できてない参加者も少なくないということだがな」
「それについてはオルバさんとテニアの二人に期待しようぜ。あの二人がもっと仲間を集めてくれれば……きっと、大丈夫だ」
「きっと大丈夫か……フフ、甲児君が言うと、何故か不思議な説得力があるな。これが艦長の器というものか」
「やだなぁシャギアさん、あんまり褒められると俺困っちゃうぜ」

三人はさらに情報を交換する。……とはいっても、ここから先は他愛もない、世間話に近い……いわゆる自己紹介である。
遅まきながら、と三人は互いの紹介を済ませ、ナデシコメンバーの人となりについてあーだこーだと話していく。

と、その時だった。艦内スピーカーから、助けを求める比瑪の声が聞こえてきたのは。

「……! シャギアさん、ガロード! 俺が行ってくる!」
「一人で大丈夫なのかよ?」
「こう見えても俺、結構強いんだぜ? 心配するなって!
 ……だからさ、シャギアさんとガロードも、俺がいないうちに話したいことは話しておいてくれよ。それじゃな!」

そう言うやいなや、甲児は医務室まで駈け出して行った。シャギアの無茶をするなという声も聞こえたのかどうか。
――残された二人は、顔を見合って沈黙。互いに最初の切り口を探していく。

「……」
「……せっかく甲児君が用意してくれた機会だ。話したいことがあるなら話してみればどうだ?」

シャギアのことを知らぬ者には何気ない言葉に聞こえるかもしれない。だが、ガロードとフロスト兄弟の因縁を考えれば、ある意味挑発ともとれる口ぶりである。
対するガロードは……


【ガロード・ラン 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:C-8市街地(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:シャギアと話をする
 第二行動方針:アムロと合流する
 第三行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好、テニアを警戒
 機体状態:EN55%、各部に損傷
 現在位置:C-8市街地(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:ガロードと話をする
 第二行動方針:人気がなく見晴らしのいい場所へ移動
 第三行動方針:首輪の解析を試みる
 第四行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める
 第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。
 備考2:首輪を所持】

72 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:34:07 ID:Z9ECRAgB
 ◇

こうしていれば依衣子さんも優しい顔をしているのに、というのがクインシィの寝顔を眺めての比瑪の感想だった。
いつだったか、直子おばあちゃんの家でもそっくりの寝顔を見たことを思い出す。やっぱり姉弟なんだということを実感。
いつも浮かべていた険しい表情は消え、安らかさに彩られた綺麗な顔はより一層美しく見える。
口ではあんなことを言っているけれど、きっと世界で誰よりも弟のことを気にかけてる優しいお姉さん。

「こんな依衣子さんだから……ジョナサンさんも命をかけたんだろうね」

ポツリと呟いて思い出すのはジョナサン=グレーンのことだ。クインシィのために命をかけ、死んでいった男。
アノーア艦長の息子で、勇の知り合いで、オルファンのリクレイマー。よく考えれば、ジョナサンについて比瑪が知っていることはとても少なかった。
ノヴィス・ノアにジョナサンが潜入してきた時も、比瑪は殆どジョナサンの顔を見ていない。
あの後のアノーア艦長の様子やみんなの噂を聞いて、そのときの様子はなんとなく知ったけれど……
今になって、もっとジョナサンのことを知りたかったと思う。
きっと、みんながお互いのことをよく知って、そして今より少しだけ優しくなることが出来れば、不幸せなことは減って、その分幸せなことがいっぱい増えるのに。
でもそれはとても簡単で、とても難しいということを比瑪は知っている。
ただ言葉にするだけで叶うことではないと分かっていたから、比瑪はノヴィス・ノアに乗ってブレンで戦っていたのだ。
戦わなければ変えられないのなら、戦うことも辞さないのが比瑪の強さでもある。
戦いが不可避でもあるということを知っているから、争いが何もならない無意味なものであるということも知っている。
自分の意志で戦うということは、戦いたくないという意思とは決して相反しないのだ。

「やらなくちゃ、私に出来ること」

比瑪が決意を固めているその時、医務室のベッドの一つが動き始めたことに比瑪は気づいていなかった。
気づいたのは、うめき声のような、声にならない声がし始めてから。

「もしかして……目が覚めたの?」

振り向いたその瞬間――既に男は比瑪の目前にまで迫っていた。
声をかける前に、男に腕を掴まれた。握る力は強く、男性を感じさせる。
握る力はだんだん強くなり、比瑪に痛みを感じさせ始める。
半ば反射的に、比瑪は手近にあった艦内スピーカーのスイッチを入れ、助けを呼ぶ声を上げた。
比瑪の力では男の力に対抗できない。必死にもがき、なんとか振りほどこうとする。
甲児かシャギアが医務室に来るまでどのくらいかかる? 走れば五分とかからない。それまでなら多分持ちこたえられる。
比瑪はその時必死で、混乱していた。だから甲児が来るその時まで気づかなかったのだ。
男のうめきは、助けを求める声にならない叫びだったことに。比瑪に縋ろうとするあまり、つい手に力が入りすぎてしまっただけだということに。

「比瑪さん、大丈夫か!?」

甲児が男のもとに駆け寄り、豪快に投げ飛ばす。そのとき、宙に飛んだ涙を見るまで、比瑪は気づかなかった。
だけど、ようやく気付いた。自分が本当にしなければいけなかったこと。

「良かったぜ、なんとか間に合って……まったく、なんて奴だ。起きるなり比瑪さんを襲うなんて……」
「違うの。きっとこの人は……助けて欲しかっただけ」
「へ?」

自分が本当にしなければいけなかったこと。自分が出来ること。
その両方に、いっぺんに気づくことができた。
それは、手を差し伸べることだったのだ。
男に手を差し伸べ、比瑪はこう言う。

「ごめんなさい、気づいてあげられなくて。でも、もう大丈夫よ。うん、大丈夫。私が、みんながいる。
 そうだ、起きたんだからあなた何かしたいでしょう? そうね……まず立ってみよう。立ってから考えましょ。
 この手に掴まればきっと立てるわ。だからあなたは大丈夫」

73 :適材適所 ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:34:55 ID:Z9ECRAgB

【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好
 機体状態:EN70%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:とりあえず状況を把握する
 第二行動方針:ヒメ・フロスト兄弟と同行
 第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
 機体状態:EN70%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:バサラを助ける
 第二行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
 最終行動方針:主催者と話し合う
 備考:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容】

【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声不可、顔に落書き(油性マジック)、混乱
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:新たなライブの開催地を探す
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積 、胸に裂傷(中)、ジャガー号のコックピット破損※共に再生中
 現在位置:C-8市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている
 現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ格納庫内)】

【二日目8:30】

74 : ◆YYVYMNVZTk :2008/10/14(火) 13:37:08 ID:Z9ECRAgB
というわけで長らくお待たせしてしまいすいませんでした。
今回は復習多めということで新展開・新フラグ自体は少なめです。というかぶっちゃけた話中盤までは見なくても支障がないような(ry
誤字脱字、矛盾点などの見つけられましたらご指摘お願いします。

75 :それも名無しだ:2008/10/14(火) 13:54:35 ID:a8Lp0Xip
投下乙です
シャギア兄さんがなにやらギャグキャラからシリアスに変身できそう
そして遂に眠り男が目覚めたがこの後また寝たりしてw

76 :それも名無しだ:2008/10/14(火) 16:07:29 ID:90zn5SEi
投下乙です
バサラが起きたか、さて声が出ない事に対しどう思うか…
シャギアはシリアスとギャグを上手く使いわけるなぁ
そして甲児のシャギアに対しての評価に地味に吹いたw

77 :それも名無しだ:2008/10/14(火) 22:54:44 ID:XowOBKj/
投下GJ!
前半の兄さんと甲児に思いっきり笑ったw
13話視聴済みって甲児休憩時間全て視聴に当ててないかw
目覚めたバサラと寝ている姉さんはどう作用していくんだろうな
姉さんが代わりに眠り女になったりして…

78 :それも名無しだ:2008/10/16(木) 13:26:42 ID:38hbIA8Z
しかし、これでシャギアとガロードが和解出来たら対主催集団の結びつきもかなり強くなるな
もしかしたらロジャーが交渉成功するかもしれないし、そしたら基地組除く対主催全員が協力関係を結ぶことになる

79 :それも名無しだ:2008/10/16(木) 13:28:53 ID:kjbM6lMy
>ロジャーが交渉成功
それはないw

80 :それも名無しだ:2008/10/16(木) 21:27:08 ID:Hhl4FtQB
>>79
ロジャーさん舐めんな、原作じゃそこそこ交渉成功してますぜ
最終話だって!
うん、それとロワとはまた別の話ですよね

81 :それも名無しだ:2008/10/16(木) 21:32:48 ID:vAKaseun
真面目に読んでたのにバサラの顔の落書き思い出した途端最新話の後半までギャグになってしまったw
シリアスパートなはずなのにおそるべしシャギア兄さんの落書きwww

基地組はずっと基地周辺をうろついてるだけだから他と接点薄いんだよね
しかも大激戦区だからドンドン数が減っていくし

82 :それも名無しだ:2008/10/17(金) 00:51:22 ID:ljomyklc
ロジャーさんの話題が出たので、自分なりに作中の交渉結果を纏めてみた。
まとめサイトは見直したはずだけど、もし抜けや不足があれば指摘してください。


アルフィミィ:×
まともな交渉を行う事も出来ずに、問答無用で殺し合いスタート。

リリーナ・ドーリアン:○
リリーナに戦意が無い事もあって、友好関係を築き上げる事に成功。

九鬼正義:×
騎士凰牙! ショータァーイム!!

神名綾人:△
まだ説得を行ってはいたが、アキトの強襲で綾人死亡。
綾人にも迷いはあったようなので、いちがいに交渉失敗とは言えない。よって、無効にカウントとする。

ミスマル・ユリカ&テンカワ・アキト:○
お互いに意見の相違はあれど、敵でない事は分かり合う事が出来た。
その後も友好的な関係を構築する事が出来ていた訳だし、まあ概ね良しと言ったところだろうか。

相羽シンヤ:×
……これは、相手が悪過ぎた。説得無理、絶対無理。

キラ・ヤマト&ソシエ・ハイム&フェステニア・ミューズ&巴武蔵&マサキ・アンドー:×
ジェイアーク組との初交渉。ガウルンが余計な事をしてくれたせいで、ファースト・コンタクトは大失敗。

キラ・ヤマト&ソシエ・ハイム:○
ユリカの事に関する、キラやソシエの誤解を解く事に成功。やったね、さすが交渉人だ!!

ソシエ・ハイム:×
ソシエの押しに抗い切れず、凰牙の同乗を渋々認めざるを得なかった。
ロジャー……女に弱いな、やっぱコイツは……。

成功:3
失敗:5
無効:1

83 :それも名無しだ:2008/10/17(金) 01:00:48 ID:Kt7Z0ebP
乙!
個人的にはリリーナとの交渉はリリーナ○―×ロジャーかな
あれはどっちかと言うとリリーナの確固たる信念にロジャーが陥落されたような気がする
維持の張り合いに負けて機体からも引きずりおろされたしw

84 :それも名無しだ:2008/10/17(金) 14:41:59 ID:BSxwWeLF
ネタ出しスレ、とりあえず立ててみたので告知ですー
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/30868/1224173797/

85 :それも名無しだ:2008/10/20(月) 13:10:24 ID:9ueSgzHg
比瑪の優しさにほれました。

86 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/23(木) 20:33:22 ID:ezrk1WuS
アルフィミィとノイ・レジセイアを予約します。
出来るだけ避けたいですが、かなり難航しているので場合によっては予約破棄するかもしれません。
レジセイア難しいッス…。

87 :それも名無しだ:2008/10/23(木) 20:55:37 ID:td8RE//m
ここで主催陣予約か……ついに裏側というか秘密にされてた部分が明かされるんだろうか?
執筆ファイトー

88 :古よりの監査者 ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/28(火) 20:21:13 ID:LZBG1EJB
星の砂を撒いたかのような明るい宇宙に、巨大な球体が大小一つずつ浮かんでいた。
他の氷の結晶に薄い色をつけたような天体とは明らかに異なる物体。
その小さいほうの名はネビーイムと言った。
ある世界において地球を襲い、数多くの人間の運命を狂わせた白き魔星。
その中枢へと一人の少女が足を踏み入れた。
本来の主であるレビ=トーラ。その少女の緋色とは対照的に蒼い髪を棚引かせた少女――アルフィミィ。
現在、このネビーイムを掌握しているのは彼女であり、ジュデッカの代用品としてその中枢に据えられているのはデビルガンダムである。
そのデビルガンダムとネビーイムの再接続を行ないつつ、アルフィミィは悩んでいた。

「やっぱりネビーイムを使ってはいただけませんの……」

このネビーイムは本来『箱庭』の管理の為に用意したものではない。
崩れ行く主の体。その代わりとして、ある世界から持ってきた物だ。だが、主は使ってはくれなかった。
主の身体は弱っている。
かつて、全宇宙の命運を賭けた一つの大戦があった。
その戦いの最中、激動の地上を征し、激震の宇宙を切り抜け、決戦の銀河にて主の前に立ちはだかった者たちがいたという。
始まりの地で生まれ、宇宙へと広まっていった命の種子……禁断の知恵の果実を口にし、欠陥の生じた生命体。
人間。
その戦いに主は勝利した。だが同時に深い傷を負い、その力の大半を失った。
新たなる宇宙、完璧なる生命を生み出す力は残されておらず、この閉じた空間に引篭もり長い眠りにつく他なかったのだと聞く。
しかし、時は傷を癒してはくれなかった。どれほどの時を治癒に当ててきたのか、アルフィミィは知らない。
だが、悠久の果てとも言うべき長き時間を眠りに費やしてきたのだということは、分かる。
その膨大な時間は主の体に化石化を起こさせ、身体の自由を奪った。現在この空間に潜んでいる主は傷ついた体のまま、指一本動かすことすら出来ずにいる。
だから、だ。だから私が生み出された。
ただ使役されるだけではなく、主に頼ることなく自立的に判断し行動することの出来るアインスト。
その最大の目的は、新たな身体の憑代となるべき身体を手に入れることだと、アルフィミィは理解している。
その目的に沿って幾多の次元を渡りアルフィミィが選び出したのが、ネビーイムであった。
しかし、主はこの白き魔星を使ってはくれなかった。
理由は分からない。主の衰弱具合は、最早進退の余地がないところまできているはずだ。それは眼下に目を向ければ嫌がおうにでも分かる。
そうこの白き魔星の眼下に広がるのは、茶褐色から白の中間色を幾層にも重ねたような柄をしたもう一つの球体。
もしこれを地球圏の人間が見れば即座に木星と断ずるほど、それは太陽系第五惑星に似ている。
しかし、それは木星ではない。
実物の木星に比すれば驚くほど小さく、大気に代わって次元境界面が内外を分断している。
浮かぶ大赤斑と表層の縞模様は境界面が安定していない証であろう。
事実内包されている空間は歪に曲げられ、強引に平面を成されているが為に不安定だ。
明らかに木星型惑星とは異質の存在。異なった空間。
しかし、ある世界の住人が見ればきっとこう答えたことだろう。東京ジュピターにそっくりだ、と。
その異質な空間に正式な名はなく、ただ便宜的に『箱庭』と呼ばれていた。
それの不安定さが示している。
確かに数日保てばいい急ごしらえの空間。だが、安定しているに越した事はない。
無理なのだ。憑代に転生を行なう最後の力を除けば、その程度の力も主には残されていない。
新たな宇宙で古き宇宙を塗り潰そうとまでした存在が、もはやこの程度の空間を安定さ
せることすら不可能になっている。

「急がねばなりませんの」

『箱庭』に浮かぶ大赤斑の直上、この白き魔星――ネビーイムの中枢で、一人再接続作業を進めつつアルフィミィは呟く。
そう。急ぎ、新たなる憑代を選別しなければならない。
ペルフェクティオ、メディウス・ロクス、神聖ラーゼフォン、ゲッターロボ、そしてデビルガンダム――候補は幾多挙がっている。
だがネビーイムを超え、主の憑代たるに最適な状態でそれらを得るだけの力は、自分にはない。
だからこの宴を開いた。
自身の力でも得ることの出来る状態で集めたサンプルを、憑代たるに相応しい状態へと移行させる。
その為に弱った主の力を借り受けてまで、アルフィミィはこの宴を開いた。
だが、それはあくまで自分の目的。主は主でまた何か別の思惑があるように感じられる。
まるで何かを見極めようとしているかのような……。


89 :古よりの監査者 ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/28(火) 20:22:03 ID:LZBG1EJB
「……んっ!」

僅かな電流が背筋を走り抜ける感覚に襲われ、くぐもった声が漏れた。接続が完了した。
同時に不在の間ネビーイムに溜め込まれていた種々の情報が吸い上げられ、流れ込んでくる。
サンプルの現在位置、ここ一時間余りの大まかな行動、そして声ではなく思念。
最大時で五十名を超える人数。それぞれが発する声を同時に聞き取ろうとしようとも出来るものではなく、ざわめきと化す。
それは思念でも同じことだが、思念の方が感情の色が付き易い分直感的な判断が可能でより分かりやすい。
それに強い思念は群衆の中で声を大にして叫ぶのと同じだ。思念が強ければ強いほど声は大きく、色は明確になっていく。
だから分かる。何を考え、何を思い、人は最期のときを迎えるのか。その最期の声を聞き逃すことはない。
ゆえにアルフィミィは聞いてしまった。聞こえてしまった。自らと同じ造られた生命、人を模した生き物の最期の声を。
その声は喜びに満ちていた。その心は誇らしげに笑っていた。
自らは人間ではなく、人間になどなれぬ事を知りながら、その一方で己は人になれたのだという確信と満足感がそこにはあった。

「……うらやましいですの」

何もない中空を見つめ、ぽつりと言葉が漏れる。
素直にうらやましいと思う。
人と混ざりメリオルエッセではなくなりながらも人にもなれず、宙に浮いた足場に揺れ動き続けた者。
だが最期の最期で人になれた。少なくともそう思うことが出来た。
それがうらやましい。
そしてもう一人。誰でもない身でありながら、強烈な意思の力で自分を演じ続ける者がいる。
そういえば、私は二人目なのだとノイ・レジセイアは言った。
一人目のアインスト・アルフィミィを作成した際に、蓄積されたデータ。それを元に作られたのが自分だ。
ペルゼインの内部にいなくとも崩壊しない体。
外に出ることすら適わなかった一人目よりもより人間に近づいた存在。それが自分。
人を模したアインスト。立場は似ている。しかし、決定的に違っている。
完全な生命の失敗作。人にはなれない存在。その結論は既に一人目で下されている。
どれだけ人に近づこうとも、生まれながらに出来損ないの烙印を押されているのが自分だ。
それを考えればむしろ自身の生い立ちはあの兄弟に近いのかもしれない。
それに、と思う。それに人間にそれほどの価値があるだろうか?
人を模して造られた。だが、追い求めるだけの価値が本当に人間にあるのだろうか? いや、そもそも私は――

「……人間を求めていましたの?」

小首を傾げたその上に、特大のクエスションマークが浮かんだ。
求めていた……ような気もする。でも違うような気もする。どうにも曖昧ではっきりしない。
当然答えが出るはずもなく、所在無さ気に宙に浮く思考。そこに突然巨大な思念が流れ込んできた。

「!?」

誰かが死ぬ。閉じられた箱庭の中で誰かが今死のうとしている。
首輪を通じて流れ込んでくる巨大な思念。それは取りとめもなく様々なことを思い出し、次第に一つに纏まっていく。
それに触れ、繋がると言うことは、その者の人生を追体験することと同じことだ。その者の魂に触れるということと同義だ。
快と不快しか知らなかった感情が喜怒哀楽を理解し、複雑に分岐していく。達成感・歪んだ愛憎、怨み辛み、期待希望、妬み、野望――様々な感情が湧き上がる。
命が最期の燃え上がりをみせる。
託すべき相手を見つけ、託す。敵を捉え、侮る。しかし、火種が足りない。燃え尽きる。
時間が欲しい。もう半秒生きていたい。まだ死にたくない。自分はまだ何も為していないのだ。
その思いを突き抜け、最期に見えた姿はこうありたいと思う自分。こうあって欲しいと願った母の姿。
それがこの人の本質なのだ、と理解した瞬間――

「……また一人……逝ってしまいましたの」

――命の残り火は燃え尽きた。巨大な思念は霧散して既に跡形もない。
息が弾んでいた。白い肌は高潮して桜色に染まり、心臓の脈打つ音が間近に聞こえる。
汗でおでこに張り付いた前髪を右手でかきあげながら思った。

――慣れませんの。


90 :古よりの監査者 ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/28(火) 20:22:55 ID:LZBG1EJB
既に三十を超える数、同様のことを繰り返した。だがそれでも慣れない。
一人一人が違いすぎるのだ。同じ人間という種のくせに個々の違いが甚だしい。種族全体を統一する意識もなければ、共通の意識野も持たない。
不純物が多く、共通項が少ない。

――人間とは何ですの? 

自分達アインストはこんなことはない。ノイ・レジセイアの巨大な想念の元、一つに統率され動いている。
本当にそうか、と疑念が持ち上がる。
アインスト全体としてみれば疑う余地はない。だが、自分はどうだ?
主の目的を読みきれぬ自分。自身で判断し行動を起こせる自分。人というモノを模して造られた自分。
本当に自分は統率された意思の元で動いているのか? もしかしたら――

そこで気づいた。思考が取りとめもなく右から左へと揺蕩っている。

――おかしいですの?

少なくとも一日前にこんな考えを抱くことなどなかったはずだ。誰が生き残るのか、この無邪気な遊びを心待ちにしていたはずだ。
いつからだろう、と記憶を遡った思考が、そういえば、と別の方向に揺れる。
そういえば、エクセレン=ブロウニングは自分のことを知っていた。だけど自分は彼女のことを知らない。
ならば、何故彼女は自分のことを知っていたのだろうか? 彼女が知っていたのはもしかすると――

「一人目ですの?」

小首を傾げて発した問いに答える者はいない。答えられる者がいるとすればそれはただ二人――ノイ・レジセイアとキョウスケ=ナンブ。
だがこの程度のことで主の手を煩わせるわけにはいかない。箱庭に干渉を起こすことにおいては論外だ。
となると自分の中で結論を出す他ないのだが、答えは自身の中には存在しない。結果、疑問は宙に浮く。
腕を組み小首を傾げたままハテナマークが増え、周囲を埋め尽くしていく。そのハテナの山に埋め尽くされそうになった頃、アルフィミィは結論付けた。

「ま、どうでもいいことなのですの」

そう、どうでもいいのだ。ここ数十分の間に湧き上がってきた様々疑問。その全てがどうでもいいことなのだ。
自分が留意するべきはゲームの進行に関わることのみ。その他のことはどうでもいい。
その一方で、聞いてみよう、とも思っていた。
聞いてみよう。もしキョウスケ=ナンブが自分の前に立つことがあれば聞いてみよう。
彼だけではない。
次元を超え、自分の前で救命を訴えた男。己の生い立ちを呪い続ける兄弟。自分と同じ誰でもない身でありながら迷いなく自らを律し続ける男。
彼らには、聞いてみたいがことがある気がする。だから機会があれば聞いてみよう。そう決めた蒼の少女の顔は、どこか儚げに笑っていた。



【アルフィミィ
 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:ネビーイム
 第一行動方針:バトルロワイアルの進行
 最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】

【二日目7:45】








91 :古よりの監査者 ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/28(火) 20:23:21 ID:LZBG1EJB
理解……不能。
我は監査者……監視し、歪みや過ちを正す者。
だが、始まりの地から来た者達……言った。役割……進化を見守ることのみだったはず、と。
理解……不可能。
過ちは正さねばならぬ。混沌を正すために……『門』を開き古の記録に触れる者を排除するために……。
だが……何故。
何故、我は新たな生命を……人間を創れなかった……。
だが……何故。
何故、我は歪みを……新たな宇宙を創れなかった……。
『箱庭』……人間……変わらぬ。憎しみあい……殺しあう。問題。問題。問題……あり。
宇宙……静寂で…なければ……。憎しみあう……望んでいない……望んでいない世界……修正。
力……足りぬ。決戦の銀河にて失われたかつての力が……古き宇宙を新たな宇宙で塗り潰す力が……。
宇宙の静寂と秩序を守るために……始まりの地の者から不純物を取り除き、新たな……人間を……。
そのための……サンプル……、身体を……新たなる身体を……。


92 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/10/28(火) 20:31:11 ID:LZBG1EJB
投下終了です。
アルフィミィの変化を中心に書こうと思ったのですが、何か主催者関係について思いつくまま書き綴った感じです。
結構好き勝手書いてるので没になってもあまり後悔なかったり。
レジセイアはアルフィミィと対話させようとしてたけど挫折。
そんなわけであまり意味のない登場の仕方に……ごめんなさい。
誤字脱字、その他ご指摘のほうよろしくお願いいたします。

93 :それも名無しだ:2008/10/28(火) 23:21:36 ID:LoJ+02+M
没なんてもったいないぜ
俺としては楽しく読めたのでありの方向で
東京ジュピターと聞いてそういえばラーゼフォンいたっけと思い出したり
アヤトクン、何故殺されたし……

にしてもアルフィミィがエロ可愛いな

94 :それも名無しだ:2008/10/29(水) 00:19:36 ID:ad8j1TJ2
投下GJ!
なるほど、アルフィミィやレジセイアはこういう方向の設定か……うん、面白い
二人目がどういう変化をしていくのかがとても楽しみ
ところでアルフィミィが会いたい三つ目って誰だろ?
アキトとフロスト兄弟は分かったんだが

95 :それも名無しだ:2008/10/29(水) 00:30:22 ID:GuiQa+I7
>>94
ロジャーじゃないの?

96 :それも名無しだ:2008/10/29(水) 00:44:27 ID:ad8j1TJ2
あーなるほど
原作見てないしZもやってないからロジャーの細かい設定知らないんだよなぁ……

97 :それも名無しだ:2008/10/29(水) 21:58:44 ID:iac/3jso
多分原作だけ見てもあの設定は分からんと思う
事実俺がそうだったし
後でネットとかで設定知ってそういうことかと分かる感じだったと思う

98 :それも名無しだ:2008/11/01(土) 00:32:50 ID:YLO3m+rx
ネビーイムじゃなくてネビーイームじゃなかったっけ

99 :それも名無しだ:2008/11/02(日) 00:42:27 ID:zXhxn7zt
hoshu

100 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/11/02(日) 23:52:36 ID:EPjSbpmg
>>98
ご指摘ありがとうございます。
GBAのOG以来かれこれ6・7年間も間違ったまま覚えてました。
暇を見てwikiのほうで修正させていただきます。

101 :それも名無しだ:2008/11/03(月) 00:46:57 ID:z6812gKq
age

102 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/12(水) 16:08:21 ID:iNw+Mlxb
保守兼ねてガウルン統夜予約ー

103 :それも名無しだ:2008/11/12(水) 19:54:36 ID:dcR8dOhN
予約ktkr
マーダー師弟が動くか
統夜は踏んだり蹴ったりの状態から少しは脱出できるんだろうか

104 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/14(金) 02:31:59 ID:xGoaupqj
「――おい、起きてるか?」

洞穴の中で男の声が響く。

「食えるかどうかは知らないが、腹に何か詰めておけよ。
 腹が減って力が入らず殺されました――最高につまらない、冗談にもならない話だ」

言葉を投げかけられたのは力無く横たわる少年だ。
だが、その瞳には怒りに支えられた殺意が宿っている。
その眼光を男に向けながら、少年は答える。

「あんたは――どうするんだ」
「お前が食おうが食わまいが関係ないさ。俺は食うぜ。
 飯のときに襲ってきても、俺は全然構わないんでね」

少年の考えなど全て分かっていると言わんばかりに、挑発的に笑う男。
男の名はガウルン。少年の名は統夜。
この二人の奇妙な関係は――些か理解し難い。
二人は協力関係にある。
最後の一人になるまで殺し合いを続けるバトルロワイアルにおいて、ある程度数が減るまで協力し合う、という選択は、中途で裏切られるリスクというものを差し引いても、大変合理的なものだ。
それだけならば何の問題もない。
だが、この二人の関係の異常性は、また別のところにある。
ガウルンは提案した。
統夜が自分を殺すつもりならば――それでも構わないと。関係を解消するまで、自分からは統夜に手を出すつもりはないと。
その譲歩が二人が関係を結ぶに至った決定打なのだから、これはもう異常と――最初から破綻した同盟であるとも言えよう。
勿論、ガウルンだって、何の考えもなしにその条件を申し出たわけではない。
統夜が秘め持つ資質に気づいたからこその提案だ。
機体に恵まれたとはいえ、統夜は幾度かの戦闘を生き延びている。
その戦闘で、統夜が勝ったのか負けたのか、それは大して興味がない。
ただ注目したのは、統夜が生きている、という事実だ。
生き残ることが最上の目的であるこの場所において、生きる、ということは、何よりも難しい。
放送で呼ばれた名前の数がその証拠だ。
統夜は生き残る力を持っている。操縦技術、経験、運……それら総てをひっくるめて。
生き残るのなら――統夜は、まだまだ強くなる。
生きるために死に物狂いになることで、感覚は研ぎ澄まされ、訓練では得られない経験を重ね、劇的に成長できる。
死の恐怖を統夜が乗り越えたとき――それはそれは美味しい獲物になるだろう。
その時のことを夢想し、ガウルンは笑みをこぼす。

「……何がおかしいんだっ!」
「いやいや、ちょいと考え事をしてただけさ。……ああ、そうか。食べようにもその腕じゃあ食べられないか」
と、統夜の右肩を眺め、呟く。
「もう一度聞こう。飯は食うかい? 食うんだったらその右肩、はめてやるよ」
「食うさ、食えばいいんだろ! ……覚えてろ、あんたは絶対この俺が……!」
「殺してやる、って? その調子だ。精精頑張ってくれよ。……ほら動くな」

ガウルンは統夜のすぐ隣まで無造作に近づくと、右腕を掴み、統夜の耳元で囁いた。

「ところで……いいのか? そんな簡単に俺を信用して。お前の選択が間違いだったら……今度は肩を外されるだけじゃすまないぜ?」

統夜がガウルンを睨み返そうとしたその瞬間、ガウルンは、ぐい、と統夜の腕を肩へと捻じ込んだ。
痺れる様な痛みが一瞬の波となって襲い掛かるが、それが退いたときには、既に統夜の射程距離からガウルンは出てしまっている。

「くそっ……! 馬鹿にしやがって!」
「素直じゃないねぇ。肩をはめてやると言ったときのお前は、まるで人懐こい捨て犬みたいだったんだがなぁ」

ククク、と笑いを隠そうともしないガウルン。
その様子を見て、これ以上相手をしても体力と時間の無駄だと気づいた統夜は、支給された味気ないパンをコーヒーで流し込み始めた。

 ◇

105 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/14(金) 02:32:51 ID:xGoaupqj
「で、だ……今後どう動くのか、まずそれを決めようじゃないか。なんせ俺たちはパートナーなんだからな」

食事の後ガウルンからもちかけられた相談とは、今後の身の振り方についてだった。
今後、どうするのか――統夜も考えていたことではある。
二人になったことで、単純な戦力は倍増した。今はまだ知り合ったばかりなために無理だろうが、共闘を重ねることによって連携にも似た効率的な戦闘も出来るだろう。
とはいえ、会うもの全てに戦闘を仕掛ける――というのは利口なやり方ではない。
一応はガウルンとも協力できているわけだ。他の、優勝を目指す「乗った」人間と潰し合うのは望むところではない。
非戦闘の取り決めでもして、お互いに頭数を減らす邪魔をしないようにするのが、効率的なやり方だ。
問題はあの戦艦のようにこのバトルロワイアルそのものに反逆する者たちだ。
あの化け物に歯向かうだなんて、そんな無謀なことを考えている連中だ。
だが、今まで遭遇してきた面々を考えると、そんな人間は思っていたよりも多いらしい。
厄介なのは、彼らが次々と徒党を組んでいく――という事実だった。
時間が経てば経つほど、殺し合いに乗った自分たちは傷ついていく。
逆に、彼らはより多くの同士と結託していく――まったく分が悪い。
重要なのは戦い方だと思った。
正面から当たれば、負けはせずとも多大な被害を被ることになるだろう。
それでは最後まで生き残ることは出来ないのだ。

「なら……まずは、今までどこで何をしてきたのか……情報交換から始めないか?
 あんたが会った人間と、俺が会った人間と、全体の流れを少しでも掴みたい」

重要なのは情報。それが生き残ることに繋がる。統夜はそう考えた。

「説明はあまり好きではないんでね……重要なところだけ話して、不要そうなところはどんどん省かせてもらうぜ。
 まず、最初の放送の前に俺が会ったのは四人だ。そのうち三人は既に死んだのを確認した。カテジナ、コスモ、ギャリソン……と言ってたかな?
 まぁ、そのうち一人は俺が殺したんだけどよ」
「俺は……放送までに、赤い鬼のような機体と、白い……あんたが乗ってるようなタイプの機体に会った。
 後は……ジョシュアとアイビスって名前のやつがいた。生き物みたいな変なマシンに乗ったやつだ。放送の後にも、ジョシュアの知り合いらしいグラキエースってやつがいた。
 ……ギンガナムも、ジョシュアも、グラキエースも死んだみたいだけどさ。
 そのあとは、しばらく誰にも会わなくて……次に会った女を、俺は殺した。
 殺した後はただ気持ち悪くてさ……笑うなよ? でも、それでようやく吹っ切れた。
 そしたら青い機体に会った。そのパイロットはゲームに乗っていた。
 戦ったけど、勝負はつかなくて……それっきりだ。
 あんたと会う直前に戦ったのは、最初に会った赤い機体と、また別の黄色い機体。それと白い戦艦に白銀の機体と緑の機体。
 自分でもよく生き延びれたと思ったよ。で、あんたと出会った」

半ば自嘲気味に話す統夜を、ガウルンは面白そうに眺めていた。
――やっぱりこいつは、センスがある。
統夜の話す戦艦と白銀の機体とは、ガウルンも交戦したあの集団に違いない。
ガウルンが戦ったときは、もう一機と共に格別なコンビネーションを見せてくれた。
統夜の口ぶりでは、片方は戦闘には出てこなかったようだが……それを差し引いても、あの機体の戦闘力は十分なものがある。
それプラス、ガウルンの知らぬ二機。プラス戦艦だ。
そんな勝ち目のない戦いでも、統夜は死ぬことがなかった。

「その戦艦たちとなら、俺も戦わせてもらったぜ。なるほど……あいつらを相手に生き残ったんなら、上出来だ。
 俺の話が途中だったな。放送の後……俺は、ある集団を追いかけた。気になる奴がいたんでね。
 すると……だ! また別の集団が近づいてきてね。どうせだからと、利用させてもらった。
 俺はただ一発撃っただけだったんだけどな――クク、奴らは潰しあいを始めやがった。
 混乱に乗じて、俺のほうも楽しませてもらったけどな――ああ、楽しかった」

戦闘の興奮を思い出し――ガウルンは身を震わす。
その様子を見て、統夜は、ガウルンは真の変態だと、そう思った。
だがただの変態ではない。こと戦闘に限れば――他の追随を許さない、そんな変態だ。

「で、その途中で――お前も戦った戦艦一同が混じりこんできた、というわけだ。
 ちょっと聞くが――その戦艦、他に機体は乗ってなかったのか?」

106 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/14(金) 02:33:38 ID:xGoaupqj
ガウルン自体、あの戦場に最後までいたわけではない。ある程度の目的が果たされた時点で離脱をした。
だが、あの女――フェステニアと言ったか――の言を信じるのならば、今頃フェステニアは戦艦と行動しているはずだ。
放送で名前が呼ばれていないということは、すぐに下手を打ったわけではなさそうだが……白い機体の片割れも出撃していない、という事実も引っかかる。
フェステニアと片割れが戦艦と別行動を取っているということだろうか?
だが、フェステニアの狙いを考えれば、危険性が増す戦力の分散――それも、戦艦側ではない――を選ぶとは思えない。

「分からない……実際のところ、あれは戦いじゃなかった。俺がようやく戦えたのは赤い機体と黄色い機体だけ。
 戦艦たちには、一方的に嬲られたようなものだったし……もしかしたら、わざわざ出なくてもいい、と考えたのかもしれない」
「ふぅん……まぁいいさ。話の続きだ。
 放送の前後で――俺は、ブンドルと、アムロという男と戦った。奴らもこの祭りには乗らない――そう言っていたな。
 ま、結局は取り逃がしちまって――そのあと、お前と会った。これで満足かい、統夜?」

ガウルンと自分の話を総合し――統夜は考える。
この殺し合い――乗っている人間は、思っていたよりも少ない?
思い返してみると確かに、統夜を殺しにきた人間はギンガナムと青い機体に乗った人物と、二人だけだ。
それ以外は、あくまで自己防衛の範疇――赤鬼という、過剰防衛に近いものもありはするが、こんな状況ならば当たり前であるとも言える。
勝ち残りは……予想以上に難しいのかもしれない。

「……どうも。それじゃまず、俺のほうから提案させてもらう」

そう言いながら、統夜はアスファルトの上に簡易的な地図を描き始めた。
まずここ、と、統夜は南の市街地を指さす。

「ここはあの戦艦が根城にしてる――赤い機体と黄色い機体も、ここにいる可能性が高い。
 いくらあんたに自信があろうと、俺はもうここへは行きたくない。わざわざ殺されに行くなんて――冗談にもならない、最高につまらない話だ。そうだろう?
 それと、これはあんたみたいなプロにとっちゃ当り前のことなんだろうけど……開けた土地にも出たくない。
 さっきの戦闘で戦艦に馬鹿みたいに撃たれた。地下の空洞のおかげで助かったけど……もしあれが、遮るものが何もない平地だったとしたら、地下空洞に逃げ込む暇もなく御陀仏だったって自信がある。
 あんたの話によれば、戦艦級の機体はもう一つあるらしいし、戦いやすいところを陣取る……ってのは必要だと思う。で、それならやっぱり……」

今度は地図の南東を指さし、

「ここを目指したい。ここほど地の利を感じられる場所もないと思う。
 高台にあって、設備も十分整ってる……行くなら基地だ」

ふむ、とガウルンは口元に手をやりながら統夜の顔を見る。
悪くない考えだった。理に適っている。
ガウルン自身、良い考えがあったわけではない。

「ならそれでいくか。……ああ、言い忘れてたことがあったな」
「なんだ?」
「今から挙げる奴らは俺の獲物だ。手を出すのは結構だが……最後は、俺がいただく」
「……分かった」
「物わかりがいいのは良いことだ。俺の獲物の名前……それは」

ガウルンが呼んだ名前を、統夜は聞いたことがあった。
最初は、聞き間違いかとも思った。だから聞き返してみた。もう一度、名前を言ってくれと。
ガウルンは怪訝そうな顔をしたが、統夜の表情を見て、にやりと大きく笑うと、もう一度名前を呼んだ。

――フェステニア=ミューズ。

頭の中が、一瞬真っ白になった。そのあと、更に聞いた。何故、その女を狙うのかと。
そして――彼女が何をしたのか、その顛末を聞いた。
全身の力が抜けた。はははと、意味もなく乾いた笑いが湧き出てきた。

――どうして俺は、戦いに巻き込まれたんだっけ?

107 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/14(金) 02:34:54 ID:xGoaupqj
怒りよりも先に呆れの感情が湧いて。
最初の放送で呼ばれた、カティアとメルアのことを思い出して。
無性に悲しくなってきて。
テニアと交わした数少ない言葉を思い出して。
自分の愚かさにようやく気付いて。
すべてが馬鹿馬鹿しくなって。

「……ガウルン。基地へ向かおう」
「あ? なんでお前そんなに急ぎ出して……」

返事を聞く前にヴァイサーガに乗り込んだ。
ガウルンは気づいただろうか。気づいたなら笑うだろうか。
コクピットに座る前に零れ落ちた。しょっぱい水分。
今まで溜まっていた、抑えていた感情が溢れ出す。
ああ、なんて格好悪いんだろう。でも……これが普通の反応なんだとも思う。
最初から……そう、グラウンドに、あいつらが落ちてきた時から、俺は自分が特別な存在なんだと、心のどこかでそう思ってた。
――馬鹿みたいだ。何かに期待して、縋って、非日常を生きるだなんて、俺は物語か何かの主人公になったつもりでいた。
でもその前に、俺はただの高校生だったんだ。本当は、もっといっぱいやりたいことだってあったんだ。
目頭が、ツンと熱くなる。またポロリと、大粒の雫が垂れた。
裏切り……いや、違う。仕方ないんだ。俺だって同じことをやろうとしている。
でも……でも!
やっぱり俺は、大きな勘違いをしていたみたいだ。世界はそんなに甘くなかった。

「……ガウルン。頼みが……ある」
「今の俺には――お前の考えが手に取るように分かるぜ統夜。――言ってみな」
「テニアは……フェステニア=ミューズは……! 俺にやらせてくれ! ……頼む!」

――元々俺は、彼女たち三人が自分たちのために繕った、偽物の主人公だったのさ。
――だったら、彼女たちがいなくなれば……俺は、どうなる?
――俺は……抜け出したい。俺を縛る色んなモノたちから。


【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:疲労中、マーダー化
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数
      EN1/4、烈火刃残弾ゼロ
 現在位置:C-8地下通路
 第一行動方針:基地へ移動
 第二行動方針:テニアの殺害
 最終行動方針:優勝と生還】



まったく……ここは、面白い奴らばかりだねぇ……ククク……


【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労大、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部・胸部装甲破損、左腕消失、マント消失
      DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備
      右拳部損傷大、全身の装甲に深刻なダメージ EN20%
 現在位置:C-8 地下通路
 第一行動方針:統夜に興味。育てばいずれは……?
 第二行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第三行動方針:皆殺し
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【二日目9:00】

108 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/14(金) 02:38:10 ID:xGoaupqj
というわけで投下終了です。
誤字・脱字、矛盾点など見つけられましたらご指摘お願いします。
いやー、あんまり中身なくてすいませんw とりあえず統夜をもっと追い詰めてみたかった……というのが今回のテーマです。
えーと、タイトル考えるの忘れてました。考えた後にまたレスしますので、ひとまずお待ちをば。

109 :それも名無しだ:2008/11/14(金) 03:29:47 ID:F8XBwuZR
GJ!
統夜はどんどん追い詰められていくなw
ガウルンは楽しそうで何より。
にしてもここで基地行きとはちょっと意外でした。
もう少し南部市街地で暴れるのかと思ってた。
二時間以上の開きがあるけどアキトが基地にいるんだよな。
アムロ・ブンドルの合流予定地でもあるしどうなるか今後が楽しみです。

110 :それも名無しだ:2008/11/14(金) 21:17:06 ID:CNiNY3LM
乙です!
統夜がどんどん磨り減ってくw
今の奴はバーニィとどっちが不幸か競えるんじゃないだろうか?w
そしてガウルンが凄く楽しんでるなぁ

111 : ◆YYVYMNVZTk :2008/11/15(土) 02:24:09 ID:Ms2suool
感想どうもです。
遅くなりましたが、タイトルは「追い詰められる、心」でいこうかなと。
なるべくなら自分でwiki編集もしたいのだけど、現在地を弄ることが出来ないのが問題だなぁ……
いつもwiki編集してくださってる方に質問なんですけど、画像以外の部分だけ編集しておく、というのは混乱の原因になっちゃったりするんでしょうか?
そこらへんの都合が分からなくていつも任せきりにしてしまってたんですけど、これからはもうちょっと自分で編集しようかと思いまして。

112 :それも名無しだ:2008/11/15(土) 22:05:30 ID:F2+KBchp
画像以外だけを編集していただいても大丈夫ですよ
後から地図を作製して追加させていただきたいと思います
ちょっと二三日地図をいじれないので地図追加はそれ以降になります
投下お疲れさまでした

113 :それも名無しだ:2008/11/18(火) 20:09:12 ID:Wk7SKYS0
今まで見てるだけでしたが、レスだけでも参加しようかなと思ったので発言してみます

GJでした!!統夜はJ後半も好きですが、前半戦の自棄状態も好きだったので
ガウルンが最後まで生き延びられるのかどうか。正義が勝つのは当たり前。勝った奴が正義です
さあ、どうなってくやら

114 :それも名無しだ:2008/11/19(水) 22:51:18 ID:G17gkEyd
書き手ってどのくらい残ってるのかな
一次の本スレでも三次の話が出てきてるし、三次が始まったら二次はこのままフェードアウト……なんてことにはならないよね?

115 :それも名無しだ:2008/11/19(水) 23:08:53 ID:xz6Yyw3s

生存確認一人目。
とりあえず生きてるし残ってます。
三次始まったら三次でもちょこちょこ書くと思うけどメインは二次で続けていく予定。
ただまぁ来年社会人(予定)だから研修期間二ヶ月はロワから離れるの決定だったりする。

116 :それも名無しだ:2008/11/20(木) 01:16:47 ID:kfuVyRdL
生存その二。
三次始まってもすぐには書きにいかないかな……序盤って苦手だし、中盤以降のある程度フラグ溜まった状態のほうが好きだし。
二次は思い入れも強いし、書き続けるつもりです。
少なくとも二次をほっぽり出して他のロワに行く……ということはないと思う。掛け持ちは分からんけれどw

117 :それも名無しだ:2008/11/20(木) 21:38:28 ID:SrYIUDVA
生存その三。
すまん、最近仕事が忙しくて……。

118 :それも名無しだ:2008/11/24(月) 23:05:50 ID:AhqIIK+T


119 :それも名無しだ:2008/11/24(月) 23:11:03 ID:jTDC+DFL


120 :それも名無しだ:2008/11/24(月) 23:15:03 ID:pJuSxK8J


121 :それも名無しだ:2008/11/24(月) 23:23:01 ID:sF43msrF


122 :それも名無しだ:2008/11/25(火) 00:35:26 ID:5IKIh01v


123 :それも名無しだ:2008/11/25(火) 01:18:01 ID:tAA7Y1YP


124 :それも名無しだ:2008/11/25(火) 02:11:48 ID:vT8yrXp5


125 :それも名無しだ:2008/11/26(水) 19:38:39 ID:wqXOl4rq


126 :それも名無しだ:2008/11/26(水) 20:30:17 ID:PKzyzxdG


127 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/11/27(木) 03:05:40 ID:R3xmoWMl
ロジャー・ソシエ・オルバ・テニア、予約します

128 :それも名無しだ:2008/11/27(木) 09:09:25 ID:Ba9HYHZG
おー、ロジャーがナデシコ派と接触か……
さてさて、交渉はどうなることやらw

129 :それも名無しだ:2008/11/27(木) 18:51:42 ID:C4/BXBND
念のため予防あげ

130 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:50:38 ID:XUJNHVrP
両の眼を目一杯見開いたその顔は、驚きに揺れていた。
何故この遭遇を考えなかったのか。
あの大乱戦から約六時間。既にこの周辺にはいないとタカを括っていた。
六時間もこんなところで何をぐずぐずしていた、と自らを棚に上げて思う。
絶句した顔には苦笑いすら浮かびはしない。
カティアを殺し埋めた岩山の上空を抜け、G-6からE-6の平原に入り十数分が経過した時のことだ。
オルバが北から南下してくる機体を確認した。
黒を基調としたボディーに四肢に誂られた円筒形の赤いタービン。
切り裂かれた左腕は失われて久しく、耳の位置で左右に細長く伸びているはずの角もまた一方は失われている。
全てが一致している。間違いはない。
先の混戦で直に手を交えたあの相手――ロジャー=スミス。

「これやばいって……」

滲み出た声にはっとして通信機のランプを確認する。コンディションレッド、不通を確認して冷やりとした汗を拭う。
取巻く状況が難しいのだ。
三隻の戦艦がしのぎ合うあの混戦の中、最初に相対したのが不戦を訴えていたこの交渉人だ。
それに対して自身は敵対した。ソシエの怪我、無敵戦艦ダイの存在という根拠を持って葬り去ろうとした。
それ自体の筋は通っていないわけではない。
あの場においてムサシを始めとしマサキ・キラ・ソシエ、誰もがダイの脅威を疑わず、テニア自身も疑いはしなかった。
その結果、不慮の乱入者があったとはいえ戦端は拓かれたのだ。
しかし、とテニアは併走する機体に目を向ける。
しかし、ここでその理屈を振りかざし一貫した姿勢を交渉人に向けることは出来ない。
致命的な矛盾が生じる。
オルバを始めとするナデシコの面々に真実として語った出来事。
Jアークに拠る集団に非人道的な目に合わされたという、自身にとって都合のいい偽りの事実から外れてしまう。
あちらを立てればこちらが立たず。八方塞がりにも等しい状況が焦りを駆り立てる。
大体にしてこのロジャー=スミスという人間が厄介なのだ。
最初のあの場で、ここに存在する全ての人間が見ている目の前で、自らの立ち位置を明らかにして見せた存在。
ほぼ確実にこの殺し合いに乗ることがないだろうと誰もが認めるその存在は、それだけで旗印となり一定の求心力を得ている。
その影響力を大袈裟に言えば、ロジャーに組する者は善、対立する者は悪の単純な構図が擬似的に成立しかねない。
少なくともオルバの言う『僕たちが信用できると思える人物』に当てはまり、『潔白』を証明しうる人物。
しかし、その証明の内容は矛盾を曝け出しテニアの足場を崩す言葉となる。やっかいなことこの上ない。

――考えろ。考えるんだ。

交渉人に睨まれず、オルバにも疑念を抱かせずにこの場を切り抜ける奇跡のような一手を。
もう接触までいくらもない。焦りが瞳を揺らす。

――このままじゃまずい。まずいんだって、テニア。

ここを切り抜けなければ全てが無駄になる。
勝ち取ったナデシコでの信頼、ガウルンとの交渉。
ムサシやメルアやカティアを殺したこと、殺してまでして固めた決意。全て無駄になる。
引き返せない道に足を踏み入れたんだ。今更なかったことになんてできない。できっこない。
でも……でも、どうしよう見つからない。
電波を受信した通信機が一瞬ノイズ音を立てた。その音に恐怖する。

「私の名はロジャー=スミス。フェステニア=ミューズ嬢、あなた方との交渉を望んでいる」

冷静に交渉を申し出てくるその声が、死神の鎌のように感じられ首筋に刃物の冷たい感触を錯覚する。
名前を呼ばれた。知らない。人違いだ、ではもう逃げられない。割ってはいるのはオルバの声。

「こんにちは、ネゴシエイター。直に顔を会わせるのは初めてかな?」
「その機体……君もあの場にいた者のようだな」
「そのようだね。オルバ=フロスト、覚えておいて貰おうか」


131 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:51:59 ID:XUJNHVrP
考えるその脇でオルバが名乗り、互い挨拶を交し合う。
その間にも頭の中で脳が答えを求めて奔走する。
二人の会話に混ざる余裕はない。だが、聞き逃しもしない。

「情報交換は僕としても望むところだ。テニア、いいね?」
「……うん」

振られた言葉。賛同するしかなかった。
名目上だろうとなんだろうと今は他者との接触を第一に行動しているのだ。否定できるはずがなかった。
同時に追い詰められていく身を自覚する。

「なら私から一つ提案がある。私はネゴシエイターとして話し合いの場に武器を持ち込まないことを決めている。
 そして、話し合いとは互いの立場が対等な状態で行なわれるべきだ。
 故に私は互いに機体を降りた状態での話し合いを希望する。了承が取れた場合、提案者である私がまず機体を降りよう」

考え込む振りをして口元に当てた手、その下で唇がにぃっと釣り上がり八重歯が覗く。
願ってもない申し出だ。これ以上ない申し出だ。ほとんど唯一といっていいほどの突破口。
それを与えてくれた。
今、この場を穏便に切り抜ける手段はやはり思いつかない。
だが、形振り構わないのであれば話は別だ。ロジャーとオルバ、二人が機体を降りたところを――

「大した心構えだね……いいよ。その提案を呑もう。安心しなよ、ネゴシエイター。
 君が機体を降りた途端ズドンなんて真似はしやしないから」

降りたところを……って、読まれてる? いやまさかね……ハハハ。

そうこうしている間にも徐々に詰まってきていた距離は既に1kmをきっている。
その距離が残り500m前後になってロジャー=スミスの乗る機体が静止した。釣られてこちらも立ち止まる。
胸部のハッチが開放され、黒一色に身を包んだ男が姿を現すのが見えた。その男はそのまま機体から降り立ち、迷うことなくこちらに向かって歩き出す。
馬鹿な男、そう思い、後はオルバが機体から降りるのを待つだけ、そう思った。
そうなれば後は高々500m程度の距離なんてこのベルギルミルの手にかかれば造作も――

「テニア、まずは君から先に降りろ」

って、やっぱばれてる! いや、まぁ、そんな気はしてたからいいんだけどね。
そんな都合よく物事が運ぶなんて思ってなかったから、べっつにぃいいんだけさぁぁあ。
いや、全っ然良くないよ、アタシ。

ちらりと横目でオルバの表情を確認する。頑なな光がそこにある。
ホンの一時間ほど前「僕は君を信用していない」と言い放った姿を思い出し、ごねても無駄だと悟る。
信用してないと言い切ったオルバに対して、自分は信用させようとしている側にいる。今はごねてもごね損にしかならない。
それに、だ。それに、運悪くベルゲルミルはディバリウムの前に立った状態で静止している。
下手をすれば後ろから撃たれかねない気もしていた。
でも、ただ唯々諾々と従うのも主導権を握られているようで、どうにも気に入らない。気に入らないったら気に入らない。

「もう一度言う。君から……」
「あ〜、はいはい。二度も言ってくれなくても聞こえてるわよ。アタシから降りればいいんでしょ?
 オルバさんはアタシをまだ信用してくれてないんですものねぇー」

不満をたっぷり塗りこめて一息に言い切ると、そのまま腹立たしさをぶつけるようにして勢いよくハッチを開け放った。
一瞬照らし出された朝日の陽光に目が眩み、雲一つない青空を認めて『今日も晴天だ』と場違いな感想が頭に浮かぶ。
同時に半ば感情的、反射的に機体のハッチを開け放った身を自覚して『アタシ、馬鹿だ』という思いが込み上げてきた。
何の方策も思いついてない。どうすればいいのかも分かってない。ただ流されて追い詰められていっている。
難解なパズルのような状況の中、見つからない答えを探して赤毛の少女はただ呆然と立ち尽くしていた。

「ちくしょう……お天道様が今日も目に眩しいぜ」

……立ち尽くしていた(※絶賛現実逃避中


132 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:53:01 ID:XUJNHVrP
 ◆

起伏の乏しいなだらかな丘に丈の短い草木が覆い茂り、彼方まで見渡せる緑の牧草地帯。
牧歌的な風景が彼方まで広がるその草原を進みつつ、それとなくロジャー=スミスは周囲に気を配っていた。
見晴らしのいいこの場所は、都合がいい。
頭にあるのは夜の暗闇の中、同じように一人生身で交渉に赴いたときのこと。
あの交渉における最大の失敗は目の前に気を取られすぎていたことだ。気負って力が入りすぎていたのはまだいい。
だがしかし、そこに入れ込むあまり周囲に対する警戒を解いていた。そこまで気が回らなかったと言えばそれまでだが、その結果があの乱戦だ。
あの黒い機体やキラやソシエ、もう一隻の戦艦を責めるまでもなく自身にも責はある。
だからこそ、二度と同じ轍を踏んではならない。
ざっと見渡したところビルのような遮蔽物は何処にもなく、また機動兵器が隠れられるほどの起伏もない。
それに、だ。それに万が一に備えてソシエを凰牙に残している。最悪の場合の役には立つことだろう。
もっとも気持ちよく就寝中の彼女を起こすのは、忍びなかっただけのことなのだが。
一先ずは問題ないと見て立ち止まり、視線を自らの交渉相手へと向けた。
機体の数は二つ。
一機は、まるで雷神の天鼓のようにその背に勾玉を巡らせた以外は、至ってシンプルな白銀の機体。
もう一機は人型ですらなく、その赤黒い色身と形状からラフレシアを想起させる異形の機体。
それぞれからそれぞれのパイロットが姿を現し、機体を降りてこちらへと歩みを進めていた。
そして、互いの表情が十分見て取れるほどの距離になって彼らもまた足を止める。
一人は、ミッドナイトブルーの短い髪をオールバックにした細身で中背の青年。
服装は落ち着いてはいるものの薄紫のタートルネックに原色の青と白のジャンパーという組み合わせは、どうにも趣味が悪い。
薄く笑いを浮かべるその表情が、上品下品の違いはあれどどことなくベックに似た印象を抱かせて僅かに眉を顰めさせた。
それに対してもう一人は、綺麗な赤毛をざっくばらんに伸ばした肉付きの良い少女。
奇想天外ではあれど動きやすさを重視したような服装が活発な印象を与え、そのお転婆そうな雰囲気はソシエに近いのかもしれない。
だが、どこか影がある。それがムサシを撃ったことに関係しているのかは、まだ分からない。
黒いサングラスの下で目線を鋭く走らせてざっと二人を見回し見比べた後、落ち着き払った態度でロジャーは口を開いた。

「御労足頂き、感謝する。改めて名乗らせて頂こう。私の名前はロジャー=スミス。ネゴシエイターを生業としている者だ」
「知っているよ。君は最初のあの場所でひどく目立っていたからね」
「私としては当然の質問を投げかけたに過ぎなかったのだがね。
 まぁいい。今、私はある二つの交渉の依頼を別々の人物から受けている。それについて君たちと話がしたい」
「交渉? どんな?」
「正確には交渉の場を整えるのが私の仕事だな。ある戦艦とある戦艦引き合わせる、それが私の受けた依頼の内容だ。
 君は白亜の戦艦に身を寄せているのだろう? キラ=ヤマトと言う少年が君たちに会いたがっている。伝えてはくれないだろうか?」
「へぇ……」

言葉に乗せて監視の目を走らせる。黒いサングラスで目元を隠しているのだ。視線を気取られる心配はない。
キラの名前を出したその瞬間の一時だけ、テニアの体が一度ぶるりと震えるのを見逃さなかった。
それが、怖れによるものか、慄きによるものか、はたまた不安によるものか、その判別は難しい。
だが、動揺を表したということは、何かしらの気に咎める部分があるのだろう、とロジャーは推察する。

「返答は?」

対して、現在のところ全ての受け答えを行なっているオルバ=フロストの様子は変わらない。
常に薄い笑みを絶やさないが、そのライトグレーの瞳は最初から一時も笑ってはいない。
むしろ冷淡とも取れる光を放ち続けるその目を見て、ロジャー=スミスは前言を撤回した。
この男にベックを見たがそれは違った。
むしろ、常に余裕を崩さないその姿勢は、アレックス=ローズウォーター――パラダイムシティの実権を握るあの男に近い気がする。
とは言え『似た印象を受けた』ただそれだけの理由でオルバとアレックスを混同して考えるほど、ロジャーも愚かではない。
だからこそ表情を崩さずに一本筋の通った姿勢で返答を待ち続けることが出来る。


133 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:53:51 ID:XUJNHVrP
「……その前に互いの情報を交換しておきたい。情報は必要だろ?
 それは君の提案を呑む呑まないに関わらず、互いに不利益になるものじゃない。
 だったら互いの立場が決まる前に交換しておく方が、信頼が持てる。そうだろ、ネゴシエイター?」
「その通りだが、それは我々が敵対することになった場合の話だ。協力関係になった場合、情報の信頼性は揺るがない」

『断った後に受け取った情報など信用できない。平等な交渉を続ける為にも先に情報をよこせ』と暗に仄めかしたオルバ。
『協力関係を築いた後の情報であるほうが、信頼が置ける。情報の交換は後でもいい。それとも事を構える気か?』と切り替えしたロジャー。
空気がピンと張り詰める。
それでも別に構わないよ、とでも言うような強気の姿勢を崩さないオルバを前に確認して、仕方がない、とロジャーは自らが折れることを決めた。
この相手は自分と相手の置かれた立場をよく理解している。ここでこちらが折れざる得ないことも計算の上なのだろう。
それだけの読みを持っているからこその強気だ。
今はあまり喜ぶべきことではないのかもしれないことだが、言葉の駆け引きをして面白い相手ではあるようだった。
もっとも、若いだけに我を押し通しすぎるきらいはあるが……。

「まぁ、いい。ここは私のほうが折れるとしよう。何から聞きたいのかね?」

ロジャーは二人の目の前で、お手上げとでも言うように肩を竦めて答えてみせた。

 ◆

ロジャー=スミスが意外な物分りの良さを発揮し、情報交換が開始されてから十分弱。
主に両者の間を飛び交った情報は互いが確認している生存者のことだった。

シャギア=フロスト、オルバ=フロスト、兜甲児、宇都宮比瑪、フェステニア=ミューズ
ロジャー=スミス、ソシエ=ハイム、キラ=ヤマト、ガイ、ジョナサン=グレーン、伊佐未依衣子

結果、両者はこれだけの人間に加えてナデシコで眠る男性一名の情報を共有し、生存を確認した。
ナデシコ側で未把握の人間がガイのみであった以上、ロジャー側に益が多い結果となったと言える。
だが、それは結果論でしかないと自身を納得させた上で、オルバ=フロストの気を引いた情報が一つあった。

――キラ=ヤマトがプログラミングに長けている。

首輪の解除はここからの脱出を図る上で避けては通れない壁。それを成せるかもしれない力。
兄、シャギア=フロストも今首輪の解除に手を出そうとはしている。
彼は特別機械に詳しいわけでもなければ、電子工学・情報工学に長けているわけでもない。
ただ適材が見つからないがために手を出さざる得ないだけなのだ。
だが、解析の力を持つ彼らは首輪を所持してはいないという。キラ=ヤマトの技能と兄の持つ首輪にナデシコの設備。
手を組むだけの価値と理由は互いにあるとオルバは判断する。
その場合、最大の障害は――視線を脇に立つ少女へと向ける――この少女、フェステニア=ミューズ。
何を考えているのか先ほどから一言も言葉を発することなく、不安げに彼女は立ち竦んでいる。
無理もない。
ロジャーの話したキラ=ヤマト・ソシエ=ハイムの人物像と彼女の話は完璧に食い違う。
その上、今この場の同行者にすら信用していない、と既に断言された後。男性二人が相手では生身で暴れても勝ち目はなく八方手詰まりの状況。
崖っぷちまで追い詰められているのだ。ともすれば気が狂い出しそうな状態に違いない。
そして、今少し押してやれば崖から転落するのは目に見えている。
だが、少々の厄介事もあった。兜甲児と宇都宮比瑪の二人がテニアを信用しているのだ。
ナデシコの求心力として誂た彼らが、だ。
その彼らの知らないところでテニアを始末していくことも出来るが、それよりもいいのは彼らの目の前で自滅して貰う事。
その算段は、ロジャー=スミスと接触を得たことで立った。彼の提案通り先方と接触すれさえすればいいのだ。
そうすれば接触する前、あるいは接触した瞬間、必ずテニアは馬脚を現す。
それがもっとも自分ら兄弟が疑われることなく、ナデシコと技術者と首輪の全てを手に入れられる方法。
そして何よりも、どうにもならない状況に追い詰められていく彼女を見るのは、中々楽しそうに思えて密かに笑う。
そうしてそこまで考えを纏め上げたとき、じっとこちらを観察している視線に気づいた。
背筋に冷たいものを感じて気を引き締める。ロジャー=スミス、この男の前で油断は禁物だ。
甲児や比瑪ほどお人好しでもなければ、テニアほど世慣れしていないわけでもない。それだけに扱いづらい。


134 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:55:01 ID:XUJNHVrP
「そろそろ、返答を頂くとしようか」
「今、ここで、確たる返事を出すことは出来ない。僕らにも仲間がいるからね。だけど兄に伝えることは約束するよ。
 そして、僕自身はこの話に前向きであると思ってくれていい。それで接触の手筈は整っているんだろうね?」
「それで構わない。仲間の合意が取れたら次の放送前にE-3地区にあるクレーターを目指してくれ。
 そこにキラは来る。中央に人を埋めた跡――墓があるので、場所は行けば分かるだろう。
 それともう一つ。君たちだけでなく出来るだけ多くの人間をここに集めたい。出会った人間に広めていっては貰えないかな?」
「了解した。人集めに協力することを約束するよ」

その返事に肩の荷が一つ下りたとでも言うふうにロジャーが息をつく。
同時にテニアの纏う空気が更に重くなったように感じた。

「では、私はこれで行くとしよう」
「どう動くつもりだい、ネゴシエイター?
 僕らは他の生存者を探して今G-6基地に向かっている。良ければ同行しないか?」
「ありがたい申し出だが、私は私ですることがある。ガイに会ったら伝えてくれ、ロジャー=スミスが探していたと。
 それでは、失礼させてもらおう」

言うが早いか踵を返し、機体に向かって歩き始める。その黒い背中を見送ろうとしたその瞬間――

「何でよッ!!」

――テニアの叫びが空気を震わせた。
耐え切れずに溢れ出した。半ば自棄になった。そんな感じの声でテニアは言う。

「何で……何で何も言わないのよ! 会ったんでしょ? キラに、ソシエにッ!!」

ロジャー=スミスの背が立ち止まる。
確かにその通りだと思った。何故、ロジャー=スミスがテニアのことに触れないのか。
この男が気づいてないはずはない。意図的に話題を避けていたとしか思えない。でも何故?
それが不可解だった。
だが、今ここでテニアに崩れてもらっては都合が悪い。それはまだ先、今以上に神経を磨り減らした後、あの二人の目の前でないと困る。
だから、オルバは助け舟を出した。

「ロジャー=スミス、あの戦艦と接触した君が彼女に疑いを持つのは分かる。だが、それはあちらだけの言い分だ。
 それを鵜呑みにすることは出来ない。それに僕はナデシコ側の人間だ。一戦を交えた相手よりも彼女を信用している」

きょとんと丸くなった目がこちらを見ているのを感じる。本当にこの娘は騙し合いに向いていない。
背中を向けたままの男が『やれやれ』とでも言うように、溜息をつくのが分かった。

「一つ誤解があるようだが……私の立場はあくまで交渉人。君たちの側でもなければ、彼らの側でもない中立だ。
 君にどのような正当な理由があろうと、それを今ここで中立者である私に突きつけられても困る。
 どのような矛盾のない話しでも、それは当人にとって都合のいい事実でしかない。君だけでなく彼らの話も含めてだ。
 その真偽のほどは私には分からず依頼にも含まれていない。ならば、後は当事者同士で顔をつき合わせて答えを見つけて頂こう」

静かに言い切り再び歩き出そうとして「ただ――」と男が再び口を開いた。

「ただ、あの少年はこう言っていたよ。君にも何か仕方のない事情があったのかもしれない、とね。
 君が誤解を解きたいのであれば、彼のことを信じてみてもいいのではないかな。それでは約束の時刻に約束の場所でお待ちしている」

その言葉を最後に男は振り返ることなくその場を立ち去って行き、その背中を呆然とテニアは見送っていた。





135 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:56:05 ID:XUJNHVrP
【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好、テニアを警戒
 機体状態:EN60%、各部に損傷
 現在位置:E-6
 第一行動方針:十分に痛めつけた上でのテニアの殺害
 第二行動方針:A級ジャンパーを見つける
 第三行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める
 第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 第五行動方針:首輪の解析
 最終行動指針:シャギアと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドルヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)、自分たちの交信能力は隠している。】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:本来の精神状態とはかけ離れているものの、感情的には安定
 機体状況:左腕喪失、マニピュレーターに血が微かについている、ガンポッドを装備
 現在位置:E-6
 第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る
 第二行動方針:統夜との接触、利用の後殺害
 第三行動方針:参加者の殺害(自分に害をなす危険人物を優先)
 最終行動方針:優勝
 備考1:甲児・比瑪・シャギア・オルバ、いずれ殺す気です
 備考2:首輪を所持しています】





136 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:56:40 ID:XUJNHVrP
「お疲れ様」

コックピットのハッチを潜った途端に声を掛けられてロジャー=スミスは顔を上げた。
メインモニターに一人の少女の顔が映し出されている。

「いつからだ? いつから君は起きていた?」
「最初からよ。あなたがテニア達に通信を繋げたときからず〜っと起きてました」
「それで?」
「それでって?」

凰牙の起動シーケンスを踏みながら大きな溜息をつく。全身の力が抜けていくような気がした。

「何か私に言いたいことがあるのじゃないかね?」
「そうね。何で私を置いて行ったのか、とか。交渉の結果はどうだったの、とか。テニアの様子はどうだったの、とか。一杯あるわね」
「だったら、何故私を一人で行かせて付いて来なかったのかね?」

この先のやり取りを考えるとこめかみ付近が軽く痛くなってくるが、それも致し方なしと覚悟する。
そんな様子のロジャーに予想外の答えが返ってきた。

「何故かですって? あなたが一人で行こうとしたからよ」

胸を張って少女は言う。

「私より前からテニアと居たキラが、あなたに任せたのよ。と言ってもちょっとの差ですけどね。
 でもだから私もロジャー、あなたに任せてみることにしたのよ。
 そのあなたが私を置いていくと判断したのですから、大人しく待つことにしたんですからね」

ソシエは簡単に言い放ったが、そう簡単なことではないとロジャーは思う。
人に判断を丸投げするのも、それに従うのも確かに簡単だ。だが、任せたからには判断に口を挟まない、というのは簡単なようでいて中々に難しい。
自分の身にも関係していることである。普通はあれこれと口を出したくなるものだ。
ましてこの少女の性格を考えれば、きっと口出ししたくてウズウズしていたに違いない。
やや見直すつもりで少女を眺めた途端――

「でも、結果はしっかりと話してもらいますからね。それで不甲斐ないようであれば次からは私がやります。
 それと凰牙はもう少し揺らさないように。これじゃロランの運転のほうがマシだわ」

『さあ、話せ』と言わんばかりのこの気勢だ。苦笑いしか浮かんでこないロジャーであった。



【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN70%
 現在位置:E-6
 第一行動方針:一先ずE-7市街地に赴きガイとナデシコの足取りを調べる(出来ればリリーナの首輪も回収する)
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考2:念のためハイパーデンドー電池四本(補給二回分)携帯】



137 :争いをこえて ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 07:57:16 ID:XUJNHVrP
【ソシエ・ハイム 搭乗機体:無し
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状況:無し
 現在位置:E-6
 第一行動方針:ロジャーに同行する
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:新しい機体が欲しい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)とワイヤーフック内臓の腕時計型通信機を所持】

【二日目8:40】


138 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/01(月) 08:03:17 ID:XUJNHVrP
早朝ですが投下終了です。完徹で眠い。
情報交換しただけという基本的に繋ぎの話です。
テニアの立場も実は結構危うい位置ということで、ちょっと焦ってもらおうかなと思いました。
誤字・脱字等ご指摘宜しくお願いいたします。

139 :それも名無しだ:2008/12/01(月) 15:06:51 ID:D2I+zeJH
投下乙です!
みんないい感じにキャラが立ってきてるなぁ
どんどん追い詰められていくテニアがどこで爆発してしまうのか楽しみだw
向かう先の基地にはガウルンと統夜も向かってるしなぁw
そしてロジャー、交渉成功おめでとう!

140 :それも名無しだ:2008/12/01(月) 17:12:18 ID:0+LXJqHK
上手い。なんというか、本当に上手い。
キャラクターがちゃんと自分の意思を持って動いている感じがして
読んでいて楽しい。

『べっつにぃいいんだけさぁぁあ』が何かツボったw

141 :それも名無しだ:2008/12/01(月) 23:18:44 ID:ZfiqSZGr
乙です
J組はどんどん追い詰められていくなぁw
そしてネゴシェイターが失敗しなかったw

142 :それも名無しだ:2008/12/02(火) 02:07:26 ID:5nftufjb
だんだんスパロボJが暗い作風だった気がしてきたwww

143 :それも名無しだ:2008/12/02(火) 02:30:25 ID:F+ke2JAQ
乙です
>>131で1個所だけベルゲルミルがベルギルミルと誤植ですね〜
そしてまさかのネゴシエイターの交渉成立にびっくりw
ロジャーがこんなに順調だとキラ辺りが自殺するんじゃないか?

144 :それも名無しだ:2008/12/02(火) 02:32:30 ID:piTr3JNY
それなんて超展開?w>キラが自殺

145 :それも名無しだ:2008/12/02(火) 13:40:13 ID:0HYjeZFe
お前らロジャーをなんだと思ってるんだw

オルバとロジャーの探り合いが面白い
テニアがどうなるか楽しみだなあ

146 :それも名無しだ:2008/12/02(火) 22:38:52 ID:oTY6M4J+
>話し合いの場に武器を持ち込まないことを決めている

嘘吐け、と思ったのは俺だけではあるまいw

147 : ◆YYVYMNVZTk :2008/12/03(水) 02:21:50 ID:jrrpmtz9
アムロ、キラ、アイビス予約ー
おそらく何の変哲もない繋ぎになると思うので期待せずにお待ちくださいませ

148 :それも名無しだ:2008/12/03(水) 07:57:13 ID:M2xQIQ98
ついに長い沈黙を破ってアイビスが動くのか
ちょっと気になって前回のアイビスの投下日調べてみたら修正前がピッタリ一年前だった
さては狙ったなw

149 :それも名無しだ:2008/12/03(水) 11:38:40 ID:VckZEMyw
キラにとってはF91との再会でもあるわけだw

150 :それも名無しだ:2008/12/03(水) 12:23:04 ID:gMcXygmJ
アムロで既に四人目の乗り手だもんな
一番いろんな奴乗せてる機体かもしれんね

しかし、ジョナサン死亡を知らないキラからしたらあれ?って感じだろうなwww

151 :それも名無しだ:2008/12/03(水) 22:16:35 ID:ksL4VEPo
奇しくもその四人のうち三人がガンダムパイロットしかも主人公、あと一人も冨野キャラだから無関係と言えなくも・・・ない?

152 :前を向いて ◆YYVYMNVZTk :2008/12/05(金) 13:22:55 ID:t3JM5MiY
――明けない夜はない。どんな一日であっても夜は終り、朝は来る。
始まってから二回目の放送が流れて、死んでいった人たちの名前を聞いて、その中でも知っている人の名前が幾つかあった。
悲しいだとか、そんな感情もあったけれど――でもそれよりも、その人たちの死を無駄にしたくないという気持ちのほうが強かった。
この殺し合いに乗っていようとそうでなかろうと、悪人であろうと善人であろうと、そんなことは関係なく、死んでいい命というものはなくて。
けれど死んでいった命がいくつもあって、自分はその中のいくつかのおかげで、今を生きている。
そのことを痛感する。字面のままに、心が痛くなるほどに、感じている。
だから前を向くのだ。顔を下げることなく、進むのだ。

「……あたしはもう大丈夫。君のおかげで落ち着いたよ」

本当のことを言うと、放送が聞こえ始めたその瞬間――やっぱり恐怖はあった。
シャアやクルツ、ラキのように――アムロの名前が呼ばれてしまうかもしれない、誰か見知った人間が死んでしまっているかもしれないと。
怯えが伝染するのは、なにも人から人に限った話ではなく、人からオーガニックマシンへのそれも、十二分にあり得る。
アイビスの心の影を、ネリー・ブレンは敏感に感じ取った。
優しいブレンはコックピットの内部に文字を浮かばせた。
リバイバルしたてのオーガニックマシンが、意思疎通のために多用する手段である。
様々な、けれど同じ意味を示す単語が次々と浮かんでは消えていった。
ブレンの優しさ――今のアイビスはそれをそのまま素直に受け止めることが出来る。
もう、負け犬と自嘲していた頃の自分とは違う――違うのだ。
ついさっき、決めたばかりではないか。
こんな自分のために命をかけてくれた皆に、胸を張れるように、恥ずかしくないように、精一杯生きるんだ。
ブレンに声をかけ、アイビスは動き出した。
今はまだ出来ることも少なくて、何をすればいいのかもはっきりと分からない。
だけどそれを言い訳に、歩みを止めるようなことはしたくない。

「行こう、ブレン!」

 ◇

結果から言うと――三機の遭遇は、僅かな問題さえもなく、非常にスムーズに行われた。
アイビスの乗るネリー・ブレン。
キラの乗るJアーク。
アムロの乗るガンダムF91。
先に二機が合流してから残りの一機と遭遇したというわけでもなく、三機の出会いはほぼ同時、同じ場所で起こった。
にも関わらず大した混乱もなしに接触できたのは、アイビスとアムロが知己であったということが大きいだろう。
キラもまた、無敵戦艦ダイと事を構えることになってしまった先の例を反省し、慎重な態度で交渉にあたった。
ほどなくして、三機共に交戦の意思は無しということが判明し――Jアークの甲板にブレンとガンダムを係留し、Jアークブリッジにて本格的な情報交換を行っているというのが現在の状況である。

「……なるほど。これで三人ともそれぞれの動向は理解できたと思うが……ここまでの話の中で、何か気になったことはあるか?」

三人がまず行ったのは、現在に至るまでのそれぞれの行動についての情報交換だった。
アムロとアイビスは面識があったとはいえ、共に行動したのは短時間。離れてからの時間の方が長いほどだ。
ちなみに、場の司会は最年長であるアムロが行っている。

「……特にない、か。では次に考えたいのは……今後、我々はどう行動するのか、ということだ」
「一つ、提案があります。これから先……僕と一緒に行動してくれませんか?」

アムロの声に応えたのはキラである。
キラの目的――ひとつは、ナデシコ組との交渉だ。
殆ど最悪といっていい別れ方をした戦艦ナデシコとの再接触は、打倒主催を目指すのならば避けては通れない道であるはずだ。
それはJアークだけに言えたことではなく、ナデシコにとってもそうだろう。
……というより、この殺し合いに反逆の意思を持つ者全てにとって、この二艦の動向は最重要項目。
強力な戦闘力を持ち、象徴――旗頭としての意味合いも持つのが戦艦なのだ。
二艦が共に在ることを選ぶのならば――それは、これ以上ないほどの求心力を持つはずである。
だが、ナデシコとの交渉の時間まで、まだ幾らかの余裕がある。
それまでにキラがやっておきたいことは、一人でも多くの同志を募り、力を蓄えることだ。
あの怪物と少女がどれだけの力を持つのかは全くの未知数である。
あれらに対抗するためにどれだけの戦力が必要なのか――備えは、あればあるだけ良いということだ。
当然同様のことはアムロとアイビスとて考えている。
この提案を断る理由もない。

153 :前を向いて ◆YYVYMNVZTk :2008/12/05(金) 13:23:47 ID:t3JM5MiY
「ああ。Jアークが味方に付いてくれるのは、俺たちも願ったりだ。……これからよろしく頼む、キラ」
「……ありがとうございます! それじゃ……」

友好の証として、キラは両の手をアムロとアイビス、それぞれに差し出す。
アムロとアイビスも、それをしっかりと握り返す。
多くは語らなくとも、互いの目を見れば、目指すところは同じだということは分かる。
今はそれで十分だった。

「それでだ。話を戻すが……今後、俺たちはどう動く?」
「どこか目的地を決めるなら――やっぱり、街や基地みたいにはっきりした場所のほうが人も集まってるんだろうけど、難しいね。
 三か所ある街には、あたしたち三人が一度は訪れてるし……今のところ、仲間のあてになりそうなのは」
「ブンドル、ガロード、ジョナサン、クインシィ、ロジャー、ソシエ、カミーユ……といったところか。
 ロジャーが上手く接触できているのならば、ナデシコの面々と遭遇することがあっても、すぐに敵対するということはなさそうだが……」
「出来れば、まだ接触していない集団と会いたいですね。まだ会っていないといえば、その……カミーユさんでしたっけ。
 アムロさんの話を聞く限りでは、彼も『あれ』についての知識を持っている……そうなんですよね?」
「ああ。技術者としてだけではない。戦闘についてもエース級の実力。出来る限り早く合流しておきたい人物だ」

だがそれだけではない、という言葉をアムロは飲み込んだ。
二回目の放送で流れたシャアの名前――それがカミーユにどのような影響を与えるのか。
ブンドルが会ったカミーユは、少年と言っていい年の頃だったという。
もし、戦時中のカミーユが、「召喚」されたのならば――
(急ぐ必要があるな……)

「なら向かう先は基地?」
「うん、それが一番いいと思う。アムロさんはどう思います?」
「基地に向かうことを反対するつもりはない……が、基地を最優先にすることには反対だ」

「確かに俺も基地と合流することをブンドルと約束している……だが、それは次の放送までに、というはっきりとした期限がある。
 せっかくJアークという目立つ印があるんだ。合流までに少しでも多くの参加者を集めておきたい。
 基地周辺の地形を見てもらえば分かると思うが、高台にあるこの場所は守りに適している。
 拠点としては十分この上ない――ここに集団がいたとてしても、そうは動かないだろう。
 今俺たちが急いで向かう必要はない。むしろ必要なのは、街や基地――ここから離れている参加者との合流だ」

「今、俺たちはこの殺し合いを止めるために、積極的に他者と接触しようとしている。
 だがこれは、このバトルロワイアルの本来の目的を考えると、非常に効率が悪い行動だ。
 この殺し合いを完遂し――最後の一人になるつもりがあるのならば、重要なのは殺すことではなく生き残ること。
 人数減らしは他人に任せ、周りが疲弊し、自分の勝利を確信できたその時、初めて積極的に殺す側に回る――それがもっとも現実的な戦略だろう。
 ……仮に、殺す気がなかったとしてもだ。生き残るために人が来ないであろう場所に引きこもるというのは、十分あり得る選択だ。
 もし俺たちが街や基地だけを回り、そこで集まった人間とだけで徒党を組むことは、消極的な――巻き込まれ型の参加者を見捨てることに繋がりかねない。
 だから、敢えて拠点になりそうな場所を外し、隠れている参加者も見つけるつもりで探索をするべきだというのが、俺の意見だ」

これには勿論、基地を目指す参加者は自分たちのほかにもいるだろう――という計算も含まれている。
たとえばブンドルだ。先ほどはブンドルがギリギリまで基地を訪れない可能性もあると言ったが、逆に、ガロード達と合流次第すぐに基地へ向かう可能性だってある。
ガロードのおおよその位置は分かっており、ガロードもアムロと合流するつもりがある。二人の合流はたやすいだろう。
それに対し、結果的にはすぐに叶ったとはいえ、アムロとアイビスの合流はいつになるか分からないものだった。
アムロの第一方針がアイビスとの合流であるということはブンドルも理解している。
アイビスとの合流がかなわなければ、アムロが基地へ向かうのもギリギリになってしまう。それを考えれば、早い段階で基地を抑えに回るのが、ブンドルという男だ。
いざとなればガロードとその仲間を基地において、自分は足取り軽く各地を飛び回る……ということさえしてしまうかもしれない。
ブンドルだけではない。基地が拠点として優秀であるというのは、地図を一目見れば誰でもわかることだ。
ここへ向かう人間は、少なからずいるはずである――そう考えての提案だった。

154 :前を向いて ◆YYVYMNVZTk :2008/12/05(金) 13:24:33 ID:t3JM5MiY
「確かにそれも一理あるかも……キラはどう思う?」
「うん、僕もアムロさんの意見に賛成」
「……とりあえず、話し合うべきことは以上か? 悪いが、少しF91の整備をしたい。二人はここで休んでいてくれ。
 それと……それが終わった後、Jアークの施設を使わせてくれないか?」
「はい、大丈夫ですけど……いったい何を?」
「『あれ』さ。……出来ることは試しておきたい」

 ◇

赤毛を肩のあたりでざっくりと切った、多少女っけに欠けた後姿をキラは見つめていた。
――何故、彼女はあんなに堂々と立っていられるんだろう。
アイビスがこの場所に呼ばれてから、どんな風に行動してきたのかを知っている。
彼女とともに行動していた人間が、何人も死んでいったということを、キラは知っている。
それでも彼女は、前を見て、自分の足で立っていた。
キラは、それが彼女の強さか来るものなのか……それを、知りたいと思ったのだ。

「あの、アイビス……さん」
「何? ――あ、それと、呼び方」
「え?」
「アイビス、って。呼び捨てでいいよ。さん付けで呼ばれるのって慣れてないんだ」

そう言ってほほ笑むことが出来る――何故、どうして?
仲間が――友達が死んでいって、それで自分はあんなにも心を揺らして、色んな人に支えてもらうことになった。
でも、アイビスは……独りになってしまったんだ。
その細身の体で、どうやって自分自身を支えることが出来るのか。

「アイ、ビス……聞きたいことがあるんだ」

殆ど初対面に近い年上の女性を呼び捨てにするということに少しばかりの気恥ずかしさを覚えて、それでも疑問はぶつけていく。
聞きたいのは、どこからその力が湧いてくるのか、ということ。

「僕は、仲間と、昔からの友人を亡くしてしまった」
「……うん」
「もう、どうなってもいいと自棄になって……何をするにも、力が湧いてこなくて」
「分かるよ、その気持ち」
「でも、ソシエ……仲間のおかげで、少しだけ立ち直ることが出来て。前を見ようという気になれた。
 ……教えてほしいんだ。僕が、ソシエから元気を分けてもらったように……アイビスにもそんな何かが、あったの?」

キラが零したのは不安だ。これから先――仲間のだれもが無事なまま、この殺し合いを止めて元の世界に帰ってと、そんな理想が叶うとは思っていない。
もしまた仲間を失って、それからまた立ち直れるという保証は、どこにもない。
また、誰かの助けを借りて……? いや、それでは駄目だと、キラはそう思ったのだ。
この先、誰が死んでもおかしくないのだから。誰かを支えにしなければ、自分だけでは立って歩けないような、そんなことにはなりたくなかった。
キラの言葉を受けたアイビスは、少しだけ考え込み、静かに話し始めた。

「あたしの場合は、……やっぱり、仲間、なんだよね。さっきも話したけど、ジョシュア、シャア、クルツ、ラキ……みんなあたしを助けてくれた。
 だからその分、みんなに胸を張って、あたしはみんなの分も生きているんだ――って、自信を持って言えるようになりたい。いや、ならなくちゃいけないんだ。
 うん、だから別に――あたしが強くて、キラが弱くてなんて、そんなことはないよ」

見透かされた――!? 自分の質問の奥に隠れていた真意を言い当てられ、言葉に詰まる。
キラの様子を見たアイビスは、フッと微笑み、言葉を続ける。

「まぁあたしも……今のキラより、ううん、きっと落ち込んでた時のキラよりずっと酷い状態が長いこと続いてたからね。
 さっきも言ったでしょ? キラの気持ちが分かるって。自分がそうだったからなんだよね」
「でも……! やっぱり僕は、弱い人間だ! こうやって人を頼って、それでようやく少し安定して……
 本当は、今だってどうすればいいのか、何をすればいいのか分からないんだ。
 さっきは仲間を集めたいなんて言ったけど、実際にアスランやカズイを殺した人と会った時、仲良く手を取り合うなんてことが出来るなんて思えないんだ!」
「いいよ、今はそれで」

155 :前を向いて ◆YYVYMNVZTk :2008/12/05(金) 13:26:05 ID:t3JM5MiY
「今はそれでいい――どちらにせよ、選ばなきゃいけない時が来るんだから、それまでいくらでも悩んでいいよ。
 きっと、悩んだ分だけ良い結果になる……少なくとも、悩みもせずに周りに当たり散らしていたあたしよりは、ね」

アイビスの言葉は――と、そこで全てを台無しにする音が鳴った。
血糖の値が一定を下回ることにより、身体のとある部分の活動が活発になり――内在する空気を圧縮し、音と成す。
空腹を示す音だ。

「あ……あはははは……よく考えたらあたし、ずっと何も食べてないんだ……」
「……ぷっ、……はは……あははははは」

バツが悪そうな顔をして照れ隠しに笑うアイビスを見て、思わず吹き出してしまう。
そういえば、ずっと笑っていなかったなと、ようやくそのことに気づけるくらいには心に余裕が出来ていた。

「それじゃ、アイビス……アムロさんが戻ってきたら、一緒に御飯にしようか」
「う、うん……どうしよ、せっかくお姉さんぶるいい機会だったのにぃ……」

 ◇

そんな二人の微笑ましい光景を、物影から見守る男がいた。アムロである。
F91の整備も終わりブリッジに戻ってこようとしたところ、先ほどの場面に遭遇したのだ。
心配していたアイビスの精神状態も良好であるということが分かり――キラの心の内を聞くこともできた。
若い二人を導くのは自分の仕事だと、アムロは了解している。
自分がホワイトベースでブライトやミライに一人前の男に育ててもらったように――今度は、アムロがキラとアイビスを助ける番だということだ。
懸念は、二人がこの殺し合いの空気に呑まれ、暴走してしまうことだった。
だが、今の二人を見ている限り、しばらくはその心配をする必要もなさそうだ。
(頑張れよ、キラ、アイビス。俺はいつでも見守っているぞ……!)

……しかし、見守られる側には慣れているが、見守る側になるというのは新鮮だと、アムロはそう感じていた。


【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:正常
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能?、各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%、反応弾を所持。
 現在位置:D-2
 第一行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第二行動方針:ナデシコ組と和解する
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復。】

【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。
       無数の微細な傷、装甲を損耗、EN残量1/2(ENの減少により長距離バイタルジャンプの使用不可)
 現在位置:D-2
 第一行動方針:Jアークと共に仲間を集める
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:軽度の疲労 頭部から出血(処置済み)
 機体状態:ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ
 現在位置:D-2
 第一行動方針:Jアークと共に仲間を集める(カミーユを優先)
 第二行動方針:Jアーク内の施設で首輪を解析
 第三行動方針:基地にてブンドルと合流
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
    首輪(エイジ)を一個所持】

【二日目9:00】

156 :それも名無しだ:2008/12/05(金) 13:27:01 ID:J2rB83wc
支援

157 : ◆YYVYMNVZTk :2008/12/05(金) 13:28:19 ID:t3JM5MiY
投下終了です。
誤字脱字、矛盾点などありましたらご指摘ください。
うーん、無難な展開だなぁ……w

158 :それも名無しだ:2008/12/05(金) 18:04:55 ID:n38Pldrr
投下乙です
集団が明確に分けられてきて中盤過ぎたって感じだな
しかし陰からじっと見守ってるアムロに吹いたwこのアムロは原作というよりスパロボちっくだな

>「確かに俺も基地と合流することをブンドルと約束している……だが、それは次の放送までに、というはっきりとした期限がある。
基地「と」、じゃなくて基地「で」じゃない?細かいことだけど
>キラは、それが彼女の強さか来るものなのか……それを、知りたいと思ったのだ。
「強さから」来るもの・・・だと思うんだが、らが抜けてるね

でF91が補給済んでるようだけど、合流前に補給したってことかな?ブレンはEN減ったままだし
あとは>>149-151でもあるようにキラからF91についてなんか言及ほしいと思ったが・・・これは話し合いの中で済んでるっぽいな

159 :それも名無しだ:2008/12/05(金) 20:54:26 ID:RnOULehk
投下GJ!
アムロの姿が壁際のいぶし銀ことギリアムさんとかぶって笑ってしまったw
しかし、キラはロワ内での人間関係に結構恵まれてるなぁ

矛盾点ではないですが、アムロとブンドルの取り交わした基地合流とキラ&ロジャーの計画しているE-3合流の目安が共に次の放送時ですので、多少触れておいたほうがいいような気はしました。

160 : ◆YYVYMNVZTk :2008/12/06(土) 01:13:57 ID:KlaLr+fS
えっと、色々と描写不足なので一旦破棄して加筆しますー
ちょっと週末が忙しくて時間取れそうにないので来週以降からしか取り掛かれないんですが……
完成度低いものを投下してしまってすいませんでした。

161 :それも名無しだ:2008/12/06(土) 17:03:58 ID:/GZiSoVq
お姉さんぶろうとするアイビス萌え
個人的には完成度低くもないと思いますが、応援してますー

162 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/08(月) 19:44:43 ID:Ghtw3NFv
ナデシコ組+ブンドル予約します。

163 :それも名無しだ:2008/12/08(月) 22:24:08 ID:1nW55x6V
執筆頑張れー
ブンドルが接触か……はてさてどうなることやら

164 : ◆YYVYMNVZTk :2008/12/09(火) 02:51:21 ID:jmMqa97c
少し考えるところがありますので、今回投下した「前を向いて」を完全に破棄します。
破棄理由については私自身の問題が大きいので割愛させていただきますが、皆様の指摘などとはまた別の問題なので指摘したことについて気に悩まないでくださいませ。
むしろこれから先も気になる点などあればガツンガツンと突っ込んで下さいな。
あー、書き手を辞めるとかそんな深刻な問題でもないので心配ゴム用です。それでは!

165 :それも名無しだ:2008/12/09(火) 13:42:45 ID:Jyv+91Kf
破棄かー
特に問題ない内容だけに次に書く人はやりづらいだろうな

166 :それも名無しだ:2008/12/09(火) 20:07:15 ID:/9dBWeT2
…アイビスはまた修羅王の如くボッチか…
破棄残念ですが氏が納得しないのであれば仕方ないと思います
次の投下待ってます

167 :それも名無しだ:2008/12/11(木) 20:06:29 ID:R/vWQgWS
今回もバサラが起きないに2000BS

168 :それも名無しだ:2008/12/11(木) 20:53:51 ID:6k98ULpK
バサラは前回既に起きているに9999BS

169 :それも名無しだ:2008/12/12(金) 15:51:36 ID:bqjGHTtO
後ろから突然投げ飛ばされた俺は、身体を地面に叩きつけられた。
その時頭を打ってしまった俺の視界は、白黒に暗転する。
俺は、どうなってしまうんだ。自分の目に涙が溢れていることに気がついた。
朦朧とする意識の中、俺は顔を上げる。そこには、女の子が自分に向けて手を差し出している。
そんな彼女のやさしい表情に、どこか安堵を覚えながら――

――俺は、再び気を失った。



という感じのオチに1000BS

170 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:47:42 ID:6U3ZVuzX
細長いスティック状の包装紙が破かれて、クリーム色の粉末がマグカップの底に降り積もった。
そこにこぽこぽと柔らかい水音を立てて、ポットからお湯が注がれていく。
200mlほどだろうか? 規定の量まで溜まったお湯を覗き込むと栗毛の少女はスプーンでゆっくりとかきまぜる。
途端に鼻先をくすぐる優しい匂いが湯気と共に立ち昇り、狭い医務室の中に満ちて行った。
男は背もたれのない丸い椅子に座ったまま、ぼんやりとそれを眺めていた。
混ざり具合を確かめて「よし」と小さく呟く声が耳に届く。
カリッと香ばしく揚がったフライドオニオンの顆粒がそこに加えられ、琥珀色の澄んだスープに小麦色が浮かび上がる。
コンソメ風味のオニオンスープ。彼女は出来上がったそれを差し出してきた。

「はい、どうぞ」

両の手で受け取る。「熱いから気をつけて」と付け加えた彼女の言葉を無視してほとんど一息に飲み干した。
実際問題として喉は渇いていた。だがそうしたのは何もそれだけが理由ではない。
熱の塊が喉を下っていき胃に収まっていくのを感じながら、願う。

――頼む。この痛いほどに渇いた喉のせいであってくれ、と。

まだオニオンスープの匂いが立ち込める医務室の空気。それを鼻と口で吸い込み、肺に溜め込む。
熱いスープに軽い火傷を負った舌がヒリヒリと痛む。その痛みと引き換えに潤った喉で声を出そうとしてみた。
肺から搾り出されていく空気。だが、鳴ったのは擦れ声とも言えないほどに擦れた『音』だった。

――クソッ!! 駄目か。

椅子に腰掛けたまま猫背に背中を丸めて、前傾姿勢に俯く男。その髪の下で口元だけが正体なく笑う。
それは自嘲だったのだろう。自嘲だったのだと思う。だが、音にならない笑いは自嘲にすらなりはしない。
ふっと気づくと目の前に右腕が差し出されていた。釣られて視線を上げていくと、前かがみに覗き込む顔と目が合った。
その顔が笑って言う。

「宇都宮比瑪。私の名前。よろしくね」
「兜甲児だ。その、すまねぇな。投げちまって。あんたは?」

ばつの悪そうな声に振り向くと威勢の良さそうな少年が、目に留まった。
反射的に名前を言おうとしたが、やはり声は出ず虚しく口だけが動いた。思わず溜息が漏れる。

「やっぱり……あなた、声が出ないのね」

その仕草に察したのだろう、ヒメの声だった。頷く。

――何かないのか? ここは医務室だろ? 薬とか、何か。

同時に口が動いていた。
それに気づいて苛立つ。声が出ない。話すことが出来ない。言いたいことが伝わらない。
それなのに気づくとつい口を動かしている。声もでないのに。意味もなく、だ。
それらは人を苛立たせるのに十分な力を持っていた。思わず唇噛み締めた。
視線を落とした自分に合わせてしゃがみ込み、覗き込んだヒメが言う。

「そう。でも大丈夫。きっと何とかなるわ。だから諦めないで」

不思議な温かみのある声の持ち主だった。
少し考え、ちょっと悩み、大きな溜息一つで気持ちを切り替えた気になってみる。
その後で、紙を持ち、ペンを握り、口を動かす仕草でそれらを要求した。
ジッと見ていた甲児が理解したのだろう「ちょっと待ってろ」と言い残して医務室を後にする。

「ほら、大丈夫。声が出なくてもあなたの言いたいことを分かってくれる人達が、ここにはいるから。ね」

微笑みに釣られて思わず笑う。そうした後で、思い通りにならないおも歯がゆさが心を占める。
不意に込み上げてきた『何やってるんだろうな、俺は』という思いをどうすることも出来なった。


171 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:48:32 ID:6U3ZVuzX
 ◆

狭い和室を沈黙が満たしている。一脚のちゃぶ台を挟み座り込むのは二人の男。
一人はゆったりと落ち着いた所作で急須を手元に引き寄せて、湯飲みに茶を注いでいる。そして、もう一人は――

――話したいことがあるなら話してみればどうだ?

その言葉を反芻していた。
話したいことならある。だが、それは話せることのなのか? いや、話さなければならないことだというのはわかる。
ほっておいてもいつアムロと合流してもおかしくない状態にあるのだ。
それまでに話しておくべきだとは思う。だけども、大丈夫なのだろうか?
アムロ=レイがニュータイプと呼ばれる人間であること。それをこのニュータイプを目の敵にする男に話して大丈夫なのだろうか?

「ガロード」

難しい顔で手にした湯飲みを覗き込んでいた顔が、呼ばれてハッと持ち上がる。
名前を呼んだ目の前の男が、茶の湯を啜りながら気楽な様子で眺めていた。

「茶が冷めるぞ」

言われて慌てて口につける。熱い煎茶が喉を下り胃に納まっていくのを感じた。
言うか言わまいか悩む理由は他にもある。この男の態度が違いすぎるのだ。
ティファを狙い、何度もフリーデンを手こずらせてきたはずのこの男の姿。それは狡猾で冷たいもののはずだった。
だがしかし、ここで甲児や比瑪に見せている姿はそれと大きく異なる。
何というか、何か悪いものでも食べたのではないかと言いたくなるようなその姿は――

「おぉ、茶柱が」

――ともすれば同一人物かと疑いたくなる、えぇそりゃもう本当に。心の底から。
というか外見と過去の記憶の一致がなければ多分疑っていた。それほどに違うのだ。
だからこそ悩む。
以前のシャギア相手ならば語れるはずがない。
しかし、今のシャギアならば、この甲児が信頼を寄せるこのシャギアにならば話してみてもいいのではないか?
そう思えてくるから不思議であり、悩むのだ。
だが、その一方で騙されるな、と叫ぶ声がある。これは狡猾な奴らの罠なのだと言う声が振り払いきれない。
その声を消し去って無条件で信用できるほど、二人の溝は浅くはない。
だからだろう。ガロードは、その中途半端な心構えのまま話を切り出してしまうこととなった。

「シャギア……」

 ◇

「シャギア……俺には今あんたを完全に信用することは出来ない。だから聞かせてくれ。
 もし……もしも、ここにニュータイプがいたらあんたら兄弟はどうする? やっぱり戦うのか? それとも……」

湯飲みを両の手で支え、その深緑の水面に落とし込んでいた目線。それが不意に持ち上がり、その思い悩んだ表情のまま問いかけてきた。
それに対し、シャギアは考え込む表情を作りながらその背景へと手を伸ばしていた。
ここであえて、自分ら兄弟における禁句とでも言うべきニュータイプを話題に持ち出す必然性はない。
だがそれは、ここにニュータイプと呼称される者がいなければの話だ。
それをあえて話題に持ち出したガロードの背景はここでニュータイプとの接触を持ったこと、と考えるのが自然。
となると次なる疑問は、それは誰なのか、ということになる。
ホンの数分前の記憶を辿る。
これまでにガロードとの接触があり、且つ自分との面識のない生存者は3人――クインシィ、ブンドル、アムロ。そしてアムロが探していると言うアイビス。
無論、ガロードが名前を伏せていると言う可能性も否定できないが、一先ずの候補としてはこの4人。
では、だ。ではここでガロードの問いに何と答えるべきか?
YESか? 論外だ。それを口にすれば二度とこの話題をガロードが持ち出さないどころか、下手をすれば敵対も有り得る。
それならば、NOか? 確かにYESよりは数段マシな選択。上手く行けばニュータイプの特定も可能かもしれない。だがしかし、これも論外だ。

172 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:49:59 ID:6U3ZVuzX
目を見れば分かる。ガロードがこちらを信用しきれないと言ってきたことは、おそらく事実。
無理もない。我らの間柄を考えればそれは当然とも言える。それに自分とてガロードを信用しきっている訳ではない。
その状態ではYESと答えても信用はすまい。むしろかえって疑いを深める可能性がある。騙すつもりなのでないか、とな。
ならばどう返せばいいのか? 答えは出ている。

「仮にだ、ガロード。仮に私がここでニュータイプと争うつもりはない、と答えたところでお前はそれを信用できるのか?」

グッと詰まった顔が考え込み、「信用……できないと思う」と返してきた。
ほぼ予想通りの答え「ならば」と口を開けようとして「だけど」とガロードが言葉を重ねた。

「だけど……俺には難しいことはわからないけど、ニュータイプもただの人間だって、そんな言葉は幻想だってあんたら兄弟も気づいているんじゃないのか?
 人の声が聞こえる。フラッシュシステムを扱える。たったそれだけの違いじゃないか。それなのに何でそんなにニュータイプを憎む」
「たったそれだけの違いだとッ!?」

思わず気色ばんだその叫びは、自身の内奥へと許可なく一歩踏み込んだ者、強引に過去の傷口を広げた者に対する警告の声だった。
一瞬感情的になり、失態を犯した自分を自覚すると同時に、腹の底からドロドロと込み上げてくる怨念を感じ取る。
理屈ではない。これは拒絶だ。これ以上触れてくれるなと言う心の声だ。
その心を落ち着かせるために一つ大きく息を吐く。それで気持ちを切り替えたつもりなって、落ち着き払った仮面をかぶり直す。

「そうだ。その通りだ、ガロード=ラン。
 我ら兄弟と奴らの違いはフラッシュシステムに適応しているかどうか、兄弟以外にも感応能力があるか否か、たったそれだけの違いだ」
「なら何で!」
「黙れッッ!!」

だが、一度開いた傷口は簡単には塞がらない。溢れ出す血のようにシャギアは自身の意思に反して話し始めていた。

「貴様に我ら兄弟の何が判る? 貴様の言う『たったそれだけの違い』で運命を歪められたのだ。
 その違いを『たったそれだけ』などとは、よくも言えたものだ」
「だからってニュータイプ全てを怨むなんて間違ってる!!」
「ガロード=ラン、何の力も持たぬお前には判るまい……いや、こう言えば少しは判るか?
 ニュータイプと言うものの存在が、ニュータイプと言う幻想が我ら兄弟の運命を捻じ曲げたのだ。
 私だけならばいざ知らず、私の弟の運命までもだ」
「でも……」
「ガロード、お前はティファ=アディールに手を出した者を許しはしまい。それと同じなのだよ。
 私はそれと同じ理由で、私とオルバの運命を歪めた者達を決して許しはしない。ただそれだけのことだ」
「それでも……」
「ならば、聞く。今お前は、お前の運命を捻じ曲げたあのノイ・レジセイアという存在に何を感じている? 何をしようとしている?
 仲間を、多くの人間を殺したその存在を許せない。打ち滅ぼし、この捻じ曲げられた運命から逃れてみせる。違うか? 違うまい」
「……」
「それと何も変わらないのだ。ニュータイプという存在が、幻想が世界に存在する限り、我らはこの運命から、過去から逃れられない。
 だから抗い、抵抗する。そして、ノイ・レジセイア、私と私の弟の運命を捻じ曲げたそのもう一つの存在も、許しはしない」
「……」
「それにはお前の力も必要だ。何もティファ=アディールの敵となれと言っているのではない。
 元の世界に戻るまででいい……私の元へ来い。私の力になれ、ガロード=ラン」

どこまでが本心で、どこからが作為によるものか。それはシャギア自身にも判別はつかなかった。
ただ、その胸の内を曝け出す恥ずべき行為の途中から、冷静な意図が介入し、最後の言葉へと帰結させたことだけは確かだった。
いや、見栄がそう思わせているだけ、そんな気もしていた。
だが、何にせよガロードを懐柔する為に一つの賭けに出たことは間違いなく、その結果は目の前の少年に委ねられている。
眉間に皺が寄り瞳をきつく閉じて、より苦渋の色を深くしたその顔が悩み、そして搾り出すような声で言った。

「……ごめん。やっぱり俺には手放しであんたらを信用することなんか出来ない」

そこで一度言葉を区切った少年が顔を上げ、迷いを残しつつも強い光を瞳に宿しつつ「だから」と続けた。

「だからシャギア、お前と一緒に行ってお前を見張ってやる。下手なことしでかせば背中から撃つからな。覚悟しろよ」

その返答に「それでいい」とほのかに笑ったその瞬間、腹の底に響き渡る重低音がナデシコを揺らした。


173 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:50:56 ID:6U3ZVuzX
 ◆

時間は少し遡る。医務室を後にした甲児は、急ぎ通路を駆けていた。
右手と左手に何かを持つ仕草。その上で口を動かしたのだ。あの男が要求する物は一つしかない。
あの男は半日以上も機体の中に閉じ込められ眠っていたのだ。それを要求するのも無理もない。
それに直前のあの様子に甲児は確信の念を固める。脳みそをフル稼働させてた甲児が間違いないと結論付けたその答えは――

「待ってろよ! 今、美味しい食い物をたらふく持ってってやるからなッ!!」

食べ物だった。甲児の理屈はこうだ。
日本人にとって右手とは箸を持つ手に他ならず、左手はすなわちお椀を持つ手を意味する。
動かした口は物を租借する動作を表しているに違いない。
一部の隙もないこの理論を駄目押ししているのは、直前の男の様子である。
あの熱いスープを一飲みに飲み干したのだ。よほど腹が減っているに違いない。
ならば何か美味しいものを食べさせてあげようと言うのが、善人たる甲児の理屈である。
そこで最初に足が向けたのが今朝の団欒を過ごした和室だったのだが、よくよく考えるとあのときの朝食はみんなで食べつくしてしまった。
唯一残っているのはシャギアと取り合い、最終的にはゴミ箱に捨てられた厚焼き玉子だけ。
と言うわけで、あれはもったいない事をしたなと思いながら、和室はスルー。
次に思いつくのは当然食堂だ。
地球から火星への往復にも耐えられる貯蔵量を誇り、且つナデシコクルーの多種多様な注文にも対応できるように設置されたその冷蔵庫。
それは食材の宝庫と言っても過言ではない。
唯一の欠点は、プロの料理人が在籍する戦艦故に、そのまま食べられる物よりも食材が収められているということだろうか。
一応のぞいてみたが、甲児に調理する気ははなからなし。戦利品のリンゴを齧りつつ次なる目的地へGO!!
和室も食堂もダメとなれば、あと思いつくのはブリッジ。
目当ては支給品袋。そこにはシャギア・甲児・ヒメとあの男4人分が置かれている。
ブリッジの気密戸を潜りるとさっそく目的のものを見つけた。リンゴを口にくわえ、両の手で紐を解くと中をがさごそと漁っていく。
自分のものとシャギアのものを漁り終えたが、碌な食べ物がない。続けてあの男の荷物に手をつける。
やっぱり碌な物がない。
となると、残されているのはヒメの荷物。
何かこう女の子の荷物を漁るのは、いけないことをしているようで(実際しているのだが)ドキドキしてくる。
ゴクリと生唾を飲み下す。周囲を必要以上に見回し、そ〜っと手を伸ばそうとしてそれに気づいた。
ブリッジの外。モニターに大きく映し出されているのは鋭角に尖った二つの巨大な目。
それがブリッジを覗き込んでいる。
呆気に取られてポロリとくわえていたリンゴが床に落ちる。
一拍遅れてようやく動き出した頭が咄嗟に思い浮かべたのは、敵の一字のみ。直感的に思い浮かべたそれを疑う暇もなく行動に移った。
コンソールに齧り付き、IFSを通じて甲児の意思がオモイカネに伝わる。そして、甲児の叫びと同時に――

「これでも喰らえ! グラビティーブラストオオォォォォオオオオオオオ!!!!!」

重力の荒波は放たれた。まるで見当はずれな勘違いと共に……。

 ◆

結果から言おう。そのグラビディブラストの一撃は戦端を開くには到らなかった。
事の流れはこうだ。
今から二十分程前、ナデシコの姿を確認したブンドルは近づきつつ通信を入れた。
しかし、折り悪くブリッジは留守であり、またその他の機体のいずれにも応答はなかった。
応答も攻撃もないことを怪しみつつ、ブンドルは接近を続ける。そしてそのままナデシコの間近まで来てしまったのだ。
周囲を飛び回りつつ無人か、と思わないでもなかったが、それにしては甲板に係留されている機体の数が多い。
加えて、アムロから聞いているガロードの機体の特徴に一致する機体もあった。
勝手に艦内に侵入するわけにもいかず応答のないまま待つこと十五分。
痺れを切らしたブンドルは本当に無人か、とサイバスターでブリッジを覗き込んでいたのである。
すると不意に放たれたのが先ほどのグラビティブラストの一撃である。
その一撃は位置的な関係によってサイバスターに直撃することはなく街を焦がしただけのはた迷惑な結果に終わった。
その直後、ブリッジにガロードが駆けつけたことによって事なきを得たのである。
以上がここまでの流れ、そして今――

「手短に済ませたい。この艦の航路は?」


174 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:52:08 ID:6U3ZVuzX
ブンドルはサイバスターに、ガロード・シャギア・甲児の三人はブリッジにいる形で話し合いが始まっていた。

「細かくは決まっていないが、北東の四ブロックで回遊行動に移るつもりだ」
「そうか……なら、私と行き先が異なるな。私は今すぐと言うわけでもないが基地を目指している。航路を曲げれないか?」
「基地に、か?」
「ああ、そこでアムロとの合流を予定している」

ふむ、と考える素振りを見せたシャギアの横でガロードは、それはまずいと思った。
アムロとシャギアが顔を会わせればどうなるのか、良い方に転がるとはとても思えない。
だから話を反らそうとしたその矢先に――

「悪いが無理だな」

シャギアが口を開いた。

「四ブロックでの回遊行動は特に目的があってのことではない。だが、我々はそこで別働隊との合流を予定している」
「別働隊?」
「私の弟オルバ=フロストとフェステニア=ミューズの二名だ」
「そうか……ならばガロード、アムロに代わって迎えに来た。悪いがついて来てくれ」
「へっ? 俺??」

突然振られた言葉に素っ頓狂な声が上がる。そんな様子に構うことなくブンドルは続けていく。

「基地に勝ち残りを狙う者が複数いた場合、その者達の腕次第では私の手に余ることも考えられる。同行する仲間が必要だ」
「無理無理無理……絶対無理ッ!!」
「何故だ?」
「何故って……」

シャギアからは目は離せない。本当に信用できると思えるようになるまで、目を離さないと決めていた。
だからと言って甲児の前でそれを言うわけにもいかない。だからもう一つの理由、それだけを口にする。

「お姉さんがまだ眠っているんだ。それを置いては行けない。
 それに、目を覚ましたときに知らない人ばかりだと、きっとあの人は一暴れすると思う。
 だから俺の代わりに甲児、ブンドルさんについて行ってくれないか?」
「えっ? 俺??」

ほとんど同じ言葉で、今度は甲児が素っ頓狂な声を上げる番だった。しかし、そこに横から声が割り込む。

「無理だ。ガロード、甲児君には機体がない。甲板に係留している緑のMSがあるとお前は思うだろうが、あれは戦力にならない。
 MSと言うよりも重機と理解したほうがいいくらいの代物だ」
「俺の機体――ストレーガを甲児に貸すよ。代わりにシャギア、ナデシコの航路を曲げてB-1にちょっとよってくれないか? 
 オルバとの合流も今すぐって訳でもないんだろ? 機体を一つ隠してる。それまでは……お姉さんの機体でも借りてるさ」
「話は纏まったようだな。甲児君、宜しく頼む」
「おおよ! ブンドルさん、この兜甲児様が加わったからには大船に乗った気でいてくれ!!」
「期待しているよ。それとここまでのナデシコの話、道中聞かせてもらうとしよう」

威勢良く答えた甲児に、余裕を持った微笑で答えたブンドルとの通信がそこで切れる。
それを合図に人々は動き出し、俄にナデシコが出発の喧騒に包まれて、賑やかさを増していく。
そして、程なくサイバスターと共に艦を離れたストレーガの姿が北東の空に消えていった。
それを見送った戦艦ナデシコは航路を南西に取る。そうして長きに渡り根城にしていた南部市街地を離れ始めていった。




175 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:52:56 ID:6U3ZVuzX
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:主催者に対する怒り、疲労(主に精神面)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:D-8北西部
 第一行動方針:他の参加者との接触
 第二行動方針:次の放送までに基地へ向かう
 第三行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第四行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
    空間の綻びを認識
    ガウルンを危険人物として認識
    操者候補の一人としてカミーユに興味】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:良好
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:D-8北西部
 第一行動方針:ブンドルに同行
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【ガロード・ラン 搭乗機体:なし
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:なし
 現在位置:C-8南西部(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:シャギアを見張る
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好、テニアを警戒
 機体状態:EN55%、各部に損傷
 現在位置:C-8南西部(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:首輪の解析を試みる
 第二行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第三行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。
 備考2:首輪を所持】




176 :判り合える心も 判り合えない心も ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:53:46 ID:6U3ZVuzX
一方その頃医務室では――

「甲児君、遅いね。紙とペンを探してどこまでいったのかな……」
「……」

甲児の帰りを待ちわびている人達がいた。



【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
 機体状態:EN90%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:バサラを助ける
 第二行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
 最終行動方針:主催者と話し合う
 備考:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容】

【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声不可
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:紙とペン……
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積(小)、胸に裂傷(小)、ジャガー号のコックピット破損(中)※共に再生中
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ格納庫内)】

【二日目9:10】


177 :それも名無しだ:2008/12/13(土) 18:54:26 ID:zGQzuaVB



178 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/13(土) 18:58:06 ID:6U3ZVuzX
投下終了です。
メインはナデシコのメンバー組み換えとシャギアです。
バサラと入れ替わりで今度は姉さんが寝たきりなりそうな予感がしないでもなかったり。
誤字脱字や問題点などのご指摘宜しくお願いいたします。

179 :それも名無しだ:2008/12/13(土) 19:01:43 ID:zGQzuaVB
投下乙!
やっとバサラに日の目が当たるのかw
あと忘れられてたマジンガーも…って甲児が乗るんじゃないのかw

180 :それも名無しだ:2008/12/13(土) 19:06:41 ID:zGQzuaVB
あ、あとちらっと出てるけど状態表に旧ザクあるって追加した方がいいんでは
前の話から削除されてるけど破壊されたわけではないし

181 :それも名無しだ:2008/12/13(土) 19:40:44 ID:VB1XhAg/
投下乙!
シャギアの掘り下げが上手いなぁ……今後ガロードとどういう風に関わっていくのか楽しみ
そしてバサラ完全復帰ktkr! 今まで空気だった分、これから頑張ってほしいぞ!

182 :それも名無しだ:2008/12/14(日) 15:35:03 ID:uOJ4rtdQ
投下乙!
バサラ覚醒おめでとう。
声が出ないことに気づいたはいいが……治る見込みはなく、代わりに歌ってくれそうなラーゼフォンも大破。
このままではアイデンティティの危機だぞ。
これまではほのぼのしていたナデシコも
シャギアとガロード、フロスト兄弟とバサラ、テニア、眠れるDQNクインシーなどが一同に会して、きな臭くなってきたなw
ムードメーカーの甲児も抜けちゃったし。

183 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/14(日) 17:53:29 ID:phgroaD6
ご指摘とご感想ありがとうございました。
ご指摘いただいた旧ザク関係は、状態表を下記のものに修正・追加でよろしくお願いいたします。


【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
 機体状態:EN90%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル90%消耗
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:バサラを助ける
 第二行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
 最終行動方針:主催者と話し合う
 備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容
 備考2:ナデシコ甲板に旧ザク・真ゲッター・ヴァイクラン係留中】

【旧ザク(機動戦士ガンダム) 
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:C-8南西部(ナデシコ甲板) 】

184 :それも名無しだ:2008/12/15(月) 04:39:10 ID:sNCAly0w
>>182
なあに、ペガスがいるさ
おお、ダニーボーイ……

185 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/15(月) 19:53:03 ID:tbktLTkB
ひっそりと……キラとアイビス、アムロを予約します

186 :それも名無しだ:2008/12/15(月) 20:55:06 ID:dVu0c5rm
お久しぶりの本家書き手さんキター!!
期待してお待ちしております。

187 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 00:18:34 ID:z546WQUs
おお!
予約期待!!

ここでアイビスが動くと進行が遅れているのが基地組のみになるな。
しかし、絵板の書きかけの絵を見てるとキョウスケに勝ち目なさそうに見えてくるから心配だ。
機体の戦力差とパイロットの腕の差のどっちがでかいんだろうな。

188 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:17:30 ID:3dChaLgo
「こちらはJアーク、キラ・ヤマト。もしこの声が聞こえていたら、応答願います。こちらはキラ・ヤマト、戦う気はありません」

補給を済ませ、休息を取っていたアイビスの耳に届いたのは少年の声だった。
食べかけのパンを放り出し、慌てて物陰に伏せさせていたネリー・ブレンのもとへ戻る。
発信源を探すまでもなかった。声の主は巨大な戦艦で、なんら警戒もせずに街の中央に陣取っている。
あの位置からならクルツの機体が引き起こした爆発の痕跡を見てとれるだろう。
声の主はここで大規模な戦闘があったと推測し、生存者がいないか呼びかけているのだ。
呼びかけに応じるかどうか、逡巡する。
見たところあの機体、いや戦艦は100mはあろうかという威容で、大してこちらのネリー・ブレンはせいぜい10mといったところ。
機動性はさすがに勝っているだろうが、そこかしこに見える砲門やミサイル発射管は凄まじい火力を容易に連想させる。
こちらは一度でも直撃を食らえばそこで終りだが、あの巨艦はたとえ全力でチャクラ光を放ってもそう簡単に落ちはしないだろう。
戦力差から接触すべきではないか、という結論に落ち着きかけたところで、再び声が響く。

「もし誰かいるのなら、聞いて下さい。僕は主催者に反抗する仲間を求めています。
たしかに脱出するより勝ち残る方が生きて帰れる確率は高いのかもしれません。でも、それではダメなんです。
たとえ優勝できたとしても、その人が無事に解放される確証なんてないし、もしかしたら用済みだって殺されるかもしれない」

声にはどんどん熱がこもってきた。誰かに聞かせているというよりは、自分の中の想いを言葉にして確かめているという印象だ。

「僕には戦うことを……生きることを否定することはできません。大事な人が殺されたのなら、殺した誰かを憎む、ことは……当然のことです。
でも、この世界ではそれが全てではないはずです。襲われたから、撃ってきたから撃ち返した、そんな人もいるでしょう」

アイビスの脳裏に今はもういない人の顔がよぎっていく。
自分を守って死んだジョシュア、シャア、クルツ、ラキ。そして彼らを殺したギンガナムに抱いた目も眩むほどの殺意。

「僕も、友達を……大事な人を、失いました。一度はその人たちを生き返らせたいと思ったこともあります。
 でもきっと、彼らはそれを望まない。誰かの命を対価に生き返ることを、そのために僕が誰かを殺すことを、絶対に許しはしないでしょう」

彼らはどうだろうか? もしアイビスが戦い、勝ち残ることで生き返ることができるのなら、望むのだろうか?
……考えかけて、しかしそう考えること自体が、命を賭けて自分を守ってくれた彼らに対する侮辱になると、思った。

「だから僕はこの戦いの原因を討ちます。無謀なことだけど、それがきっと、みんなの……もういない人たちへの、弔いになると思うから」

まず生きることを考えていたアイビスに、その声は道を示してくれたような気がした。
勝ち残るよりも、主催者を倒して、生きて帰る。それこそが彼らに報いるただ一つの―――
ふとモニターを見れば、戦艦が回頭していく。応答はないと判断し、ここを離れるようだ。

189 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:19:00 ID:3dChaLgo
「もしこの声を聞いていて、でも信用できないと思う人がいるなら。僕は次の放送の時にE-3地点にいます。
 そこに多くの人を集めて、話し合うつもりです。少しでも戦いたくないと……優勝以外の道があると思うのなら、来て下さい。
 僕は、僕のできる限りの力で、戦いたくないという人を守ります。だから、」
「待って!」

気がついたら叫んでいた。まだ喋っている途中だった戦艦の主は、突然響いた自分以外の声に驚いたか言葉を切った。
ネリー・ブレンを浮上させる。ほどなく、戦艦もこちらに気づいて転回した。

「あなたは……?」
「この機体はネリー・ブレン……私はアイビス。アイビス・ダグラス。戦うつもりはないよ」

砲門が向いていても、きっとあの声は撃たない。アイビスはそう確信していた。
いかに機体に自信があろうと、戦いに積極的ならああも無防備に隙を晒すことはないはずだ。

「あたしは……あたしも、ここから生きて帰りたい。勝ち残る以外の方法で。でも、一人じゃどうすればいいか、わからなくて、ええと、なんていうか……」

威勢良く声を上げてしまったが、まだ何を言えばいいか頭の中で纏まっておらずしどろもどろになった。何か言わねば、と焦って口にしたのは。

「つまりその、そう、あたしもあの化け物を倒すのを手伝いたい! ……ってことなんだけど……」

端的だが、言ってしまえばこれがまさに自分のすべきことだという気がしてきた。
どのみちそろそろ動かねばならないと思っていたし、少なくとも好戦的ではないであろう少年は情報交換などの接触の相手としては申し分ない。

「……」
「……あの、何か言ってほしいんだけど」
「あ、すみません! ええと、僕と一緒に戦ってくれるんですか?」
「うん、さっきの演説聞いちゃったしね。よろしく……キラ」
「あ……よろしく、お願いします。アイビスさん」
「呼び捨てでいいよ。そんなに歳離れてなさそうだし」

こうして、共に大事な人を失いながらも歩みを止めない少年と少女は出会った。

190 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:20:34 ID:3dChaLgo
          □


やってみて良かった、キラは心底そう思った。あれだけの爆発の痕跡からして、正直なところ生存者はいないと思っていた。
キラとしてはこの後接触するであろうナデシコとの対話に向けての予行演習のような気分で喋っていた。
そこにまさか応答が、それも自分の目的に賛同する者が現れるとは。
ロジャーと別れた後(いつの間にかいなくなっていたソシエは、まあロジャーと一緒なら大丈夫だろうと考えることをやめた)、補給の必要のないJアークでは補給ポイントに寄る意味もなく、ならば市街地で人を集めようとこのD-3地点に赴いた。
薙ぎ倒されたビル、穿たれたクレーターなどそこはなにか凄まじい戦闘があったと感じさせる様相を呈していて、しかし見えるところに健在な機体は認められなかった。
トモロにはあまり意味がないと諭されたが、それでもキラは呼びかけずにはいられなかった。
故郷ヘリオポリスが壊滅した時のように、取り残された誰かがいるかもしれないと思ったから。
アイビスという少女と接触後、ネリー・ブレンという機体を甲板に係留し、ブリッジにアイビスを通した。
まずお互いに改めて自己紹介をし、情報を交換していく。

『トモロ0117だ。よろしく頼む』
「わっ!? 何、誰?」
「トモロはこのJアークの制御AIなんだ。僕の仲間だよ」

といった一幕もあり、支給された食糧で慎ましくも穏やかな時間が流れた後。

『キラ、この空域に接近する機体がある。これはF91だ』
「F91……ジョナサンさんが! 無事だったんだ」

もはや懐かしい気分すらする、キラの最初の仲間。
偵察に出ると言ったきり戻ってこなかったが、こちらがダイの討伐に動いたことも合流できなかった原因の一つでもある。とりあえずは謝ろう、と思い、通信を行う。

「こちらはJアーク、キラ・ヤマト。F91、応答して下さい」
「……こちらはガンダムF91、アムロ・レイ。キラ・ヤマト、その白い戦艦がJアークか?」

場所を示す意味も込めて呼びかけるが、帰ってきた声はキラの知らない、だがアイビスの知る声だった。

「……え?」
「アムロ……!? アムロ! あたし、アイビス! 無事だったんだ!」
「アイビス、君も無事だったか。君がその戦艦と一緒にいるということは、信用できる仲間ということか」

アイビスはいきなり呆けたような顔になったキラを押しのけ、通信管に向けて叫んだ。
やがて現れたF91はJアークの前で停止した。その姿はキラがジョナサンと別れた時と違い、激しい戦闘を潜り抜けたことを示すように傷つき、薄汚れていた。

「Jアーク、着艦許可を求む。俺は戦う気はないし、そこにいるアイビスの仲間だ」
「キラ、アムロは信用できるよ。それにすごく強いんだって。これできっとなんとかなるよ!」
「……アムロ、さん。すみませんが僕はまだ、あなたを信用できません」

喜ぶアイビスにキラの返した声はしかし張りつめたものだった。

191 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:22:11 ID:3dChaLgo
「ど、どうしたの? アムロは敵じゃないって」
「ごめん、アイビスは少し黙ってて。……トモロ、ジェネレーティングアーマー、いつでも動かせるようにしておいて」
『了解だ、キラ』

俄かに緊張しだしたブリッジで、アイビスはキラを制止しようと操縦席に座る彼の横に立った。
だが強い緊張に強張る横顔を見て口を開けない。まるで敵と戦っているような顔だった。

「……確かに俺と君は面識がない。だが、アイビスから聞いてくれればわかる。俺は戦いに乗っては」
「じゃあその機体はなんですか。それは元は僕に支給されたもので、今は別行動している仲間が乗っていった機体です。
 それに、別れたときはそんなに傷ついていなかった。疑う理由としては十分じゃないですか」

アムロに最後まで言わせず、キラは畳みかけた。ジョナサンはたしかに全面的に信用するにはどこか抵抗のある男だったが、だからといって殺して機体を奪ったのなら信用などできるはずもない。
アイビスの様子を見やれば、衝撃を受けたような顔だった。
仲間が人殺しかもしれないと言っているのだから当たり前かな、とキラは胸に痛むものを感じ、しかし追及の手は緩めない。

「あなたがアイビスと別れたとき、乗っていたのは戦闘機だったと聞いています。僕の仲間を殺して奪った、その可能性がないと言い切れるんですか?」
「で、でもアムロはそんなこと……!」
「……アイビス、俺が話す。君は口を挟まないでくれ。
 さてキラ、その証明はできない。だが俺からも一つ聞こう。
 もし俺が君の言うとおり君の仲間を殺してこの機体を奪ったとして、君はどうするつもりだ? 俺を仇として討つのか?」

返ってきたのは釈明や謝罪ではなく問いかけだった。
数時間前のロジャーとの対峙を思い出す。
あのとき自分は話し合うために人を集めてほしいと言ったが、仇かもしれない相手が眼前にいるこの状況、返す言葉は。

「いいえ。僕はどんな状況であなたがそのF91に乗ったのか知らない。
 もしかしたら僕の仲間があなたに襲いかかって返り討ちにされたのかもしれないし、乗り捨てられていたF91をあなたが見つけた、あるいは本当に殺して奪ったのかもしれない。
 だから、まずあなたの話を聞いて判断します。その上で、あなたが戦うと、争いの環を広げると言うのなら……」
「……どうする?」
「討ちます。戦いたくはありませんが、少なくとも僕の見ている前では、勝手な理由で誰かの命を奪うことは絶対に許しません」

思えばそう、平和を歌うラクスも戦うことのすべてを否定することはなかった。
想いだけでは成せないことがある。力がなければ、戦わなければ守れないものがある。
だからこそアスランはザフトに入って戦う力を得たのだろうし、自分も望んでストライクに乗ったのだから。
戦うことを躊躇わないのなら、あと必要な物は戦うに値する理由だ。ダイ、ナデシコと戦ったときはそれを誤った。もう二度と同じ轍を踏むわけにはいかない。

「アイビスの言うことを全て信じるわけにはいきませんが、だからといってすべて切り捨てることもできません。
 だから、あなたの話を聞いて、それから判断します。あなたと戦うべきかどうかを。それが、僕の譲れない立場です」

言うべきことを言った。キラは警戒を解かず、アムロの返答を待つ。

192 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:24:17 ID:3dChaLgo
「了解した、キラ。君の立場は俺に近いもののようだ。ならば俺も示そう、俺の立場を」

モニターの中のF91が動いた。攻撃かと思ったがそうではない。あれは――ー

『F91、コックピットを解放した。あのパイロット、正気か?』

トモロの声にもっともだと思った。警戒されている相手の前で、コックピットを開き生身を晒す。
自分も救助したラクスを引き渡すとき同じことをアスランの前でしたが、あれはアスランなら絶対に裏切らないという幼馴染だからこその信頼があったからだ。
少なくともキラは自分に今、この場で同じことができるとは思わなかった。

「君の仲間はジョナサン・グレーンという男だろう? この機体は彼の仲間から譲られたものだ。今は別行動だが、俺も間接的に彼の仲間と思ってくれていい」

コックピットから出て、ハッチに立つ相手。あの位置ではシートに戻るより確実にこちらの攻撃が早い。
言葉ではない。アムロという男の放つ『覚悟』そのものにキラは呑まれた。

「もう一度言う、俺は戦いに乗っていない。そして、ともに主催者に抗う者を探している。
 キラ、君も俺達とともに戦ってほしい。君の気高い『覚悟』、信じるには十分だ。
 君の力、想い。それは俺やそこのアイビスとなんら変わらないはずだ。俺を信じてくれないか?」

アムロはこちらを……ブリッジの操縦席にいる自分を認識しているかのように、目線を動かさない。
キラにも理解できていた。この人は戦いに乗っていないと。自分よりよほど強く、そして大人であると。
横に立つアイビスは何か言いたげにもじもじとしている。そういえば黙っててくれと無下に言ってしまったな、と少し後悔した。

「キラ、その……」
「ごめん、アイビス。僕にもわかったから。……トモロ、戦闘態勢を解除して。アムロさん、誘導します。着艦して下さい」
『了解。ジョナサン・グレーンよりよほどマシなやつが来てくれたな』

トモロの皮肉に苦笑する。確かにキラの中にも、どこか邪気のあるジョナサンよりもアムロの方が信頼できるという気持ちが芽生えつつあった。

「信じてくれたか。感謝する、キラ」
「いいえ、僕の方こそ疑ってしまって……」
「もう! ハラハラさせないでよ! あたしだけ除け者みたいだったし!」
「ご、ごめん……」
「いや、アイビス。この状況ではキラくらい慎重になった方がいい。結果的にお互いの立場もわかったしな」
「横で聞いてるだけのあたしは気が気じゃなかったよ! 両方から黙ってろって言われたし!」
「む……それはすまなかった」
「ごめん……」

F91が着艦する。不安やら怒りやらでよくわからない気持ちを吐き出し続ける少女をなだめ、ともに『ガンダム』と浅からぬ縁のある少年と男が出会った。

193 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:24:18 ID:Qvlv1Q/I
 

194 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:25:04 ID:Qvlv1Q/I
 

195 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:25:38 ID:3dChaLgo
         □


ここにきてようやく追い風が吹いてきた、アムロはそう思った。
戦艦Jアークのブリッジにて邂逅したアイビス、キラ。
懸案だった少女と、自らと同じ志を持つ少年。心強い仲間だ。力は集いつつある。
自己紹介と言うべきものは先程終わっている。一通り情報交換を済ませ、アムロはようやく人心地ついた。
思えばここに来てから気の休まったときはないように感じた。
何故か核ミサイルに乗ったシャアとの出会い、バリアを持つ赤い機体との戦い、アイビスとの出会い。
殺戮者の駆るライオン型のメカとの戦い。それを振り切ったかと思えば唐突に感じた核の光、宿敵の喪失。
廃墟の町で狙撃者と戦い、ニュータイプを知る少年ガロードと出会い。
このF91に乗り換えてすぐ戦った男、ガウルン。思えば奴を仕留め損なったのはまずい。いずれ決着をつけねば。
……考えてみて。しかしよく生き残れたものだと逆に呆れる。どの戦いも、一手指し損なうだけで刻の涙を見る事態になっただろう。
だがやっと、勝ちの芽が出てきた。
己の力を最大限に出し切れるF91という機体。
新たな仲間キラ、彼の機体Jアークは強力なのが見てわかる。
アイビスもまた、迷いを吹っ切ったようだ。機体は変わっているが、彼女を守るという意志は前の機体と変わらないように思えた。
これで基地でブンドルと合流できれば、脱出は現実的なものとなる。できればカミーユとも合流したいが、今のところ手がかりはない。
彼がそう易々と死ぬとも思わないが、急ぐに越したことはないだろう。

「さて……大体話すべきことは話したな。俺は機体の整備をさせてもらうよ」

口いっぱいに菓子パンを頬張るアイビスと、それを笑いながら見ているキラに声をかけた。

「補給が済んだとはいえ、F91には随分無茶をさせた。ここらで一度しっかり手を入れておきたい。
 ああ、その後Jアークの設備を借りてもいいか、トモロ。やっておきたいこともある」

やっておきたいこととはもちろん首輪の解析のことだが、これは口には出さなかった。
盗聴を警戒してのことでもあるが、何故持っているのかと聞かれると説明するのは心苦しいからだ。

「あ、じゃあ僕も手伝います。ガンダムの整備は元々やってたし、慣れてますから」

既にキラも自分やガロードと同じくガンダム乗りだったことは聞いている。
とはいえニュータイプを知らないことから、アムロともガロードとも違う世界のガンダムだという話になったが。

「いや、こう見えても俺は技術者でね。それに整備をやっていたといっても、パイロットがするのはハード面のことだろう? 
 深刻なのがOS周りなんだ。こればかりは専門でないと分からんさ」
「あ、それならやっぱり力になれると思います。プログラミングは得意ですから」
『それは私も保証しよう。コーディネイターなる種の特性かはわからないが、キラのプログラミング能力は一般人のレベルを超えている。
 GGGに勤務していても遜色ないレベルだ』

とトモロが補足する。GGGなるものはよくわからないが、高性能であるのは疑いようもないAIが言うのだから間違いはないのだろう。

196 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:26:25 ID:Qvlv1Q/I
 

197 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:27:43 ID:Qvlv1Q/I
 

198 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:27:45 ID:3dChaLgo
「ふむ……ならキラ、手伝ってくれ。F91にはどうも俺の世界の未来の技術が使われているようでな、正直なところ俺も完全に使いこなせるとは言えないんだ」

実際そんなに激しく変化しているわけではなかったが、ここからは聞かれるとまずい。話しつつもその手は取り出した紙に字を連ねていく。

『実は一つ首輪を入手している。死亡していた人物から拝借したものだが、君に解析を頼んでもいいか、キラ?』

紙を見せるとともに懐から首輪を取り出す。今だ血がこびりつくそれを出すのは抵抗があったが。
息を呑むアイビスとキラ、だが取り乱したりはしなかった。その程度には信用されているのだろう。

「わかりました。ただ、やっぱりアムロさんの世界のものですから、僕一人では……」

意図は理解してくれたようだ。首輪を受け取り、しっかりと頷くキラ。

「あ、あたしは何したらいいかな? プログラミングとかできないんだけど……!」

アイビスもただならぬ空気は察したのか、真剣な顔だ。とはいえ彼女には解析技能がない以上、取り立ててしてもらうこともない。

「そうだな……俺とキラが整備をしている間、警戒が疎かになるのも困る。ここで周辺の監視を頼む」
「うん、ついでにアイビスの機体も整備しておくからここはお願いするよ。
 ……そうだ、それでももし退屈ならトモロ、Jアークの操縦方法をレクチャーしてあげてよ。
 僕も戦艦の操縦なんて得意なわけじゃないから、他にできる人がいた方がいいし」
「わかった。よろしく、トモロ」
『了解した』

ブリッジを出て、キラと他愛もない話をしながら格納庫へと向かう。
本当に、風が吹いてきたようだ。戦力以上に解析のできるキラが仲間に入ったのは大きい。
ブンドルと合流するまで時間はある。少しでも首輪を解析するのは、主催者の手の内を知る大きな一歩となるだろう。

――ーそうだ、ここから俺達は反撃する。いつまでも俺達がフラスコの中でおとなしくしていると思うなよ……!

心中で吠える。
シャアを殺した者、ガウルン、主催者。敵は多いが、それ以上に心強い仲間がいる。
きっと、俺達は勝利する。楽観かもしれないと思いつつ、アムロはその気持ちを抑えられなかった。

199 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:28:49 ID:Qvlv1Q/I
 

200 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:29:10 ID:3dChaLgo


【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)、満腹
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:D-3 北部
 第一行動方針:周辺の監視
 第二行動方針:Jアークの操縦を覚える
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:健康、ジョナサンを心配(若干の申し訳ない気持ち)
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  反応弾を所持。
 現在位置:D-3 北部
 第一行動方針:F91、ネリー・ブレンの整備及び首輪の解析
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:ナデシコ組と和解する
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復。】

【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN100% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ 
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾100%
 現在位置:D-3 北部
 第一行動方針:F91、ネリー・ブレンの整備及びJアークの設備を使い首輪の解析
 第二行動方針:基地に向かい首輪の解析
 第三行動方針:基地にてブンドルと合流
 第四行動方針:協力者の探索(カミーユ優先)
 第五行動方針:首輪解除のための施設、道具の発見
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している  ガウルンを危険人物として認識
    首輪(エイジ)を一個所持】

【二日目 9:00】

201 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/16(火) 01:31:51 ID:3dChaLgo
投下終了です。こんな時間に支援どうもです
タイトルは「黄金の精神」で
短いうえに繋ぎなんですが、御指摘などありましたらよろしくお願いします

202 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 01:41:39 ID:Qvlv1Q/I
投下GJ!
前回の破棄作の展開を活かしつつ独自の話を織り交ぜているあたり流石!
この三人は危険要素の無い対主催集団として今後の活躍が期待できそうだ。

203 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 19:08:50 ID:wvspUMhY
いつの間にか投下が!!
GJ!!
もじもじでしてるアイビスに何か萌えたw
ここまでそんな素振り欠片もなかったのにアイビスが癒し系になってる気がするw
各地で散発的にこれまで交流のなかった対主催同士が接触し始めてるけどどうなっていくんだろうな。
アムロじゃないけど対主催に追い風を感じるぜ!

204 :それも名無しだ:2008/12/16(火) 22:54:23 ID:JK48jcsW
投下乙!
最近マーダーが師弟を組んだりしてたが対主催も順調に戦力を伸ばして面白くなってきた!

205 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/17(水) 19:03:48 ID:8Kn8sWRy
感想、wiki収録どうもありがとうございます。

ところで一つ質問があるんですが、Jアークに格納庫ってあるんでしょうかね?
スパロボでは1ユニットとしての扱いだし、画像見る限りでは(しかも変形するし)なさそうな気もするんですが。
それだと剥き出しの甲板で整備って中々無茶なことにもなるんですよね…

206 :それも名無しだ:2008/12/17(水) 21:07:02 ID:EGrgwmhE
ピア・デケムなら艦載機出してるからあるだろうけど、Jアークはどうなんだろう
あってもいいいような気はするけど
確かに航行中の風が吹き荒れる甲板で作業とか下手したら死人が出るなw

207 :それも名無しだ:2008/12/17(水) 23:57:56 ID:1oeUpan4
あ〜どうなんだろ、元の乗員はそれでも平気で作業できそうだしw

208 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/18(木) 00:38:50 ID:sMgH4JHU
じゃあ特別に主催が手を加えて格納庫ありってことで・・・ES空間にとかw

ついでと言うのもなんだけど
キョウスケ バーニィ ユーゼス カミーユ アキト 予約。
もしかしたら増えるかも

209 :それも名無しだ:2008/12/18(木) 00:55:30 ID:ueoNOKcw
まぁそこら辺はアバウトにw
って基地組予約キター!!
ここは誰が死んでもおかしくないだけに予測がつかない。
楽しみに待ってます!!

210 :それも名無しだ:2008/12/18(木) 15:09:08 ID:oWI2d8eH
おお……まさかの連続予約!
頑張ってください!

211 : ◆ZbL7QonnV. :2008/12/19(金) 02:05:07 ID:WNK5ex/3
ブンドル、甲児予約します。

212 :それも名無しだ:2008/12/19(金) 16:38:45 ID:Uyn8Yxhp
久しぶりに帰ってきたZb氏に!
つ期待 応援

213 :風と雷 ◆ZbL7QonnV. :2008/12/20(土) 16:24:15 ID:prplDdQV
蒼く、高く、どこまでも澄み切った空の下、大地を駆ける機影があった。
風の魔装機神サイバスターに、雷の魔女ストレーガ。
ナデシコと行動を別にして、およそ小一時間。他の参加者と接触する事も無く、二機の行程は何事も無く進んでいた。
幸いにも、と言うべきか。その平穏な時間は二人にとって、大きなプラスとなっていた。
お互いが持つ情報の確認と、機体特性を掴んだ上での、基本的な戦術の構築。
そして、なによりも機体の慣らし。
ストレーガを駆る兜甲児にとって、ぶっつけ本番の戦闘を行わずに済んだ事は、幸運と言って良いだろう。

「へへっ……こいつの操縦にも大分慣れてきたぜ! 
ナデシコの艦長席も悪くはなかったけど、やっぱり俺にはロボットを乗り回してる方が性に合ってるらしいや」

初めて乗り込むタイプのロボット。
操縦方法自体は首輪からの情報伝達で身に付ける事が出来ても、実際に乗りこなすとなれば話は違う。
実戦経験や身体能力は勿論の事だが、その機体に対する“慣れ”も大きく物を言ってくるからだ。

例えば、こんな話がある。
アルバトロ・ナル・エイジ・アスカとゴステロが存在していた次元において、地球はグラドス星の侵略を受けて支配される事になった。
それを不服とする地球人の抵抗組織が、グラドスに対する抵抗の術として選んだ方法。
それはグラドスの兵器であるSPTを原型として、地球製SPTを造り出す事であった。
だが、ここで面白いデータが出ている。
戦闘機や戦車と言った既存の地球兵器に乗り慣れた人間ほど、SPTに対する適正が低かったのである。
むしろ素人に訓練を積ませた方が、SPTを乗りこなすまでに要した訓練時間は短かったと言われている。
これはSPTが独自の曲線運動による機動を行う為、直線的な機動に慣れた人間ほど戸惑いや困惑が大きかったせいとされている。

ストレーガの設計思想は、兜甲児本来の愛機であるマジンガーZと似た所がある。
すなわち装甲と出力に重きを置いた、多彩な武装を有する近接戦闘機体。
そう、スーパーロボットと言われる機体が持つ特徴を両機は共に有していた。
そのおかげもあって、甲児は新しい機体に思ったより早く馴染む事が出来ていた。
甲児の運動能力と反射神経があれば、あまり相性の良くない機体でも充分に乗りこなす事が出来たろう事は想像に難くないが。

214 :風と雷 ◆ZbL7QonnV. :2008/12/20(土) 16:25:46 ID:prplDdQV
「その機体、どうやら君との相性は悪くないらしいな。僅かな間に、見違えるほど動きが良くなっている」

機体の動きを確めるように、時折遠くの岩を撃ったりしながら、ストレーガはサイバスターの後ろに続く。
もちろん、サイバスターは全速力を出してない。
全支給機体中でもトップクラスのスピードを誇るサイバスターと、むしろ鈍重な方に位置付けられるストレーガ。
両者の足並みを合わせるとなれば、サイバスターが速度を落とすしかない。
そのおかげで予想以上の時間が掛かってしまい、未だ目的地である基地に二機は辿り着けていなかった。
もっとも、それは承知の上だ。

アムロ・レイ。彼ほどの男が、そう簡単に死ぬ事はまずあるまい。
おそらくは彼もまた、今の自分と同じように、独自に行動を起こしているはず。
焦る事は何も無い。
だからこそ多少の時間が遅れる事は承知した上で、ブンドルは甲児に機体の慣らしを行うよう勧めていた。
もちろん、甲児も最初は渋った。
だが、不満足な状況で戦闘に突入したところで、出来る事は限られている。
そう冷静に諭されて、ブンドルの意見に甲児も最終的に納得したのであった。

「ああ。これだったら、いつ敵に襲われたって怖くはないぜ! よろしく頼むぜ、相棒!」

ガッツ・ポーズを決めながら、大きく頷いてみせる甲児。
これまで自分の周りには居なかったタイプの人間だな、とブンドルは思う。
幼い頃から名門の家系に生まれ育ち、ドクーガ最高幹部の一人として裏社会の頂点に立ち続けてきた、そんな彼だ。
このように真っ直ぐな熱血少年と時間を共にする事は、これまでの人生で数えるほどにも存在しなかった。
だからこそ、多少の新鮮味を感じないでもない。
だが、それにしても……。

「……相棒、か」
「? どうしたんだい、ブンドルさん」
「いや、なに。私の知っている人間に、今の君と同じような事を言っている少年が居たのでね」

メカは友達。
自分の機体を“相棒”と呼ぶ甲児の姿に、そんな言葉を思い出した。
真田ケン太。
ビムラーの大いなる意思によって選び出された新人類。
悪意の集合体であるネオネロスと戦いを繰り広げ、そして宇宙に飛び立った少年。

……そういえば、良く似ている。
真田ケン太とネオネロス。二つの相反する巨大な力を戦い合わせ、その勝敗によってビムラーは“人類の代表”を選定した。
ならば、もしかすると、この殺し合いも……。




215 :風と雷 ◆ZbL7QonnV. :2008/12/20(土) 16:26:24 ID:prplDdQV
「……なあ、ブンドルさん」
「ん……?」

ふと思い出したような甲児の声に、耽り掛けていた思考を中断する。

「そういえば、この機体……ストレーガって、確か魔女って意味の名前なんだっけ?」
「そうだが……」
「ふ〜ん……だけど、それにしちゃあ“女の子”には見えないよなぁ、コイツ。
俺が知ってる女の子型ロボットって言えば、もっとこう……」

アフロダイA。
兜甲児のガールフレンドである、弓さやかの愛用機。その姿を思い浮かべて、甲児は冷静に考える。
もし、このストレーガが、ああいった自分が良く知る“女の子型ロボット”と同様のセンスで造られていたならば……。

「……お前の設計者には感謝しなきゃな。
おっぱいサンダーは、流石にちょっと恥ずかしいや」

216 :風と雷 ◆ZbL7QonnV. :2008/12/20(土) 16:27:05 ID:prplDdQV
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:E-7
 第一行動方針:他の参加者との接触
 第二行動方針:次の放送までに基地へ向かう
 第三行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第四行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
    空間の綻びを認識
    ガウルンを危険人物として認識
    操者候補の一人としてカミーユに興味】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:良好
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:E-7
 第一行動方針:ブンドルに同行
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【二日目10:00】

217 :それも名無しだ:2008/12/20(土) 16:32:07 ID:prplDdQV
ブンドル&甲児投下。
基地に行くまでの道中で起きたワンシーン。短い繋ぎですが、久々に筆が乗りました。

それと以前の話で、レジセイアが“サンプル”云々と言ってたので、それに絡めて考察を進めさせてます。
ゴーショーグンやレイズナーの薀蓄っぽい所は、主に小説版を参考にしています。

あー……それにしても小説版と言えば、鏡の国のゴーショーグンはいつ出版されるんだろうか……。

218 :それも名無しだ:2008/12/20(土) 20:50:28 ID:1wBLPMnn
投下GJ!!
やっぱ◆ZbLさんのブンドルはなんかいいね。
キョウスケあたりと接触できたら主催に対する考察も進みそうだ。
甲児もようやく相性のいい機体手に入れて楽しみだ。
しかし、おっぱいサンダーはちょっと恥ずかしいってレベルじゃないぞwww
甲児、そこはサンダーブレイクあたりで我慢しとけw

219 :それも名無しだ:2008/12/21(日) 00:16:47 ID:bdbP1Scj
投下乙
最近はコンビやらグループやらがいい感じになってきてますね
サンダーブレイクとかいうとプロが出てくるぞw

220 :それも名無しだ:2008/12/21(日) 00:50:23 ID:ZfLk3Nzy
投下乙!
上でも言われてるが貴方の書くブンドルは格好良い。
甲児とブンドルはなかなか良いペアになりそうで楽しみだなー

221 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:24:13 ID:HPHyhqJL
「あれは……キョウスケ中尉か。あの人は、今さら……!」

カミーユの見上げた空を、紅き隼が駆け抜ける。
ただ見上げるだけの自分をあざ笑うかのように、その軌跡はぶれることはない。
向かう先は異形の機体。
閃く砲火に我に返る。そうだ、呆けている場合じゃない。ベガを殺したあの男を……!
半壊した基地を走りだす。格納庫はさほど離れていない。
ユーゼスも、キョウスケも、クワトロのことも。すべては頭から抜け落ちる。あのふざけた理由で悪意をばら撒く男を、倒す。

「許さない……絶対に、許すものかッ! お前は、生きてちゃいけないんだ!」

やがて、半壊した格納庫へと辿り着く。粉塵で汚れこそすれ、VF-22Sは健在だった。
小型ということもあり、横のローズセラヴィーの影に隠れていたことが幸いしたのだろう。
その、ベガの乗機は―――右半身が丸々溶け消えていた。まるで、主の後を追うように……
また、怒りがこみ上げる。その熱を抑えないまま、カミーユはバルキリーへと乗り込む。
空でキョウスケが戦っている。だが、援護に行くのではない―――

「俺が、お前を討つ! バーナード・ワイズマンッ!」

咆哮とともに、蒼穹に向けて飛び立った。


222 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:25:20 ID:HPHyhqJL
          □


「バーナード・ワイズマン……敵の名前など、知るべきではないな」

ファルケンは目視で敵機を確認できる距離に入った。
先程の黒い機体ではないが、こちらもやはり特機。つくづく相性の悪いパイロットだと独りごちる。
眼下の基地はもはや廃墟と言う方が正しい有様だ。管制塔や倉庫など僅か残った施設がかろうじてここが先刻まで基地であったことを連想させる。
カミーユとベガ、そしてユーゼスがどうなったかはわからないが、今は敵機の制圧が最優先だ。

「その機体……またあんたか!」
「今度は見逃がさん。ここで貴様がしたことのツケを払ってもらう……!」

相変わらず全周波数帯に向けて発信される声に、だが呟きで返す。
ここに来てキョウスケに語ることはない。あるのはただ、この状況を招いたこの男、ユーゼス、そして己への怒り。
オクスタンライフルを乱射しつつ最大加速で接近する。
敵機には見た限り銃器に類する武装はないが、特機を見た目で判断するのは愚策だ。
動く前に仕留めると、一気に距離を詰める。

「く、来るなッ! 何か、何か武器は……!?」

狼狽に満ちた声が聞こえるが、容赦するつもりはない。
ブーストハンマーをセット。すれ違いざまにコックピットと思しき胸部中央へ撃ち放つ。

「うああああああああッ!」

だが完全な素人でもないらしい新兵は、腕を掲げて鉄球を防いだ。と同時に敵機が発光、その腕にある爪が展開、赤熱した。
膨大なエネルギーを纏った爪は、ファルケンの装甲など容易く引き裂くだろう。
接近戦は不得手だというのに……つくづく分が悪い、と苦笑する。
テスラ・ドライブの出力を上げ、再度加速する。
倍以上の全長だ、接近しての小回りはこちらに分がある。唯一勝っている機動力で掻き回すしかない。
敵機が再度光を放つ。今度は全身の突起に熱が集まり、本体からパージ……射出された。
飛び来る6つの鋭刃。ファルケンは後退しつつスプリットミサイルを放ち迎撃する。


223 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:26:27 ID:HPHyhqJL
「チッ、あのサイズでは一発でも受ければ命取りか。どうする……!?」

ミサイルで撃墜しきれない刃は回避あるいは力場を纏わせた翼で斬り払った。詰めた距離は開き、敵機からは再び刃状のパーツが確認できた。
破壊できず回収された刃はともかく、どうやら自己再生機能まで備えているようだ。
これがアルトあるいはアルトの後継機なら刃の中に強引に突っ込むことも可能だが、射撃兵装がメインのファルケン、そして自分の技量では攻撃を避けつつ前進するのは難しい。
何度突っ込んでもハンマーの射程まで到達できず、押し返される。
さすがに二度目の交戦だ、こちらの手の内は知られているらしい。射撃は不得手、接近されなければ致命打はない、と。
どうする、と手をあぐねている内、レーダーが新たな反応を捕らえる。眼下の基地からの反応だ。
見る間にその反応は接近してきた。どうやら戦闘機、向かう先は交戦中の特機だ。
二機を同時に視界に収めるべく移動しようとするも、その戦闘機は凄まじいスピードで突っ込んできた。
それはキョウスケの知っている機体だ。カミーユが乗っていたはずの可変戦闘機。
傍らを駆け抜けた戦闘機、特機はやはり敵と認識したか再び、刃……ブーメランを放った。
舞い踊るブーメランの中に、しかし戦闘機は減速せず飛び込んだ。
キョウスケなら後退を選ぶ場面、戦闘機はまるで軌道を読んでいたかのようにロールし、刃をすり抜けていく。
前面から迫る刃は機銃で迎撃し、囲まれれば脚部―――ガウォーク形態といったか―――を振り回し強引に軌道を変える。
瞬きをする間に戦闘機、いやバルキリーは敵機を至近距離に捕らえた。
人型へと変形し、ガンポッド、ミサイルを一斉発射するバルキリー。決まった、とキョウスケが思った瞬間。

「イグニション! うわあああああああッ!」

特機の胸部に凄まじいエネルギーが集中する。閃光は巨大な火球となり、眼前のバルキリーへと放たれる。
バルキリーの攻撃を呑み込み、誘爆させ、火球は突き進む。寸でのところでバルキリーはファイターへ変形、一気に上昇して回避した。
回避された火球は減衰する様子も見せず地平線の彼方へと消えていった。どれだけの出力で放たれたか想像もできない。
臆した様子など微塵も見せず再び飛び込もうとするバルキリー、だがその鼻先をキョウスケが抑える。


224 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:27:46 ID:HPHyhqJL
「バルキリー、応答しろ。こちらはキョウスケ・ナンブ。誰が乗っている?」

通信を送るも、返答がない。キョウスケは再度試みる。

「応答しろ、バルキリー。カミーユが乗っているのか?」
「うるさい……うるさい! 邪魔をしないで下さいよッ!」

ようやく返ってきた少年の声は怒りに満ちていて、基地で取り返しのつかないことが起こったのだと確信させた。

「あいつはベガさんを殺したんですよ! 帰る場所があった、待っている人がいた! なのに虫ケラのように踏みにじった! 許せない……許せるものかッ!」

それきり、通信は途切れた。ファルケンを跳ね飛ばさんばかりの勢いで躱し、敵機へと踊りかかっていく。
ベガが死んだ。後悔、そして怒り。だがそれよりもまずいな、とキョウスケは焦燥する。今のカミーユは冷静さを欠いている。
持前のセンスと技量、そして機体性能のおかげでなんとか被弾していないものの、地力で勝る敵手、いつか直撃を受けるだろう。
フォローしようにもカミーユの動きは直感的すぎてこちらでも掴めず、迂闊に飛び込めば同士討ちになりかねない。
これがエクセレンなら何も言わずとも合わせられるキョウスケだが、さすがに昨日今日会ったばかりのカミーユの呼吸はわからない。
援護すら難しいか……と歯噛みしていると、通信が入る。カミーユかと思ったがそうではない。基地の管制塔からだ。

「キョウスケ・ナンブ、聞こえるか? こちらはユーゼスだ。応答を願う」
「ユーゼス……生きていたか。貴様には聞きたいことが山ほどあるぞ」
「心得ているよ、だがそれはあの機体を無力化してからにしてくれ。いつまた地上を攻撃されるかわからん」
「言われずとも……何、無力化だと?」
「時間がないので詳しくは言えんが、あの機体には高度な人工知能が搭載されている。破壊されるわけにはいかんのだよ」


225 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:28:53 ID:HPHyhqJL
モニターの中でユーゼスは首輪を指で叩く。解析に必要、と言いたいのだろう。

「簡単に言ってくれるな。破壊ですら難しいぞ」
「君が一度下した相手だろう? 同じことをもう一度やってくれと言っているのさ」

抑揚のない声ではあるが、キョウスケには暗にお前の不手際だ、と言っているように思えた。

「……俺の責任であることは認めよう。だが貴様にもその一端はある。落とし前はつけてもらうぞ」
「構わんよ。私もできる限りの協力はする。しばし時間を稼げ。直に私も出る」

通信は途切れた。信用などできるはずもないが、それでも今はやつの手が必要だ。
時間を稼ぐ。不本意だが、意志の疎通のできていないカミーユとでは敵機の撃破は困難。仕方ないと無理やりに自分を納得させた。
カミーユは相変わらずブレーキが壊れた車のようにがむしゃらに攻撃を仕掛けている。
援護するには敵機だけでなくカミーユの動きも念頭に入れて動かねばならない。

「俺がフォローする側、か。エクセレン、お前の気持ちが少しだがわかった気がするよ」

突っ込み専門だったアルト、その隙をいつでもカバーしてくれたヴァイス。
やってみれば難儀なことだ、と呟いて、ファルケンを加速させた。


226 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:31:03 ID:HPHyhqJL
          □


「始まったか」

基地を臨む森の中でも砲火の煌めきは確認できた。派手に撃ち合っているようで、五感の鈍ったアキトにも戦の匂いは感じ取れた。
あの寡黙な男は勝つだろうか? いずれ消すべきとは考えていても、もしここで彼が敗れれば今度は自分が危うくなる。
もし発見されれば薬を飲まざるを得ないだろう。それでもこの機体では、勝てる見込みは薄いように思えたが。

「万が一のこともある……離脱する準備はしておくか」

できるだけ長距離を移動できるようにブースターを調整する。小回りは効かずとも瞬発力ならこの機体は中々のものだ。
タイミングさえ誤らなければ撤退は可能。薬をいつでも服用できるよう、一錠をビンから出して懐へ入れる。
準備が終わり、改めて戦場へ目を向ける。紅い隼は接近に手間取っているようで、大型の敵機に近づいては離れてを繰り返している。
状況は不利……撤退を第一に考え始めた時。不意に暗号通信が入った。

「アルトアイゼンのパイロット、応答しろ。位置は把握している。1分以内に応答がなければ敵と判断し砲撃を開始する」

位置を掴まれていることよりも、ピンポイントでこのアルトに通信を送られたことに狼狽した。
発信源は基地、管制塔だった。
なるほど基地の目と言えるレーダーを統制する管制塔なら隠れていたアルトを発見できたのも頷ける。
だが何故この機体固有の周波数を知っているのか。

(いや、こいつは『アルトアイゼン』と言った。キョウスケ・ナンブと同じく、この機体を知っているものか……!)

以前にこの機体に乗っていたのなら固有周波数も知っていて当然だ。そして、アルトには砲撃に対応する装備がないことも。
この距離では当たることはそうないだろうが、存在を喧伝されるのはまずい。誰がどう見ても高機動機のファルケンより鈍重そうなアルトの方が狙いやすいだろう。
まず数を減らすとばかりに狙われてはかなわない。しぶしぶ、通信に応じる。


227 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:33:12 ID:HPHyhqJL
「こちらはアルトアイゼン、……テンカワ・アキトだ」

偽名を使うかとも考えたが、機体が変わっているのだ。もし知った顔に会ったとき、ガイの名前を名乗り続けていてはむしろ不審がられる。

「テンカワ・アキト……私はユーゼス・ゴッツォという者だ。いくつか聞きたいことがあるが、構わんかな?」
「俺はキョウスケ・ナンブに連れられてきた。戦う気はない」
「ふむ、中尉にか……よろしい、敵ではないと判断しよう。では何故中尉を援護しないのかね? こちらから確認する限り、アルトに大きな損傷は見受けられないが。
 ああ、先に言っておくが私は出られる機体がない。あの特機に全て破壊されたのでな、お前はどうだなどと聞いてくれるなよ」

敵ではないと言いつつも、声には微塵も友好的な成分は含まれていない。

「……問題があるのは、俺自身だ。身体に障害を持っている」

一方的に手札を晒すことに憤りを感じるが、主導権はもはや相手にある。ここはやり過ごすしかない。

「障害……ね。その割にはその機体、戦闘を経験したかのような有様だな? 本当に戦えないのかね?」

と、声の調子が変わる。感情を感じさせない人形の声から、蛇のような禍々しい気配へと。

「それは、」
「私の考えはこうだ。君は『戦えない』のではなく『戦わない』。何故なら戦える時間あるいは機会に限りがあるから。
 そしてそれは補えるものでなく、故に自分が直接襲われるような事態でもなければ戦闘は極力控えたい。……違うかね?」

抗弁を遮られ、続けざまに放たれた言葉はまさに今のアキトの現状そのままだった。
なんとか否定しようとするも、口を開く前にまたも先手を打たれる。


228 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:35:19 ID:HPHyhqJL
「加えて言うならその機体、アルトアイゼン。実は私に支給された機体もそれでね。どうして君が乗っているのか、答えられるか?」
「同じ機体が支給されたのだろう。あれだけ参加者がいたのなら同一の機体があってもおかしくはない」
「なるほど、おかしくはないな。だがそれを言うには機体に問題があるぞ?
 一度乗った身から言わせてもらえばアルトアイゼンは決して使いやすい機体ではない。
 装甲と引き換えにした機動性、実弾のみで固められ、射出型のクレイモアやステークといった癖の強い兵装。突進力こそあるものの最悪と言ってもいいほどの機体バランス。
 たとえ首輪が操縦方法を示すとはいえ、そのような扱い辛い機体ばかりでは殺し合いなど促進しない。私が主催者なら二機も支給することは有り得んな」

即座に返ってきた声は確信に満ちていて。

「……そうそう、私はこの基地や市街地を探索したが放置されている機体や資材はなかった。
 また補給も行ったが、補給されるのは失った弾薬とエネルギー系のみ。
 損傷部位は補修されず、故にこの会場での修理は応急処置程度しか行えず欠落した部位はそのものが消滅した場合修復は不可能だ。私の機体でいえば左腕だな。
 だがそのアルトアイゼンにはさしたる損傷はなく、カラーリングも異なる。
 つまりその機体と私に支給された機体は別物? ……いいや違うな。その機体は間違いなく私に支給されたアルトアイゼンだ」

口を挟む暇などなかった。この男、僅かな情報から一気にこちらの核心へと迫ってくる。これ以上情報を与えるのはまずい。

「……矛盾しているぞ。修復が不可能ならば、何故この機体には左腕がある。この左腕こそが違う機体であることの証拠だろう」
「そう、証拠だ。私はその機体に乗っていた時、一度戦闘を行ってな。左腕以外にも損傷を受けた部位がある。君の機体、まったく同じ箇所にその損傷がある。これはどう説明するつもりかね?」

あの少女、完璧には修復しなかったのか―――思考が弾ける。
突き付けられた言葉は刃のようだった。銃火を交えないまでも、これはたしかにこの男とアキトとの戦いだ。
迂闊なことは言えない。主催者と接触したことを知られてはならない、絶対に。
損傷とやらは気になるが、ここで大きな反応を返しては相手の思うつぼだ。

「……そんなものはどうとでも言える。貴様が言っていることがハッタリで、俺から情報を引き出そうとしているということもありえるだろう」

とはいえ、有効な返し方も思いつかない。なんとか煙に巻くしかない。まさか主催者が修復してくれた、などという突拍子もない考えには至らないだろうと願って。
だが。


229 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:37:40 ID:HPHyhqJL
「その機体の本来のパイロット、君を連れてきたキョウスケ・ナンブだ。彼はあの主催者を一度撃破しているそうだ」
「……それがどうした」
「自らを葬った男とその乗機。何らかの思い入れがあってもおかしくはないな。特にあのアルフィミィとかいう小娘、キョウスケ・ナンブとは深い関わりがあるように見えた」
「だからそれが」

急に見当違いのことを言い出した男に困惑する。言葉を続けようとしたとき、凄まじい悪寒が全身を走り抜けた。

「戦えないパイロットと使えなくなった機体。そんな者がどうやって戦闘を切り抜けた? 簡単だ、誰かの助力があった。では誰だ?
 仲間、違うな。君の念は孤独なものだ。他者を拒み、孤独であろうとするものだ。なら考えられる可能性は一つ……」
 
一拍置いて。

「……貴様ッ! 主催者と接触し、機体を修復され、何らかの取引をした……そうだなッ!?」

語気も荒くに断言された。
……なんだこいつは。今さらながらにアキトは恐怖を覚えた。この男は危険だ。これ以上話すべきでは―――

「……っと、失礼。少し熱くなったようだ……。とは言え、今の推論、間違ってはいないと思うがどうかね?」

唐突に重苦しいプレッシャーが消える。どうといわれても答えようはない。もし答えたら―――いや、あの少女は特に秘密にしろとは言わなかった。
今も首輪を通して聞いているだろうが、特に制止される様子もない。ばれても困らないということだろうか。
どう答えたものかと思案していると。

「……まあ、答えにくいものであろうな。私も少し急ぎ過ぎたようだ、この件は後で話すとして……本題に入ろう。
 私は上空で交戦中の特機を確保したい。キョウスケ・ナンブは腕は確かだが、機体性能に差がありすぎる。彼一人では困難だろう。
 一人でも多くの手が欲しいのだが……協力する気はないかね?」


230 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 07:40:03 ID:HPHyhqJL
先程とは打って変わった内容だった。後で、がいつかはわからないが、こいつは確実に殺さねばならない。今ここを離れるわけにはいかなくなった。

「……この機体では大した援護はできん」

もはや戦えることが前提となっているが、この男相手に隠し通すのは難しいと思えた。どのみち、生き残るのがまず最優先だ。敵機の排除に異論はない。

「それについては問題ない。ここにはアルトより強力な特機が一機ある。協力してくれるなら君に譲り渡そう」
「貴様、さっきは機体はないと」
「信用できないのはお互いさまということだ。むしろ厚意と思ってもらいたいな。その機体よりは優勝が狙いやすいはずだ」

優勝、と言った。どこまで見透かされているのか……

「……俺が優勝するつもりだと知った上で、誘っているのか」
「もちろんだとも。別に青臭い正義感で仲間になれと言っているわけではない。この場を切り抜ける最善手を打っているだけだ」

どうするか。この男はいずれ殺すにしろ、今この場にいるのは自分たちだけではない。
特機、そしてキョウスケ・ナンブが―――

―――キョウスケ・ナンブが戦っている。そうだ、今なら―――

ふと思いつく。この状況下なら。そしてこの男なら。

「……条件がある」
「なんだね?」
「キョウスケ・ナンブを殺す。それだけだ」


231 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/22(月) 08:22:05 ID:GuD3Cp1M
規制されたので避難所に続き投下しました。
タイトルは「すべて、撃ち貫くのみ」
書き終わってから最後の展開はどうなんだろうと思ったので、問題ありそうなら修正します

232 :代理投下:2008/12/22(月) 09:38:44 ID:c2rZuRRL
そう、これはチャンスだ。あの腕が立ち、油断しない男も戦闘中なら、それも味方からなら。……討つのは容易い。
普通ならキョウスケの仲間というこの男に言っても承諾などするはずがない、だが―――

「……いいだろう。特機を確保後であれば、キョウスケ・ナンブの殺害を許可する」

やはり、乗ってきた。この男には仲間意識などなく、あるのは徹底した合理性だ。

「随分、軽く決めるのだな。仲間なのだろう?」
「すでに聞くべきことは聞いた。腕は惜しいが飼い慣らせない狼など傍に置いておくメリットはない」

声には一切の感傷がない。本当に、必要ないから切り捨てる、それだけだというように。

「君がどうしてキョウスケ・ナンブを殺すのか興味はあるが……まあ後でおいおい聞くとしよう。この地点に来たまえ。君の機体が置いてある」

座標が転送され、通信が途切れた。
現在位置からでは2分ほどの距離―――薬を飲めば、だが。歩くのもやっとというこの体で油断ならないユーゼスなる男の前に出向くのは危険……
躊躇なく、薬を噛み砕いた。身体を覆う倦怠感が掻き消える。
蒼いアルトが弾かれたように発進する。上空からでも確認できるだろうが……今のキョウスケにそんな余裕はないだろう。
もちろん、急ぐに越したことはない。目標地点が見えたところで身体を固定するハーネスを解き、いつでも降りられるようにする。
辿り着いた場所には、大型の特機があった。マントを纏う漆黒の体躯、鋭い刃を生やした腕、ピエロの仮面をつけた頭部。
たしかにアルトよりよほど強力なのは見て取れる。それにこの色、禍々しさ―――復讐者たる自分にはお似合いだ。
周辺にユーゼスはおらず、訝しりながらもアルトを降りた。
「ブラックゲッター」。操縦席に座ったとたん流れ込んできた情報はこの機体の名称を告げていた。
ゲッター線なるエネルギーで駆動し、インベーダーを駆逐するゲッターロボ、その一機。
だが首輪は同時に炉心の異常をも告げていた。動くことはできるが、炉心から直接エネルギーを供給するゲッタービームの使用は不可、と。
機体をチェックしていると、不意に通信が入った。


233 :代理投下:2008/12/22(月) 09:39:20 ID:c2rZuRRL
「どうかね、ブラックゲッターの乗り心地は? 接近戦用の特機だ、アルトに乗っていた君なら使いこなせるだろう」
「ふざけるな。この機体、炉心に異常がある。まともに動くのかすら怪しいものだ」
「何、使えないのはゲッタービームだけだ。格闘戦なら問題なくこなせる。その辺に武器も転がっているはずだ」

辺りを見渡せば、そこには一振りの巨大な戦斧。アルトでは振り回せない大きさだが、この機体なら。

「一応、応急処置は済ませてある。突然機体が爆散するなどということはないから安心したまえ」
「……信用できるものか」
「それはそちらの自由だ。……さて、言っておくべきことがいくつかある。
 まずあの特機は破壊せず無力化すること。まあ自己修復機能もある、破壊するつもりで攻撃して構わんがな。コックピットを直接つぶしてくれれば助かる。
 次にあの戦闘機……確認できるか?」

ユーゼスの言葉で上空を見やる。たしかにそこには一機、青い戦闘機が飛んでいた。
自分に最初に支給されたYF-21によく似た機体だ。同型、あるいは後継機だろうか。

「確認した。あれは敵か?」
「いや、こちら側の人間だ。カミーユ・ビダンという少年が乗っている」
「……そうか、で?」
「それだけだ。何をしろと言うつもりはないよ」

……殺しても構わない。言いたいことはそういうことだろう。

「……了解した。もういいか」
「いや、もう一つ。君は基地に保護したことにする。キョウスケ・ナンブは勘が鋭い、気付かれては面倒だ。
 ブラックゲッターには私が乗っていることにしておけ。通信は私に転送されるように細工しておいた。君は敵機の制圧に専念してくれ」

その意見には賛成だ。了解、と返し通信を切る。
薬を飲んでおよそ5分。残り25分で敵機の制圧、キョウスケ・ナンブ、カミーユ・ビダン……そしてユーゼス・ゴッツォの殺害。
厳しいが、やれなくはない。この乱戦だ、何が起きても不思議はない―――殺意を仮面の下に押し込み、アキトは、黒いゲッターは飛び立った。


234 :代理投下:2008/12/22(月) 09:40:20 ID:c2rZuRRL
          □


「キョウスケ・ナンブ。援護する」

その声は唐突に響いた。
特機とカミーユ、その双方に注意を配り神経をすり減らしていたキョウスケは新たな反応に気づかなかった自分に毒づいた。
基地から上昇してきた機体、あれは最初に交戦した黒い特機。目前の敵手が最初に乗っていた機体。
ユーゼスは大破したと言っていたが……やはり、ブラフだったようだ。
問い詰めることが増えたなと思いつつ、その考えを頭から追い出す。今考えることではない。
ともあれ、これで三機。あの黒い特機―――ブラックゲッターと言うらしい―――の攻撃力なら、敵機に致命打を与えることも可能だろう……通常なら。
ファルケンが示すブラックゲッターのデータは依然交戦した時とは比べ物にならないほど低い数値を示している。

「ユーゼス、話は後で聞く。その機体、戦えるのか」
「格闘戦はこなせるが、残念ながら最大の打撃力であるビームは使用できん」
「チッ、当てにならんやつだ……!」
「そう言ってくれるな。今、もう一機の起動準備を並行して進めている。ローズセラヴィーだ、知っているだろう。あれの砲撃なら十二分だ」
「……ベガは死んだと聞いた。誰が動かすんだ」
「それも私だ。複雑な戦闘は不可能だが、狙った地点を砲撃するだけなら遠隔操作とあらかじめ組んでおいたプログラムで行える。
 チャージまでの時間を稼げ。あとは私の支持するタイミングで一斉攻撃を仕掛ける」
「いいだろう……乗ってやる。どれくらいかかるんだ」
「月の子の射出は終了した。チャージまで2分というところだ」


235 :代理投下:2008/12/22(月) 09:40:58 ID:c2rZuRRL
基地の上空、交戦空域より更に上。二機の小型デバイスが上昇していくのが見える。
ある程度まで上昇したデバイスは停止し、展開した。

「この世界では雷雲などそうそう望むべくもない……そのあたりを主催者も考慮していたようだ。
 月の子の周辺の空間が歪曲している。どこからかエネルギーが転送されてきているようだな」
「理屈はどうでもいい。2分だな?」
「ああ。だが時間を稼ぐだけでは足らん。確実に命中させるために足を止めろ」
「無茶を言う……しくじるなよ、ユーゼス」
「お互いにな」


2分。暴走するカミーユはともかく、自分とブラックゲッターでなんとか敵機の推進装置を破壊するしかないだろう。

「カミーユ、聞け。黒い特機にはユーゼスガ乗っている。今は撃つな。
 そして2分以内に敵機の移動力を奪う。成功しようがしまいが、合図したら敵機から距離を取れ。巻き添えを食らうぞ」

返事はないとわかってはいたが、言っておかなければ本当に巻き込みかねない。
ブラックゲッターが突進していく。機体特性からしてファルケンは援護に徹するべきだ。
射撃は苦手と言っている場合ではない……ファルケンもライフルを放ちつつ飛び込んでいった。

236 :代理投下:2008/12/22(月) 09:41:36 ID:c2rZuRRL
          □


「また増えた!? しかもあれは……ブラックゲッター! まだ動いたのかよ!」

メディウス・ロクスの中、バーニィは必死に機体を制御していた。
もともとこの機体は複座だ。一人が操縦を、一人が機体のエネルギー管理を担当し、十全の力を発揮する。
ゼクス・マーキスのような優れた技量のパイロットやユーゼス・ゴッツォのように操縦・管制を同時にこなせる者なら一人でも支障はないが、新兵上がりであるバーニィには荷が重すぎた。
AI1とかいう人工知能もサポートしてくれてはいるが、その方面に知識のないバーニィでは有効にAI1を活用することもできない。
機体性能でなんとか紅い機体を寄せ付けずにいたら、新たに参戦してきた戦闘機は手に負えないくらい速く、そして先読みされているかと思うほどに攻撃が当たらない。
幸い火力は低いものの、時折り肉薄してはバリアを纏う拳を撃ち込んでくる。あれがまともにコックピットへ当たればさすがに死ぬだろう。
死を遠ざけようとしつつも止めてほしいと願う……矛盾だとわかってはいても止められない。
自分はどうしたいのか。この場をどのような形で切り抜けたいのか、それすらもわからない。
ただ目前に迫る死を回避しようと、それだけを想い操縦桿を握る。

やがて、火器が尽きたか戦闘機は接近戦を果敢に挑んでくるようになった。
こちらの距離だ、攻撃を―――おかしい、紅い機体の援護がない。先程までの、効果が少ないとはいえ牽制の意味はあった砲撃が止んでいる。
咄嗟にレーダーを見れば、いた。少し距離を取って、二機―――二機?
そして、ブラックゲッターまで戦線に加わった。余裕の体で作戦会議でもしていたのだろうか。
戦闘機が、そしてブラックゲッターが凄まじいスピードで向かってくる。その後ろを固めるのは紅い機体。
四機が交錯する。
紅い機体は後ろからライフルを連射するも、命中率は低い。射撃は不得手という勘は当たっていたようだ。
意識をブラックゲッターと戦闘機に集中する。より危険なのはこの二機だ。
ブラックゲッターが斧を振り回す。スパイラル・ファングで受け止めるも、その隙に戦闘機が殴りかかってきた。
コックピットを守るために肩で受ける。光を纏った拳は小型機とは思えないパワーで肩の装甲を吹き飛ばした。
後退しなければ……後ろに紅い機体。回り込まれた。至近距離でハンマー。
背面に直撃。弾け飛ぶメディウス・ロクス。
もうダメだ―――と諦めが頭をもたげる。降伏しよう、と誰かが囁き、受け入れられるはずがない、とまた別の誰かが否定する。
前にも後ろにも進めない……でも。
基地の惨状を目に焼き付ける。あそこには人がいたはずだ。そして、何人かは死んだはずだ―――
ここで引くことはできない。何のために引き金を引いたのか。自分がここで折れれば、そのために死んだ人は何なのか。
そうだ、もう後戻りはできない。全力で戦うことしか、できることはない。
態勢を整える。ブーストに損傷、機動力が67%に低下―――まだやれる!


237 :代理投下:2008/12/22(月) 09:42:22 ID:c2rZuRRL
「イグニション……!」

エネルギー全開。
この機体の膨大な出力を全て攻撃に回す。敵機はどれも一騎当千のパイロット揃いだ、一機ずつでは埒が開かない。
すべて同時に撃墜すべく、AI1が指し示す最善の攻撃プランを実行する。

「ヘブン・アクセレレイション! 行けぇぇぇええええええええええッ!」

虚空に穴が穿たれ、そこから全てを溶かす無明の闇が溢れ出す。メディウス・ロクスを除き、あらゆるものがその中心点に向けて引き寄せられていく。

紅い機体、青い戦闘機、ブラックゲッター……接近していたその全てが射程に入った。
本来は後部座席で制御するべき兵装なのか、収束率が低い。それでも三機の動きは止まった。
引力から離脱するべく三機は全力でブースターを吹かしている。だが一向に機体は動かない。
元より一手で倒しきれるとはバーニィも思っていない。必要だったのは三機を一度に狙える状況だ。

「ライアット・ブーメラン……行けよぉッ!」

都合6つのブーメランを解き放つ。一機につき二本、それぞれ違う軌道で射出。
どの機体も動かない―――勝ったッ!



―――そう思った瞬間、機体に衝撃が走った。


見る間にコックピットをレッドランプが埋め尽くす。何が起こったんだ……と、AI1に確認する。

238 :代理投下:2008/12/22(月) 09:42:58 ID:c2rZuRRL
【高密度指向性エネルギー体の衝突。右脚部及び右腕部消滅、出力43%に低下】

映し出されたのは無機質な文字の群れだが、バーニィに絶望を植え付けるには十分だった。
地上、右半身が破壊されている大型の赤い機体。その機体がいま、巨大な砲身を向けていた。どうやらあれで砲撃を喰らったらしい。
まだ生き残ってる人がいたのか、と後悔と同時、安堵が込み上げる。次の瞬間それどころじゃないと思い直すも、被害は甚大だ。
見れば、敵機たちも健在だった。
ブラックゲッター、そして紅い機体にはライアット・ブーメランが多少なりとも損傷を与えたようで、両機ともに武装を取り落としている。
赤い機体はライフル、ブラックゲッターは斧。
戦闘機は驚いたことに全くの無傷だった。あの状況でも躱してのけたらしく、まさか噂のニュータイプか、なんて考えが頭をよぎる。
仕留めそこなったのは痛いが、敵もあれが切り札だったようだ。そのためにわざわざ接近戦を挑み、動きを止めたのだろう。
眼下の機体から感知できるエネルギーはゼロに近い。もうあの砲撃はないと判断し、ここは逃げるべきかと撤退を視野に入れる。
どうやら人的被害は最小に留まったようだ。自分のやったことが正当化されるわけではないが、その事実はバーニィの心をいくらか慰めた。
もはや気負うこともなく、冷静に戦場を見れば……上空に何か反応がある。確認しようとした刹那、その反応が膨大なエネルギーを打ち出した。
向かう先は地上の大型機……その巨砲。

「あの装置はエネルギーをチャージするものか……!? くそっ! チャージなんてさせるものか!」

もう一機の装置へとターミナス・ブレイザーを放つ。結果を確認もせず、今度は地上へ。
生き残った人には悪いが、あの大砲だけは破壊しなければ逃げることも難しい。

その瞬間、バーニィは勝つことよりも逃げることを優先し、一瞬だけ、対峙していたはずの三機の存在を忘れた。
それはすなわち『油断』であり、敵対していたパイロット達からすればどうしようもなくわかりやすい『隙』だった。

一秒。黒の機体が傍らを駆け抜ける。
メディウス・ロクスの左腕が宙に舞う。

二秒。紅の機体がハンマーを振り下ろす。
メディウス・ロクスの右腕が付け根から粉砕された。

三秒。ようやく振り返ったバーニィが見た物は。
パイロットの怒りをそのまま形にしたかのような、蒼い炎。
スロー再生のようにコックピットへ、そこにいる自分へ向けて突き進んでくるそれを見つめ、思う。

―――ごめんな、アル……クリス。俺はもう、帰れない―――

言葉に出したかどうか。それを確かめる間もなく、バーナード・ワイズマンはこの世界から消え去った。


239 :代理投下:2008/12/22(月) 09:43:32 ID:c2rZuRRL
          □


「はっ……はぁっ……やった。やったんだ、ベガさんの仇を……この手で討ったんだ」

撃墜した敵機を見下ろし、荒い息をつく。
操縦桿から手を離そうとするも、強張った指先は中々動かない。興奮が冷め、ようやくカミーユは冷静になった。
ピンポイントバリアパンチは正確に敵機のコックピットを抉った。生命反応はない―――殺した。
だが、達成感などない。怒りに任せて動いたものの、残ったのはどうしようもない気持ち悪さだけだ。

「なんで……なんでなんだよ。お前にも帰りたい場所があって、大切な人がいたんだろう……?」

落ち着いてみれば、あのパイロットが言っていたことも理解できなくはない。突然こんな戦いに放り込まれれば、錯乱もする。
ベガを殺したことは到底許すことなどできないが、それでも他に方法があったのではないか……そんなことを考える。
と、キョウスケから通信。

「カミーユ、落ち着いたか?」
「……ええ、中尉。すみません、勝手なことをして」
「構わん。お前は結果を出した……それに元はと言えば俺が下手を打ったのが原因だ。お前が気に病むことはない」
「でも」
「責任があるとするなら、俺と。そしてユーゼス、貴様だな」

キョウスケの乗るビルトファルケンは黒い特機へと向き直っている。その様はまるで今にも剣を交えんとする戦士のようだ。


240 :代理投下:2008/12/22(月) 09:44:03 ID:c2rZuRRL
「あの特機は何なのか。乗っていたパイロットはどこにいたのか。どうしてこんな事態が起こったのか。
 そして貴様は何をしていたのか……答えてもらうぞ、ユーゼス・ゴッツォ。返答次第ではただでは済まさん」

キョウスケの声は静かながらも言い逃れを許さない剣呑さを帯びている。
自分もユーゼスは信用できない。ここはキョウスケの話を聞くべきだ。
もし、やつが想像通りの邪悪なら……再び、この機体を駆けさせることになる。ユーゼスの動き、欠片も見落とすまいと集中する。

「答えよう、キョウスケ・ナンブ。ただし」

響いた声は黒い特機からではなかった。
発信源……ローズセラヴィー。ユーゼスは黒い特機に乗っているんじゃなかったのか。
だが映像ははっきりとローズセラヴィーのコックピットハッチに立つユーゼスを映し出している。
一瞬、カミーユ・キョウスケともに注意がブラックゲッターから外れた―――その刹那。



「がッ……!?」


鋼鉄の隼・ビルトファルケンを、復讐鬼・ブラックゲッターの斧が斬り裂いた。

「え……何を。何を、して、るん、だ……?」

キョウスケの苦悶。弾け飛ぶファルケン。
ブラックゲッターはその勢いのまま、今度はカミーユへと向かってくる。

「君が、それまで生き残っていれば、だが」
「キョウスケ中尉……キョウスケ中尉――――――ッ!」

落ちていくビルトファルケン。だが、それを追えるほどの余裕を、ブラックゲッターは与えてはくれなかった。


241 :代理投下:2008/12/22(月) 09:44:47 ID:c2rZuRRL
          □



「……が、あ……」

目を開くと、とたんに何故目を開けたのかと後悔した。
視界いっぱいに広がる赤。体のそこかしこに突き立つ鋭い破片。

「……幸運は、二度も、続かんか……」

すべての始まりといえるシャトル事故を思い出す。エクセレンが死亡し、己は瀕死の重傷、だが生き残った事件。

「やったのは、ユーゼス……いや、おそらくはあの男、か。つくづく……甘いな。俺と、いう男は」

ビルトファルケンは辛うじてまだ空にある。だが、肝心の中身が……キョウスケは、もはや牙の折れた手負いの狼だ。
あのとき機体を襲った衝撃はコックピットの中を跳ね回り無数の飛礫と化してキョウスケを襲った。
致命傷だ。
モニターを見やれば、消去法で考えれば恐らくアキトが搭乗しているだろうブラックゲッターとカミーユの戦闘機が、激しいドッグファイトを演じている。
先程の人事不省寸前といった体からは考えられない鋭い動き。あの薬のおかげだろうか?
援護しようにも、腕がどうしようもなく重い―――操縦桿を引くことにさえ、凄まじい重さを感じる。
どうしようもない……いや。

薬。あの薬なら一錠持っている。念のためにアキトから奪っておいた、最後の一錠が。
得体のしれない薬、普段なら飲むはずなどないが―――

(俺が蒔いた種だ。俺が刈り取らねば……な)

鉛のような腕をどうにか動かし、躊躇いなくカプセルを飲み下す。

242 :それも名無しだ:2008/12/22(月) 09:49:23 ID:iuWyqC+r
支援

243 :代理投下:2008/12/22(月) 10:41:24 ID:HlcmxdCu
どくん、と。

体の奥で何かが脈動した。

(痛み止め……ではない!? なんだ、この薬は……!)

凄まじい熱。次いで、氷のような冷気。自分という存在が、浸食されていく。

「ぐ……がああああああっ!」

頭の中で激しく火花が散る。影、霧のような、何かが、見える―――これは。
時間が止まる。近づいてくるのは―――
視界が黒に染まる。おぞましくも懐かしい、この気配。


(捕らえた……ぞ)


脳裏に直接響く声。知っている、この声は。

(ようやく……届いた。我が……声が……)
「この……声、貴様はッ……!」

かつて打ち破り、そして今また己が運命を操ろうとする存在、ノイ・レジセイア。
撃ち貫くと誓った存在が、ここにいる。キョウスケのすぐ傍に。

(……お前こそ……ふさわしい。審判の……存在……)
「何を……言っている。俺に、何の用だ……!」
(お前は……またも、生き延びた。そして、我を受け入れるに、足る……器を、手に入れた……)
「受け入れる、器……? 俺を、支配しようというのか―――エクセレンのようにッ!」
(拒むことは……できない。お前は、選んだ……人でなくなる……ことを。我に……近い存在と、なる……ことを。だから、我と……繋がる、ことが……できる)


244 :代理投下:2008/12/22(月) 10:41:55 ID:HlcmxdCu
あの薬。危険なものだとは覚悟していたが、まさかここまでのものだったとは予想していなかった。
キョウスケは知らぬことだが、件の薬一つ飲んだだけで人でなくなるということはない。
薬の正体は希釈されたDG細胞。アキトのように身体に欠落する箇所があるものが服用すれば、DG細胞はそこを補うように展開する。
対して健常者が使えば、DG細胞は拡散する場のないまま沈殿する。そして感染力の弱められたそれは、時間とともに体内の免疫細胞によって駆逐される運命にある。
キョウスケの不運は、体力の低下した状態で薬を服用したこと。
結果、普段なら駆逐されるべきDG細胞がさしたる抵抗もなく体内に行き渡ってしまった。
そして、ノイ・レジセイアの波動。意志を持たないDG細胞に指令を下し、その働きを統制するもの。
キョウスケの体の支配権は急速に奪われつつあった。

下手を打った―――後悔が頭をかすめ、だが同時に、どこか奇妙なほど冷静な内面の己が叫ぶ。
―――ここが勝負所だ、と。
手の届かないところにいた主催者が、降りてきた。それも手の届くどころではない、己の内面という極めて近く……限りなく遠い場所に。
何故人間たるキョウスケの身の内に降りるのか。アルフィミィの気まぐれか、あるいはそれほど差し迫った理由があるのか―――
どちらにせよ、好機。
かつてエクセレンがそうであったように、アインストとなった自分が突破口となる―――この箱庭の戦いの。
賭けに負け、自分が自分でなくなったとしても……止める力はある。かつての仲間たちと同じ、信頼できる力が。

「くくっ……ああ、いいだろう……この身体、存分に貪るがいい。だが、もし貴様が俺を、人間を、取るに足りない存在だと驕っているのなら」

不思議なことに、微かに楽しくなってきた。
そう、キョウスケ・ナンブという人間を端的に表すのなら一文で済む。
―――分の悪い賭けは嫌いじゃない。

「遠くない未来……貴様は再び打ち砕かれる。
 この牙を貴様の喉笛に突き立て、その存在を欠片一つ残さず消し去ってみせる。今度こそ、完全にな」

言葉を切ると同時、気配が遠ざかり、体の感覚も薄くなっていく。
落ちていく鋼鉄の隼。その先に眠るは、相棒たる鋼鉄の孤狼。

「フッ……そうだな、お前がいなければ始まらんな―――アルト。付き合ってくれ、地獄の底のさらに下、俺の、最後の戦場へ……!」


鋼鉄の系譜……ともにつがいを失ったものが、互いに互いを抱擁する。これが始まり―――キョウスケは目を閉じた。


245 :代理投下:2008/12/22(月) 10:42:27 ID:HlcmxdCu
          □


「テンカワ……といったか。目的は果たしただろう、ここは引くぞ」
「……何故だ。俺としてはこの機体もここで仕留めたいのだがな」

可変戦闘機……おそらくYF-21と同じバルキリーであろう機体と干戈を交えていると、ユーゼスが通信してきた。
あの化け物のような機体からだ。横目で見やると、驚くべきことにあれだけの攻撃を受けてもあの機体は健在だった。
とはいえパイロットはさすがに死亡したようだ。
仮面の男が抉り取られたコックピットから何かを引きずり出し、放り投げるのが見えた。
どうも人体のパーツであると思わしきそれらは大地に叩きつけられ、粉々になった。

「仕留められるのならそれもいいが、何があったか私にも把握し切れてはいない。
 君の位置からも見えるだろう? ファルケンがアルトと未知の反応を起こしている。
 墜落したキョウスケ・ナンブがなんらかの変化をもたらした公算が大きい。現時点では交戦を控えるのが賢明だ」

見れば、墜落したキョウスケの機体はアルトと溶け合っていくように見える。
まさか斧の一撃で機体が融解するほどの熱量が発生するわけもない。何かが起こっているのは疑いのないことだった。
アルフィミィからアルトを譲り受けた時のように、いささか信じがたいものであったが。

「だが、こちらは二機だ。どうであれ押し切れるのではないか?」
「君が健常ならな。ああ、言ってなかったがブラックゲッターの中はモニターさせてもらっていたよ。
 大事そうに抱えてきたあの薬は劇薬のようだが、確証はあるのかね? 効果が切れるまでにあれとその戦闘機を倒せると」
「……ないな。だが薬にも限りがある。一つ使ってしまった以上、おいそれと引くわけにはいかん」

ユーゼスの抜け目のなさというより自分の不用心さに憤る。薬のことを知られたのは痛い。

「その点は問題ない。サンプルさえあるなら今のAI1で量産が可能だ。
 もちろん、君が私に貴重な薬を一つ預けてくれるなら、という条件付きではあるが」
「何が狙いだ、貴様。俺が優勝を狙っているのは知っているだろう」
「さあ、どうせ何を言っても君は信じはしまい? だからこうとだけ言っておこう。『どちらでも構わん』と」
「……、どういう意味だ」
「何、そのままさ。君が私を信じようと信じまいと、どちらでもいい。
 信じないのならここで別れるだけだし、信じるのならそれなりの見返りは約束しよう。どのみち最後は戦うことになるのだろうしな」
「条件付きの同盟というわけか」
「そうとってもらって構わん。……おっと、これ以上言葉遊びに時間を費やすのもいかんな。さあ、選びたまえ。私とともに来るか否か」
「……いいだろう。俺からの条件は薬と情報だ。それを満たすのなら貴様の指示に従ってやる。
 ただし、残り5人あたりになれば手を切らせてもらうがな」
「ふむ……交渉成立だな。では行こうか」


246 :代理投下:2008/12/22(月) 10:42:58 ID:HlcmxdCu
戦闘機もアルトの変化に気づいたようだ。パイロット―――キョウスケの名を叫びつつ距離を取り、旋回している。
といってもこちらに隙を見せているわけでもないが、少なくとも注意は向けられていない。離脱するのは容易かった。
戦域を離れ、ある程度距離を置いたところで語りかける。

「で、どこへ向かう。基地に向かってくるやつはいるはずだ。そいつらを狙うのか?」
「さしあたっては別の施設だな。君の薬のこともある。研究所などがあればいいのだが」
「施設……それなら心当たりがある。と言っても、問題はあるが」
「ほう?」
「戦艦を二隻、確認している。一隻は戦いに乗っていて、もう一隻は不明だ。俺としては……後者、ナデシコを探すことを薦める。あれならば研究設備も充実しているからな」
「ほう……勝手知ったる口ぶりだな?」
「……貴様には関係ない」
「フ、まあいい。では当面そのナデシコなる艦との接触を目標としよう。では行こうか……共犯者よ」

共犯者。仲間、相棒などと称されるよりよほど合っていると思った。
どうせ目的を果たすまでの仮初の同盟。いずれ殺す相手に必要以上に気を許してはいけない。
特にこの仮面の男は底が知れない。迂闊な隙は見せられない。
……不意に、自分が討った男を思い出す。
ユリカを失った自分と、まるで鏡に映したような境遇の男。違うとすれば悪魔の誘いに乗ったかどうか。
内心はどうあれ、あの男は自分を助けた。だがその返礼として自分は彼を背中から斬った。
後悔はないものの、胸が痛まないということはない。
しかし、やつは生きているかもしれない。戦斧は確実にコックピットを切り裂いた、それは確認している。
なのにあの赤い機体は狙ったようにアルトアイゼン、己が放置した機体のすぐ傍に落ち、融合を始めたのだ。
傍目にも尋常な様子ではなかったが、はたしてあの変化の内部にいた男は無事なのか。
万が一無事だったとして……その時キョウスケは、もはやアキトを保護すべき対象としては見ないだろう。
次に会ったときはその身を喰らい合うことになる、それは確実だ。
ガウルンともまた違う、奇妙な縁ができた。影と戦うようなものだ、とおかしさがこみ上げる。

(キョウスケ・ナンブ。許しを請うつもりはない……だから、俺の前にお前が立ちふさがるのなら、何度でも)

決意は変わらない。何よりも重いのは、ユリカの命だ。

(そう、何度でも撃ち砕く。戻る気はない……これが俺の、俺にできる唯一の……贖罪、なのだから)


247 :代理投下:2008/12/22(月) 10:43:40 ID:HlcmxdCu
          □


通信を切る。この男、テンカワ・アキト。
先程の動きをみるに、腕は確か。そしてあの割り切った態度、道行きを共にするには申し分ない。
だが……失望した。この男は己を滅する敵たり得ない。
この男にはキョウスケ・ナンブほどの信念を感じない。おそらくは優勝すれば望みが叶うという口車を信じたのだろう。
だがその望みがかなう保証はどこにもない。己が主催者の立場なら、今頃さぞ口角を吊り上げているだろう―――哀れな道化。
自ら勝ち取る道を選ばず、ただ与えられるものを享受する……そんな輩に興味などない。
しばらくは協力するが、AI1が問題なく稼働するようになればいつでも切り捨てる。
仮面の魔人にとって黒き復讐者はその程度のものだった。
基地を放棄したのも些事だ。あとはある程度の設備があれば首輪の解析は可能。
ベガは……惜しいことをした。彼女にはまだまだ有用性はあったのだが、まあ仕方ないことだ。
カミーユ・ビダン。これもまた、些事だ。賢しいだけの子供などいくらでもあしらえる。
当面はナデシコなる戦艦を探しつつ、首輪とバーニィが遺した戦闘データを解析する。
これでAI1はまた成長できる。あの半端者も、最後の最後で少しは役に立ってくれた。

それよりも、思考を占めるのはキョウスケ・ナンブのこと。
アキトの一撃はたしかにやつに致命傷を与えたはず。だが、この背筋に残る怖気は何なのだろうか。
死んではいない―――そんな予感が頭から離れない。
あの男の操縦技術、決断力はたしかに目を見張るものがある。
しかしそれだけではこの状況を説明できない。撃墜し、沈黙したと判断したその瞬間、あの得体のしれない気配は「来た」。
念動能力者でもサイコドライバーでもないキョウスケ・ナンブとただのパーソナルトルーパーでは成し得ない事態、考えられるとするなら。
メディウス・ロクスが仕掛けたヘブン・アクセレレイションは一瞬、確かに次元に穴をあけることに成功した。
バーニィ如き未熟者でなく自身が乗っていたなら正確に観測できていただろうが、是非もないことだ。
とにかくあの一瞬。あの一瞬、何かが「紛れ込んだ」のだ、この世界に。
キョウスケ・ナンブの話では、彼は主催者の化け物と浅からぬ因縁があるという。
あの場で介入して来る存在と言えば、一つしかない。主催者がキョウスケを死なせないために行動したということだろうか。
だが解せないのは何故時間をおいてあの気配は発現したのか。
キョウスケ・ナンブが何らかのアクションを起こした―――何を? だがその答えは現状では導き出せない。

ともかく、生死が確認できていないのなら、やつは生きているとして扱うべきだ。
そして生きているならあの男は今度こそ向かってくる。必滅の決意とともに。
ぶるり―――我知らず肌が泡立った。愛しき宿敵以外にこんな感情を持つのはいつ以来だ?
まったく、退屈しないな、この世界は―――哄笑を抑えきれず、身を反らす。
いいだろう、来るがいいキョウスケ・ナンブ。私は逃げも隠れもせん。
お前の牙がこの身に届くと信じているなら……喜んで相手をしてやろう。
己が映し身のように、彼に導かれたサンプル達のように。強い「力」を、更なる力でねじ伏せることで。


「その意志が、その熱が―――私を遥か超神の高みへと押し上げるのだからなぁ―――!」


248 :代理投下:2008/12/22(月) 10:44:49 ID:HlcmxdCu
          □


「キョウスケ中尉! 応答して下さい、キョウスケ中尉!」

ニュータイプの感性に頼るまでもなく、わかる。
今、キョウスケ・ナンブという男は変わりつつある。
寡黙だが信頼できる男の発する気配は、時を追うごとに歪んだ何かへとすり替わっていく。

「……カ、ミ……ユ。き……える、か……」
「キョウスケ中尉! 無事なんですか!?」
「……いい、か、よく、聞け。ユー……ゼスは、危険だ……。奴と、もう、一人。テン、カワ……アキトという、男……こいつらは、乗っている……躊躇う、な、倒せ」

聞こえてきたのは己のことではなく、敵のこと。まるで、仲間に後を託して逝く戦士の声。

「あなたは……何を言ってるんです! すぐに救助します、もう喋らないで下さい!」
「聞け……ッ! 俺は、もう……長くは、持たん……。エクセレンの時と、同じことが……時間が、ない。不本意、だが……お前に、託す。聞くんだ……」
「そんな勝手なことを……!」

強引にでもコックピットから引きずり出して……そうしようとした瞬間、眼前の異常に目が奪われる。
ビルトファルケンの鋭角なシルエットが崩れる。下敷きとしていた蒼い機体と溶け合っていくように、一つになって。
真紅と、深蒼が、混じり合う。

「俺は、かつてあの、化け物……ノイ・レジセイア……を、撃破、した。やつが何故、蘇ったのかは……知らんが、決して、倒せ、ない存在では……ない」

何かが、生まれる。存在してはいけない何かが。
だがその渦中の男は構わず喋り続ける。かつてあった戦い、その結末を。
そしてこの世界であった、新たな戦いを。

「カミーユ……力を、集めろ。お前……だけでは、足りん……もっと多くの、強く、激しい力、で……今度こそ、やつの、存在……を、消し去る……ために」
「中尉……ッ!」
「そして、力が……集ったのなら、……カミーユ。まず、俺を……殺しに、来い。
 他の誰でもない……お前が、だ。俺の声を聞いた、お前が……俺を、止めろ」
「何を、言ってるんです、中尉? どうして俺があなたを殺さなきゃならないんですか!?」
「俺は……やつらと、同じ……存在に……アインストに、なる。
 だが、恐らく……ユーゼス・ゴッツォ、あの男……は、それ……さえも、利用……しようと、する、だろう。
 だから、その前に、お前が……俺を殺せ。あの男の……良い様に、踊らされるなど……真っ平だから、な」
「俺に、あなたと同じことをしろって言うんですか!? ゼクスさんやカズイを殺した、あなたと……!」
「ゼクス……、そうか、やつも……こんな気分、だった……のかも、しれん、な……お前には、重いものを、背負わ、せる……すまん、な」

不意に、水音。大量の水をぶちまけたような。狭いコックピットで考えられるものなど、一つしかない―――血だ。

「もう……行け。そろそろ、限界……俺が、俺でいられるのは……ここまでの、ようだ……」
「中尉、俺は……俺は……ッ!」
「……行けッ! カミーユ・ビダンッ!」

もう口を開くことさえ辛いはずなのに、その一喝はカミーユを怯ませる。

「ま……待って下さい、俺はまだ、あなたに……ッ!」
「ベガはお前を守って……死んだのだろうッ! その命、もはやお前の勝手で容易く捨てられるものではないぞ! 
 生きろ……戦え、カミーユ! お前が生きて、やつらを討てば……それが、俺達の勝利だッ……!」
「……中尉」

と、もはや形も定かではないビルトファルケンの腕が伸びる。取り付けてあったブーストハンマーを外し、こちらに放り投げた。

「これを……使え。 ……勝て、カミーユ。お前には……力がある。想いを、強さへと変える、ことが……できる、力が。俺の……命。持って、行け……」
「あ……お、俺は……!」
「さらばだ……、カミーユ。死ぬな、よ……」


249 :代理投下:2008/12/22(月) 10:45:20 ID:HlcmxdCu
やがて、真紅が駆逐され、深蒼が湧き出でる。
二機の影は一つになった。
―――蒼い、アルトアイゼンに。

「……ッ、……う、あッ……あ、うぁぁあああああああああああァァッッ!」

ハンマーを拾い上げ、ファイター形態へと変形。変わっていくビルトファルケン……否、もはや隼でも古い鉄でもない機体から、「逃げる」。全速で、振り返らず。

(俺は……俺は……ッ! 守ってもらうばかりで、あの人たちに何も……何も!)

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!」

もう背中を守ってくれるキョウスケはいない。隣で支えてくれるベガは、前に立ち導いてくれるクワトロはいない。
危険と知りながらユーゼスを放置した、その自らの甘さが招いた惨劇―――ベガと、キョウスケが代わりにそのツケを払った。
クワトロとは出会うことなく死に別れた。すべてが遅すぎたのだ。
後悔、怒り、悲しみ、憎しみ。そのすべてが混沌となり、だが皮肉にも身体を突き動かす力へと変わっていく。

「やってやる……やってやるさッ! ユーゼスも、アキトってやつも、あの化け物も……そしてキョウスケ中尉、あなたも! 
 俺が……俺が! 俺が、全て倒すッ! あなたの望み通りに……あなたを、ベガさんを、クワトロ大尉を―――勝利させるために……ッ!」


身体の奥に、熱い―――熱い、炎が灯る。すべてを灼き尽くす、根源の力。
今、この荒ぶる熱とともに誓うべき言葉は、ただ一つ。そう―――



「すべて……撃ち貫いてみせる……!」


250 :代理投下:2008/12/22(月) 10:46:07 ID:HlcmxdCu
【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルU(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。精神が極度に不安定
 機体状況:ブーストハンマー所持 反応弾-残弾0 EN・火器群残弾10%
 現在位置:G-5
 第一行動方針:対主催戦力と接触し、仲間を集める
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態】


 【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態 薬の持続時間残り15分
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:F-7北東部
 第一行動方針:ナデシコの捜索(とりあえず前回の接触地点であるD-7へ)
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を3錠所持
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持】


 【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷、両腕部・右脚部欠落、コックピット半壊、自己再生中
 現在位置:F-7北東部
 第一行動方針:ナデシコの捜索、AI1のデータ解析
 第二行動方針:首輪の解除
 第三行動方針:サイバスターとの接触
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:機体の制御はAI1が行っているので、コックピットが完全に再生するまで戦闘不能】


【メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
 機体状況:???
 現在位置:G-6基地内部】


【月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー)
 機体状況:右半身大破、月の子全機大破、EN残量0
 現在位置:G-6基地】


【バーナード・ワイズマン  
 搭乗機体:なし
 パイロット状態:死亡】

【残り21人】

【二日目 7:10】


251 :代理投下:2008/12/22(月) 10:46:38 ID:HlcmxdCu
          □


(行った……か。まったく……世話の焼ける……)

もはや声が出ているかも定かではない。
だが不思議とキョウスケに恐怖や後悔といった感情はなかった。

(エクセレン……遅くなって済まないが、まだお前のところには行けないようだ……)

意識は朦朧としているのに、感覚が広がっていく。機体に神経が繋がるような……
これはそう、アルト。いや、ゲシュペンストMkVという方が正しいか。アルトは蒼くはないものな……と、かすかに笑みがこぼれた。

(気がかりはユーゼスとあの男……手の内をすべて見せたわけでもあるまい。まだ何か企んでいるか……)

そして、主催者。アルフィミィにノイ・レジセイア。問題は山積みだ。

(……だが、勝つのは俺たちだ。ノイ・レジセイア、何をしようと貴様の滅びは決まっている……俺達を敵に回した時から、な)

意識が消える、その刹那。彼女が、笑った気がした。

『ほんと、分の悪い賭けが好きねぇ』

(フン、何とでも言え……見ていろ、あいつは来る。俺を……撃ち貫き、この闘争の世界を、破壊するために。
 俺の命をチップにしたんだ、それくらいの配当がなければ釣り合わん……なあ、そう……だろう―――カミー、ユ―――)

勝て―――その意志を残し。

―――そして、「キョウスケ」が沈んでゆく―――


252 :代理投下:2008/12/22(月) 10:47:11 ID:HlcmxdCu
          □


静寂の……世界。創らねばならない……
望まぬ……者を……望まぬ……世界を……破壊しなければならない……
人間……これこそが……この、身体こそが……
試す……そう、試さねば……この器が、新たな、宇宙を……創るに足る、ものか……
すべて……消去する。我の前に……立ちふさがる者、すべて……





            ――――――撃ち貫く、のみ――――――







【キョウスケ・ナンブ  搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:アインスト化 、DG細胞感染
 機体状況:アインスト化。
 現在位置:G-6基地跡地
 第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
 第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
 最終行動方針:???
 備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
 備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。
      ただし全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
ビルトファルケンがベースのため飛行可能。
      また実弾装備はアインストの生体部品で生成可能】

253 :それも名無しだ:2008/12/22(月) 14:14:46 ID:diCnwAyz
ちょwまさかのアインスケ降臨!
予想の斜め上どころか遥か先です。
バーニィもその面子相手によく善戦したよ。
でもマーダーやるには黒さが足りなかったんだろうな。
よくも悪くも普通の青年であり過ぎた。
生き残りが北に向かったことで二隻の戦艦との接触も起きそうで先も楽しみです。
ただブーストハンマーは前のメディウス戦で壊れてたような気がします。
状態表からもその話を境に消えてますし。
執筆お疲れ様でした。

254 :それも名無しだ:2008/12/22(月) 17:46:29 ID:iI4Oj7J/
これは凄い。
キョウスケ、アルト、アインスト。絡み合った諸々の要因を纏め上げて、こういう形に持ってくるとは……。
これからどうなってくるのか先が読めない存在として、台風の目になりそうな予感。

……それにしても調子に乗ってるなぁ、ユーゼス。

255 :それも名無しだ:2008/12/22(月) 20:27:50 ID:MI5NyD5D
投下GJ!!
バーニィが逝ってしまったか……南無。
統夜とスタンスがかぶり気味だったけど結構好きだった。
でも最初はここまで生き残るとは予想してなかったな。
しかし入れ代わりにラスボスくさいのが出てきてて、まったく基地は地獄だぜ。
今後、基地目指してる連中がどうなるのか楽しみでもあり恐ろしくもある。
今、接触済みを除いて接触しなさそうなのってナデシコ組とロージャー組ぐらいじゃね?
皆、逃ーげーてー!!超逃げてええええええ!!!

えっと指摘を一点失礼します。
154話「古よりの監査者」が7:45で本作が7:10ということで時系列に逆転が起きており、154話ラストのレジセイアと齟齬が生じています。
それだけなら修正は楽だと思うんですが、アキトの薬のリミットも絡んでくるのでお気をつけ下さい。

256 :それも名無しだ:2008/12/22(月) 22:08:29 ID:e6ojqq3O
すげー、ある意味ターニングポイントになる話だ
それが絶妙に処理されてると思う

257 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 01:37:48 ID:a8fBUs84
投下乙!
バーニィしょうがないよ、主人公3人とラスボス1人相手によく頑張った
カミーユがちょっとずつ成長してってる感じだなぁ
アキト微妙に流され系?
ユーゼス自重しろw
おやキョウスケのようすが……おめでとうキョウスケはアインスケに進化した

258 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 02:29:30 ID:SIa4LTiW
クリスマスシーズンに死ぬ。
これもバーニィの宿命というかなんというか立派な原作再現……なのか?

259 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 12:48:48 ID:fVThmMcP
バーニィw
たしかに作中クリスマスだったなあ

260 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 13:19:09 ID:Lc7X4Gyl
超GJ!
これだけの人数をきっちり絡めて処理しつつ、大きな流れに繋げていく手腕がすげえ
ついにユーゼスとキョウスケの腹の探り合いが終わったか…
ユーゼス自重しろw

>>258
そういえばクリスマス近いな
間に合うなら是非25日に修正版を投下してほしいところw
バーニィ頑張ったよ…

261 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/23(火) 14:12:18 ID:irINHl+V
感想ご指摘どもです
主催介入+機体変更のアインスケはいけるのかなーと戦々恐々だったので、ダメ!と言われてないのがとても嬉しいw
バーニィについてはほんとクリスマスのことなんて考えてなかったんだけど、言われてみたらそうですねw

>>253>>255の修正なんですが、もうなんとお詫びすればいいやら・・・
ハンマーはライフルに差し替え、なんとか薬の時間内に終わるように修正してみます

262 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 17:40:00 ID:Oc3bz1Im
>>261
亀だけどGJ!!アインスケキヤガッタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
ユーゼスはテンション高杉wもちついて首輪外そうぜと声掛けてやりたいw

そしてお約束の反応してくれたバーニィ乙
月の子にはその台詞だよな

263 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 19:28:17 ID:317i3taR
カミーユたちはユーゼスがゲームに乗ってると判断してるが一応対主催なんだよなあ
もっともこの男の場合誤解フラグと呼んでもいいものかわからんがw

264 :それも名無しだ:2008/12/23(火) 20:47:17 ID:X7ZFJFyl
ユーゼスはあまり主催に脅威感じてないから対主催っぽくないんだよな
取り込みたいのは取り込みたいけどそれほど主催に興味がないというかなんというか
軽く見てる気がするしw

ところでアインスケの首ってやっぱ首輪はまってんのかな?

265 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/23(火) 23:15:28 ID:S+ZZte42
>>264
アインスト化って言っても体はあくまでDG細胞による変質で、首輪からのエネルギーによるアインスト化と考えていますので首輪はあります。
で、修正、完了しました。結構あちこちに手を加えたんで、こっちより避難所に投下した方がいいのかな?

あと予約していないアルフィミィ追加したんですが、これはよろしいでしょうか?
他には影響ない部分なので駄目なら削りますが

266 :それも名無しだ:2008/12/24(水) 00:37:58 ID:vTDD8Byv
修正乙!
投下はどっちでもいいとは思いますが、またさるさんに引っ掛りそうなら避難所のほうが無難な気がします。
それか本スレへの投下なら支援が期待できる時間にしたほうが良いかと。
アルフィミィもいいと思いますよ。
他に予約が入っているわけでもないですし、参加者側ではないのでこれまでも予約抜きで書かれた事もありますし。

267 : ◆VvWRRU0SzU :2008/12/24(水) 02:32:45 ID:7sj7wSub
修正前と比べたらむしろ増えてるしまあ確実にさるさんだろう・・・ということで避難所に投下しました
他の集団が軒並み9〜10時台なんでもう少し時間進めたかったんだけど、薬の時間考えるとどうしても8:00が限界かと・・・

ともあれ、感想・ご指摘ありがとうございました

268 :それも名無しだ:2008/12/24(水) 23:02:39 ID:R0FSWER7
修正乙!
加筆分含めて、すげー良かった
上でも言われてたけど、転機になる話だな……

269 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/25(木) 22:12:36 ID:hMSq/Mo0
修正ご苦労様でした。
追加加筆されたことによって、より状況も分かりやすくなってて良かったです。
アルフィミィの仮面のオジサマ発言には笑わされましたw
いや、しかし予想外の展開には驚かされっぱなしで脱帽です。

では続けざまの登場になりますが、アインスケ・オルバ・テニア予約します。

270 :それも名無しだ:2008/12/26(金) 00:31:28 ID:MMQ3N1DM
これは期待
年内最後になるかな?

271 :それも名無しだ:2008/12/26(金) 01:11:37 ID:99qL5vWH
とすると2008年の投下数は30か31か
月2.5作ペースで年間死者が今の所3人(ジョナサン・ベガ・バーニィ)
今年は思ってたよりは減ってなかったんだな
地道に進んでるけど来年はもっと進むのかな

272 :それも名無しだ:2008/12/26(金) 18:28:06 ID:60RoAwu4
対主催チーム
Jアーク、ブンドル・甲児、ナデシコ、カミーユ
単独行動
ロジャー・ソシエ、オルバ・テニア
マーダー・危険対主催
ガウルン・統夜、ユーゼス・アキト

こんな感じ?いよいよ大詰めだな。やっぱ基地が激戦区になりそうだ

273 :それも名無しだ:2008/12/26(金) 19:32:00 ID:g2/5k7KY
基地はヤバイよなぁ。
エクセレンを除く死者32人中8人、基地に訪れた13人中8人がここで死んでるものな。
致死率6割越え。
生き延びてる奴らでも竜馬やキョウスケみたいな状態の奴らもいるし。

274 :それも名無しだ:2008/12/27(土) 04:10:10 ID:E2G1tkCg
竜馬の扱いって生存でいいのか?
数えてみたら生き残ってるのは20人だが、放送で呼ばれてるのに残り21人っていうのもなんかな
生存か死亡はともかく、残り人数からは引いた方がよくね?

275 :それも名無しだ:2008/12/27(土) 18:57:13 ID:dZRkZ4M7
竜馬の扱いは「放送で名前を呼ばれはするけど、書き手視点では生存している」だよ。
前スレの放送前辺りでちょこっと扱いをどうするかの話になってこうなった。
だから放送では呼ばれたけど残り人数のほうではカウントされてないんだと思う。

276 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:05:47 ID:K/tijRxH
ロジャー=スミスとの接触からおよそ三十分。
オルバとテニアの二人組は、今G-6エリアを目前にしていた。
支給された地図。機体に予めインプットされていた地理データ。
それらを見ればそこは、緑の森林に囲まれた高台に位置していたはずだった。
だが現実はどうだ? どこにもそんなものはない。
囲む木々のある所は焼け落ちて黒い炭となり、またある所は地盤が捲れ上がり普段人目に触れることのない根が上を向いている。
その光景を抜けたその先の高台もその一部は崖崩れを起こし土砂が堆積している。
そして肝心の基地は、見当たらなかった。
高台の上に存在するはずの、50キロ四方にも及ぶ一ブロックの大部分を占めるはずの広大な基地は、そこに存在しなかった。
あるのは瓦礫の山。瓦礫の荒野。僅かな建物が崩壊を免れているものの、それだけだった。
機体を進める。半ば崩壊しかかった高台の上へ。かつて基地だったはずのその上空へ。
何があったのかは分からない。だが、遅かったのだと言う事は分かる。そう、遅かったのだ。
あちこちに散在し、瓦礫に埋もれている大破した機体が物語る。
誰かがここにいた。
そして、争いがあり、人がここから失われた。
うち捨てられている機体は一つや二つではない。数多くの人材が失われたに違いなく、その全てが一人勝ちを狙った者とは考え難い。
恐らくその中には、首輪の解析を試みた者もいたのだろう。それが失われた。
素直に残念だと思う。駒として扱えればどれだけ役立ったことか。

「いや……まだ全滅したと決め付けるのは早いか」

壊滅的な打撃を受けて大半、いやほとんどの建物が瓦礫と化しているとは言え、僅かな建物は残っている。
規模を考えれば、地下施設やシェルターが存在する可能性も低くはない。
この惨状を乗り越えた者がいるのかもしれない。いたとすれば、それは喜ぶべきことだ。
この惨劇にも淘汰されずに生き残る。それはその者が有能であることの証。
戦力の有無に関わらず生き抜く力と運を持っているということだ。飼い馴らせば、きっといい駒になる。
それに生存者がいなくとも探索は行なうべきだった。
仮に解析を試みた者がいたとすれば、その痕跡があるはずだ。
解析済み、あるいは解析途中のデータ・首輪そのもの・図面・メモ・etc、それらが必ずしも残っているとは限らない。
基地と共に失われたのかもしれない。だが、探す価値はある。
そして、残されている可能性が最も大きいのは基地のメインコンピューター。そこが生きていればあるいは。
思考を切り上げて、通信モニターへと目を向ける。そこには伏せた一人の少女がいた。
機体の操縦こそ行い併走して飛んでいるものの、その目はどこか虚ろだ。
必死に何か考えているのだろう。聞き取れはしないものの時折何か呟き、爪を噛む。神経質とも取れる状態。
その心情を察するのであれば、心中に湧き上がる不安に怯えている、といったところか。
いい傾向だ、と人知れず笑う。
上辺を取り繕う余裕すら失われたのか、それとも自分相手にもう上辺を取り繕うことは不可能と判断したのか、それは知らない。
だがいい傾向だ。このまま行けばボロを出すのもそう遠くない。

「テニア、生存者の探索に移る。先導は君に任せよう。代わりに後方は僕が受け持つ。
 気を引き締めて、警戒を怠るな」

通信。目玉だけが別のもののように動き、こちらを見た。
何を仕出かすか分からない気配を感じ、僅かに警戒心を高める。
やはりボロを出すのはそう遠くない。だが、ナデシコに戻る前に崩れられても困るのも事実。
ナデシコで、あの二人の前で自滅してもらう。それがベスト。
その為には隙を見せぬことだ。付け入る隙がなければ、テニアとて手は出せない。
だから先導を任せた。それは後ろから撃たれるリスクを減らすためでもあり、後ろから撃てるのだという脅しでもある。
後は妙な事を仕出かさぬよう監視を続けるだけで勝手に磨り減っていく。それは何よりも愉快だ。


277 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:06:30 ID:K/tijRxH
 ◆

何故? どうして? その言葉を持ち出せば、それはきりがない。
どこもかしこも間違いだらけだったように思うし、それでいて何一つ間違ってはいなかった、という気もしてくる。
ただ一つ分かりきっていることは、今進んでいるこの道に行き止まりを作られたということ。
タイムリミットは午後6時――次回の放送。
そこがこの道の行き止まり。終着地点。そこより先の未来はない。
矛盾が露呈し、嘘が暴かれ、裁かれる。
そして、弁解も受け入れられずに無残にも亡骸となった者の上で、奴らは満面の笑みを浮かべるのだ。
あぁ、良かった。これで大丈夫。一安心、と。紛れ込んでいた悪い者はいなくなった、と。
アタシの屍の上で、さも良い行いをしたかのように笑い、互いの美徳を讃えあうのだ。

――冗談じゃない。

狭いベルゲルミルのコクピットの中、噛み締めた奥歯が音を立てる。両頬が吊り上がり、笑った。
そんな未来は認めない。
ロジャー=スミス、キラ=ヤマト、あんた達とアタシのどこが違う。
一緒だ。同じだ。あんた達も、アタシもただ従っただけだ。自分の気持ちに、自分の心に。
絶対に譲らない。あんた達なんかにアタシの道を食い潰させてやるもんか。
アタシの道に先がないのなら、奪い取ってやる。奪った道をアタシ色に染め上げて、アタシの道にしてやる。
他人の道を塗りつぶしてでもアタシは先に進む。それが誰の道であろうと――。

「テニア、生存者の探索に移る。先導は君に任せよう。代わりに後方は僕が受け持つ。
 気を引き締めて、警戒を怠るな」

通信。ぎょろりと動いた目玉がオルバの顔を捉える。
あぁ、そういえばこいつがいた。こいつは一体どういうつもりなのだろう。
信用できない、そう言ったかと思えば、Jアークの連中よりもアタシを信じる、と交渉人に言ってのけた。
その程度には信用させることが出来た、ということなのだろうか? くすりと笑う。

「大丈夫。気は抜いてない」

それはないな、と思った。この男に信用されている――それはない。
ロジャーの言葉と自分の言葉。その矛盾は酷いものだった。取り繕おうにもどうしようもない程に、だ。
それにこの男が気づいていない――それもない。
その証拠にこいつはアタシを先に行かせたがってる。何時でも後ろから撃てるのだ、という姿勢を崩そうとしない。
お陰ではっきりした事がある。
この男を生きてナデシコに帰してはならないということだ。それはこれ以上ない程明確に見えている。
まず最初にそれを成せねば、自分に先はない。
追い詰められているはずなのに、口元が不気味に歪んでいく。どこか愉快だ。

「オルバさん、見なよ。生存者なんてどこにもいやしない。基地も……壊れてる」

そう。基地は壊れている。首輪を解析し得る設備を誇るそこが、だ。
首輪を外させてはいけない。壊すんだ。首輪を解析し得る設備も、技術者も、一つ残らずぜ〜んぶ壊してやる。
そうすれば奴らだって、集まろうとしている奴らだって最後には殺し合うしかなくなる。
そうさ。アタシの道に先がないのなら、奪い取る。奪った道をアタシ色に染め上げて、アタシの道にしてやる。
その最初の一人はオルバ、あんただ。
本当に楽しくなってきた。何故だろう。やりがいを感じ始めている。
いけない。顔がにやけてる。
悟られるな。気取られるな。真っ向勝負での勝ち目はない。
仮面をかぶりなおせ。いつものアタシの仮面を。
でも……。
でもいつものアタシって、どんなだったかなぁ?

「基地の規模と立地条件を考えてみなよ。地下空間があっても不思議じゃない」
「言われてみればそうだね」


278 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:07:32 ID:K/tijRxH
確かにその通りだ。地表面がボロボロでも地下があればそこの機能は生きているのかもしれない。
だったら、そこも壊さないといけない。でもその前に、本当にそれが存在するのかどうか。
このレーダーが聞きにくい状況下でどれほどの期待が持てるか分からないが、基地の地下を重点的に探査する。
その手の芸当はお手の物だった。
主に機体の動作を直接受け持っていた統夜に代わって、索敵やジェネレーターの出力調整、システムチェックを担当していたのが自分達なのだ。
そうやって一つの大戦を乗り越えてきた。その経験と能力は、馬鹿にしたものではない。
だからだろう。地下に目を向けていたにも関わらずオルバよりも早く気づいた。

「オルバさん、三時方向。地表面付近に熱源反応、急速接近中。カウント1」

――敵機の襲来に。

「距離28、いや27、26、25……速い。どう見てもお話しましょって速度じゃないよ。どうするの?」
「こちらでも確認した。慌てなくても、問題ない。確かに速い。
 が、馬鹿正直に直線軌道で突っ込んで来ているだけ……引き付けて迎撃する。いいね?」

ディバリウムの位置取りはベルゲルミルの後方。敵機とベルゲルミル、その両方を視界に納められる位置。
そして同時に、アタシを盾にもしているのだろう。
流石にこの男は冷静だ。余裕を崩さずに正確に状況を判断している。

「合図は僕が出す。焦って先走るな」
「分かった」

隙を見せてはくれない。頼りになるが、それ以上に忌々しい。
光学センサーが敵機を捉える。青く深い色をした紺碧の機体を目視で確認。その瞬間――

「敵機、さらに加速ッ!!」

その観測される速度は、もはや最大戦速というレベルのものではない。
点と点を最短経路で結んだ直線。その上を出し得る最大速度で突っ切る為だけの速度。
それはすなわち通常の有視界戦闘を放棄していることを示す。
あの速度で空中分解を起こさずに急旋回を行なえるだけの剛性を機体が持っているとしても、パイロットは別。
まず間違いなくブラックアウトする。
下半身を締め付けることで脳の血圧低下を押さえるパイロットスーツを着用していたとしても、だ。
馬鹿げている。
そう思いつつも瞬く間に大きくなっていく敵機に、操縦桿を握る手の平がじっとりと湿っていく。

「オルバッ!」
「まだだ。まだ引き付ける」

人の気も知らないで、と睨みつける。
そう。まだだ。レーダーに映し出されている相対距離はまだ遠い。それは分かっている。
だが、後何分だ? 後何分、このプレッシャーに耐えさせるつもりだ。
そう思い、時計を見る。5分にも10分にも感じられた時間は、まだ20秒も経っていなかった。

――嘘でしょ。

絶句。想像以上に1秒1秒が長い。
そして、改めて気づいた。
何? この相対距離の減りようは、馬鹿げた速度は。
戻した視界が急速に接近してくる敵機を映し出す。
右腕に誂られた巨大な杭打ち機。それが目に留まった。
あれで串刺しに――直に恐怖心を刺激されて、堪らず叫んだ。

「オルバッ!」
「まだだ」


279 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:08:21 ID:K/tijRxH
ふざけるな、そう思い、何処からか疑念が湧き上がる。

――捨て駒にするつもり?

驚愕に瞳が揺れる。
ディバリウムの位置取りはベルゲルミルの後方。敵機とベルゲルミル、その両方を視界に納められる位置。
それ即ち、ベルゲルミルを餌に一撃を喰らわせられる位置。
顔から血の気が引き、背筋を悪寒が駆け抜ける。オルバが薄く笑うのが見え、その口が動いた気がした。
そして、巨大な光がディバリウムから放たれる。
全周囲モニターが、後方から迫り見る間に大きくなっていく蒼白い光を映し出す。
それはMAP兵器規模の一撃。悲鳴と絶叫の入り混じったモノが臓腑から漏れ――

何故信じたんだ、この男を……いや、最初から信じてなんかいなかった。
甘かった。ただ甘かったんだ。心の何処かで自分だけは死ぬはずがないと思っていた。
ハハ……どれだけ呑気なんだ、アタシは。ほんと、欠伸が出るほど呑気だ。
こんなんだからカティアなんかに先を越されるんだ。
殺される前に殺す。それだけが真実なのに。
……こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった! こんなはずじゃなかったッ!!
こんな結末を望んでカティアを殺したんじゃないッ!!
新しい世界で結ばれるはずだったんだッッ!!!
カティアのじゃない!!『アタシだけの統夜』と今度こそ結ばれるはずだったんだッッッ!!!!
でも……もう何もかもが遅すぎる。遅すぎるよ。

――後悔が脳天を突き抜ける。
しかし、そんなテニアを嘲笑うかのように蒼白い光はベルゲルミルの間際を駆け抜け、標的に命中した。
直撃。巻き起こる爆発。
耳を劈くような爆音の直後、爆発によって生じた衝撃と共に視界を埋め尽くしたのは――

「嘘……」

直撃を受けたはずの敵機そのものだった。
頭部に誂られた角がベルゲルミルの脇腹に突き刺さり、激震。重い衝撃が機体を揺らす。
弾丸のような突撃を受けた機体が串刺しのまま、信じられない速度で後方に押し流されていく。
静止状態から一気に加わった加速と巨大なG。脳から血液が引いて行く。視界が暗くなる。
警告メッセージがモニターに映る。
脇腹に突き刺さった角が灼熱。位置は浅い。だが縦に裂かれる、それが分かった。
これじゃ無駄じゃないか……こんなところでアタシが死んだら、何の為に。
そうだ……何の為にカティアも! メルアも!! アタシが統夜と結ばれないと二人の死が――

「無駄になるんだッッ!!!」

その瞬間、マシンセルが反応を示した。活性化を起こす。
場所は腹部。角が突き刺さるそこ。
起こった変化は、マシンセル同士の結合を強めた装甲の硬質化――否、逆だ。
結合を弱め、一部の装甲を脆くした。
金属だからこそ角は突き立ち串刺しにされていたのだ。
これが豆腐なら削れるだけ、突き刺さったまま押し流される道理はない。
脇腹が抉れ飛ぶ。角から開放されたベルゲルミルは弾かれ、そのまま地表へと落下していった。


280 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:08:55 ID:K/tijRxH
 ◇

そのタイミングは流石と言うべきものだった。
狙いすまして放たれたゲルーシュ・エハッドの一撃は、寸分のズレもなくカブト虫のような蒼い機体へと伸びていく。
だが同時に加えられるはずだったテニアの攻撃はなかった。
合図は送った。撃て、と確かに言った。疑問は残る。
だが、何故撃たなかったのか、それは後で問いただせばいい。
蒼白い光の帯が吸い込まれるように、包み込むように伸び、今着弾。爆発。
直撃だ。避ける素振りも見せなかった。

――生き残りならばどれ程の腕かと思えば、フフ……僕にかかればあっけないものだねぇ。

薄い笑いを浮かべて勝ちを確信した刹那、それは起こった。
前方に位置していたベルゲルミルが吹っ飛ぶ。瞬く間にディバリウムの脇を掠めて、遥かな後方へと。
擦れ違いの瞬間目に留まったのは、蒼カブト。
馬鹿な、と考える間も惜しんで振り返った。
瓦礫の山、廃墟と化した基地へ、ベルゲルミルが落ちて行く。その脇腹は浅いが抉れている。
行動不能になるような損傷ではないだろう。最もパイロットが無事ならばの話だが。
それよりも問題は――視線を移す――蒼カブト。そう、こいつが問題だ。
突っ込んで来た異常な速度から一撃離脱を計るのかとでも思えば、そうではない。
この空域に留まりながら、直線軌道を繰り返し戻ってくる。
抉れたベルゲルミルの脇腹。何に抉られたかは不明、だが――

「……懐には入ってもらいたくないね」

――接近戦は危険。アウトレンジでしとめる。
ディバリウムの前面に誂られたダグ・アッシャーの砲門は計4門。
小振りな火器なれど即射性に優れるそれをばら撒きながら、機体中央にエネルギーを溜め込む。
避ける蒼カブトの軌道は相も変わらずの直線軌道。だがしかし、それが異常だ。
直線軌道を繰り返しジグザグに鋭角を描きながら、飛んでいる。普通じゃない。
弧が少しもない癖に減速した感がまるで見受けられない。飛んでいる速度そのままに何の前触れもなく、向きを変える。
ダグ・アッシャーの光弾が尽くかわされていく。

「少し傷つくな……パイロットは本当に人間か」

それは負け惜しみでもなんでもない。重ねて言おう。軌道が普通じゃないのだ。
慣性だとか、遠心力だとか言ったものを頭から無視した軌道。端的に説明するならそれは、ゲッターの動きに最も近い。
MSを代表とするA.W.の機動兵器群からすれば、出鱈目な動きだった。
中に乗る人間のことをまるで考えてない。
普通ならパイロットがもつはずがない。それを繰り返し、急速に間合いを詰めてくる。
距離が潰される。アウトレンジが瞬く間にクロスレンジへ。だが、それも――

「悪いけど、読みどおりだよ」

――計算の内。
溜め込んだエネルギーを開放。
放ったのは、収束した光の帯を放つゲルーシュ・エハッドではなくゲルーシュ・シュナイム。
それは溜め込んだエネルギーで針状の光弾を無数に形成し、扇状に散布するMAP兵器。
一発一発の威力はゲルーシュ・エハッドに劣るものの、交わしきれる数ではない。
事実、蒼カブトもこのときかわせなかった――否、蒼カブトはかわさなかった。
蒼カブトは爆発的なスラスター光を背負い、次の瞬間――

「なっ!!」


281 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:09:51 ID:K/tijRxH
――天を衝くが如き勢いと圧力で加速し、針山へと飛び込んだ。
強引過ぎる軌道。無数の針が装甲に突き立つ。だが、それを意にも介さない。
迅い。何よりも力強い。そして、それだけでもない。
光弾の威力が削がれている――ビーム・コート、その存在に気づいた時には既に眼前。
機体の軸をずらすのが精一杯の反応だった。
装甲の表面で火花が散る。極太の杭が打ち込まれ、ダグ・アッシャーの砲門が1門潰された。

――だが、この距離ならッ!!

杭を引き抜くその間に、残った3門が火を吹く。
しかし、減衰されたビームではビクともしない。ゲルーシュは? 充填中、打つ手がない。
機体の前面を抱えるようにして押さえ込んだ蒼カブトが仰け反り、その角が赤熱した。

「な、なにをッ!!」

頭突き。角が突き立ち、装甲が割れる。血の様に黒いオイルが噴出する。
機体が潰れる音に、怖気が奔った。
ゆっくりと頭を持ち上げ、もう一発。さらにもう一発。
割れた装甲が更に割れ、陥没し、オイルとコードと装甲の砕けたモノがグチャグチャに入り混じる。
そこに角を突き立て、顔をうずめていた。傍から見ればそれは捕食しているかのような絵面。
捕食者から逃れようと脱出を図り、遮二無二に機体を動かす。
だが、手足のないディバリウムでは文字通り手も足も出ない。
再び頭が持ち上がり、四発目が加えられた。
コックピットが揺れる。全周囲モニターの上部に亀裂が奔り、破片が剥落してくる。
思わず見上げた亀裂の向こうに、頭をめぐらせてこちらを見下す身長20mの巨人の姿が、見えた。
顔中を黒い血のようなオイルで塗れさせて蒼カブトの目が、見つけたぞ、と嗤う。
反射的に動いた右腕がグリップを掴む。もはや充填中だなどと言っている余裕はない。
現在溜め込まれているエネルギー全てを出し尽くす勢いで、ゲルーシュ・エハッドを放った。
その砲門は機体中央。そこは抱えるようにして押さえ込んできていた蒼カブトの下腹部が、丁度接触している位置。
密着状態であるが故に交わす術はなく、光の帯に押しやられた蒼カブトが剥がれ、弾き飛ばされる。
が、それは同時に苦肉の策でもあった。
零距離でのゲルーシュ・エハッド。それは大砲で零距離射撃を行なうに等しい。
つまり暴発とそう変わらないということだ。
至近距離での爆発の影響は両者に等しく与えられる。
そして、ディバリウムのコックピットには穴が空けられたばかりなのだ。
僅かとはいえ、帯電した空気と熱波に晒されたオルバもただではすまない。
オゾン臭が鼻に突く。湿度がどっと上がった空気を感じる。肌が熱い。だが、それに構っている余裕はない。

「テニア、聞こえてるか?」

通信を繋げながら蒼カブトの状態に目を走らせる。装甲表面に黒焦げの弾痕が確認出来るもののそれだけだ。
それも最初の一撃のものか、今の一撃のものか、判別はつかない。
確実なのは、今のように中途半端な出力での一撃は意味がない、ということ。
今は決め手に欠ける。それでも兄がいればどうにかならないでもないが、テニアでは分が悪い。
第一、射撃主体の二機では懐に入られればどうしようもない。アタッカーの不在、それが痛かった。

「……聞こえてるよ。うぅ、吐きそう。あんなに朝ごはん食べるんじゃなかった」

心底気持ち悪そうな顔がモニターに映し出される。
突然の加速に晒されたのだ。胃の中をごちゃごちゃに掻き回されれば、そうなるのも無理はない。
だが、それは口実だろう。
このまま死んだふりを決め込み、隙を見つけて逃げ出そうとしていたに違いない。
この女狐め。


282 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:11:15 ID:K/tijRxH
「後にしろ。ここは撤退する」
「……逃げるの?」
「戦略的撤退さ。パートナーが君では勝ち目がないからね」
「やっぱ逃げるんじゃん」
「……手伝う気があるのか、ないのか、どちらだい?」
「あるよ。残念だけど、アタシ一人になったらあいつから逃げ切れない」
「いいだろう。役に立ってもらうよ」

撤退プランを手短に伝え、同時にエネルギーの溜まり具合を確認する。

――MAP兵器使用可能まではまだ間があるか……時間を稼ぐ必要があるね。

簡単に見逃してくれる相手とも思えない。通信を蒼カブトへ。

「何故、僕達を襲う?」
「何……故? 何故、ナゼ、なぜ、ククク……ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!
 俺は作らねば……ならない。世界を……静寂でなければならない」
「意味が分からないね。それが僕達を襲ったこととどう繋がる?」
「お前達は望まれていない……世界を創る。だから撃ち貫くのみ、だ」

高エネルギー反応。その中心は機体の胸部中央、人で言う鳩尾の位置に設置された赤い球体。

――主動力はあそこ、か。

そこから全体にエネルギーが行き渡り、装甲それそのものが一つの原生生物かのように動いた。
伸び、欠けた部分に浸透し繋ぎ合わせていく。黒く焦げた表面が深い蒼に戻っていく。
自己修復。それはオルバに取って未知のテクノロジー。
直に目にするのはこれで――ちらりとベルゲルミルを盗み見る――二機目。
だが、数時間もかけて修復を行なうベルゲルミルに比べて、修復速度が段違いだ。

「人間……自らの生い立ちを呪う兄弟………お前達は純粋な生命体には、なりえん」
「……少しは僕達のことを知っているようだね。どこで耳にした? お前はニュータイプなのか?」
「ニュータイプ?……違う。俺は……そう、俺こそが完全なる生命体。
 世界を創造し、望まぬ世界を……破壊」

その尊大な物言いに哂う。直感した。こいつは同類だ。
古い世界を壊し、自らの思うように作り変えようとしている自分らと似た存在だ。

「完全なる生命体だって? 随分と大きく出たものだね。
 でもね。僕らに言わせれば、そんなものはニュータイプとなんら変わりはないんだよ。
 人の心にあるニュータイプという幻想が言葉を変えた。それだけだ。
 そして、君は君の望む世界を創ると言う。フフ……どうやら僕らは相容れない存在のようだ」
「フフフ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!
 創造と破壊……破壊と創造。創造は破壊……破壊の創造」

狂笑。こいつは似ているのかもしれない。だが、別物だ。

「話、通じてるのか通じてないのか分かんないね。
 自分に浸ってるっていうか何ていうか、変にかっこつけてるし」

テニアの声がした。全くだ。このとち狂った男相手に冷静な判断を求めるだけ無駄ということか。
溜め込んだエネルギー量を確認。十分だ。十分に時間は稼いだ。

「テニア、退くよ」

同意の言葉が返って来る。それを合図に火線を敷き、後退を開始する。
ベルゲルミルが瓦礫の廃墟から上空へ。ディバリウムもまた徐々に北へ。動き始めたその瞬間――

「逃がさん……憎しみ合う世界を広げる者達……」


283 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:12:07 ID:K/tijRxH
――獲物が掛かった。
位置取りは地上に蒼カブト、上空にテニア。自身はその中間。
小火器類の火線など物ともせずに蒼カブトが、下から上へと間合いを詰めてくる。そんなことは先ほどの戦闘で分かっている。
そして、収束率を上げた大火力の攻撃では容易に捉えられないことも。
必要なのはこいつ相手に撤退するだけの足止めを喰らわせられる攻撃。その条件は威力と範囲を兼ね備えていること。
距離を冷静に測る。あと半秒引き寄せて――今だ。
ディバリウムの主兵装ゲルーシュ。
それは、溜め込んだエネルギーを用途に応じて三種類に使い分けられるMAP兵器である。
一つは、収束率を高め、射程距離と高い貫通力を備え、直線上に撃ち出されるゲルーシュ・エハッド。
例えるならばそれは、巨大なビーム砲。
一つは、針状の散弾を扇状に散布し、一撃一撃は軽いながらもそれを補って余りある無数の弾数で敵を砕くゲルーシュ・シュナイム。
例えるならばそれは、ショットガンの一撃。
そして、このとき使用したのはそのどちらでもない最後の一つ――ゲルーシュ・シュロシャー。
その特徴は、自機を中心にして全周囲に向かって撃ち出す球状の効果範囲と貫通力はないながらもその爆発による破壊力。
例えるならばそれは、一個の爆弾。
格闘武器どころか手足すら持たないディバリウムにとってこの兵装は言わば奥の手であり、最後の手段と言える。
それを使う。射程距離の奥深くまで誘き寄せた今、回避は不可能。耐える他以外に奴が生き残る道はない。
溜め込まれたエネルギーを開放。
自機を中心に蒼白い雷のような光球が瞬く間に膨れ上がり、蒼カブトを包み込み、爆ぜた。
爆煙が立ち込め、一拍遅れて発生した圧縮空気の衝撃波はそれを吹き飛ばす。
その中心でホンの僅かな時間ディバリウムの動きが固まる。
効果範囲と破壊力。その性能と引き換えに三種のゲルーシュの中でも最も多くのエネルギーを必要とするこの兵装。
この硬直はその消費の大きさ故にだ。
爆発に押しやられて地表に沈んだとは言え、未だに蒼カブトは健在。分かっていたことだ。
幾ら威力があろうとも表層的な破壊力しか持たない兵装では、決定打にはならない。
ビーム・コートを突き抜け、装甲を溶かしたとしてもそこまでだ。直ぐに回復する。
そして、回復を待つほどこの敵は悠長ではない。こちらの復帰の方が早いとは言え撤退するには不十分な足止め。
だから、だ。だから後一手。撤退の為に必要だ。それを行なうのが――

「テニア、任せた!」

――彼女だ。
空中で動きの硬直したディバリウムの更に上空。そこに佇むベルゲルミルの双眸が翡翠の色に輝く。
同時に同じ色を光球がマシンナリーライフルから、撃ち出された。
それらが殺到する先は蒼カブトとその周辺。その狙いは――

「生き埋めになるのがどれだけ怖いか教えてやる!!」

――地盤破壊。そう、D-7地区の市街地と同じ地下空間を持つここなら、それが可能。
無論、無敵戦艦ダイが起こしたものほど大規模なものは不可能だ。だが、機動兵器一機を地下に突き落す程度なら、出来る。
蒼カブトの周辺地盤が穿たれ亀裂が奔る。同時に散布していたマシンセルが活動を開始。地表面の構造を破壊する。
穴が空く。崩壊する様に崩れていく。そして、撃ち付けたマシンナリーライフルの光球に押されて、蒼カブトは地中深くへと堕ちて行った。
間髪いれずに瓦礫の山を崩し、穴を塞ぐ。
ゲルーシュ・シュロシャーの一撃から、地中に堕とし瓦礫で穴を塞ぐまで、実にこの間僅か2秒。
穴が塞がれた瞬間、上空のベルゲルミルが全速で離脱を開始。ほぼ同時にシステムが回復したディバリウムも離脱に移る。

「なっ!?」

移ったはずだった。

284 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:13:00 ID:K/tijRxH
ディバリウムを中心に奇妙な力場が発生している。陰陽紋を模ったかのようなその空間に固定され、動くに動けない。
周囲には円周上に等間隔で設置された六つの勾玉。どこかで見たことがある。
そう、これは確か――通信?

「オルバ、あんた甘いんだよ。アタシのことを信じてなかった癖に、始末しようとしなかった。
 何故、自分がって顔してるね。自分だけは大丈夫。死なない。殺されない。そう思ってた? ほんと、呑気だね。
 騙し合いはアタシの勝ち。不思議だね。追い詰められてたのはアタシなのにさ。
 残念だけど、あんたにナデシコに戻られるとアタシが困るの。だからここで――」
「テニア、貴様ああぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!」

絶叫。餌にされた。テニアが安全に逃げ切るためのスケープゴート。
今更気づいてももう遅い。離脱できるタイミングは逸した。間もなく奴が戻ってくる。
それに引き換えこちらは、六つの勾玉によって空間に固定され、身動きが取れない。

「――アタシの捨て駒になって死んじゃいな。じゃね〜」

通信が切れる。そして次の瞬間、赤黒い光がディバリウムを包み込んだ。

――大出力のビーム兵器……そんな物を使う素振りは今まで。

六つの勾玉が散り散りになり拘束が解かれる。しかし、今のディバリウムに自由に動き回る余裕はない。
赤黒い奔流の只中、抗うだけで精一杯なのだ。
そして、その奔流が途切れたとき、蒼カブトは間近に迫っていた。迅い。避けられない。
何処で拾ってきたのか、左腕には巨大な黒いライフル。
オルバの与り知らぬことだが、黒いライフルの名はディバイデッド・ライフルという。
それはメディウス・ロクスの第一形態における主兵装。
大出力のビーム兵器の零距離射撃にも耐えるその強固なつくりは、近接戦闘に置いての打撃武器にも成り得る代物。
本体が第二形態に移行した際に規格が合わず必要のなくなったそれは、地下に撃ち捨てられていた。
それを直に叩きつけられて機体の平衝を失う。ぐらつき、次の瞬間追撃を受けて弾き飛ばされる。
それで終わりではない。追いすがられる。一瞬で空いた距離は不意になり、取り付かれた。

「勝利……敗北……そこに意味はない。破壊されるか……創り出されるか、それ……だけだ。
 そしてお前は……死ねッ!!」

コックピットの上方、砕けて欠けた全周囲モニターのその向こうで、黒いライフルを構える巨人の姿が、直に見えた。

「撃ち貫き――」

ディバイデッド・ライフルが、ディバリウムの抉れた中央部に叩きつけられる。
強引に侵入してきたそれにコックピットの上半分は完全に砕け散り、砲口が間近に突きつけられた。

「――噛み砕く」

目と鼻のすぐ先、ホンの数十センチ上で、赤黒い光が灯っていく。地獄の業火のようなそれが見えた。
両眼が見開かれ、瞳が恐怖に揺れ動き、怯えが奔り、そして次の瞬間――

(助けて、兄さん)

――オルバの体は蒸発し永遠にこの世から消え失せ、後に残ったのは狂った男の笑い声だけだった。


285 :生き残る罪 ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:14:55 ID:K/tijRxH
 ◆

主を失ったディバリウムが爆ぜる轟音が、僅かに聞こえてきた。
舌打ちを一つ。もう少し粘るものだとばかり思っていた。
三々五々に戻ってくる勾玉を回収しつつ空域からの離脱を急ぐ。

「あ〜あ、基地の設備壊し損ねちゃった。念のため壊すつもりだったのに……」

そうふてくされた様にぼやきつつも、実はそれ程気にしていない。
あの狂った男がいる限り、そう易々と技術者の手に渡ることはないだろう。
それよりも気を払わなければならないのはこの先だ。
どこかに都合のいいお人好しでも転がってない限り、暫くは単独行動。
オルバやムサシのような盾がいないのだ。気が抜けない。
そして、北上しナデシコとの合流を優先する。それは出来るだけ早く行なわなければならない。
単独行動の危険性だけが問題ではない。合流が遅れれば遅れた分だけ、ナデシコを崩壊させる機会が失われていく。

「どんな顔してあいつらの前に戻ろうかな?」

怒り狂った顔がいいだろうか? 泣き腫らした顔がいいだろうか? 涙枯れ果てて茫然自失ってのもいいかもしれない。
とにかく、立ち回りは今からでも考えておくべきだろう。
そして、気をつけるべきはシャギア。疑われている様子は今の所ない。
だが、オルバに信用されてなかったのだ。念を入れて兄であるシャギアにも信用されてないと見たほうがいい。
伸びを大きく一つ。凝り固まった筋肉をほぐし、両頬を叩く。
気合を入れろ、テニア。ここまでも大変だったけど、本当に大変なのはこれから。

「さぁ、忙しくなるぞー!!」



【キョウスケ・ナンブ  搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染
 機体状況:アインスト化。ディバイデッド・ライフルを所持。
 現在位置:G-6基地跡地
 第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
 第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
 最終行動方針:???
 備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
 備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。
      ただしアインスト化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
       ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
      実弾装備はアインストの生体部品で生成可能。
      胸部中央に赤い宝玉が出現】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:本来の精神状態とはかけ離れているものの、感情的には安定
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、ガンポッドを装備
        EN80%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:G-5南部
 第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る
 第二行動方針:統夜との接触、利用の後殺害
 第三行動方針:参加者の殺害(自分に害をなす危険人物、及び技術者を優先)
 最終行動方針:優勝
 備考1:甲児・比瑪・シャギア、いずれ殺す気です
 備考2:首輪を所持しています】

【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:死亡
 機体状態:爆散 】

【残り20人】

286 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:19:25 ID:hdw+8wU+
【二日目9:30】

287 : ◆7vhi1CrLM6 :2008/12/30(火) 09:32:46 ID:hdw+8wU+
投下終了。
時刻だけ入り切らずにさるさんなんて何かのいじめですか……。

えっと、のっとられる前と全然性格の違うアインスケですが。
ムゲフロに付いてるドラマCDを参考というか使わせていただきました。
それでとりあえずこんな感じかな、と。
拾った武器は実は昔使うはずだった没ネタから流用です。
ご指摘等、よろしくお願いします。
ただ、今夜遅くから暫くPCに触れない状態になりますので、修正の場合は遅くなると思います。

288 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 13:33:21 ID:WcuQkDyy
投下GJ!
アインスケ……強えええええええ!w
ラスボスの風格と強さを持っているな……
そしてオルバがここで脱落。シャギアはどう動くかね?
晴れて自由の身となってしまったテニアだけど、もう寄生先は殆ど残ってないんだよなぁ。

289 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 14:17:53 ID:4O1mYvsg
投下乙!
アインスケTUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
アルトで空中戦でクレイモア使わずにしかも超高機動とかw死角だった遠距離攻撃もディバイデッドライフルでカバーか
これで殺害数は四人でキョウスケ単独トップw ガドルヴァイクランは見れなくなったか・・・
まさに年内最後にふさわしい面白さでした、GJ!

>>288
ちょうど基地に向かってきてるガウルン統夜が(ry

290 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 18:11:38 ID:75vXToVk
シャギアもオルバの最後の思念から「誰かがオルバに襲い掛かってきた時にテニアが裏切ったからオルバは殺された」
って丸分かりだろうし、今は切り抜けたつもりでも復讐者に狙われることが確定したし。
統夜も「テニアは俺が殺る」って意志を固めてたから、かなりやばいんじゃ……。

291 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 18:50:49 ID:a378gIKJ
そっか、これでシャギア暴走確定か。当初のギャグキャラっぷりが嘘のような展開だw
とするといっしょにいるガロードがやばくてガロードが死ぬと姉さんがヤバいw
なんだナデシコ一気に危ないな

でこれで基地での死者がまた増えたwキョウスケ全部基地でじゃね?

292 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 19:41:11 ID:DclVeJm4
これでナデシコに戻ったら準備万端整ったシャギアが待ち伏せしてるわけか。
ガロードはフロスト兄弟の能力知ってるからオルバがテニアに殺されたって情報を信じるかもしれんしそうなれば姉さんも一緒に戦ってくれるかもしれない。
ストッパーになりそうな甲児は出払ってるし比瑪はバサラにかかりっきり。
背後からはマーダー師弟が追っかけてきてるしJアーク組にも疑われまくってる。
挙句の果てに基地施設での首輪解析もとっくに終わってあとはメディウスだけでもOK。

もはやキツネ狩りの様相を呈してきたなw

293 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 21:11:15 ID:vhWFe11n
この一二時間で急にナデシコに暗雲が。
放送直後なんて卵の取り合いしてたのが嘘のようだw
何にしてもシャギアの出方で今後が大きく変わりそうで楽しみ。
基地も中々抜け出せない蟻地獄みたいになってるしどうなることやら。
もう基地の利点ってユーゼスの解析データのバックアップが残ってるってことぐらいなのにねw

294 :それも名無しだ:2008/12/30(火) 21:58:59 ID:75vXToVk
ガロード(無駄な殺生は好まないが相手がマーダーなら話は別)もクィンシィもいざとなれば殺す事に躊躇はないだろうしなぁ…
調子がいいと思っているのはテニア本人だけで、現実は罠と殺意のフルコース状態かも。

295 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 00:38:05 ID:J4VKWbL/
本家の冥王が大半の人間に本性がばれてからが本領発揮だったように、テニアもきっとここからが本領発揮……はさすがに難しいか。
でもそれに期待してる自分がいる。

296 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 02:11:34 ID:j/RPTqKZ
みんなシャギア暴走を前提にしているようだけれど、
「確かにテニアだけは絶っっっっ対にっ!許さん!八つ裂きにしても恨みは晴れないだろう!
 ……が、それとこの殺人ゲームに乗るのとは話が別だ」
って感じで「テニアを殺してオルバの仇を討つ」が最大の目標となるがマーダーとはならない、って展開も有りだと思う。

297 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 03:12:00 ID:lCihX4Hy
いやあの兄弟ならどっちか欠けたら優勝して生き返らそうとするんじゃね?
ヒメと甲児に説得されるのも見てみたいがw

それはともかく今のキョウスケは森川声のままなのかそれとも若本声になったのかどっちだろうw

298 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 11:23:47 ID:vWU80kJY
森川声のままだと思う
ムゲフロドラマCDでアインスケは森川だし

299 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 19:21:21 ID:Aj9aamcg
今年も終わりだなぁ……
来年、完結出来るかな?

300 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 19:33:54 ID:GupI9hJl
しばらくは投下もないだろうし、今年投下された作品でも語り合ってみる?
数こそ少ないが中身は濃かったと思うぜ

301 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 20:54:31 ID:Aj9aamcg
二月:解しえぬ存在、へヴンズゲート
三月:Withdrawal Symptoms、それぞれの思惑
四月:夜明けの遠吠え、張り詰め過ぎた少年
五月:決意の刃を鞘に潜ませ、ハイドベノン、穴が空く、第二回放送、ゲッターロボ、戦いの矢
六月:悪魔降臨・死の怪生物(インベーダー)たち、朝ごはんは一日の活力です!!、命の残り火、leaving me blue
七月:疾風、そして白き流星のごとく、二つの依頼、選択のない選択肢
九月:計算と感情の間で、家路の幻像
十月:適材適所、古よりの監査者
十一月:追い詰められる心
十二月:争いをこえて、判り合える心も判り合えない心も、黄金の精神、風と雷、すべて撃ち貫くのみ、生き残る罪
合計31作

死亡者:ジョナサン、ベガ、バーニィ、オルバ
合計4人

今年の投下作品を纏めてみた。
月によって投下数はまちまちだけど、何故か忙しいはずの12月にかなり投下されてるw

302 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 21:34:52 ID:GupI9hJl
それと破棄された◆YYVYMNVZTk氏の「前を向いて」だな
問題がなかっただけに残念だが、ここを離れるわけではないというので安心したな

303 :それも名無しだ:2008/12/31(水) 21:46:25 ID:J4VKWbL/
破棄作といえば人の意思は個人的に惜しかったな
アムロのラストシューティングには魂を揺さぶられた
あと突然盤上から抜け出したユーゼスw
通った中ではやっぱアインスケ誕生のインパクトがやっぱ凄いw

304 : 【だん吉】 :2009/01/01(木) 00:06:23 ID:oRTSddHT
あけおめ
大吉なら今年で完結

305 : 【ぴょん吉】 ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:30:14 ID:ChjKRukv
皆さん明けましておめでとうございますー
今年はいっぱい書きます。多分。予定は未定だけどw

306 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:31:17 ID:ChjKRukv
というわけで投下開始だ!

307 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:32:06 ID:ChjKRukv
全身の血液が、ドクンと波打つ。
前回の経験から、アキトは知っている。それが時間切れを教えるものだということを。
気づけば世界は回っている。認識が出来ない。
視覚も、聴覚も、嗅覚も、触覚も、味覚も。自分と世界を繋ぐラインはぐちゃぐちゃにかき乱され、歪に捻じれている。
今自分の目の前に広がっている光景が異常なのかどうかさえ定かではない。
判断力など既に消え去っている。それがおかしいのか、それとも当たり前のものなのか。
手の甲を蟲が這っている。

爪と肉の間の僅かな隙間から次々と溢れ出てくるそれの触覚と肢が指の腹をくすぐり咬み付き指の中を通って爪から這い出て手首と甲の二点でぐるぐると回り続けている。
薄皮一枚分だけ器用に噛みちぎり破れた穴から血管の中へと侵入し親指人差し指中指薬指小指全ての根元から先へと順に進んでいき右の手のひら全てを蟲に変えてしまう。
ぐるぐると回るための穴に別のものが入り込み手首から腕へ上がり更に進むその道に選ぶのは骨であり髄を吸い食べてしまってどんどん肘へ肩へ心臓へもっと進んでいく。
皮だけでは旺盛な食欲を満たすことは出来なくて食べたくなるのはやはり肉で筋肉で筋の一本を食べてしまえば食べた分がそのまま蟲の身体になってそれが代わりに補う。
腕一つでは飽き足らず心臓へと到着し全身に送り出される循環に乗り足先へと頭頂へ巡り巡られ五臓六腑は喰い破られ筋肉は喰いちぎられ骨は噛み砕かれ血液は流れ出る。
全身が乗っ取られ身体を構成する物質が蟲のそれへと変わっていき骨は甲殻が肉は肉が血は体液がその代わりに機能し始め侵略はついに脳髄へと脳髄へと脳髄へと心へと。
皺の一筋一筋を蟲が這い蠢く肢がもぞもぞと脳の表面を刺激するので頭が痒くてたまらなくなるがすぐに痒さは痛みと変わったのは蟲が一斉に表皮を喰い破り始めたから。
脳細胞の一つ一つを丹念に丁寧に食べ尽くし細長い形の蟲たちは丸まり一つの細胞となり触手同士を結びつけシナプスの代わりとするので最後のパーソナリティも消える。
今や足先から頭まで口から肛門まで心魂まで何もかもが蟲たちと入れ替わりを果たしてしまっているために既に自分は自分なのかさえ定かではなくむしろ別人なのだろう。

自分の姿が、別の何かに成り変っている。視界が狭い。
これは仮面だろうか。そうだ、これは仮面だ。

『私たちは――既に共犯者なのだ。そう驚くことでもあるまい?』

俺は――いや、私はユーゼスに、なって、いる。
ユーゼス=ゴッツォ。それが自分の名前? いや、違う。違うということだけは理解する。
だが、頭が回らない。苦痛すら感じないほどに、何も何も。
仮面である自分の目的すら分からない――何故、手を組んだ?
纏まった思考が形成される前に疑問は霧散する。
支離滅裂な何かが蠢いては消えていく。世界がどうなっているのか、認識も把握も覚束ない。

『――――――』

自分の声も聞き取れない。いや、これは自分の声ではない。
ユーゼス=ゴッツォの声ではない。
もっと悪意に満ちた――そう!

「ガウ――ルン……!」

目前にガウルンが座っている。衰弱しきったはずの五感が、アイツを捉えろと攻め立てる。
手を伸ばそうとするも届かない。いや――届かないのではなく、伸ばすことさえ叶わない。
自分の身体は蟲になってしまっているのだ。自分の意志の元に動かすことさえままならない。
だがそれでは――この手で、ガウルンを殺すことが出来ないだろう。
それどころか、今なお衰えることなく心のうちに燃え続ける憎悪の炎さえ、消えてしまう。
それは――それは!

脳が一段階覚醒する。自分はテンカワ=アキトだと、ようやく思い出す。
何が起ころうとも――この憎しみを手放すつもりはない。憎しみを負の力と変え目的を果たすまでは――
忘れてはならないと自分に戒める感情がまだ自分の中には在る。
他に守りたかったものは全て失った。せめて、この気持ちだけは――最後まで、守り通したいのだ。
皮肉なものだと自嘲する。
自分はこんなものが守りたかったのか? 違うだろう?
他に何も守れなかった。その残滓を拾い集めて形にして、全く欲しくもないものなのに大事に大事に抱えている。
馬鹿な男だと、自分でもそう思う。だが、そう言ってくれる人はもういない。

ようやく手が伸ばせた。けれども手を伸ばせば伸ばすほどに、ガウルンの影は遠ざかっていく。
再び感じる、無力感。だが今度はそれを虚ろな炎を燃やす燃料とする。
今は届かなくても。
次は、絶対にこの手で。

308 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:33:02 ID:ChjKRukv
――覚醒の時は、すぐに終わった。
クリアになった感覚が、先ほどまで微塵とも感じなかった蟲たちの不快感を捉える。
ぞわりと全身の毛が粟立つ。と、同時に、抑えきれない嘔吐の衝動。
吐き気を感じるより早く胃の内容物が逆流を起こす。二度目の嘔吐で、もう胃の中に残っていたのは胃液だけだった。
喉を焼く胃酸は酸っぱい。つんと鼻につく臭いのせいで、再び吐き気。
少しでも楽な体勢を取ろうと横になろうとするもどこが地面なのか分からない。
天地がぐるんぐるんと回っているような男が真っ直ぐに立てているはずもなく、それならば自分は倒れているのだろうと見当をつける。
けれど自分の三半規管は自分が今、地面と垂直に横たわっているという矛盾した姿勢でいると教えているのだ。
はは、と乾いた笑いが思わずこぼれる。
まったくどうして――どうしようもない。

 ◇

アキトが苦しみに悶えている姿を――ユーゼス=ゴッツォは、実に満足愉悦の表情で眺めていた。
興味深いデータだ。一時的に感覚器官を強化――或いは復活させ、戦闘力を強制的に向上させる。
その代償がこれ。酷使の反動か、はたまた別の要因か――それは解析をしてみないことには分からない。
だが――面白い。戦闘力の強化に関しては、今更取り立てて調べるほどのものではない。
薬物により人間の性能を強化するという概念は、太古の昔から伝わる原始的なものだ。結局は、効果の強弱が違うというだけのこと。
完全なコピーを作ることは難しいかもしれないが、限りなくオリジナルに近い模造品ならば、AI1の解析が済み次第生産が可能だろう。
問題なのは、これもまた、主催者からテンカワ=アキトへのプレゼントかもしれない――ということだ。
それならば、薬の副作用についても合点がいく。ゲーム的なペナルティといったところだろう。
機体の支給、首輪、禁止エリア、補給システム、見せしめ――何故かは分からないが、この殺し合いの主催者は、演出に力を割いている。
だがしかし――そこには、愉しみは感じられない。あくまでゲームか何か――ある意味では、酷く公平に、殺し合いを進めている。
今の人事不省な様子を見ている限りでは、薬がなければ戦えないというアキトの言葉に嘘はないだろう。
いくら戦闘力が向上したとしても、その後に別機体に殺されたのでは意味がない。
あれだけのデメリットを受け入れるということは、元々のハンディが理由だと考えられる。

ならば、あの薬はゲーム開始当初からアキトに持たされていたのだろうか?
ユーゼスは、それは違うと考える。
殺し合いをさせることが目的ならば、薬を別に支給するという面倒をせずとも、補助コンピュータ、或いはパイロットの負担を軽減する独自の操縦システムを備えた機体を支給すればすむ話。
元はユーゼスが乗っていたアルトアイゼンを、アキトのために設えなければいけなくなったために、急遽用意した――そう考えるのが自然。

次の疑問は、どうして一参加者であるはずのアキトがそこまでの待遇を受けているのか――ということ。
主催者の送り込んだ進行役の一人かとも考えた。殺し合いを円滑に進めるために、時には自らが戦い、また或る時には不和を撒き散らす――そんな存在だ。
だが、パイロットとしての素養はともかく、継戦能力が極端に欠けているこの男をジョーカー役として用意するというのは不自然すぎる。
つまり――アキトは、一参加者でありながら、主催者と取引をしたのだ。
アルトアイゼンを補修させ新しい乗機とし、戦うために薬物を受け取り――ジョーカーへと、成った。
本来ならば有り得ないこと。まず、主催者との接触が叶わない。主催者からこのような取引を持ち掛けるか? いいや、それはノーだ。
少なくとも取引の対象がアキトとなることは、上記の理由から有り得ない。
アクションを起こしたのは、アキトから――どうやって?

手を組んだその時は、メディウスが完治するまでの繋ぎだと考えていたが――気が変わった。
テンカワ=アキトは面白いサンプルとなる。出来ることならば十分に納得するまで情報を搾取し、その後処分する。
主催者への糸口が、キョウスケ=ナンブの他に見つかるとは好都合だ。

そして――と、ユーゼスは『ブラックゲッター』を動かす。
現在地はF-7補給ポイント。ここでユーゼスは、あるテストを開始する。
補給ポイントが破壊されていたG-6基地では不可能だったテストだ。

309 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:33:49 ID:ChjKRukv
ブラックゲッターの残エネルギー総量を確認。
ゲッター炉心がまともに動いていない現状では、出力は万全の状態のおおよそ半分程度。
戦闘に関する挙動ではそれで十分だが、一度に大量のエネルギーを扱うことになるゲッタービームは使用不可能である。
エネルギーそのものも、残り数回の戦闘で完全に空になるだろう。
エネルギーを補給しても、ゲッター炉心を通すことが出来なければ、ブラックゲッターの機動力とはならない。
アキトの言うナデシコに相応の施設があるのならば、首輪の解除と同時進行でゲッター炉心の本格的な修理をすることも考えておく必要があるかもしれない。

だが――今からユーゼスが行おうとしていることには、そんなブラックゲッターの機体事情など関係がない。
これは、単なるテスト。ブラックゲッターが補給を行えるかどうか――それだけを確かめるものだ。
ブラックゲッターを補給ポイントのすぐ傍に座らせ、補給を開始する。
機体の傷などを除いて、弾薬、エネルギーは補給され機体は万全の状態へと戻るはずだった。
だが――補給装置は、幾らかの弾薬の補充を済ませ、八割ほどエネルギーを供給した後、補給完了という四文字をパネルに映し出す。

ユーゼスは、自分の仮説が正しかったということを確認し――歯噛みする。
やれやれだ。これで――ゲームの難易度は更に上がる。

『ブラックゲッターの失われたエネルギーは、完全には戻らなかった』

この事実、それはつまり――この会場のエネルギー事情を端的に表している。
カミーユは、バルキリーの反応弾は補給されなかったと言っていた。
機体から取り外されただけでは消費したと見做されず、補給の対象にならないのだろう。
カミーユは、反応弾――つまり、核兵器を持った者がバルキリーのパイロットを殺した参加者だと考え、その存在を危険視していた。
だが、その話を聞いた時点でユーゼスが危惧したのは、エネルギー問題についてだ。
消費された分しか補給されないというルールがどこまで適用されるのか、それを確かめようにも、基地には補給ポイントが存在しなかった。
カミーユの話の通りならば、殺し合いが進めば進むほどに、機体が破壊されればされるほどに、会場の総エネルギー量は減少していくということになる。
いざとなれば、一旦外部電力にエネルギーを備蓄し、再度補給――それにより十分なエネルギーを確保することが出来るだろうと思っていたが、それは無理、と。

そして、メディウスが吸収したブラックゲッターのエネルギーは補給されなかった。
八割まで戻ったのは、メディウスが基地での戦闘でそれだけのエネルギーを消費したからだろう。
残り二割ほどのメディウスのエネルギーに、ゲッターから取り込んだものも含まれているために完全補給には至らなかったということだ。

メディウスが吸収した分のエネルギーも、消費と見做されず補給の対象にならないのだとしたら。
残存機体が減れば、それだけ超神への可能性が潰えていくということになる。
ユーゼスがメディウスにゼストという名を付けたのは――あらゆる技術とエネルギーを吸収し、進化していくメディウスとAI1が、ゼストの雛型としてこれ以上なくうってつけだと考えたからである。
もし手をこまねいているうちに、メディウスを進化させるためのエネルギーが失われてしまえば、目も当てられない結果となる。
それだけは避けねばならない。
そうなる前に――メディウスに十分な餌を与える必要がある。
最悪の場合、更なる進化を果たしたメディウス単騎でも――この会場からの脱出は、成る。

こうなると結局は――自分が行おうとしていることが、主催者の狙いそのものだということに気づき、少しだけ笑う。
だが――手段が同一であろうと、その結果まで同じであるとは限らないのだ。

ブラックゲッターから降り、メディウスの元へと歩み寄る。
自己修復の速度は時間の経過とともに上がっていっている。コックピットもほぼ再生が完了し、あと数時間もすれば新品同然のものが出来上がるだろう。
完全に手足が欠損しているのが痛いが――コックピットが再生次第補給すれば、再生効率も上がるだろう。
見やれば、アキトもまた二本の足で大地を踏んでいる。薬の副作用も切れたようだ。

さぁ――狩りを始めよう。獲物は、大きければ大きいほど良い。
可愛い子供には――少しでも栄養のあるものを食べさせてやるのが、親の務めというものだろう?

310 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:37:23 ID:ChjKRukv
【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:F-7補給ポイント
 第一行動方針:ナデシコの捜索(とりあえず前回の接触地点であるD-7へ)
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を3錠所持
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持】

【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷、両腕・両脚部欠落、EN残量20%、自己再生中(コックピットの完全修復まで残り数十分程度)
 現在位置:F-7補給ポイント
 第一行動方針:ナデシコの捜索、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第二行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第三行動方針:サイバスターとの接触
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:機体の制御はAI1が行っているので、コックピットが完全に再生するまで戦闘不能】

【二日目 8:55】

311 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/01(木) 00:38:47 ID:ChjKRukv
というわけで投下完了っす。
タイトルは「最後まで掴みたいもの」でー
誤字・脱字、矛盾点など見つけられましたらご指摘くださいませ。
今年もよろしくお願いしますー

312 :それも名無しだ:2009/01/01(木) 00:46:06 ID:oRTSddHT
支援!・・・する暇もなかった、だと・・・!?

313 :それも名無しだ:2009/01/01(木) 00:56:44 ID:oRTSddHT
っと、新年いきなりの投下GJ!
マーダー師弟に続きこの共犯者コンビもヤバいw
さすがユーゼス、不利な状況でも自分が上だという認識は揺るがないw
これはいよいよ物語が加速して今年で終わるかもしれんね

314 :それも名無しだ:2009/01/03(土) 20:37:16 ID:kXhHwglN
投下気付くの遅れたけどGJ!
アキトは薬の度に辛そうだな
何か毎度ガウルンを幻視してるし
しかしこいつら一応対主催が音頭を取ってるとは思えない危険度だwww
ブンドル組・マーダー師弟のどちらと接触してもおかしくないしどうなることやら

315 :それも名無しだ:2009/01/04(日) 15:13:58 ID:ToDKr1Yk
考えてみればユーゼスがナデシコのヴァイクラン見たらすげー喜びそうだな
自分が消えた後に地球のメカを研究して作られた機体だし

316 :それも名無しだ:2009/01/04(日) 18:01:29 ID:oCUF2oc8
ええと……これでどうなるんだ?

ブンドルコウジは基地へ(10時)
アイビルキラアムロも基地へ(9時)
トウヤガウルンは基地へ(9時)

テニアは北(G-1・G-2・H-1・H-2、ナデシコとの合流ポイント)へ(9時30分)
ナデシコチームは、ガロードのかわりにコウジが基地へ行ったからガロード同行で北へ(9時10分)

ユーゼスアキトは現在具体的な進路不明(ほぼ9時)
カミーユは具体的な飛行方向不明(ほぼ8時)
ロジャソシエはE-7へ(9時前)
アインスケはもうどうなるか

こんな感じか……?
アインスケはそもそもどう考えてどう移動するかも不明だが、現在基地に陣取り中……
地味に、足の速さ、時間の兼ね合い、距離からして基地組の到着がほぼ同時になりそうだw
これは混沌としてきたなあw

317 :それも名無しだ:2009/01/04(日) 22:02:30 ID:qyMOoDzS
おぉ、まとめは助かるな。
でもナデシコ組はB-1が目的地だから北上するより、南下で壁越えの方が早いと思う。
あとロジャー組はD-7市街地が目的地で、アキトもそこ行くつもりなのが状態表で確認できるかな。


今接触が起こりそうなのは
・基地接触組
キョウスケ・アムロ・キラ・アイビス・ブンドル・甲児・統夜・ガウルン
・基地北部
アムロ・キラ・アイビス・カミーユ・テニア
・基地西部
ブンドル・甲児・統夜・ガウルン・ユーゼス・アキト
・南部市街地
ロジャー・ソシエ・統夜・ガウルン・ユーゼス・アキト
進路と目的地を考えたらこんな感じかな。
ナデシコ組だけ明後日の方向目指してるw

318 :それも名無しだ:2009/01/04(日) 22:08:35 ID:fz9nqQp/
でもナデシコはオルバ死亡の影響があるからなぁ……
どこの場所もどうなるか分からんぜw

319 :それも名無しだ:2009/01/04(日) 22:26:39 ID:71hb14j4
Jアーク組は基地に行くのはアムロだけだろう。キラはナデシコと会談するから
でユーゼスアキトは南の市街地に向かってる

320 :それも名無しだ:2009/01/05(月) 00:08:40 ID://nYEcsA
Jアークチーム   9:00 D-3 機体の整備・首輪の解析中。アムロは放送までに基地へ行く予定
ナデシコチーム   9:10 C-8 B-1に隠されているマジンガーを回収後、北東の4エリアへ
ガウルン・統夜    9:00 C-8 基地へ移動中。二機とも空を飛べないので時間がかかりそう?
ユーゼス・アキト  8:55 F-7 ナデシコと接触すべくD-7へ。時間的に市街地でナデシコを捕捉すのは無理か?
ブンドル・甲児   10:00 E-7 基地へ移動中
ロジャー・ソシエ  8:40 E-6 D-7市街地へ移動中
カミーユ       7:55 G-5 移動中。行先未定
テニア        9:30 G-5 ナデシコと合流すべく北東4ブロックへ移動中
キョウスケ      9:30 G-6 基地にて待機? ラスボス的に考えると移動はなさそう

321 :それも名無しだ:2009/01/05(月) 01:40:30 ID:C0MFgi+a
明けましておめでとうございました。
遅ればせながら◆7vhi1CrLM6氏・◆YYVYMNVZTk氏、投下乙です。
見切り発車感でいっぱいの拙作をこんなに早くリレーされるとは思っておらず驚きましたw
◆7vhi1CrLM6氏の緊迫感溢れる戦闘シーンや◆YYVYMNVZTk氏の丁寧な心理描写、緻密な考察は見習いたいものです。
途中参加の身で恐縮ですが今年もよろしくお願いします。

ということで、ブン児・仮面コンビを予約します

322 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/05(月) 01:40:59 ID:C0MFgi+a
トリ忘れorz

323 :それも名無しだ:2009/01/05(月) 02:04:31 ID:DfPMVfro
おお! 予約ktkr!
何気にユーゼスってサイバスターのラプラスコンピューター狙ってたりするんだよな……
執筆ファイトー!

324 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:15:39 ID:tCHF5FUO
投下します

325 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:16:10 ID:tCHF5FUO
「フ、フフ……フハハハハハハハハハハハハッ!」

ブラックゲッターのコックピットに、通信機から漏れた哄笑が響き渡る。
敵を前にして頭がイカれたのか……アキトがそう思うのも無理はないほどの大笑だった。
泥の中でもがくような時間が過ぎ、ようやっと本調子に――アキトに取っては、だが――戻り、移動を再開しようとしたところで、いきなりこの機体は現れた。
白銀の光沢、力強さを感じさせる翼。空を斬り裂いて舞い降りたのは機械仕掛けの大鳥―――魔装機神サイバスター。
本調子ではないとはいえ、アキトに油断していたつもりはなかった。
だがこの機体は、レーダーが捕らえたと思えばまさしく瞬きする間に目視できる距離に到達してきた。
凄まじいスピード。アキトが迎撃の姿勢を取ろうとした瞬間、だがそいつは前方で停止し、一瞬にして人型……戦闘用と思しき形態に変形した。
戦えない「ゼスト」とやらが足手まとい。切り捨てる? 薬は欲しい、だが自分が墜ちては意味がない。
ユーゼスを囮にしてやつを破壊する。ビームが使えない現状、有効な手段は―――
そこで、アキトの思考を遮るようにユーゼスの笑い声が聞こえた。

「ハハハハッ! よもや、こんなところで……! こうも容易く現れるとはな、サイバスター!」
「知っている機体か?」
「ああ、あれはいいものだ……。テンカワ、ここは私に任せてもらおう。手を出すなよ」

ユーゼスはアキトにそう言い置き、通信を切る。といっても、落とされたのは映像回線のみで音声は聞こえていたが。
アキトが目覚めたことにより、ブラックゲッターの操縦権もアキトへと戻っている。何か細工をされたかと警戒したが、変化と言えばエネルギーが補給されていたことくらいだ。
とはいえ炉心が破損している以上、完全に補給されたというわけでもなかった。動作に支障はないものの、あと数回でエネルギーは枯渇する、それは確実。
手札が限定されている以上、先に手を見せるのは好ましくない。
ここはユーゼスの言うとおり、まず様子を見ることに決めたアキト。
どうやらサイバスターなる機体もこちらとの交渉を望んでいたらしく、攻撃するそぶりは見せなかった。

「こちらはゼスト、ユーゼス・ゴッツォと、ブラックゲッター、テンカワ・アキト。サイバスターの操者よ、応答を願う。我々に戦闘の意志はない」
「……こちらはサイバスター、レオナルド・メディチ・ブンドル。私も争いを求めて来たのではない。対話を求める、ユーゼス殿」

アキトには聞こえてきた声に覚えはない。だが、どこか研ぎ澄まされた刃を連想させる鋭い声だった。
油断ならない相手だと認識し、手は出さずともいつでも行動に移れるようにサイバスターの挙動を注視する。
回線を繋げ双方が軽く自己紹介を行う。その際、アキトは負傷していて声が出し辛いという説明も交えて。
目がいくつもある怪しさ満点の仮面を被った男など問答無用で射殺されても不思議ではないとアキトは思ったが、このブンドルという男は特に何とも思わなかったようだ。
「そういう美しさもあるな」という一言で、こいつもどこかおかしいのか……と軽い疲労を感じた。

「まず……そうだな、何故この機体を知っているのか。そこから話していただきたいな。会ったことはないはずだが」
「何、『私の世界』で見たことがあるからだよ。といっても、遠くから眺めた程度のものだがね。その機体は単なる兵器の枠に収まらない優美さがある。一度見れば忘れんよ」
「ふむ……然り。サイバスターにはおよそ兵器とは思えぬ美がある。『私の世界』にはこうも心を震わせる兵器などなかった。
 一度設計者ともお会いしたいものだ。さぞかし美の女神に愛されたお方なのだろう」

どうやらユーゼスの掴みは上手くいったようだ。固かった声がいくぶん和らいだ。

「うむ、私も同感だ……が、サイバスターの真価はそこではない。そうだろう?」
「ラプラスコンピューターのこともお見通しか。そう、確かにこの機体にはある。最新のスーパーコンピューターなど比べ物にならないほどの演算装置が。
 それを持って私はサイバスターこそこの戦いを終息させる鍵と考えている」
「ラプラスコンピューターを完全に操れるなら、因果を操り未来を知ることもできる……なるほど、確かに鍵と言えるな。
 どうかね、ブンドル―――と、呼ばせてもらうが、サイバスターを私に預けてはくれないかね?」

326 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:18:50 ID:tCHF5FUO
「あなたに?」
「失礼ながら君には念……魔力的な素養は感じられない。私なら君よりある程度は上手くラプラスコンピューターを操れるだろう」
「魅力的な話だが……今は否、と言わねばならん。私にもこのサイバスターが必要だ。当面、ラプラスコンピューターの解析よりも優先してやることがあるのでな」
「ほう。それは?」
「基地を確保することだ。殺戮者たちへの備えとして、生存者の集結地として。そして」

コンコン、と軽い音。おそらくは首輪だろう。

「なるほど、我々と同じ……か。だが、一足遅かったようだ、ブンドル」
「どういう意味だ?」
「戦いに乗った者に攻撃を受け、基地は壊滅した。我々の仲間が足止めを行っていたが、先程一際大きな爆発があった。おそらくは……」

ユーゼスは悲しみのあまり消沈したように言う。演技とは知っていても、その仲間を売っておいてよく言えたものだとアキトは失笑した。
そしてそこに続くブンドルの声は今度こそ本物の落胆を滲ませていた。

「なんということだ……。事態は私の予想をはるかに超えていたということか」
「生存者は、いない。基地に向かうのは諦めた方がいい。奴が生きているかはわからんが、もし健在なら我々が束になっても一蹴されるだろう。それほどに強力な敵だ」
「また、無辜の命が散ったというのか……私が、もっと早く―――」
「酷なことを言うが、君一人いても状況はさして変わらなかったろう。君さえいればなんとかなったなどと言うのは、死力を尽くして敵に抗った私の仲間に対する侮辱だ」
「……そうだな、あなたの言う通りだ。後悔している暇などない……進まねばならん」
「うむ……我々はナデシコなる艦との接触を目指している。どうかね、我々とともに行かないか?」
「ナデシコ? あの艦か。ふむ……いや、済まないがそれならそれで私は北で仲間との合流を目指す。
 基地での合流を約束したのでな、もしそんな危険な敵がいるのなら捕捉される前に私がピックアップする」
「そうか……残念だ」

どうやらブンドルなる男は仲間と合流するつもりらしい。集団を形成されては面倒だ。ユーゼスの思惑がどうであれ、こいつはここで―――
アキトが殺意を解き放とうとした瞬間。

「お―――いブンドルさ――――――ん! もういいだろ―――!?」

大音量の声が響いた。
新たに接近する機影、1。映像―――雷を思わせる黄色のボディ。

「待ってろって言われたけどよ、そう長々と話してるってことは敵じゃないんだろ? だったら俺も混ぜてくれよ!」

聞こえてきたのは、活力溢れる少年の声。

「甲児君……待っていろと言ったろう」
「だってよ、俺だけのけものなんてひどいじゃねえかよ。仲間なんだからブンドルさんだけに危ない橋渡らせることはできねえしさ」

やがて、黄色の機体―――ストレーガというらしい―――が合流し、改めての会談となった。
どうやら向こうに先に捕捉されたらしく、万が一の事態に備えて機動力に優れるサイバスターが斥候役を務めることになったということだった。

「フ……その用心深さは頼もしいな。ユーゼス・ゴッツォだ。よろしく頼む、甲児君」
「甲児でいいぜ、おっさ……ユーゼスさん。それで、そっちが……って、ゲッターじゃねえか! あれ、でも黒い? 腕になんか剣が生えてる? ど、どういうこった?」
「……この機体はブラックゲッター、俺はテンカワ・アキトだ。こいつはおそらくそのゲッターという機体の改修機だろう」

喋る必要があったわけではないが、一々追及されるの面倒だと思ったアキトは甲児の疑問に答えた。
それきりまた口をつぐみ、二機の隙を探る作業へと没頭する。
甲児はしきりにブラックゲッターの周囲を旋回し、観察している。トマホークを叩きこまんとする手を抑えるのに苦労した。

327 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:20:58 ID:tCHF5FUO
「ブラックゲッター……へへ、俺の知ってるゲッターとは違うけど中々カッコイイじゃん。ま、俺のマジンガーには負けるけどよ!」
「マジンガー? それも詳しく聞きたいものだな」
「いや、先にこちらの話を進めさせてくれ。我々は仲間と合流する、君たちはナデシコと合流する。
 では首尾よく双方が仲間と合流できたのなら、そのとき改めて手を取り合おう」
「異論はない。だが、我々はナデシコの航路を知らないのだ、合流できるという保証はない。君たちはナデシコがどこに行ったか知らないか?」
「……いや、何処に行ったかまでは知らないな。私も先程すれ違ったくらいで―――」
「何言ってんだよブンドルさん。シャギアさんたちならガロードの機体を探した後北東4ブロックを回るって言ってたじゃねえか」

何故か急に言い渋ったブンドルに甲児の声が被さった。

「……そうだったかな? 済まない、なにせ君に撃たれた衝撃が強かったもので少し気が緩んでいたようだ」
「むぐっ……そ、それは言いっこなしだぜブンドルさん!」
「北東4ブロック、か。ふむ、礼を言う。おかげでこのフィールド中を飛び回らずに済んだよ」
「へへっ、いいってことよ! ああそうだ、シャギアさんたちに会っても、その、アンタ達人相っていうか仮面相……とかが悪いからさ。
 俺が紹介したって言いなよ。卵焼き、って言えば俺と会ったってわかるはずだから」

まっすぐ過ぎる少年は仮面に対しても忌憚のない意見を述べてくれた。
ユーゼスはともかく俺は好きで被ってるんじゃない、と胸の内で反論するアキト。

「……了解した。では、合流地点はE-1の水上都市はどうかね? 君らは北に行く、我々は南下して光の壁を通過して北東へ向かう。中間地点としてE-1が適任だと考えるが」
「了解だ」

ブンドルの言葉を区切りとして、手短かに情報を交換していく。
それが一段落したところで、ユーゼスは甲児にゲッターロボ、マジンガーZなる機体の話を求めた。
甲児も愛機の蘊蓄を語れるのがうれしいのか、上機嫌で説明している。
二人は機体を降り、地上で生身を晒している。今なら殲滅は容易い―――
しかし、優勝を考えると無闇に消耗するのはまずい。今はまだ機ではない、と判断したアキトにこちらは機体から降りなかったブンドルが話しかけてきた。

「テンカワ・アキト。どうやら向こうの話は邪魔してはいけないようだ、君と話そう。戦いに乗った危険人物のことだ」
「……俺に、話すことはない」

いずれ誰も彼も殺すのだから、と胸中で呟く。そんな相手のことなど知りたくないし、話していたくもなかった。
だが。

「私の話を聞いてくれるだけでいい。ガウルンという男のことだ」

瞬間、息が止まった。
ガウルン。
奴の名を、ここで、聞いた?

「奴とは二度交戦したが、決着は付けられなかった。品性は最悪だが、強い。まさに戦争を体現したような男だ」

ブンドルの言葉など頭に入らない。奴はまだ生きている。生きていてくれた。アキトに、殺されるために。

「奴は今も戦いを巻き起こそうと暗躍しているだろう。だが次こそは逃さん。必ずや奴を討ち取って―――」
「俺だッ!」

アキトの喉から怒声が迸る。

「誰にも渡さない……奴は、ガウルンは、俺が殺す! 俺がこの手で、必ず……!」
「……君も、以前に奴と?」
「奴は俺が殺す。邪魔をするなら誰であろうと容赦はしない」

それは通告。ガウルンを殺すのは自分であり、ガウルンに手を出す者は等しく殺すという殺意の言葉。
無差別に襲いかかってくる狂人に、それを狩ろうとする男。介入すればどちらからも狙われる―――

「無茶を言う。襲われても抵抗するなということか?」
「俺の知ったことじゃない」
「……ふぅ。わかった、もし遭遇してもなるべく撤退するようにしよう。できれば、の話ではあるが」

328 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:21:44 ID:tCHF5FUO
返事をする余裕などなく、胸の内の殺意を押さえつける。これはここで放つものではない。
溜めて、溜めて……あの男に叩きつけるその時まで、どこまでも純度を高めていく。そこへ、

「あの男の機体はガンダムというらしい。私の―――認めるのはいささか抵抗があるが―――仲間が乗っていた機体と同タイプのようだ。
 接近戦を主眼に開発され、小型とはいえ驚異的な格闘能力を有する。操縦方法が独特のもので、操縦者の体技をそのまま反映できるらしい。
 あの男は軍人上がりのようだが、腕は相当のものだ。機体とパイロットの相性が良すぎる」

冷めた声が投げかけられる。ガウルンの機体の情報だ。
意図が掴めず答えないアキトに構わず、ブンドルの声は続く。

「更に、私との戦いでは見せなかったが、もう一つ二つは切り札があるようだ。掌部にエネルギーを纏わせる技と、機体の出力が一気に高まる機能。
 ギンガナム……私の仲間が後者を発動させたときは君の機体とほぼ同サイズの強力な機体を片腕で圧倒した。この二点に特に留意したまえ」
「……どういうつもりだ」
「君が奴を排除してくれるならそれに越したことはない……それだけだ。何かを奪われたのなら、報復するのは当然の権利だと私は思う」

大事なのはガウルンと戦うことではなく、ガウルンを殺すこと。アキトにとってこの情報は―――有益だった。

「……礼を言う」
「不要だ」

一瞬だけ―――昔、仲間と共にいた頃の記憶を思い出し、気がつけば礼の言葉を口にしていた。
いずれ殺すのに……矛盾しているとは思ったが、それでもアキトにはもうここで戦う気は失せていた。
ガウルンの情報を手に入れただけでアキトとしては上々だ。こいつらのことは次に会ったときに考えればいい―――

それからしばらくして。

「待たせたな、テンカワ。出発するぞ」
「すまねぇな、ブンドルさん。待たせちまって」

ようやく話を終えた二人が戻ってきた。甲児はもちろん、ユーゼスも心なしか満足げだ。

「いやあ、見た目と違っておっさ……ユーゼスさんって話せるなぁ! やっぱ男はスーパーロボットだぜ!」
「うむ。合体変形、厚い装甲、全身に装備された兵器、そしてロボットなのに必殺技……科学者が一度は夢見る王道だ。これを好かずして何が男か」

すっかり意気投合したらしい二人をやや引き気味の目で見ていたブンドルが、出発を告げる。

「では、いずれまた会おう。さらばだ」
「じゃあまた後でな、ユーゼスさんにアキトさん! 死ぬんじゃねえぞ!」

サイバスターとストレーガが北へ飛び去っていく。
対して自分達は真逆、南へと針路を向ける。
未だ再生しきらぬゼストを抱えてブラックゲッターが飛んで行く。

329 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:22:54 ID:tCHF5FUO
「よく自制したものだな。別れ際に仕掛けるのではないかと私は内心穏やかではなかったよ」
「……いずれまた会う。そのとき殺せば結果は同じだ。貴様こそ、見逃していいのか? あの機体が必要なのだろう」
「サイバスターか。確かに本音を言えば確保しておきたいが……今の状況では破壊はともかく捕獲は困難だ。万一ラプラスコンピューターが破損しては目も当てられん。
 何、保険はかけておいた。サイバスターは私のもとへ来る、必ずな。早いか遅いかの違いだよ。
 あのブンドルという男、中々に切れる。すでに我々が違う世界から集められたということも理解していたしな。我々の重要性はしっかりと認識しているだろうさ」

上機嫌なユーゼスの声。アキトもこの接触は価値のあるものだと認めざるを得なかった。
ナデシコの行き先がわかり、市街地を探し回らずに済んだ。これは薬を飲まねばろくに動けないアキトには好都合だ。
そして何より、ガウルン。
ブンドルの話では、奴は相当の手練と戦って深手を負ったらしいが、生きていることには変わりない。
そして今も積極的に行動しているらしい。このまま当て所なく彷徨うよりも、人の集まるところ、獲物の多い場所に奴は現れるだろう。
ナデシコは集団を纏める旗と成り得る。奴が来る確率は決して低くはない。
もうすぐ、もうすぐ会える。ユリカを殺したあの男に―――

キョウスケ・ナンブのことも、共に進む信用ならないユーゼスのことも、今この瞬間はどうでもいい。
ブラックゲッター。復讐を体現する機体の中で、まるで恋焦がれるように―――アキトは宿敵との邂逅を願い続けた。



【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:E-7 北東部
 第一行動方針:ナデシコの捜索(南の光壁を抜けて北東4ブロックへ)
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を3錠所持
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持】

【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷、両腕・両脚部欠落、EN残量20%、自己再生中(コックピットの完全修復まで残り数十分程度)
 現在位置:F-7 補給ポイント
 第一行動方針:ナデシコの捜索、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第二行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第三行動方針:サイバスターとの接触
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:機体の制御はAI1が行っているので、コックピットが完全に再生するまで戦闘不能】

330 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:23:56 ID:tCHF5FUO


          □


「俺達にナデシコにブンドルさんの仲間にユーゼスのおっさんとアキトさん。へへっ、なんかイケるんじゃないかって気がしてきたぜ!」

ユーゼス達と別れた後、基地から北部の市街地へと針路を変えて進む二人。
甲児は純粋に仲間が増えたことを喜んでいるようだ。しかしブンドルは彼とは逆に、喉元に棘が刺さったような気分だった。

「……甲児君。彼らのことをどう思う?」
「どうって……頼もしいじゃねえか。見た目はともかくユーゼスさんはすげえ頭がいいぜ。光子力の理論をちょっと話したらスイスイ理解してた。
 ゲッター線のことも、俺はあまり詳しくは知らねえがここに来てからの調査だけでだいぶ深く理解してたみたいだしよ。
 アキトさんはなんか殺し屋みたいで……まあ頼りになりそうだよな。ブラックゲッターっつーゲッターだって、俺の知ってるゲッターは強かったぜ。
 三人乗ってないから同じじゃないんだろうが……どう見ても戦闘用だったしな。あの化け物を倒すのに大きな力になるぜ、きっと!」

甲児は微塵も彼らを疑っていない。その純粋さが彼の美点でもあるのだが、ブンドルはそう甘く考えることはできなかった。
基地の情報や首輪を解除しようとしていること、何より自分たちをあっさり見逃したことから、たしかに戦いに乗ってはいないのだろう。
だがどうにも―――信用しきれない。
これはドクーガ情報局局長として裏の世界を嫌というほど見てきたからこその勘なのだ、甲児に理解できるはずもないが。
表面的には友好的なユーゼス。寡黙だが内にガウルンへの激烈な殺意を抱えたアキト。
アキトはまだいい。大事な誰かを殺されて、復讐に走る。理解できないことではない。
ギンガナムのように、暴力に訴えるタイプなら制御するのは容易い。だからこそガウルンの情報を与え、矛先が万一にもこちらへ向かないように仕向けた。
だがユーゼスは違う。
言葉は穏やかながらも、仮面の奥にある瞳は冷徹にこちらを観察していた気がする。
人を見る目ではなく、フラスコの中の液体を、檻の中を走り回るネズミを、それらが起こす変化を機械的に観察している……そんな印象を受けた。
何より、サイバスターだ。
彼がサイバスターを自身に預けないか、と言ったとき。この機体―――機体に宿る精霊―――は、拒絶の意をブンドルに送ってきた。
こいつにサイバスターを委ねてはいけない。漠然と思っていただけのブンドルを、その意志は強く後押しした。
ユーゼス・ゴッツォは、今はまだ信頼すべきではない。ブンドルはそう決めた。
だからこそ同行の申し出を断り、ナデシコの行方もぼかしたままにしようと思ったのだが。
そこで甲児が介入してきたのは計算外だった。共に過ごした時間は長くないものの、多少なりとも理解できた彼の性格を考えれば予測できたことではあったが―――

(私は、手を指し損ねたのかもしれん)

その思いを抑えられなかった。もし彼らが戦いに乗っていて、自分達から情報を引き出すために友好的に接したのだとしたら……ナデシコが危うい。
急ぐ必要がある。この位置からなら彼らがナデシコと合流するより、自分達がアムロと―――願わくばアイビスとも―――合流する方が早いはずだ。
こちらが大きな集団となり、彼らより先にナデシコと接触する。
勘という曖昧な理由しか示せない自分よりも、人の意志を感じ取るニュータイプたるアムロならユーゼスの真意を看破できるかもしれない。

331 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:25:59 ID:tCHF5FUO

(どのみち、もう一度彼らと接触する必要があるか。こんなものを見せられては、な)

モニターに表示されるデータを見て嘆息する。
首輪を解析した結果だ。ユーゼスがあの基地で解析したものらしい。
脱出の際のどさくさで一部が破損したらしく、そのデータは不完全なものらしい。復旧に全力を挙げているとのことだったが、信用できたものではない。
なんとなれば自分に都合のいいように改竄したものかもしれないのだから。
しかし首輪の解除が脱出の絶対条件なのだ、不完全とはいえこのデータを導き出したユーゼスは不可欠な人材ということになる。
これを見せることで、ある程度ブンドルの行動を誘導する。上手いな、と思った。
アムロならこのデータからでも首輪解除の糸口を掴むだろうか? パイロットとしてではなく技術者としての彼に期待することにしたブンドル。

「甲児君、少し急ごう。我々も予定を早めなければならん」
「え? ああ、まあいいけど。……あ、だったらストレーガをサイバスターにのっけてくれよ。その方が速く移動できるはずだぜ」
「却下だ。もし敵に奇襲を受けたとき共倒れになっては目も当てられん。何よりこのサイバスターの上に乗るなど美しくない」
「ちぇっ。ストレーガじゃサイバスターについてくのだって一苦労なのによ……」

愚痴る甲児に微笑を返し、ブンドルも気を引き締める。
既に30人以上の命が失われ、基地でもまた幾人かがその命を散らしたという。他にもこの広大な世界で理不尽な死を迎えた者がいるだろう。
ガウルン、基地を壊滅させたという殺戮者。いずれ討伐に赴かねばならない。
ここから先は一手の打ち損じも命取りになる。ギンガナムの時のように、目前でむざむざと仲間を失うことはもう二度と許さない。

「サイバスター、我々を導いてくれ……この世界を壊し、あの醜悪な主催者を断罪するために」

サイバスターの応えはない、だが構わない。仮初とはいえ、今だけはブンドルがこの美しき白鳥の操者なのだから。
蒼穹を風と雷が駆け抜ける。その行く先に待つのは、果たして―――



【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:E-6
 第一行動方針:他の参加者との接触
 第二行動方針:中央の市街地へ向かいアムロと合流、その後E-1へ。可能ならナデシコと合流
 第三行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第四行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
 備考2:空間の綻びを認識
 備考3:ガウルンを危険人物として認識
 備考4:操者候補の一人としてカミーユに興味
 備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:良好
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:E-6
 第一行動方針:ブンドルに同行
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】



【二日目 11:00】

332 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 03:29:36 ID:tCHF5FUO
投下終了
タイトルは・・・考えてなかったので明日改めて、ということで・・・

333 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 13:46:57 ID:2DSlWLUB
投下GJ!!
甲児空気嫁www
さてさてユーゼスはラプラスコンピューターをどうするつもりなのやら。
最悪の場合AI1の餌にしようとしてる気がしてならない。
しかし、ナデシコの重要度が鰻上りに上がってるなw

334 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 16:49:32 ID:2Izn79KH
投下乙!
いい感じに各集団の関係が作られていくなぁ
ここからどんな風に話が転がっていくのか楽しみだ
とりあえず甲児空気嫁に全力で同意しとくw

335 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 19:06:10 ID:MPaAoOFQ
投下乙!
甲児……せっかくブンドルが頑張ってるのにお前って奴は……
このミスが致命的な事態に繋がらないことを祈ろう。

336 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 19:33:12 ID:vz+CDAjh
甲児ってOVAカイザー出典だからゲッター知らないんじゃない?だけ気になった
何にせよGJ!ああ、これが今後どう影響してくるか……

337 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 20:48:37 ID:6TA9c1ws
GJでした!合体ロボの魅力を語るユの字がシヴァーに見えるw

合言葉はタマゴヤキ…か…だけど多分ナデはもうそんな雰囲気じゃないんだぜ…
それに誰かがカミーユに接触すれば仮面組の嘘はあっさりばれる訳で
甲児とユの盛り上がりとは裏腹に何ともきな臭い予感だな

338 :それも名無しだ:2009/01/06(火) 21:42:40 ID:mhO9fiNq
>>336
甲児が言ってるのは、真ゲッターの事でしょ。
ガロード達の機体と言う事で、ゲッターの姿と名前は知ってるはず。

339 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/06(火) 22:40:35 ID:1S9P5t1f
感想ご指摘ありがとうございます。
>>336
OVA出典ってことをすっかり忘れてました・・・! 
ので、>>338さんの言うとおり真ゲッターを知ってるから、というように修正します。

「甲児でいいぜ、おっさ……ユーゼスさん。それで、そっちが、ってゲッターじゃねえか! あれ、でも黒い? 腕になんか剣が生えてる? ど、どういうこった?」
「……この機体はブラックゲッター、俺はテンカワ・アキトだ。こいつはおそらくそのゲッターという機体の改修機だろう」
 ↓
「甲児でいいぜ、おっさ……ユーゼスさん。それで、そっちが……ってあれ? その顔、ゲッターロボじゃねえか! ん、でも黒いしなんかずんぐりしてるな。どういうこった?」
「……この機体はブラックゲッター、俺はテンカワ・アキトだ。こいつはお前の知ってる機体とは多分別物だ」

 ゲッター線のことも、俺はあまり詳しくは知らねえがここに来てからの調査だけでだいぶ深く理解してたみたいだしよ。
 アキトさんはなんか殺し屋みたいで……まあ頼りになりそうだよな。ブラックゲッターっつーゲッターだって、俺の知ってるゲッターは強かったぜ。
 三人乗ってないから同じじゃないんだろうが……どう見ても戦闘用だったしな。あの化け物を倒すのに大きな力になるぜ、きっと!」
 ↓
 ゲッターロボのエネルギー……ゲッター線とかってのも、ここに来てからの調査だけでだいぶ深く理解してたみたいだしよ。
 アキトさんはなんか殺し屋みたいで……ま、まあ頼りになりそうだよな。ブラックゲッターっつーあの機体だって、俺が見たゲッターは強かったぜ。
 一人乗りってことは変形とかはできないんだろうけど、どう見ても戦闘用だったしな。あの化け物を倒すのに大きな力になるぜ、きっと!」

以上、修正分です。
タイトルは「仮面の奥で静かに嗤う」で。SSよりタイトル悩むってのもどうなんだろう・・・

340 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/07(水) 02:57:26 ID:yYjNT/P+
修正お疲れ様です。
タイトルは私も毎度思いつかずに悩まされますな。

アルフィミィ、予約します。
そろそろアルフィミィの登場回数がアイビスに追いついてしまうw

341 :それも名無しだ:2009/01/08(木) 00:35:55 ID:EeMjs4Sj
◆7vhi1CrLM6氏
・争いをこえて
・判り合える心も判り合えない心も
・生き残る罪
・(現在予約中)
◆ZbL7QonnV.氏
・風と雷
◆YYVYMNVZTk氏
・(前を向いて)
・最後まで掴みたいもの
◆VvWRRU0SzU氏
・黄金の精神
・すべて撃ち貫くのみ
・仮面の奥で静かに嗤う

12、1月となにこの投下ラッシュw
思ったんだけどここの書き手さんって筆が早い人ばっかだね
大抵延長なしで予約してから2,3日で投下してる

342 :それも名無しだ:2009/01/09(金) 08:21:37 ID:bCNy0xhm
このペースを維持することが出来れば今年で完結もいけるだろうなー
本家は完結までに260くらい使ったけど、こっちは話数の割に話が進む傾向があるから……200話くらいで終わるか?

343 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/09(金) 16:29:50 ID:MtyGTsii
保守がてら避難所に没ネタを修正したものを投下してみました
アインスケが移動するかどうか未定だったのと、どうにも徒党は組めそうにないので戦力強化と
といってもあれはルール違反なのかもしれないので、NGかどうかご意見お願いします

344 :それも名無しだ:2009/01/09(金) 20:29:39 ID:6xbLBAIt
投下乙です。
楽しく読ませていただきました。
固定武装の取り込みに関しては個人的には有りだと思いますが、皆さん意見を聞いてみないと何とも。
既にメディウスが武装と言わず色々取り込んでたりしますし。
ただちょっとゲシュVの武装名が気になりました。
バンカーにスクエアクレイモア・三連装マシンキャノンとリーゼとアルトの武装名が混在してましたので、どちらかに統一しておいたほうが良いかと思います。
あるいは思い切って無限フロンティアのナハトの武装名に合わせるとか。
wikiによるとムゲフロのナハトはゲシュVのデータを元にダウンサイジングして開発されたものらしいですし。

参考までに各武装名
アルト              リーゼ              ナハト(無限のフロンティア)
スプリットミサイル       ―                 ―
ヒートホーン          プラズマ・ホーン        ダレイズ・ホーン
3連マシンキャノン       5連チェーンガン        5連チェーンガン
リボルビング・ステーク    リボルビング・バンカー    リボルビング・ブレイカー
―                ―                 シールド・クレイモア
スクエア・クレイモア     アヴァランチ・クレイモア   レイヤード・クレイモア

345 :それも名無しだ:2009/01/09(金) 22:46:00 ID:gfbD2PRE
アルト・リーゼがインパクト準拠ならリーゼにもスプリットミサイルあるよ

346 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/09(金) 23:35:48 ID:Qbtf3csO
杭と言えばバンカーじゃね?って安直な考えでした・・・
◆7vhi1CrLM6氏の生き残る罪 で、角がヒートホーンと確定してるのでアルトですね
スプリットミサイルは、アルトが使った描写がないのでOG版のアルトかとも思ったんですが。単に今まで使われなかったでもいいかも

武装の取り込みについて、引き続きご意見お願いします
もし通った場合、素材次第でいくらでも強化できることにもなるんですよね・・仲間できない分これくらい必要かなとは思うんですが

347 :それも名無しだ:2009/01/10(土) 00:09:38 ID:F3D0LjuG
一度ガウルンのマスターの装備取り込みが否決した以上、主催者側とはいえ覆すのはどうかと思います
それでなくともロワとしては破格の再生、補給能力付いている訳ですし
一応一参加者である以上、これ以上仲間が増えないからと優遇されるのはおかしいかと


348 :それも名無しだ:2009/01/10(土) 01:27:25 ID:IRRQyL7Q
手持ち武器を拾うのは可、しかし融合取り込みには反対…ですかね
デビガン超進化とかどうよ?という意見もここが始まった一因であった筈で
それは二次の縛りとして生き続けると個人的には考えます

勿論ナハトが原作でも色々食べちゃう子ならこれもありだと思うよ!
無限知らないんだごめん

349 :それも名無しだ:2009/01/10(土) 02:06:01 ID:2S6YOPXc
投下された作品そのものは面白かったんですけど、自分も>>347>>348両氏と同じ考えです。
リレー企画である以上、過去に一度決まったことを翻すことは禁じ手だと考えています。
また、きつい言い方になりますが、仲間が増えないからといって強化を許すことは有り得ません。
そのような理由がまかり通るのならば、誰も彼も強化・優遇の理由を作れてしまうことになります。
今回その理由で目に見えた優遇・強化を容認してしまえば後々に似たようなケースが問題になった場合にも通さざるを得なくなってしまいます。
そのアイディア自体はとても勿体ないですが、何よりも企画の進行を第一に考え、今回の件については反対させてもらいます。

350 :それも名無しだ:2009/01/10(土) 02:30:34 ID:vIJU6x4/
そもそも、今のキョウスケならグループ相手でも一人で互角に殺り合えそうだ、ってのは禁句?

351 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/10(土) 13:42:23 ID:XK61xPHm
ご意見ありがとうございます。
メリクリウスが余ってたからこれはまだ使えるんじゃないか?とちょっと安直に考え過ぎてましたね。
優遇が過ぎたと反省しておりますorz
これ以上引き延ばすのも何なので、避難所に投下したSSは没ということでお願いします。
予約してる方がいらっしゃるのにスレ占有して申し訳ございません・・

352 :それも名無しだ:2009/01/10(土) 18:58:49 ID:8JDr/he2
まずないだろうけどカミーユが禁止エリアに迷い込みそうな件
ほらあいつシャアの名前以降の放送聞いてなさそうだったし、禁止エリア近くだし

353 :揺れる心の錬金術師 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/10(土) 22:24:03 ID:nvKu0NWb
それを最初に見た――否、感じたとき、星のきらめきにとてもよく似ていると思ったことを、覚えている。
箱庭に散りばめられた53個のきらめき。
首輪に宿るアインスト細胞を通じて、アルフィミィはそれを知覚することが出来た。
視覚ではないところで見、聴覚ではないところで聞いている。
その感じ方は、NTや念動力者といった者達が他者を感じられるのと、似ているのかもしれない。
ただ、それは感覚という曖昧なもの。遠くのものを見て、その距離に当たりを付けるようなあやふやなもの。
不確実性は甚だしく、個人の趣向にも左右される。
見たいものだけを見、聞きたいことだけを聞く。見たくないもの、聞きたくないことは意識の外へ。
それがある程度可能なのだ。
だから別個に、アインスト細胞に依らない首輪そのものの機能の一つとして、ネビーイームには座標データが送られていた。
それを今、鎮座するデビルガンダムを通じてアルフィミィは確認している。
『問題』の反応はある。確かにその場所、その位置に反応はあり続けている。その問題ないはずの現象。
それがアルフィミィの焦りと混乱をより深くしていた。

「何故……感じられませんの」

どんなに意識を凝らしても見えない。聞こえない。これまで、こんなことはなかった。
箱庭というオモチャ箱に閉じ込めた53個のきらめき。その数は減り続けている。
死んで消えて去ったのだ。
それとは違う。死んでない。生きている。でも、知覚出来ない。感じられない。
まるで繋がらない電話だ。番号は知っているのに、間違ってないはずなのに。
出てくれない。
何度も、何度も、何度も掛けなおした。彼が居たはずの場所に目を凝らし、耳を凝らし、神経を集中させて感じようとした。
その度に、呼び出し音が虚しく響いただけだった。

「何で何も感じられませんのっ!!」

何も見えない。何も聞こえない。それが意味するもの。意味すること。
もしかして私は――
頭をぶんぶんと左右に振って、その先の考えを振り払う。
もう一度。もう一度と自分に言い聞かせて、嫌な考えを頭から追い払う。
落ち着かぬ気持ちを無理にでも落ち着かせ、瞳を閉じる。箱庭に散らばるきらめきに意識を凝らす。
瞳は瞼の裏、何も映さない。漠々たる闇の意識野が拡がり、視覚ではない何かが光を捉える。
それはまるで夜空に浮かぶ星たちのきらめき。それは人の想い。
ときに強く、ときに弱く瞬き、怒れば赤に、悲しめば青にとその色を移ろわせていく、揺らめく炎のように。
それが画一的なアインストには無い色で、一つ一つ違った色で、最初は眺めているだけで楽しかった。
箱庭という宝石箱に、綺麗な色とりどりのビー玉を集めて喜んでいる子供のようなものだったのだろう。
だが、今はそんな余裕が無い。
焦りを抑えつつ、数え間違えのないようにそれを一つ一つ丁寧に確認していく。
確認できた数は19。そして、今現在生存しているはずの者の数は20。

――ひとつ、足りませんの。

思い通りにならない現実に涙が滲んでくる。何もかも放り投げて泣き出しそうになる。
それを『がまん』の一言で押さえつけ、作業を続けた。
時計の針は、もうすぐ八時半を指す。対象を見失ってから約三十分。
何の進展も得られぬまま幾度となく繰り返した道筋を、もう一度辿る。
ユーゼス・ゴッツォとテンカワ・アキトのきらめきを確認。カミーユ・ビダンのきらめきも確認。
フェステニア・ミューズとオルバ・フロスト、確認。
ネビーイームから首輪の座標データを引き出し、照合。見つからない20個目のきらめき、それの存在を確認。
やはりそこにそれはあるのだ。なのに知覚できない。感じ取れない。
じわりと滲んだ涙をがまんして、口元がへの字に曲がった。まだ泣くには早い。

「 が ま ん ですの」


354 :揺れる心の錬金術師 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/10(土) 22:25:28 ID:nvKu0NWb
見えずとも、聞こえずともあるのだ。そこに間違いなくあるのだ。
なら感じ取れるはずだ。その存在を、自らの直属に位置する首輪のアインスト細胞を。
ユーゼス・ゴッツォとテンカワ・アキトの位置、カミーユ・ビダンの位置、フェステニア・ミューズとオルバ・フロストの位置。
それらを目印にすれば、意識野におけるキョウスケ・ナンブのおおよその位置は見当がつけられる。
睨みつけるかのようにして、感覚を研ぎ澄ます。そこに意識を凝らしていく。
広域に広げていた意識野を絞り込む。
中央廃墟、南部市街地の参加者を知覚の外へ。ロジャー・スミス、ソシエ・ハイムもそれに続く。
さらにレオナルド=メディチ=ブンドルと兜甲児も、今知覚外へ。
まだ見えない。さらに絞り込む。
ユーゼス=ゴッツォ、テンカワ=アキト、カミーユ=ビダンを知覚対象から外す。
最後に残ったフェステニア=ミューズ、オルバ=フロストの反応も意識野から追い出した。
そして残されたのは、狭く何もない漆黒の空間だけ。G-6基地だけに絞込み、意識を凝らしているにも関わらず――まだ知覚できない。
五感も不要。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を順に排除。
研ぎ澄ました知覚を腕の形に。それを伸ばし、どろりと粘性を帯びた暗い意識野の水面へと埋めていく。
掻き回し、掻き乱す。時折両の手で掬い上げ、何もないのを確認してもう一度。
何度も何度も繰り返す。
何かがあるはずだ。ここに。この場所に。
それに触れようと必死になって探り続けた指先に不意に何かが当たり、途端に弾かれた。
研ぎ澄ました知覚の腕が掻き消され、五感が戻る。凝らし、絞り込んだ意識野が拡散する。
気づくと、汗だくの体でデビルガンダムに半身を埋めていた。蒼ざめた肌に、途切れ途切れの呼吸。
見つけた。触れた。知覚した。でも――

「何故……ですの? なぜ? 何で? どうして!? 何がッ!!」

次第に激を増していく言葉。空気が足りず、上半身だけで大きく仰け反るようにして、息を継ぐ。

「……わかりませんの」

天を仰いで呟いた声は、ついに涙声へと変わる。
見つけたのは、キョウスケ=ナンブの首輪に宿るアインスト細胞の反応。だが触れた瞬間に拒絶された。
下位のアインストが上位のアインストを拒絶することなど、普通ありはしない。
ましてそれが直轄のものならばなおさらだ。にも関わらず拒絶された。理由ははっきりしている。

「……わかりませんの」

自分よりも上位のアインストがあの場に居る。同位ではなく上位の存在。
首輪のアインスト細胞が反応をよこさずに拒絶したのは、より上位の存在に支配権が移ったが為。

「何故、あなたが……わかりませんの」

主がキョウスケ=ナンブを器に選んだ。それがほぼ確定。
メディウス・ロクスが起こした空間の歪み、箱庭へと滑り込んだ主の一欠片、知覚出来なくなったキョウスケ=ナンブ。
そこへ思い至るだけの材料は十分にあった。
にも関わらず、今の今までその可能性を考えの外に追い出していたのは、否定したかったからだろうか。
かつて主の前に立ちふさがり、主が力の大半と引き換えに撃ち滅ぼした者達の一人と同質の存在。
しかし、それ以外は何の変哲もない何処にでもいる普通の人間。器に選ばれるような理由はないはずなのに。
別にいいではないかと思う。気にする必要も必然性もない。
理由が分からずとも、ともかく主は新たな器を手にしたのだ。それでいいではないか。

――でも、どうして心が揺れますの?

胸中の呟きに答えはない。
息をゆっくりと吸い、長く細く吐き出す。答えの出ない疑問を棚上げに、思考を切り替える。
主の欠片が箱庭に降り、器に憑依した。
ならば今自分が考えなければならないのは、この先どうするべきか、だ。
最大限の融通を利かせ、主の有利なようにことを進めるべきか。あるいはこのまま静観を続けるべきなのか。
いや、そもそも主はこの宴の目的たる新たな器を手にしたのだ。もうこれ以上、この宴を続ける理由は何処にもない。
箱庭から主を脱出させ、残ったサンプルたちはそのままここに放棄しても一向に構わないのではないだろうか。
でもそれは――


355 :揺れる心の錬金術師 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/10(土) 22:26:10 ID:nvKu0NWb
「……嫌ですの」

会ってみたい者達が、依然としてこの箱庭で生き続けている。
例え主にとってもはや用済みの空間と言えど、自身にとって魅力的な宝石箱である事実は変わらない。
それに、それにだ。そもそもあれは主と、ノイ=レジセイアと呼べる程のモノなのだろうか?
主の欠片であることに間違いはない。
だが、もしもあれがノイ=レジセイアと呼べる程の力を持っていなければ? 主の選択が間違っていたとしたら?

――別の器が必要ですの。

主の本体はまだこちらにある。再度憑依を促す必要が生じたときの為に、今この宴を止めるわけにはいかない。
自分が生み出された理由は、『ノイ=レジセイアと呼ばれるモノ』を生きながらえさせる為なのだから。
そう理由付けながらも、でも、と思う。でも多分本当は認めたくないだけなのだ。
あれがノイ=レジセイアだとは認めたくない。自分と同じく人をベースとしたあれがノイ=レジセイアだと認めたくない。
そして、主の器は自分によって選び出されるべきなのだ。そうでなければ、自分が生み出された意味がなくなってしまう。
だから認めたくない。自己の存在を懸けて、認めるわけにはいかない。

「あれは敵」

自分の存在価値を根こそぎ奪っていくもの。

「あれはまがいもの」

主の力によって生み出された主とはまた異なった別個の存在。
本当にそう思っていれば、動けたのだろう。主の本体に確認を取ったはずだ。でも違うと言い張りながら、その足は出ない。
怖いのだ。
問えば主はあれをノイ=レジセイアと認めてしまうだろう。そうなれば、自分の存在理由が消えてしまう。
生れ落ちた意味も、今生きている意味も失われるのだ。
それが何よりも怖い。
誰でもいい。誰でもいいから教えて欲しい。与えて欲しい。揺らぐことのない存在価値を、存在理由を。
主でなくても、今箱庭の中にいる者でも、誰でもいい。誰でもいいのに――

「ここには……誰もいませんの」

直径40kmにも及ぶネビーイームの最奥、その中枢。見回せばそこはがらんと広い巨大な空洞でしかない。

「誰も……」

そのときアインスト=アルフィミィは、生まれて始めて孤独を理解した。



【アルフィミィ  搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:ネビーイーム
 第一行動方針:バトルロワイアルの進行
 最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】

【二日目 8:50】

356 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/10(土) 22:37:26 ID:nvKu0NWb
投下終了です。
短い話ですがアインスケ誕生に対するアルフィミィの反応が話の主軸です。
アインスケの優遇について議論があったので若干尻込みしましたが、どうにもノイ=レジセイアの欠片にアインストの首輪がついていることに違和感があったので今回の話を書かせていただきました。
アルフィミィに感知されないだけで、首輪そのものの機能は生きているという感じで書いたつもりです。
ご意見、ご感想よろしくお願いいたします。

357 :それも名無しだ:2009/01/11(日) 12:43:45 ID:wT/ycFR2
下らなかったかな

358 :それも名無しだ:2009/01/11(日) 15:58:32 ID:rHqzH/mP
投下乙!
泣きそうになるアルフィミィを更に虐めたくなった俺は(ry
揺れるアルフィミィの心の描写が上手く、主催者側の掘り下げを見ていると終盤になってきたなぁと感じたり。
アインスケの首輪の変化についてですが、ロワ内で有利になるわけでもなく、竜馬なんかは感知どころか死亡していると誤解されているわけだし、問題はないと思います。


359 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/12(月) 20:05:56 ID:wXm/qIWL
感想、ありがとうございました。
とりあえず問題なしでいいようでちょっと安心しています。

ついでに業務連絡。
三月半ば頃から個人的事情により約三ヶ月間携帯まとめの更新停止を予定しております。
細かい日にちなどは未定ですが、携帯まとめをご利用の方はwikiの方をブックマークするなど個人で対応のほうをよろしくお願いします。
また同時にwikiの地図の更新も止まりますので、ご了承ください。

360 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/13(火) 01:49:56 ID:4TpCFosS
更新停止了解です。
手軽に読み返せる携帯まとめには毎度お世話になっております。
現在地地図の更新も止まるとなるとかなり不便になるなぁと思いながら、毎回更新してくださってた氏には大変お世話になってたんだなと再確認。

というわけで、シャギア、ガロード、ヒメ、バサラ、クインシィ予約します。
うーん……バサラ難しいw

361 :それも名無しだ:2009/01/13(火) 07:43:17 ID:f5TBH7Th
予約ktkrこの流れはいったいなんなんだw

362 :それも名無しだ:2009/01/13(火) 10:06:45 ID:3bfDQ8aV
???「過疎に屈しない心!それがやがては投下ラッシュの風を呼ぶ。
     予約・投下の勢いはもはや止められぬ……人それを『怒涛』という」

363 :それも名無しだ:2009/01/13(火) 20:14:47 ID:dEN/gaE8
雲行きの怪しいナデシコ組予約キター!!
シャギアがどう転がるのか爆睡王バサラがどう動くのか楽しみにお待ちしております。

364 :それも名無しだ:2009/01/13(火) 22:27:23 ID:3pEqJpdH
そういやオルバ死んだから荒れそうなんだっけ

365 :それも名無しだ:2009/01/15(木) 22:48:58 ID:pipp32F2
久々に死者スレのぞいてみたら早くもラスボスが誰になるかで賭けが始まってるな
ってかシャア大穴狙いにも程があるwww

366 :それも名無しだ:2009/01/16(金) 11:03:19 ID:CduXzyUG
助手の賭け口が堅すぎて吹いたw
流石に本命狙いすぎだろw

367 :それも名無しだ:2009/01/16(金) 11:13:49 ID:5tkbqMGn
ジョナサンもそうとう駄目だろwww

368 :それも名無しだ:2009/01/16(金) 22:37:51 ID:8/wlcJ7h
ジョナサンは口数が狂ってるもんなw
お陰で本命狙いでも元が取れそうというのがなんとも
そこまで計算してそうな助手はほんと手堅いなwww

369 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/16(金) 23:28:32 ID:bYz7np5D
うう……ごめんなさい。体調不良故に執筆が思うように進まず期限内に終わりそうにないですorz
延長お願いします……内容的にそんなに長くはならないんで、頑張って日曜までには仕上げたいと思います。

370 :それも名無しだ:2009/01/16(金) 23:44:21 ID:8/wlcJ7h
どんまい!お疲れ様です。
隊長第一に体のほうを大事にしてください。

371 :それも名無しだ:2009/01/17(土) 02:31:20 ID:n1mVNnAX
実際延長しても他に予約するほど人がいない現状特にデメリットないからな・・

ところでまとめサイトは予約期限5日、こっちのテンプレは3日となってるが5日でいいんだよな?

372 :それも名無しだ:2009/01/17(土) 12:02:37 ID:efxhjwKY
前スレの>>279で予約期限3日から5日+延長2日に伸びてるから5日が正解
多分スレ立てるときに前スレのテンプレをそのまま使ってしまって3日になってるんじゃないかな

373 :それも名無しだ:2009/01/18(日) 19:28:59 ID:pXM4V/EH
今日投下来るのかな待機

374 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:00:46 ID:bOvZTcfu
医務室へとてくてくと歩いていくのはガロードだ。
甲児とブンドルが基地へ向かったということを比瑪に伝え、返ってきたのは「甲児ったら何やってるのかしら!」と、怒りと呆れの同居した声。
比瑪が言うには、甲児は筆記用具を求めて医務室を飛び出していったらしい。
何故に筆記用具? という疑問には、ずっと気絶していた男が起きて、どうやら負傷で喋れなくなっているようだったので意思伝達の術として、という答え。
そういえば甲児が医務室へと向かったのは、比瑪の助けを聞いたからだったなと合点。
比瑪は甲児の代わりにどちらかにペンと紙を持ってきてほしいと頼んだ。
シャギアとガロードは、どちらからともなく顔を見合せ、視線で互いの考えを伝える。

ガロードとしては、極端な話ではあるが、四六時中シャギアを見張っておきたいとまで考えている。
たとえそれが艦内の移動であったとしても、出来ることならば常に視界の中に入れておきたい。
かつて、世界を破滅で満たそうとしていた兄弟――その片割れ、シャギア=フロスト。
彼自身に多大な力があったわけではない。世界を動かす権力も、支配する武力も、当然の如く財力もだ。
世界を変えるという目的と比べると――彼らは、あくまで『個人』に過ぎない存在だったのだ。
だがしかし、彼らは――その、まるで中学生が考えたかのような夢物語を、現実のものにする『能力』を持っていた。
紛い物と称されるカテゴリーFの力ではない。彼らの真価は、巧妙に世界を動かす力に介入する、暗躍する力。
おそらくは――フリーデン、ティファ=アディール、ガロード=ランという、彼らにとってのイレギュラーさえなければ――事は成っていただろう。
目を離しているうちに、何をしてしまうのか分からない。ガロードがフロスト兄弟が戦ったのは、MS戦という戦争を構成する一面に過ぎない。
だが、手を変え品を変えフリーデンを追い詰めてきたシャギアの実力は、誰よりもガロードが良く知っているのだ。
だから――ここで、どちらが医務室へ向かうのか、或いはどちらも行くのか、或いは比瑪に取りに来させるのか。
ガロードが選んだのは、自らが医務室へ向かうという選択肢。
シャギアを一人にするのは望むところではないが、シャギアを医務室へ向かわせ比瑪たちに良からぬことを吹き込まれたり、皆が医務室に固まっているときに襲撃を受け、反撃が遅れるというような羽目になるよりはマシだと考える。
比瑪をこちらに来させるというのは、寝ているだろうクインシィと素性の知れない男を二人きりにするということで、これもまったく良くない。
結果――紙とペンとを手に持ち、ガロードは医務室へと向かっている。

ふぅ、とシャギアは一人息をつく。
ガロードは、やはり私たち兄弟の最大の障害となる男だと、そう再確認した対面であった。
とはいえ――自分たちのことを良く知っているからこそ、ガロードは自分たちの仲間となれる存在だと言えるだろう。
ガロードの疑念は、全て自分たちの世界――六度の大戦を経た、あの宇宙での諍いから来るものである。
確かにシャギアたちとガロードの属するフリーデンは、幾度となく戦闘を繰り返してきた。
だがそれは、互いの目的が異なるものだったからであり、互いの目的が、脱出という点で一致しているこの場所でまでガロードと戦い続ける理由はない。
ガロードもそれは理解しているだろう。フロスト兄弟は、結果を求めるためならば手段を選ばない――そんな悪役のイメージで固定されているに違いないだろうから。
ならば、ガロードは自分たちと手を組むことが出来る――仲間になれる。
シャギアは、「脱出」というプランについて、こう考える。
たとえ首輪から解き放たれ、この空間から抜け出せたとしても、それは「脱出」ではない。
自分たちがこの場所に召喚されたとき――抵抗出来たか? 出来なかった。
知覚する間もなく、気づけば首輪をはめられ、そして放り出された。
逃げ出しても再び捕まる可能性は決して低くない。ならば、憂いは断っておかなければならない。

あの化け物を倒す。真の意味で「脱出」を成すためには、それが必要だ。

375 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:01:42 ID:bOvZTcfu
そのためには、更なる力――仲間が必要だ。
そういえばと、シャギアは時計を見る。
オルバから最後の通信があってから、ある程度の時間が経っている。
そろそろ基地へ着いた頃だろうか。
聞けば、オルバは未だテニアを始末していないらしい。
その理由までは聞いてはいないが――オルバには些か感情的なところがある。
恐らくは、テニアの言葉か何かがオルバを刺激したのだろう。始末するのは、十分に痛めつけてからということだろうか。
シャギアはオルバのことを信頼しており、オルバもまた、それに足るだけの能力は持っている。
だが、その感情的すぎる面は、いずれ弟の命取りになるのではないだろうかと、シャギアは密かに危惧していた。
テニアが相手ならば後れを取ることはないだろうが――いずれ修正せねばならない悪癖だな、と思う。
時計の針は9時15分を指している。
シャギアがオルバの最後の声を聞くのは――この数分後。

 ◇

「あ、ようやく来たのね」
「紙とペンと、これで大丈夫か?」
「うん、ありがと。さ、どうぞ」

ガロードが医務室に到着し、筆記用具を手渡し――ようやく、バサラは自分の意思を伝える術を得る。
伝えたいことは山のようにある。多すぎて、逆に何から伝えればいいのか分からないほどに。
落ち着いて、ゆっくりと書き出していく。まずは自分の名前から。

『助けてくれてありがとな。俺の名前は熱気バサラ』
「バサラ……か。身体のほうは大丈夫なのか?」
『声が出ないこと以外は大丈夫』
「なら、あとはゆっくり治せばいいのね。……のど飴とかあるかしら?」

のど飴で治りはしないだろうと、呑気な比瑪の声に思わず苦笑が漏れるが、その笑いもすぐに消える。
自分の声は、再び元通りになってくれるのだろうか?
そもそも、どうして声が出なくなったのか――気絶する直前に何があったのか、それを思い出す。
そうだ。俺は、コスモのために歌を歌って、それから白い機体に撃たれて――

『コスモという名前の男は?』

ガロードと比瑪は顔を見合わせる。
二人はコスモという名前の男を知らない。だが、どこかで聞いた覚えのある名前なのだ。
つい先ほどまで会ったこともない二人が、共通して知る名前といえば――放送で呼ばれた名前に他ならない。
どう切り出せばいいのか戸惑う二人の様子を見たバサラは、コスモが死んだという事実を知る。

『カテジナという女は?』

それもまた、同じ反応。

『アスラン』

駄目だった。

つまり、この殺し合いが始まってから出来た、数少ないバサラの知人は――すべて死んでしまっている。
自分がほんの十数時間ほど寝ている間に、みんないなくなってしまった。
あまりにも実感がなく――だがそれは、きっと事実なのだろう。
二人がかけてくれる慰めの言葉も空空しく聞こえ、何をすればいいのか、何をしたかったのか、頭の中が空っぽになる。
怒りでも悲しみでもなく、占めるのは喪失感。
進むべき道――自分の歌で殺し合いを止めるという選択も、今は選べない。
起きてしまえば浦島太郎。ただただ途方に暮れることしか出来ない。

『俺はどうしたらいい?』

376 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:02:36 ID:bOvZTcfu
定まらない不安が文字になる。
自主性を捨て他人に身を任せる気楽さに逃げたくなる。
彼本来の性格からすれば、考えられないような行為。
だが――熱気バサラを構成する、もっとも重要なファクターが、歌が、現在の彼からは失われている。
バトルロワイアルという異質な空間において、その負の影響を最も受けた人間であるとも言えよう。
快活さも闘志も失われてしまった瞳を眼前の少女へと向ける。
目を覚ましたその時から、バサラへと優しい態度と言葉を施してくれた少女、宇都宮比瑪。
比瑪ならば――バサラに、道を示してくれるのではないだろうか。
その考え自体がバサラの中の迷いであるということに気付かず、縋るように見つめる。
だが、比瑪の持つ優しさは――相手が望む行動を無条件に行うような、思考停止の愛ではなく。

「私が教えるのは簡単だよ。でも、本当にそれでいいの?
 君がやりたいことを私が決めるのは……違うよね。たとえ今どんなに辛くても、それは人に任せちゃいけないことだと思うんだ」
『だけど』
「ゆっくりでいいから。今は大変だろうけど、大丈夫だよ。私たちがついてるんだからさ!」
『歌も歌えない。何も出来ない俺がここにいてもいいのか?』
「いいんだよ。今は何もできなくても、きっと君にしか出来ないことがあるはずだから。
 だから、今はその喉を治すことから考えよう! 私も君の歌、聞きたいしね」

そう言って笑う比瑪。
彼女の持つ優しさとは、いつも前へ進もうとするものだ。
今のバサラに足りない部分を補ってくれるものだ。
言われて初めて、熱気バサラが失ってしまったものは声だけではないと気づくことが出来た。
そうだ。
こんな逆境に立たされて――ただ状況に流されて不貞腐れているだけな熱気バサラなど、熱気バサラではない。
こんな時にファイトを燃え上がらせてこその熱気バサラなのだ。
声がいつ戻るのか、バサラ自身にも分からない。
分からないことは考えても無駄なのでやめ。どうにも出来ないことは悩まない。
今は出来ることをやる。
そう考えることが出来るようになっただけで、自分が自分を取り戻せたという実感が湧く。

『ありがとな』

湧きあがる感謝の念は言葉として返す。
出来るのならば歌の一つでも歌いたいところだが――出来ないのならばしょうがないのだろう。
歌えないということをしょうがないの一言で済ませることが出来るようになるとは思ってもいなかったなと、少しばかり苦笑い。
それも、こう考えよう。
熱気バサラは、この苦境をバネに、さらに成長すると。
歌えなくなったことで、歌うという行為がどういうものなのか、どれだけ自分の中で大きな存在だったかを、改めて確認することが出来たのだと。

『寝てる間に汗をかいちまった。シャワー借りてもいいか?』
「もちろん! 一人で行けるかしら? ついていこうか?」
『さすがに一人で大丈夫だ』

377 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:04:05 ID:bOvZTcfu
そう書いて、比瑪と顔を見合わせて笑う。
まずは一つずつ出来ることを。
座っていたベッドから立ち上がり、大きく伸び。
比瑪にシャワー室の場所だけ聞き、医務室から出ていく。
歩きながら考えた。これから――自分は、何をすればいいのか。
比瑪はゆっくりと考えればいいと言ってくれたが、悠長なことは言ってられない状況だということは、バサラとて分かっている。
だからといって、初志を曲げるつもりもなかった。
あくまでバサラが目指すのは、己の歌で争いを止めること。
シャワー室の扉を開け、更衣室に入るやいなや汗のしみ込んだ服を脱ぎだす。
思いきりひねるとノズルから心地よい熱さの湯が勢いよく飛び出してきてバサラの身体を濡らしていく。
汗と一緒に、身体の中に溜まっていた不純物が流れ出ていくような感覚。
全身がクリアになる。すっきりとしたところで、今度はシャワーノズルを喉にあてる。
ゆっくりと喉を温めていく。必要以上の刺激は与えずに、丁寧に。
まず、バサラがしなければならないこと――それは当然、自分の声を取り戻すことだ。
喉を震わせるために大きく息を吸い、一旦肺に留める。
大丈夫だ。今までさんざんやってきたことだ。それこそ、呼吸するかのように、自然に。
やり方は体が覚えているはずなんだから、何も気負う必要はないんだと自分に言い聞かせる。
呼気が喉の奥から吐き出される。それが声帯を震わそうとするも――音の代わりに生じたのは、疼痛にも似た痺れ。
やはり、自分の声が元に戻ることはないのか? 一瞬、そんな不安に駆られる。
ぶんぶんと首を振り、嫌な考えを頭の中から追い出す。ここで止まってしまえば、さっきまでの自分と何も変わりはしない。
今度はさっきよりも小さな音になろうとも、繊細に、そして声を取り戻すという強い意志を込めて。

「……ぅ、あ……おれ、のうたを……」

――出せた。
今まで出そうとしても、意味のない音にしかならなかった自分の声が、再び自分のコントロール下に帰ってきた。
歌が、帰ってくる。
そのことがこの上なく嬉しく――頬を伝わる水滴が、少しだけ量を増していたのはバサラだけの秘密だ。

 ◇

「大丈夫かな、あいつ」
「大丈夫だよ、きっと」
バサラの去った医務室で、ガロードと比瑪はそんな話をする。
「バサラって……うん、ちょっとしか話してないけど、本当は頑張れる人だと思うもの。私たちはその手助けをするだけで十分さ」
「ふぅん……そっか、比瑪はあいつのこと、よく見えてるんだな。それに比べて、俺は……シャギアがどんな奴だったのか、よく分からなくなっちゃたんだ」

へへへ、と苦笑交じりに頭をかくガロード。
無理もないことだ。今のシャギアは、ガロードの知るシャギアとは大いに異なる。
時折見せる感情的な面は、確かにガロードたちと敵対したシャギア=フロストのもの。
しかし甲児たちとベタな漫才をするシャギアというものは――少なくとも、ガロードには想像できないものだった。

「ガロードがシャギアさんのことをよく知らなかったってこと? それとも、シャギアさんが変わっちゃったってこと?」
「それも分かんないな。元々、俺たちはそんなに仲が良かったわけじゃないし。俺が誤解してたのかもしれないし、比瑪たちがシャギアを変えたのかもしれない」
「私たちの前では、最初からあんな感じだったよ?」
「そうなのか。……じゃあやっぱり、俺が知らなかったのかもしれないな」

勿論、先ほど見せたニュータイプの呪縛から逃げ出せないシャギアを許すことはできない。
だが――本当は、その一点を除けば、フロスト兄弟と自分たちが敵対することはなかったのではないだろうか。
フロスト兄弟は悪である。その認識そのものが間違っていたのかもしれないと、今は自然とそう思える。
例えば、ティファが世界から拒絶され、迫害されるようなことになってしまえば――ガロードは、世界と戦うことに戸惑いはないだろう。
フロスト兄弟のそれも、同じような理由であるのかもしれない。どうすればいいのか分からず、戦う以外の道を選べなかったのかもしれない。
ならば、フロスト兄弟もまた、犠牲者なのだ。無為な争いのために運命を捻じ曲げられただけの。
しかし、それでも――フロスト兄弟の取った道は間違っている。それだけは正さなければいけない。

「ねぇ、ガロードは、依衣子さんと上手くやれてる?」

378 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:05:13 ID:bOvZTcfu
思考を遮る突然の質問に面食らう。
依衣子って誰だっけと一瞬戸惑うも、そういえばお姉さんの名前だとか比瑪が話してたなぁということを思い出す。
果たして自分とクインシィは上手くやれていると言えるんだろうか?
思い返してみると……毛布で縛られたり、ことあるごとに怒鳴られている記憶しか出てこないあたり、ガロードとクインシィの関係を物語っているような気もする。
だけど……クインシィが食べさせてくれたシチューは美味しかったし、お姉さんだって俺のことを信用してくれると言ってくれた。

「ま、まぁ仲良くやれてるとは思うけど……いきなり何なんだよ?」
「ん、ちょっとね。私、依衣子さんのこと知ってはいるけど……分かってはないんだよなぁって思ってさ」
「俺にとってのシャギアみたいだってことか?」
「そうなのかも。私の元からの仲間に、勇ってのがいるんだけど、依衣子さんは勇のお姉さんなのよね」
「ああ、それは聞いたな。お姉さんは勇を探してるって」
「勇がここにいるのかどうか、まだ分かんないけどさ。とにかく、私と依衣子さんの繋がりって、勇を通してでしかなくって……
 戦ったこともあるけど、それだけじゃ相手のことを分かることって難しいじゃない?」

ドキリとした。
戦うだけで相手のことを分かったつもりになる――自分がフロスト兄弟に対してしてきたことと、大して変わらないじゃないかと。

「だな。それだけじゃ分かんないってこと、俺も気づいた。……勇ってやつからは、お姉さんの話とか聞かなかったのかい?」
「勇はね、お姉さんのことだけじゃなくって、家族のことを話すのが好きじゃなかったから。一人だけオルファンを出て、オルファンと戦おうとしていたんだから」
「そっか……難しいなぁ」
「もっと仲良くしてほしいなぁと思うんだけどね。それでさ、勇には聞けなかったから、ガロードに聞こうかなって」
「俺がお姉さんのことを話すって?」
「うん。依衣子さんが起きてれば直接話すんだけど、起こしてしまうのも悪いじゃない。だからお願い」

なら仕方ないなと、ガロードはクインシィとの出会いから今までを話しだす。
時に冗談交じりに、時に真剣に語られるガロードの話を聞いていると、依衣子とガロードが良好な関係を築けているということが良く分かる。
私も依衣子さんと仲良くできたらなぁと、そんなことを思う。
気づけば結構な時間が過ぎている。時計を見てみると、針は10時を少し過ぎた頃を指していた。
今頃、テニアとオルバさんもどこかで誰かと仲良くなれていればいいなぁと、そんなことも考える比瑪だった。

 ◇

――助けて、兄さん

続いて襲いかかる、言い表しようのない虚無感。
返事をしろと何度念を送ろうとも、返ってくる念は永久に訪れない。
何故か。理由など、理解している。
だが、たとえ頭では分かっていても、心は納得してくれない。
更に強く念を送る。強く、もっと強く。

「応えろ……応えろオルバッ!」

声を張り上げいくら呼ぼうとも、既に意味など有りはしないのだと認めたくない。
心が必死に否定するそれを――しかし、聡明なシャギアの論理は、それは紛れもなく一つの事実なのだと受け止めている。

亡くしてしまったのだ。己の半身を。
病めるときも健やかなるときも、晴れの日も雨の日も、夏も冬も、常に共に在った唯一無二の存在を。

空虚が心を支配する。はははと、乾いた笑いがこぼれる。
身を引き裂かれるような痛みは、幻想などではない。
伝わるのだ。オルバから。
どれだけ辛く、寂しく、絶望したまま死んでいったのか――伝わってしまうのだ。

逝ってしまったオルバのために――自分が出来ることは、なんなのだろうか。




オルバを――生き返らせる。

379 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:06:19 ID:bOvZTcfu
当然のように考えたのは、それだった。
異形の甘言を受け、それに乗りかかる。優勝し、願いは勿論「オルバ=フロストを生き返らせる」だ。
冷静に考える。
今現在、シャギアはナデシコの全権を保持しているといっても過言ではない。
本来の艦長であった甲児はナデシコを離れた。ナデシコの力は、おそらくはこの場においてトップクラスのものだ。
この力を有用すれば――勝ち残りは、決して夢物語ではない。
ポイントとなるのは、同じく強力な戦力であるJアークとの交渉だろう。
オルバから伝わった情報。それは、交渉人ロジャー=スミスがナデシコとJアークの話し合いの場を設けるために奔走しているというものだ。
そして、その場所に出来る限りの反抗者たちを集め、結束の場にするつもりだということも聞いている。
もしJアークを中心に徒党を組まれてしまえば、ナデシコだけでは突破することも難しい。
だが――その会合の場において、ナデシコが決定的な裏切りをしてしまえば?
その場でJアークを奇襲で落とし――あとは、散り散りになるであろう他参加者を各個撃破していく。
目下の邪魔は、ナデシコに居座るガロードだが――チャンスならばいくらでもある。

だが……あの怪物が、素直に約束を守るだろうか?
願いを一つ叶えるなど、そんな不確定なものに踊らされるのは、シャギア=フロストの為すことではない。
更に言うならば、最後の一人になれたところで、無事に元の世界へ帰れるという保証さえないのだ。
ならばこのまま対主催の立場を貫くほうが、利口ではないだろうか?

理屈では、前者を選ぶべきだと分かっている。
だがそれでも決められない。何故か、心のどこかに引っかかる部分があるのだ。
どうしてこんな時に、甲児君の顔が思い浮かんでくるのか。
比瑪君が手渡してくれた御飯茶碗を思い出すのか。
何故、どうして。戸惑いは増していく。

そもそも――シャギアは、気づいていない。
いつの間にか自分が甲児たちのことを「駒」ではなく、「仲間」と呼び始めていたことに。
演技だけでなく、本当に自分が変わり始めていたということに気付かないままに――シャギアは一人、生まれて初めての孤独を感じていた。


【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:深い喪失感、孤独
 機体状態:EN55%、各部に損傷
 現在位置:B-1東部(ナデシコブリッジ)
 第一行動方針:首輪の解析を試みる
 第二行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第三行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。
 備考2:首輪を所持】

【ガロード・ラン 搭乗機体:なし
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:なし
 現在位置:B-1東部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:シャギアを見張る
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

380 :変わりゆくもの ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:07:05 ID:bOvZTcfu
【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
 機体状態:EN100%、ミサイル90%消耗
 現在位置:B-1東部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
 最終行動方針:主催者と話し合う
 備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容
 備考2:ナデシコ甲板に旧ザク・真ゲッター・ヴァイクラン係留中】

【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声に多大の影響あり
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:B-1東部(ナデシコシャワー室)
 第一行動方針:自分の歌を取り戻す
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積(小)、胸に裂傷(小)、ジャガー号のコックピット破損(中)※共に再生中
 現在位置:B-1東部(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている
 現在位置:B-1南西部(ナデシコ格納庫内)】

【旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:B-1南西部(ナデシコ甲板) 】

【二日目10:30】

381 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/18(日) 20:07:55 ID:bOvZTcfu
投下終了です。
延長してしまい申し訳ありませんでした。
誤字・脱字、矛盾点など見つけられましたらならご指摘くださいませ。

382 :それも名無しだ:2009/01/18(日) 20:30:21 ID:F+cAcGDW
イキマ「うおおおおおお!!!いいぞ、この流れはっ!!」
ヴィンデル「さあ!!お前も我々と共に来るのだぁぁぁぁ!!!」
シロッコ(……反応に困るが、何にせよ投下乙と言っておく)

383 :それも名無しだ:2009/01/18(日) 21:08:48 ID:5Ih9+XCf
投下乙!
あれ、バサラに出番があるぞwこれから活躍できるのかどうか
ヒメはまったくこのロワの癒しだなぁ
シャギアはどっちに転ぶのか・・ラミアって前例もあるしすんなり>>382通りにはいきそうにないぞw

シャギアの状態表だけど、>ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ) はもう削ってもいいんでは?
ディバリウムはもう修復不可能だろうし

384 :それも名無しだ:2009/01/18(日) 22:28:10 ID:urKejD99
投下GJ!
シャギアこの先どうなるんだろうな。
バサラやガロードがいるし、テニアに手を出そうとしたら比瑪が止めるだろうし。

ペガスと旧ザクの現在位置がB-1南西部になってますよ。
このままだとナデシコが医務室とブリッジはB-1東部なのに甲板と格納庫は南西部にあるという超巨大戦艦になってしまうw

385 :それも名無しだ:2009/01/18(日) 22:30:46 ID:INOjd13M
ゼオラ「あんな悪人面したうさん臭い人達にだまされちゃ駄目よ……」
リョウト「こっちだよ、こっち。君が歩む道はこっちにあるんだから」
冥王「ククク、生き残るならこの永遠に続く冥王坂を上り始めるのも手だ」
シロッコ(フ、認めたくないものだな。ロワゆえの過ちというものは。乙だ)

386 : ◆YYVYMNVZTk :2009/01/19(月) 03:49:02 ID:iIJlWzU6
感想ありがとうございますー
状態表の不備についてはwikiに収録後に修正しようと思います。指摘どうもでした。

387 :それも名無しだ:2009/01/19(月) 20:59:12 ID:og1fF2SH
避難所の◆Vv氏の没ネタをIFに収めようと思ったんだけど、タイトルない場合ってどうしたらいい?

388 :それも名無しだ:2009/01/19(月) 23:34:46 ID:iIJlWzU6
作者さんの反応がなければ「無題(IF41)」あたりが無難なんでなかろうか。
もし後からタイトルがつけられたとしても俺がページ名変えますんでそこらへんの心配はしなくて大丈夫。

389 :それも名無しだ:2009/01/20(火) 16:13:23 ID:NSiT9Slq
気付いたら、414KBもあるbな、これはもしかしたら次スレもそう遠くないかもしれない。

390 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/20(火) 22:05:03 ID:ianK9k04
ガウルン・統夜・ロジャー・ソシエを予約します。

391 :それも名無しだ:2009/01/20(火) 22:48:54 ID:VcsPe5qM
おおう……ネゴシエイターがピンチですね?w
執筆頑張ってください!
……しかし、本当最近の勢いは異常w

392 :それも名無しだ:2009/01/21(水) 16:45:29 ID:FHiDixIp
なん……だと?
また予約がきてる!? 書き手さんたちマジで頑張ってください!

393 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/22(木) 15:13:35 ID:S31kVZ5l
忙しい時期終わったんでJアーク組+カミーユ+テニア予約します

・・・って言いたいんですが、前4人が思いっきり自己リレーなんですけどもよろしいでしょうか?

394 :それも名無しだ:2009/01/22(木) 19:49:56 ID:nLo9/SMB
おお!また予約が。
本当に最近の速度は異常だw

自己リレーもある程度は大丈夫だと思いますよ。
テニアがこの面子相手にどうなるかかなり気になりますしw

395 :それも名無しだ:2009/01/22(木) 20:43:41 ID:CIDq3ggs
アムロを騙せるとは思えないが、テニアピンチ?

396 :それも名無しだ:2009/01/22(木) 20:53:56 ID:zwcKI99i
>>393
全然問題ないと思いますよ!

しかし本当に最近の加速はどうなってるんだw

397 :それも名無しだ:2009/01/23(金) 01:36:21 ID:jfW7GjDS
容量的に予約入ってる二話と感想でこのスレ使い切る感じかな。
誰か観察日誌の準備をよろしく。
ここ2、3スレ自分が書いてたので今回は他の人が書いたものを読んでみたいです。

398 :それも名無しだ:2009/01/23(金) 02:29:30 ID:LFxWiKeJ
予約がいっぱい……!
書き手さんたち執筆頑張ってー!
それなら観察日誌、次は俺が用意するわ。
あと80KBあるから二つとも投下されてから作り始めても間に合うよね?

399 :それも名無しだ:2009/01/23(金) 03:21:51 ID:lUo6ioBc
>>397
面白いIDだな
もしW7ならGJ!DS
はっ!これはスパロボKの主人公はアシェンという神のお告げだったんだよ!

>>398
感想考えても投下後で大丈夫じゃない。
80KBなら短い話だったら三話入る量だし。

400 :それも名無しだ:2009/01/23(金) 03:31:01 ID:p6l5V2mn
>>399
メンツ的にどう考えても短い話で終わりそうにはないがw
次スレ立てる人は>>372のテンプレ変更よろ

401 :それも名無しだ:2009/01/23(金) 21:38:20 ID:Iy4FEnZ4
地味に二次スパとスパがスレナンバーで並んでる件についてw


402 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/24(土) 15:12:01 ID:ZLDh63d5
ちょっと聞きたいんですが、一度に2話投下するっていうのはいいんでしょうか?
前編後編で分けようとしたんだけど、一話ずつ分割しないと時間が合わなくなってしまって

403 :それも名無しだ:2009/01/24(土) 15:31:07 ID:chpQXu1s
大丈夫じゃないでしょうか。
確か95話と96話が、一話にまとめようとしたけどまとめ切れずに二話同時投下になった事例だったと思いますし。

404 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/24(土) 15:57:59 ID:ZLDh63d5
ありがとうございます。
確認したところ同じような展開でしたので、分割で投下します。

405 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:11:26 ID:QijsaQ5F
一瞬、刃先が常闇の中に浮かび上がった。
咄嗟に腕が動き、鞘を盾に受け止める。高く澄んだ金属音が狭い通路に反響した。
続けて一閃二閃。
鞘を払う暇も余裕もなく、視神経を総動員して刃の動きを追う。
補給を行なった影響か。あるいは損傷の修復が進んだ影響か。動きが前よりも早く巧緻に長けている。
必死になって動きを追った。
四エリアに跨る広大な南部市街地。その下に網の目のように張り巡らされた地下道には、日の光も届かない。
刀身が鞘に触れたその瞬間だけ、カッと火花が飛び、互いの姿を浮かび上がらせていた。
圧し掛かり押し潰してくるかのような圧力。刃を防ぎつつ圧されてジリジリと後退していく。
場所が悪い。幾ら幅員60m高さ70mを超える広さとはいえ、所詮は通路。
40mを超えるヴァイサーガに換算してみれば、それは僅か人二人分のスペースでしかない。刀の取り回し一つにも苦労する。
対し自機の三分の一程度の大きさしかないマスターガンダムは、このスペースを遥かに有効に活用できる。
地の利がどちらにあるのかなど、明白。
気を抜けば見失いそうな刃を受け止める。それはクナイの型をした烈火刃の白刃。
人間換算すればヴァイサーガにとって15cm程度刃渡りしか持たないそれも、マスターガンダムにしてみれば刃渡り45cmの立派な脇差となる。
元々が投擲用で斬撃に向かない形状とはいえ、補給後に一本よこせと言ってきたこいつに渡すんじゃなかった、と後悔が頭を掠めた。
一つ。二つ。三つ。連続して火花が瞬き、両者が間合いを取る。
見失わなければ受けられる。ヴァイサーガはそういう機体だった。
ダイレクト・フィードバック・システムが思考を拾い、周囲の地形を考慮した上で最適なモーションを選び出す。
だから、見失わなければ受けられる。
そして見失わないだけの間合いの取り方は、ここまでの同行中『暇だから』と称してさんざっぱら襲い掛かられたお陰で身につき始めていた。
刃が閃く。外から内に侵入してくる横薙ぎの一閃。
鞘を縦に通路に突き立て、受け止める。そのまま膠着し、力勝負の押し合いの状態に縺れ込んだ。

「いいねぇ。やるようになったじゃねぇか。最初とは大違いだ」
「五月蝿い! 黙れッ!!」

二者の満身の力を引き受けることになった鞘と烈火刃がカタカタと小刻みに震え、音を立てていた。
ヴァイサーガの腕力なら押し切れる。そう思った瞬間に、圧が消えた。
マスターガンダムの手の甲で一回転した烈火刃が鞘の内側へするりと滑り込む。

「ならこれはどうする? クク……防いで見せろよ、統夜」

そして、圧の方向が変わった。外から内に向かっていた圧が、気づけば内から外へと向かっている。
鞘が外に弾かれ、ガードが抉じ開けられる。同時に懐に滑り込んでくる黒い影。
しまった、と自らの失態に気づいたときにはもう遅い。とんっと軽く腹部装甲に足裏が触れたと思った瞬間、押されて仰向けに倒された。
蹴られたわけではない。損傷を与えぬように優しく足の裏で押されたのだ。
咄嗟に起き上がろうとして、直に耳に響く濁音を聞く。
コックピットカバー越しに響いたその音は、ハッチを隔てた向こう側に足場を確保された音だ。
モニター見れば、ガウルンが烈火刃をコックピットに突きつけているのも分かる。
荒い呼吸を整えて一つ大きな息を吐き、コックピットを開け放った。

「……参った。降参だ」

汗だくの体で倒れたヴァイサーガの上に立ち、そう言うしかなかった。
どう考えてもヴァイサーガが体勢を立て直すのより相手の一撃がコックピットを貫く方が、早い。
ガウルンが機体から降り、歩み寄ってくる。

「やれやれ、軽はずみに褒めるもんじゃねぇな。もう少し相手の動きをよく見て先を読め。素直に受け止めすぎだ」
「……あんたが言えることかよ。暇って理由だけで隙も覗わずに襲い掛かってくるあんたに」
「俺か? おいおい、よく俺のことを見もしないで心外なことを。お前が気づいてないだけで俺はよぉく見てるぜ、統夜。
 クク……頭のてっぺんから爪先まで全身余すことなく、それこそお前の尻の穴の中までなぁ」


406 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:12:26 ID:QijsaQ5F
舌なめずりするその姿に生理的な嫌悪と身の危険を察知し、怖気が走る。危険。危険。危険。
さんざ分かっていたことだが、この男は危険。
そして同時に、そうやって圧されることのやばさも肌は敏感に感じ取っている。
気を呑まれるな。臆するな。弱気を見せれば瞬く間に喰われるぞ。
何故押し黙る? 口を開け。震えるな。睨み返せ。お前は何に腹を立てていた? この男の理不尽さにではないのか?
だったら、それを怒りに変えろ。意地でもいい。それを糧に反発し、反抗してみせろ。
ごくりと生唾を飲み下し、自分に言い聞かせる。ガウルンの顔を見据え、睨みつけた。

「おやおや、ご機嫌斜めなご様子で。だがそうやって俺のオモチャになっている内は、何をしても説得力に欠けるねぇ。
 分かるか? 手を組むときにああは言ったがなぁ。今のお前は殺す価値もない腑抜けたただの餓鬼だ。
 あのフェステニアとか言う嬢ちゃんの方がよっぽど、クク……殺しがいがある。お前、今あの嬢ちゃんと殺り合ったら殺されるぞ」
「そんなことッ!!」

抗議したその瞬間、襟首を掴まれて装甲板に引き摺り倒される。
ヴァイサーガの硬い装甲板に顔面から突っ込んで、蛙が潰れたような声が口から漏れた。
咄嗟に顔を持ち上げようとして、厚く硬い靴底の感触を後頭部に感じる。踏み潰され、再度顔面が装甲板にぶつかる。

「分からないって? 分かるさ。勘だがな。当るんだよ、こういう勘はな。だがなぁ、俺の獲物を横取りしようってんだ。
 それじゃあ困る。最低でも観客を沸かせるぐらいはしてもらわねぇとな」

頭の中で『殺される』という直感と『大丈夫だ。残り一桁までは殺されない』という理性が、喧嘩していた。
鼻頭が痛い。どろりした赤い液体が装甲板をぬらしている。

「いいか。お前はあの嬢ちゃんにいいように使われて、カモられてたんだよ」

俺が? テニアに? そうだ。そうだった。
ホンの一時間ほど前に芽生えた感情を思い出す。

「お優しい仲間だの信頼だのをちらつかせて、お前の力を骨の髄までしゃぶり尽くそうとしてたのさ」

そうだ。俺は偽者の主人公だった。彼女達が都合のいいように誂た、偽者の。

「言ってみろ。誰のせいでお前はこんな目にあっている?」

何故? どうして? 俺はこんな理不尽な扱いを受けている?
決まってる。あいつらだ。あいつらと――

「答えろよ、ほら。お前が今こうして苦しんでんのは、あの化け物に目をつけられる羽目になったのは、誰のせいだって聞いてんだ」

――こいつのせいだ。
明確な殺意を持ってそれを思った。踏みつけられたままの頭を渾身の力で持ち上げる。

「そうやって俺を見下して満足か? 満足なんだろうな、あんたは。でもそれは俺にとっちゃ屈辱なんだ。
殺してやる……殺してやる! テニアも、お前も、俺が必ず殺してやるッ!!」

そうして四つん這いの姿勢のまま目を剥き、下から睨み上げて言った。ガウルンの口元が獰猛に笑う。
その瞬間、再び力の込められた足に踏み潰されて、三度装甲板に頭が打ちつけられる。
きな臭い臭いが鼻から脳天に突きぬける。じっとりと粘っこい視線を背中に感じていた。
そのとき、上空を何かが通過していく音を聞いた。飛行場付近でよく耳にするジェット機が低空を飛行していくような、そんな音だ。
地下と空中。大地という遮蔽物の影響が、常よりも利きの悪いレーダーの性能を更に低下させているのだろう。
ヴァイサーガ、マスターガンダム共に接近を知らせる警告音はない。
踏みつけていた足がどいたので、そろりと立ち上がりながら視線だけでガウルンの表情を盗み見た。


407 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:13:34 ID:QijsaQ5F
 ◆

陽が昇って改めて目にするそこの光景は、悲惨な有様だった。
初めてロジャーが訪れたときこの場所は、人がいないという一点を除けばまだ普通の街だった。
パラダイムシティのドーム内にも劣らないほど大きく発展した市街地だった。
それが今はどうだ? 見る影もない。
高層ビルは倒れたドミノのように転がり、中には地割れに呑み込まれているものもある。
建物の多くは倒壊して崩れ去り、普段はコンクリートに包まれて見ることのない骨組みが無残にもその姿を晒していた。
通りはまだ火事の煙が抜けきらずに靄がかかったようになっており、焼け爛れた家屋がその左右に連なっている。
同じ廃墟でも長い年月をかけて風化したといった風情の中央廃墟とは大きく異なる。
ここには大地震を被災した直後の様な、まだ壊れて間もない生々しい傷跡が広がっていた。
中でも一際被害が激しいのが、息絶え無残にも死骸を晒している二首の竜の周辺だ。
そこは遠目でも分かるほど地形が窪んでいた。無敵戦艦ダイを中心にして大きな円状に広がる窪地。
高低差は100m弱と言ったところだろうか。まるで蟻地獄のように全てを地の底へ引きずり込んでいる。
最早何のものかも分からない破片が渇いた砂のように窪地を埋め尽くし、僅かに残った高層ビルがそこに突き刺さっている。
所々に見える穴は地下通路の穴だろう。それも大半は瓦礫の砂にふさがれていた。

「これ……私達がやったんだよね……」

その廃墟の街並みの上空に凰牙を走らせながら、周囲の惨状に目を向けていたロジャーは、その呟きにチラリと通信モニターを見やる。
何かを考えているのか、普段活発で勝気なこの少女には見られないどこか沈んだ顔がそこにはあった。

「気にすることはない。君の責任ではないさ」
「でもね、ロジャー。この街は元はちゃんとした綺麗な姿をしていて、私達が来て壊しちゃったのよ。
 私達が来たときには、もう人はいなかったけど。いろんな人が一生懸命になって建てて、笑ったり泣いたりしながら過ごしてたはずの場所。
 長い時間をかけてちょっとずつ手を入れてもらって、大事に大事にしてもらって、そうやって何代もの間、家族を守ってくはずだった場所。
 家ってそういう場所でしょ。それを私達は突然やってきて勝手に壊しちゃったのよ」
「だがここには最初から人はいなかった。人が暮らしていた痕跡が……」
「そうだとしても。本当は人がやってきて使ってもらえるのを待っていたんじゃないかしら」

不機嫌に割り込んできたソシエの様子に、眉を顰める。

「君は何が言いたい?」
「……別に」

その言葉を境に通信モニターのソシエがそっぽを向いた。
ソシエらしからぬこの様子は、市街地の惨状を突然戦火に見舞われた故郷に重ねたがゆえの感傷だった。
今のソシエの目には、眼下に広がる風景があの成人の日に焼かれた故郷のビシニティに、お父様を亡くしてしまったハイムのお屋敷に重なって見えてしまうのだ。
だが、そんなことが説明もなしに分かるはずもない。まして相手はロジャーである。
ビッグ・オーを呼ぶたびにビルやら、道路やら、街のインフラを破壊して登場させるこの男に理解を求めるというのが、土台無理な話なのである。
説明したとて理解を示すかどうかすら怪しい。
よって『何かよくわからないが、機嫌を損ねたことは確からしい』という程度が、ロジャーの見解だった。
やれやれとモニター越しに臍を曲げた少女の姿を一瞥して、そういえばと思い出す。
そういえばあれは、最初にここに向かっていたときのことだっただろうか。リリーナ嬢にも臍を曲げられた。
あのときも確かそっぽを向いてだんまりを決め込んだ彼女が、一切返事を寄越してくれなくなったのだ。
妙な可笑しさを感じて、悪いと思いつつも口元が緩むのを感じた。そこへ声が飛ぶ。

「ロジャー! 何にやけてるのよ。だらしがないわね」

その台詞を聞いて、いや違うな、と思った。もういつもの調子に戻っている。
こういう切り替えの早さと歯に衣着せぬ言葉使いにお転婆な態度は、リリーナ嬢にはなかった。
それぞれにそれぞれの良さがある。二人を混同して捉えるなど、両者に対して失礼というべきだろう。

「そうかな? すまない。以後気をつけるとしよう。それでどうした?」
「見つけたわよ」
「さて、ソシエお嬢様は何を見つけたのかな?」

少しからかってみたくなり、笑いながらまぜっかえす。


408 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:14:48 ID:QijsaQ5F
「飛行機よ。飛行機。あれでしょ? あなたのお知り合いが乗っていたって飛行機は」

そう言って示されたものに目を向けて真顔になる。
無敵戦艦ダイよりもやや西に、瓦礫にその頭を埋めるようにして遺棄されている戦闘機があった。
機首が折れ、右翼が引き裂かれ、尾翼も失われており機体表面を覆う装甲板も少なくない数が剥がれ落ちて、その内部を晒している。
二度と飛び立つことは適わない堕ちた戦闘機。以前目にしたときよりもさらに損傷の進んだ無残な姿。
だが、濃紺の機体色に黄色のアクセントを取り入れたそれは間違いなく目的の機体だった。

「YF-21に間違いない。ガイの機体だよ」
「無事だといいわね……わっ!!」

直接的ではないにせよYF-21を落した責任の一端を感じて神妙になりかけたソシエを見て、急に舵を切った。
未だどこにいるのか分からないが、通信モニターの映像からゴロンゴロンと転がる羽目になったのは分かる。

「ちょっと、何やってるのよ! 真面目に運転なさい!!」

頭をさすりながら飛んできた予想通りの怒鳴り声に、軽く笑う。

「そう、その調子だ。あれこれ考えて沈んでいるのよりもそうやって怒鳴っているほうが君らしい、と私は思う」
「どういう意味よ!」
「いいぞ。その調子だ」
「あ〜、馬鹿にして」
「では元気が出たところで一仕事頼むとしようか。私がYF-21を調べる間、コックピットに座っていて貰おうか」

凰牙を着地体勢に移しながら言った言葉に「座ってるって、それだけ?」と言葉が返る。

「いや、周囲の索敵をお願いしよう。ここは視界が悪いのでね。何が潜んでいるのか分かったものではない」
「分かった。敵を見つけたら教えたらいいのね。他には?」
「とりあえずは以上だ。そうそう、なるべくなら凰牙は動かさないで貰いたいな。
 下手に触られて壊されたのでは目も当てられない」
「失礼ね。私はこれでもミリシャで――」

そんなやり取りを続けながら凰牙をYF-21の近場へ。
半分埋没しながらも窪地に刺さり、高く伸びている高層ビルの瓦礫に足を降ろした。
総重量400tを超える重みを受けて瓦礫が軋みを上げ一瞬冷やりとしたが、それだけだった。
胸部に収まるコックピットのハッチを開け放ち、ソシエと入れ替わる。そのまま一人で地上へ。

「ロジャー!」

大声で呼ばれて振り返る。何かを投げる姿が見えて、何か黒い物が飛んでくる。
慌てて受け止めて確認してみれば、それはロジャーが外部から持ち込んだ時計型の通信機だった。
待ちかねていたかのように通信が繋がる。

「もう少し丁寧に扱ってもらいたいものだ。だが返していただけたのだ。この際文句はしまっておこう」
「私の物をどう扱おうと私の勝手じゃない。それに貸すだけよ。通信に必要だから一時的に返しただけなんですからね」

どうやらもう既にソシエの中ではすっかり彼女の物となっているらしい時計を腕につける。
いつ、どうやって、差し押さえられた物品を奪い返そうかと溜息を漏らしながらロジャーは、YF-21に向かって瓦礫の中を歩き始めた。

約15分後、YF-21のキャノピーから飛び降りるロジャーの姿があった。
一通り調べ終わって収穫はゼロ。ガイの行方に繋がる手がかりは何もない。
ただ遺体が無いという事は少なくともあの時ここでは死ななかったのだろう。
生きている。とりあえずはそれ満足したつもりになって、凰牙に戻ろうとしたその時通信が入った。

「ロジャー、そっちに向かって人が歩いてる」
「歩いて? 機体には乗っていないのか?」

僅かに眉を顰めて言う。その物言いに過敏に反応したソシエの声が返る。

「そうよ。どこにも機械人形の姿は見えませんもの」

409 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:16:12 ID:QijsaQ5F
おおよその位置を聞いた上で、これから交渉に入ること、待機していることを手短に伝えると通信を切った。
機体にも乗らず生身を晒して歩いている。そのことの意味を探る。
しかし、その答えが出るのよりも早く――

「よぉ、ネゴシエイター。クク……誰かと思ったらあんたかい」

その男はやって来た、慣れた足取りで瓦礫の海を乗り越えて。
オルバとテニアに会ったときとは違う。目が合ったときからこの男が放っている只ならぬ威圧感を感じた。

「前にどこかでお会いしたかな?」
「おいおい。あれだけ最初の場で目立っておきながらよく言うぜ。あんたを知らない奴のほうがここでは珍しい」

不安定な足場にも関わらず全く危なげのない所作で男は近づいてくる。
余りにも動きが慣れすぎている。そして、この廃墟の光景が余りにも似合いすぎていた。
それは味方にすれば頼もしいが、敵にすれば怖ろしい。念を入れるつもりで心中に身構える。

「なるほど。ここでは私は有名人というわけだ。それでどうやら私に会いにきたようだが、ご用件をお伺いしよう」
「何、大した用事じゃないんだがね」

男の視線が背後のYF-21へと注がれ、顎でしゃくる様にして指した。

「そいつに乗ってたパイロット――アキトの行方をあんたなら知ってるかと思ってね。それとまぁ情報交換と言ったところかな」
「アキト? ガイではないのか?」
「ガイ? そいつは知らねぇな。まっ、そいつでもいいか。そのガイって奴の居所を教えてくれ」
「ガイを探してどうするつもりだ?」
「別に。あんたにゃあ関係のない話さ」

あんたが気にかけることじゃない、という風に肩を竦めて見せた相手。
ガイの行方はこちらも気になることだったが、話にならない、と同じように肩を竦めて返す。

「ならば私も教える義理はないな」
「そりゃそうだ、と。まぁ、いい。で、ネゴシエイター、あんたは何だってこんなところに来たんだ?」
「それも答える義理はないな」
「おいおい、あんたが俺にしたのと同じ質問だぜ。俺が答えたんだ。あんたも答える義理があると思うがな」

懐からサングラス取り出しつつ「そうだったかな」と恍けた様子で返す。
さて、問題はこの男にJアークとナデシコの交渉について話すべきか否か、だ。
オルバとテニアには話した。だがそれは、二人がナデシコに関連する人物であるところが大きい。
その他に当るこの男に話すべきなのだろうか。
サングラス越しに男の様子を覗う。
どこか恍けた様子で薄い笑いを絶やさないこの男。身のこなしと漂わせている雰囲気から只者でないのは分かるが、どうにも評価を付け難い。
今、目にしている姿が虚なのか、実なのか、判別が付かない。かなりの曲者ということだろう。
交渉というのは、どの程度相手に信頼がおけるどうか、というのが大きく関わってくる。
その点においてえたいが知れないというのは、それだけで途方もないアドバンテージとなり得るのだ。
オルバよりもさらに場慣れしていると言える。
ではどうするか? このまま何食わぬ顔で情報を交換し交渉を終えるのか。あるいはこの男もあの場へと招くのか。
答えは決まっている。
受けた依頼の内容は『Jアークとナデシコの交渉の場を整えること』そして、『なるべく多くの者をその場へ集めること』だ。
ロジャー=スミス個人の判断が及ぶところではない。ゆえにこの男を例外にするわけにはいかなかった。

「実は今、場を整える依頼を引き受けている。ある場所へなるべく多くの者を集めるのが私の仕事だ」
「なるほど。それで人を探してここへ来たってわけか。残念だが、ここには俺しかいないぜ」
「なに、君も例外ではない。例え今あの化け物の言いなりになって人を殺めている者だろうと考える時間は必要だ。
 どのような諍いや因縁であれ、話し合いで解決できるのならばそれに越したことはない。その為の場だよ。だが――」

一度言葉を区切る。


410 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:17:03 ID:QijsaQ5F
「だが、その場に争いを持ち込もうとする者は、この私ロジャー=スミスの名にかけて許しはしない」

凄みを乗せた声で言い切る。覚悟と信念の入り混じった声。脅しではなく警告だった。
だがそれを風と受け流し、目の前の男は答える。微塵も気圧された感は覗えない。

「そいつぁ、怖いな。いいぜ。参加してやる。で、どこなんだ? その酔狂な集まりはよぉ」
「次の放送前にE-3地区にあるクレーター、そこへ来てもらいたい。ラクス=クラインという少女が眠る墓の前だ。行けば分かるだろう」

僅かな後悔を感じながら答える。
この男が本当に交渉するに値する人物だったのかどうか、スッキリしないものを感じていた。
だが一度口にした言葉をなかったことにするというのは、不可能だった。
何かの分野において一流の人物が一癖も二癖もある者である、ということは多い。
そしてそういう人物ほど自分という人間を隠すのに長けている。この男は果たして大当たりか。大外れか。
今はまだ判断が付かない。どちらともなく情報交換に移る。
交渉の時間は割り切れない気持ちを残しながら、一見穏やかに過ぎ去っていこうとしていた。


411 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:17:39 ID:QijsaQ5F
 ◇

あらかたの情報を交換し終えてガウルンは考える。
ロジャー=スミスが把握している人間の位置。行動目的。危険人物。目ぼしい情報は既に手に入れた。
代わりに与えた情報はというとギャリソンとか言う祖父さんを始めとする死人のものばかり。それと出鱈目だ。
とは言え全くの出鱈目ばかりでもない。
例えばカシムとミスリルの連中の情報だ。無論カシムはここにはいないが、奴がいればどういうスタンスで行動したのかは想像に難しくない。
他の連中にしたって同様だ。
現実の人物像を元に創り上げた偽の情報。それを最もらしく流してやった。
下手な情報よりも現実に矛盾が発生しない分だけ問題が起こりにくい。何しろ真偽の程が分からないのだ。
それを調べ、偽物だということを立証しようと思えば、生存者のほぼ全ての情報が必要となる。
残り人数が分からない以上、誰も知らないところで誰かが生き延びている可能性を、完全に否定することなど不可能。
それにしても面白いことになってきた、と思いつつ気づかれないようにそれとなく周囲の様子を覗う。
機体の姿以外、声も、姿もばれていない事に付け込んで情報を得ることに関しては、予想以上の成果を得た。
ならば後の関心は統夜がどう出てくるのか、だ。
念を入れてマスターガンダムこそ隠して来たものの、統夜の自由を奪うようなことはしていない。
何も言っておらず、制限もつけていない。
ついでに言えば、自分がどう動くつもりなのか、それすら告げていない。
その状況下でどう動いてくるのか、それなりに興味があった。
これ幸いと逃げ出すようなら興醒めもいいところだが、そんな腑抜けならば最初から興味を持つ自分ではない。
何らかの行動を起こすはずだ、と妙に確信づいていた。
それに自分が統夜の立場なら、これを機会と見て自分を襲うだろう。そうすればマスターガンダムを出さざる得なくなる。
そのマスターガンダムは、過去の交戦でネゴシエイターに見られている。上手く行けば交渉人を味方に付けられるという寸法だ。
二対一の多勢を生かして厄介な俺を葬り去り、同時にネゴシエイターに取り入る。後は機会を見て面白おかしく暴れてやればいい。
信用させて裏切り、ネゴシエイターの間抜け面を拝む。中々に魅力的だ。想像しただけで愉快になってくる。
自分ならばまず間違いなくそれを選択するだろう。そして今の自分もそれを望んでいる。
一対二となれば、今はまだ発展途上で役不足の統夜と言えど楽しめる。知らず笑みが漏れた。

「どうした? 何か可笑しいのかね」
「何にって……そりゃぁ――」

どうした、統夜。お前はこの機会を逃すほど間抜けではないのだろう? 何をぐずぐずしている?
見ているだけでは機は失われていく。時間も余裕もない。ならどうすればいい? 簡単だ。
この好機を生かしてみせろ。今すぐ。今すぐにだ。さあ。さあ! さあっ!! さあッッ!!! さあッッッ!!!!

「そりゃぁ、あんたにさ。他人の本性も見抜けないでよく交渉人が務まるものだ。なぁ、ネゴシエイター」

交渉人が眉を顰め気色ばむのとほぼ同時に、瓦礫の山が跳ね上がった。
舞い上がる瓦礫を身に纏い、中空で身を翻す濃紺の機体はヴァイサーガ。それが鞘を払う。
その光景を背にガウルンは、呆気に取られたロジャー=スミスを無視して、高々と右腕を天に掲げる。

「クク……ずいぶんと遅かったじゃないか、統夜。首を長ぁーくして待ってたぜぇ。
 どうした、ネゴシエイター。もっと楽しそうな顔をしろよ。楽しい楽しいパーティーの――始まりだ」

そして、指を弾く渇いた音が、辺りに妙に大きく木霊した。

「ククク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!!!!」


412 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:18:15 ID:QijsaQ5F
 ◇

地下道の天井をぶち抜き、折り重なる瓦礫の束を舞い散らしながら中空に躍り出たヴァイサーガ。
身を翻させつつ周囲の状況を確認して統夜は、歯噛みする。

――くそっ! 思ってた位置よりも大分遠い。

一度地上に生身で出て目測で二人の位置を確認していたとはいえ、利かないレーダーを頼りに入り組んだ地下道を移動してきたのだ。
増して、ヴァイサーガが移動できるほど大きな道はそれほどないときている。
思い通りの場所に出れなくてもそれは仕方がないと言えた。だが、それにしても遠すぎる。

――間に合うのか、この位置から。

入力するコードは風刃閃。五大剣の鞘を払い、空気を掻き乱す。
狙いは交渉人ロジャー=スミスとガウルン。この生身の二人を先制で叩き潰す。

「いや、間に合わせてみせる!!」

乱された空気が流れを変える。一方向に纏まり、円を描き、急速にその勢力を増していく。
そして、指向性を持った竜巻がその場に現出した。
吹き荒び渦を為す風の障壁が、瓦礫の折り重なる窪地に激突して全てを舞い上げるその刹那――

「こんのぉぉぉぉおおっっ!!!!」

――聞こえたのは女の声。逆回転の渦をぶつけられた風の渦が、相殺されて消え去る。
邪魔をしたのは、誰も乗っているはずのない隻腕の機体――騎士凰牙。
その残された右腕に誂られたタービンが高速回転を起こし、空気を掻き乱し、風刃閃と同レベルの竜巻を生み出した。
それは、GRAR特有のタービンを利用した波動龍神拳と呼称される技。
だが、そんなことは今更どうでもいい。防がれたのは残念だとは思うが、今更どうにもならないことだ。
それよりもあの機体に乗っていたのは誰だ? ガウルンの話だとあれは交渉人の機体のはずだ。
女の声。駄目だ、考えるな。今は忘れろ。忘れるんだ、紫雲統夜。頭を切り替えろ。
そう……聞こえたのは女の声。テニアと同年代か、それよりも若いくらいの。
視界の先でガウルンのマスターガンダムが動き始めている。だがそれよりも隻腕の機体に気を引かれていた。
乗り込んでいく交渉人の姿が見える。それを見て統夜は一つの結論に思い至った。

「ああ、なんだ。ハハ……そうか。そういうことか……俺だけじゃないんだ」

暗い呟きが空気を濁す。それは、憐れみの篭められた奇妙に湿度の高い声だった。

「ロジャー=スミス、あんたもその女に担がれてるんだな」


413 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:18:51 ID:QijsaQ5F
 ◇

天空の高みからは何者かが巻き起こした竜巻の激流が差し迫り、大地は隆起し瓦礫の中から何かが姿を現す。
その光景の最中、崩れる瓦礫の山に足を取られてロジャー=スミスは転がっていた。
転がりながら耳にしたのはガウルンの悦に入った笑い声。目にしたのは瓦礫を掻き分けて現れた機体。
逆回転の渦がぶつかり、地表寸前で迫る竜巻が消える。
だが、今のロジャーにそれは見えていなかった。
彼の目に映っていたのは唯一つ漆黒の体を持つ小型機――マスターガンダム。
その機体は目にしたことがあった。
そう、それはJアークとの交渉の邪魔をし、辺りを混戦へと引き摺り込んだ機体。

「ざまあねえなぁ、ネゴシエイター。易々と人を信じるからそういうことになるんだよ」
「貴様ッ!!」

乗り込むガウルンが見えて思わず気色ばんだ瞬間、少女の声が鼓膜を揺らした。

「何やってるのよ、ロジャー! 早く乗りなさい!!」

その声に現実に引き戻される。
凰牙が、腕を伸ばし、地面を転がる球をグローブで掬い上げるようにしてロジャーを足場ごと掬い上げた。
だが、その上方から矢のように大型機が迫っている。思わず「上だ!!」と叫んだその瞬間――

「おいおいおいおいおいおい。何をぐずぐずしてやがる。さっさと乗りこみな、交渉人。
 機体にも乗ってないあんたを殺しても何の楽しみにもなりゃしねぇ」

――大型機の一撃をガウルンが受け止めた。
その隙を突いて距離を開ける凰牙。そのコックピットへロジャーは滑り込み、ソシエと目が合った。

「まったくその足で無茶をするものだ。だが、ここからは私に任せてもらおう」
「偉そうなことばかり言ってないで、お礼を言いなさい! お礼を!!」
「……そうだな。すまない。助かった。礼を言わせていただこう。そして――」

操縦が入れ替わり、凰牙の動きが変わる。上空の二機を見据えて力強く大地に仁王つ。
そして、その中でロジャーは喉を震わせ、あらん限りの声を振り絞りいつもの台詞をいつもの調子で叫んだ。

「チンピラが……私の忍耐にも限度というものがある。覚悟していただこう。
 騎士凰牙、アアァァァァァァクションッッッッッッ!!!!!!!!!」
「五月蝿い!! 耳元で怒鳴るなぁ!!!!」


414 :交錯線 ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:20:07 ID:QijsaQ5F
 ◇

風を切る刃が縦横無尽に駆け巡り、唸りを上げ、一拍後には重音が奏でられる。
高く、低く、重く、軽やかに一音一音違うその音が一つ、二つ、三つ続けざまに鳴り響き、そして唐突に消えた。
一瞬の静寂。
それを突き破り、猛然とした勢いでヴァイサーガの五大剣が振り下ろされる。
受けた烈火刃との間で、これまで以上に重く、大きな金属音が響いた。

「何でだ? 何であんたが邪魔をする?」
「邪魔? おいおい、邪魔をしてるのはどっちだい。何の歯ごたえもない状態の奴を倒しても、クク……つまらないだけだからな」
「駄目なんだよ。ああいう女は殺さないと駄目なんだ。生かしておいたらいけないんだ。
 それを俺に気づかせてくれたのはあんただろ? そのあんたが邪魔をするっていうなら、まずあんたからっ!!」
「倒すってか? やってみな。応援するぜ。ハハハハハハハハハッッ!!!!!!」

鍔迫り合いの状態から二者が同時に刃を上方へ跳ね上げる。そして、左右にパッと飛び退いた。
一拍遅れて、空いた空間を竜巻の渦が駆け抜ける。

――くそッ!! 動き出したのか。

ガウルンの邪魔立てのせいで間に合わなかった。
そう思う間に、マスターガンダムはもう動いている。天から地へ、猛然とした勢いで凰牙に差し迫る姿が見えた。
軸を重ね、ネゴシエイターとガウルン両方を狙える位置へ。上空から狙い済まし、烈火刃の束を投擲。
反応示す眼下の二機。左に飛んで交わす交渉人。それに追随するようにガウルンも避け、追いすがる。
烈火刃の起こす爆発を後方へ置き去りにして格闘戦へと移行した二機が、縺れ合い、絡まり合った。
そこ目掛けて、上空から雷の如く突撃を開始する。しかし飛び込んだときには既に、二つに分かれてそこにはいない。
風を切る音に刃を翳す。強烈な蹴りが統夜を襲い、受けた刀身に火花が散る。マスターガンダムの黒い体躯が視界を掠めた。
踏み込み一太刀返したときには、既にガウルンの姿はそこにはない。
蹴りを入れたそのままの勢いで脇をすり抜けて、もう交渉人に襲い掛かっている。振り向き様に烈火刃を投擲した。
背中に目でも付いているのか、それを跳ねてかわし、上方から交渉人の懐へと襲い掛かるガウルン。
意図せずして前方の烈火刃、上方のガウルンと二方向からの攻撃に晒されることとなった凰牙が身構える。
半身になって刃を避け、右腕のタービンでガウルンの蹴りを弾く。どれ程の高速で回転しているのか、激しい火花が散った。
その瞬間に、ヴァイサーガは地を蹴っていた。弾かれたガウルンが空中で体勢を整えるのが見える。
身を翻し軽やかに地上へと着地。その着地際を狙って刃を振るう。しかし――

「悪くはないが、まだ甘いな」
「チッ!!」

――金属が金属を弾く重音。五大剣の刃が烈火刃に止められた。
つくづくこの男に渡すんではなかったと思った瞬間、荒々しい風を肌に感じる。唸りを上げるモーター音と共に、渦を巻き吹き荒ぶ風が真横から。
マスターガンダムも、ヴァイサーガも、弾かれたように飛び下がった瞬間、その場の地面が竜巻に抉られ瓦礫が宙に舞う。

「君は悪戯に戦場を掻き乱して何をしている? 一体どちらの味方だ!!」

着地と同時に通信が一つ。見るとそこには交渉人の顔。
冷めた目でそれを一瞥し、動き回る二者の動向に視線を戻す。響く声に口だけで返した。

「あんたもおめでたいな。まだその女に踊らされてるって気がつかないのか?」


415 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 02:29:12 ID:yH0KGeYP
さるさんにひっかかりましたので、続きの方は避難所に投下させていただきました。
どなたか代理投下よろしくお願いいたします。

416 :代理投下:2009/01/25(日) 03:24:37 ID:QfTVrDjr
 ◇

奇しくも隻腕の機体三機が奏でる喧騒の中、眉間に皺がよるのをロジャー=スミスは感じた。
言葉を発した少年の口元が、不気味に笑う。

「何? それは一体どういう――」
「どおぉいう意味よ!!!」

問いただそうとしたその瞬間、責め立てるソシエの怒声がコックピットを劈いた。
しかし、それを鼻で笑った少年が一方的に通信を打ち切って、砂嵐の向こうへと消えていった。
当然、それで収まりが付くはずもなく、余計に腹を立てたソシエが――

「こら! 逃げるなぁ!! きちんと説明して行きなさいよ!!!」

――等とモニターに掴みかからんばかりの勢いで喚き散らした。
耳元で怒鳴るなと言ったのは一体誰だったか、等と思いながらキンと高く響く耳鳴りに耐える。

「君の知り合いか?」
「知らないわよ、あんな奴!!」

即答で返される。

「しかし、向こうは君を知っている風だったぞ。よく思い出したまえ。
 それに彼の言葉を真に受けるなら、彼は君にかどわされたということに――」

瞬間、少女の小鼻が僅かに広がり、脳天を突き抜ける衝撃がそれに続いた。

「殴るわよ!」
「……もう殴っているではないか」

と、呟いた瞬間、警告を示すアラートが鳴り響き、激震がコックピット揺らした。
烈火刃の爆発を受けてぐらついた凰牙の上半身を立て直しながら「ちょっと、しっかりしなさいよ」と怒鳴る声を聞く。
誰のせいだ、と思いつつ追撃を防ぎながら損傷箇所をチェック。被害は軽微。問題はない。
だがこのままでは分が悪い。
三つ巴はともかくとして、ソシエが乗っている。凰牙は一人乗りだ。彼女の体を固定するスペースは何処にもない。
そして、彼女はアンドロイドのドロシーとは違い生身の人間。
下手に戦闘にでも突入すれば、反動でコックピットの内壁に頭をぶつけた結果首の骨を折るなどということにもなりかねない。

「チンピラが……いずれこのツケは払っていただく」
「逃げるの? 逃げずに戦いなさい。敵は目の前でしょ」

無視を決め込んでギア・コマンダーのダイヤルを回す。
多量のエネルギーを消費する技は、通常補給が不可能な凰牙には致命的だが、この際仕方がない。
選んだコマンドの名は、閃光雷刃撃。
コマンド入力を受けて凰牙のタービンが高速で回転を始め、唸りを上げていく。
やがてそこに生じた雷の閃光は瞬く間に大きくなり、雷鳴を轟かせて広範囲に炸裂した。

417 :代理投下:2009/01/25(日) 03:25:25 ID:QfTVrDjr
 ◇

空気が膨張し、雷が爆ぜたかのような轟音が轟く。稲妻と稲光が窪地の底を広域に渡って駆け抜ける。
一拍遅れて衝撃の波が瓦礫の山を巻き上げながら伝播し、立ち込める煙が窪地を覆い隠した。
そんな中、その粉塵の濃淡をガウルンは注意深く観察する。
揺らめく陽炎のように何かが一瞬動いた、と思った瞬間にはもう烈火刃を投げている。僅かな爆音が鼓膜に届く。
命中。それを確信し、その場へ。
しかし、既に標的は姿をくらませその場にはいなかった。

「やれやれ、ふられちまったか……全くお寒いねぇ」

さてと、これからどうするかな。このままネゴシエイターを追いかける。
それも悪くはないが、手にした情報は多い。間抜けな交渉人お陰で選択肢の幅は広がっている。
さし当って有力な選択肢は二、三というところか。
ネゴシエイターの後を付け、奴の交渉相手を次々と潰して行く。交渉現場に介入するのも面白い。
まぁそれは成り行き次第、一番美味しくいただけるタイミングで喰えればそれでいい。
このまま予定通りG-6基地に行くのも有りだ。フェステニアの嬢ちゃんがそこへ向かったことが、判明している。
それはそれで面白い。
そして、最後の選択肢は、奴らの会談場所――E-3地区にあるクレーターへの直行だ。
こちらが探すことなく獲物が集まってくる場所。会談までの時間はまだあるが、先回りしてパーティー会場を整えておくのも悪くない。
ラクスとか言う嬢ちゃんの墓があると言っていたか? そこを奴らの目の前で壊すのは、中々に楽しそうだ。
だがまぁ辛いのはそれが同時に成り立たないことだ。どれか一つを選び、残りは切り捨てなければならない。
さてどうしたものか、とそんなことを考えている内に、立ち込めていた煙が晴れる。
煙幕から出てくる者を狙い撃ちにしようとでも思ったのだろう。上空にはヴァイサーガの姿が確認できた。
ネゴシエイターに逃げられたのは同じらしく、眼下を見下ろし佇んでいる。これ以上戦闘を続ける気もないようだ。
それを見て何となくガウルンは決めた。こいつに決めさせてやろう、と。
フェステニアの嬢ちゃんの情報を伏せれば、どれを統夜が選択するかは分からないが、どれを選んでも十分に楽しめる。
他の提案をしてくるかもしれないが、それが魅力的であればそれはそれで構わない。
ならば、選択を他人に任せてみるのも一興ではないか、と舌なめずりしながらガウルンは思い、統夜に声をかけた。

 ◆

市街地の地下に張り巡らされた通路に、不機嫌そうなソシエの声が木霊する。

「で、これからどうする気よ?」
「ガイの足取りが掴めなかった以上、とりあえずはナデシコの足取りを追う。
 あの時のナデシコの離脱方向は南西だったと思うが、Jアーク側ではどう確認している」
「えっと、Jアークの進路が北で左後方に遠ざかって行ったから……多分当ってると思う」
「では決まりだな。このまま南西に直進。壁を越えて北東市街地まで探索をつづけるとしよう」

そう言ったロジャーの様子は、どこかがおかしい。
常に背筋をピンと伸ばして、姿勢よくキビキビと動くこの男の足元が、覚束ない。

「ロジャー? どうしたの?」
「すまないが、凰牙の操縦を代わってくれ。少し休ませて貰おう。それと出来るだけ手早く地下は抜けていただきたいものだ」

言うが早いか操縦席からずり落ち、男は壁に背を預けて座り込む。
入れ替わりに操縦席に身を落ち着けさせたソシエは、ちらりとロジャーを盗み見る。
思えば、この男は丸一日近い時間ずっと凰牙を動かし、寝ずに活動を続けてきたのだ。
疲労は無理もないと言える。相羽シンヤとの戦いで手傷も負っていた。
だが、実は地下という空間が最もロジャーの精神を圧迫しているなどということは、ソシエには知る由もないことだった。
溜息一つ残して自分が頑張らなければ、と気合を入れなおす。
そんなソシエの目の前を動物型の機械人形――電子の聖獣が一頭、呑気に通り過ぎていった。

「あっ! ブタだ」

418 :代理投下:2009/01/25(日) 03:27:30 ID:QfTVrDjr
【ロジャー・スミス 搭乗機体:なし
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:なし
 現在位置:D-7南西部(地下通路)
 第一行動方針:休憩
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考2:念のためハイパーデンドー電池四本(補給二回分)携帯】

【ソシエ・ハイム 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN10%
 現在位置:D-7南西部(地下通路)
 第一行動方針:ブタ?
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:新しい機体が欲しい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)とワイヤーフック内臓の腕時計型通信機を所持】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労中、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部破損、左腕消失、マント消失
      DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備
      右拳部損傷中、全身の装甲にダメージ EN90%
 現在位置:D-7 市街地
 第一行動方針:統夜に興味。育てばいずれは……?
 第二行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第三行動方針:皆殺し
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:疲労中、マーダー化
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数
      EN80%、烈火刃残弾ゼロ
 現在位置:D-7市街地
 第一行動方針:基地へ移動
 第二行動方針:テニアの殺害
 最終行動方針:優勝と生還】

【二日目10:30】

419 :それも名無しだ:2009/01/25(日) 03:44:18 ID:QfTVrDjr
投下GJ!
統夜がいい感じに堕ちててニマニマしてしまうw
そしてガウルン組は色々と情報を得たか……今後どう動くのか楽しみだ。
ロジャーはまたもや選択が裏目に出そうだなぁw
んまぁ交渉の材料となる情報が少ないことと受けた依頼の内容を考えれば今回の結果も已む無しといったところかな?
迫力ある戦闘描写とキャラの魅力を活かす台詞回しの上手さは7v氏の素晴らしい長所だよなぁと毎度思ってます、はい。

420 :それも名無しだ:2009/01/25(日) 04:28:53 ID:dATht+Qv
投下乙!
ロジャー、また余計なことをw
凰牙って電童みたいに二人乗りじゃないんだな。そりゃ戦えないか
マーダーコンビはどこ行くのかいろいろ幅が広がったな

>>412 >それは、GRAR特有のタービンを利用した波動龍神拳と呼称される技。
GEARだよね?

421 :それも名無しだ:2009/01/25(日) 04:42:20 ID:56IsxBNC
ロジャーとソシエは和むなあw
本当、ガウルンは活き活きしてるし

ガトリングボア登場フラグktkr?

422 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/01/25(日) 22:54:11 ID:m3/WMHB7
感想ありがとうございました。
ご指摘いただいた点と他何点か修正のほう失礼します。

>>412
×それは、GRAR特有のタービンを利用した波動龍神拳と呼称される技。
○それは、GEAR特有のタービンを利用した波動龍神拳と呼称される技。

>>417
×「では決まりだな。このまま南西に直進。壁を越えて北東市街地まで探索をつづけるとしよう」
○「では決まりだな。このまま南西に直進。壁を越えて北西市街地まで探索をつづけるとしよう」

>>418 状態表を以下に差し替え
【ロジャー・スミス 搭乗機体:なし
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:なし
 現在位置:D-7南西部(地下通路)
 第一行動方針:休憩
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
 備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持】

【ソシエ・ハイム 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN10%
 現在位置:D-7南西部(地下通路)
 第一行動方針:ブタ?
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:新しい機体が欲しい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)を所持
 備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考4:ハイパーデンドー電池四本(補給二回分)携帯】】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労中、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部破損、左腕消失、マント消失
      DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備
      右拳部損傷中、全身の装甲にダメージ EN90%
 現在位置:D-7 市街地
 第一行動方針:統夜に興味。育てばいずれは……?
 第二行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第三行動方針:皆殺し
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:疲労中、マーダー化
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数
      EN80%
 現在位置:D-7市街地
 第一行動方針:基地へ移動
 第二行動方針:テニアの殺害
 最終行動方針:優勝と生還】

423 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 03:47:19 ID:PJvHOFAI
修正乙です

あれ、凰牙EN10%であと二回しか補給できないってやばくねww

424 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 08:01:49 ID:wNU66p10
ボアか。
契約条件創造って誰がいけるかな?
アインスケやユーゼスしか思いつかないんだがw

425 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 11:05:30 ID:EY2wSceG
蛇なら、自信だからロジャーでもいけそうだがボアはむずいなあw

426 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 12:47:20 ID:a1ScVzUl
ロジャーが交渉を始めるんじゃないか
そして言葉の通じなさに失望して君は交渉に値する相手ではなかったと完全決裂w

427 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 15:13:57 ID:oFtYsw0v
何を言う、ソシエお嬢様は和みの創造者じゃないかw

428 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 15:44:54 ID:PJvHOFAI
◆7vhi1CrLM6氏投下&修正乙です
ロジャーがまたとんでもないことをw

で、八割ほど書きあげて明日には多分投下できるんですが、今の時点で50kb越えてるんで容量足りませんよね?
観察日誌のこと考えて一話だけ今日投下するか、新スレ立ってから両方投下するかどっちがいいでしょうか?

429 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 16:18:45 ID:EY2wSceG
現在460kにまで達してますし、次スレ立てて、それから投下したほうがいいんじゃないでしょうか?
スレ立てやってみます

430 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 16:36:42 ID:fnStEbjF
途中で規制が入る可能性も高くなるだろうし、分割して投下出来る内容なら今日と明日の二回に分けたほうがいいんでないかな。
観察日誌書くと言ってた人ですが、まだ手をつけてないっすごめんなさい。
今日中には仕上げますので御勘弁をーorz

431 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 16:42:41 ID:EY2wSceG
・・・・すいません。無理でした。
あと40kなので、30k以下ならば、今日こちらに投下しても問題ないと思います。
分割しても問題はないかと。

432 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:51:03 ID:O/FQN5Ml
無人の空をバルキリー――VF-22Sが往く。
胸の中には言葉にできない想いが渦巻いている。だが、それを吐き出す相手がいない。
カミーユ・ビダンは一人だった。
思えばここに来てから一人でいることは少なかった。
最初に遭遇した人物はひどく好戦的で、追い詰められたところをゼクス・マーキスに助けられた。
その後マサキ、カズイと出会い、ブンドルという男とすれ違い。
そしてベガと、ユーゼスと、そしてキョウスケと巡り逢った。
信頼していたクワトロ――否、シャア・アズナブルももういない。
孤立無援の状況で、それでも少年は諦めてはいなかった。
キョウスケから託された役目を果たすこと。ユーゼスやアキトといった戦いを拡げるものを討つこと。そして生きて帰ることを。

しかしそんな意気込みとは裏腹に、心身に蓄積した疲労は無視できないものだった。
殺し合いという常ならぬ事態の空気が、戦闘の緊張が、過大なストレスが。重しとなって体を蝕む。
基地を離脱した時からフルスロットルでバルキリーを操縦し続けていたカミーユの意識は限界に達しようとしていた。
目に入っているはずの計器が示す数値を認識できない。ガクンと、震動。
ジェネレーターが過熱、機体保持のためAIがリミッターをかけ出力が一気に落ちる。
立て直そうとした時には既に遅く、VF-22Sは森林地帯へと落下していった。
震える視界の中、全力で逆噴射をかける。
衝撃。
減速は成功したようだ。地表に落着、勢いのままに木々をなぎ倒すVF-22S。
シェイカーのように攪拌されたそのコックピットで、カミーユの意識は既になく。
森は再び、静寂で満たされた。



433 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:52:06 ID:O/FQN5Ml
          □


「あー、お腹空いたなー。もうお昼ご飯の時間かぁ……。ナデシコに行けば食べるものあるかなぁ」

G-3、森林地帯。
オルバを生贄に捧げ基地からまんまと脱出したフェステニア・ミューズはナデシコと合流すべく一路北へ急いでいた。
思い出す、あの狂った男。あんな危険人物が基地にいることは予想外だったが、おかげで労せずオルバ・フロストを始末できた。
当面の障害を排除できたとはいえ、優勝を達成するにはあの男をも排除する必要がある。
だが、一度戦った手ごたえからして、あの男は強い。本来自分が戦闘に向いてはいないということを差し引いても、単機では勝てる気がしない。
命などいらないと思わせる高速機動、空を覆うほど強大なディバリウムの攻撃を耐え抜く装甲。そしてこのベルゲルミルを遥かに超える再生能力。
あれを排除するためにも、ナデシコとの合流は急務。だが、彼らはオルバがいないことを疑問に思うだろう。
唯一こちらを疑っているかもしれないシャギア・フロストの存在が気がかりだが、言いくるめる案はあった。
このベルゲルミルの損傷を見れば、エネルギー兵装しか持たないディバリウム、つまりオルバとテニアが戦ったわけではないというのはすぐにわかる。
基地にとんでもない化け物がいる。オルバはテニアを逃がすために基地に残った。
まだ生きているはず、助けに行くべきだ――そんなシナリオを思い描く。
兜甲児と宇都宮比瑪は賛同するだろう。あの二人は単純というか、助けを求める手を振り払えないタイプだ。
シャギアとて弟の生死が不明であるならどうあっても助けに行こうとするだろう。
ロジャー・スミスに騙し討ちされたというのも考えた。
だが、もし実際に立ち会えばテニアはあの弁の立つ男にあっさりと論破され、窮地に陥ることは想像に難くない。
その点、あの狂った男なら問題ない。釈明どころか、そもそも話が通じないのだから。

ひとまずの方針をまとめ、周辺を見回す。
狙撃を警戒して低空を飛んでいるものの、この辺りに人はいないように思える。
これならスピードを出しても問題ないと判断し、上昇。
出力を上げようとしたところで、緑のカーペットが尾を引くように無残に引き裂かれているのが目に入った。
どうやら何かが墜落したらしい。ここで戦闘があったのだろうかと、テニアはベルゲルミルをその墜落現場まで移動させた。

「……嘘。嘘だ。どうして……」

そこに鎮座するはVF-22S・Sボーゲル2F。人類が銀河にまで生活圏を広げた世界で、とある天才が駆った最新鋭機。
見覚えがある。そう、この手で殺した親友、カティア・グリニャールに支給された機体。
そういえば破壊してはいなかったのだ。放置されていたそれを発見した誰かが使ってもおかしくはない――なら、誰が乗っている?
まさか、と顔が強張る。まさかカティアが?
彼女の名前は放送で呼ばれた。そんなはずはない、有り得ないと必死に自分に言い聞かせる。
VF-22Sに動きはない。墜落したと思わしき現場の状況から、おそらく気絶しているのだろう。あるいは、機体を捨てたか。
パイロットが乗っているのか、それとも無人なのかはこの位置からでは分からない。もっと接近しなければ。
これが違う機体であったなら、テニアは深く考えずに破壊しただろう。
だが、もし彼女が、カティアが生きているのだとしたら。撃てばもう一度、彼女を殺すことになる。
覚悟は決めたとはいえ辛くないわけはない。どんなときもメルアと三人、支え合って生きてきた大切な友達――家族だったのだから。
だから、確認しよう。テニアはそう決めた。
誰が乗っているか確認して、知らない誰かだったら利用する。知っている誰かだったら殺す。
そしてもし、乗っているのがカティアだったら――


        やっぱり、もう一度殺そう。

434 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:53:29 ID:O/FQN5Ml


結論から言えば、パイロットはカティアではなかった。
コンソールに突っ伏すように気を失っていたのは見知らぬ少年だった。おそらく、統夜と同年代。
外傷は特にないことから、地面に激突した衝撃で気絶したのだろうとテニアは推測した。
とりあえずコックピットから下ろし、横たえる。念のため少年のズボンからベルトを引き抜き、両手をきつく縛る。
次に支給された水を取りだし、蓋を開け豪快に少年の顔にぶちまけた。

「……ッ、ううっ……」

呻き声とともに、少年がよろよろと身を起こす。
軽く頭を振り、濡れた顔を拭こうとして、拘束された腕に気付く。
黙ってそれを見ていたテニアは、どこか安心したような、それでいて淋しいような気持ちを隠して話しかける。

「気がついた?」



「……ありがとうございます、テニアさん。助かりました」
「テニアでいいよ。カミーユ、か。女の子みたいな名前だね」

目覚めた少年と自己紹介を交わす。
テニアの言葉に少年――カミーユは軽く眉を顰めたが、それには触れず固められた腕を掲げる。

「警戒するのはわかるが、俺は戦いに乗っていない。これを解いてほしいんだが」
「そんなこと口で言われても信用なんかできないよ。アタシの質問に答えてくれたら考えてあげる」

カミーユはテニアを睨みつけるも、息をついて先を促す。ひとまず主導権は握れたようだ。

「わかった。何を聞きたいんだ?」
「とりあえず、そうだね。今まで会った人のことかな。あと、仲間がいるかどうか」

テニアにカミーユとの面識はなかったが、知り合いの中には接点を持った者がいるのかもしれない。
カミーユは存外素直に喋りだした。

「…アタシの知っている人はいないね。仲間もいない、か」

羅列された名前の中にはテニアの知る名はない。そして大半が既に死亡、残りは戦いに乗っている。
苦い顔で呟かれたユーゼスとアキトという名の男のことは注意を払う必要がある。
どうやら彼はナデシコやJアークといった集団のことも知らないようだ。

「じゃあ、次は君の番だ。俺は仲間を集めたいんだが……そう、集団になっている人達を知らないか?
 Mr.ネゴシエイターと呼ばれていた人のことでもいい」
「……知らない。アタシが会った人は、もうみんな死んじゃったから」

(こいつもロジャー・スミスか。どこまでアタシを苦しめるのよ、あのカラス野郎……)

またもあの交渉人の名を聞き、イラつきが胸を満たす。
Jアークの面々はテニアを警戒しているだろう。
ロジャーとて先の交渉の場では中立を宣言していたが、それとてこちらを安心させるためのブラフに思える。
あいつは今この瞬間にも、テニアの悪評を振れ回っているかもしれないのだ。
この少年とロジャーを接触させるのは危険だと、カミーユを殺そうと決める。
基地の男を倒すには人手はあった方がいいのはわかっている。それでも、テニアはここでカミーユを逃がす気はなかった。

(アタシにカティアを思い出させたんだ。その機体といっしょに、跡形もなく粉々にしてやる)

腕を縛ったとはいえ、体格で勝るカミーユと素手でやり合って勝てるとは思えない。まして、おそらく警戒されているだろうから。
なら、安心させて背中から撃つ。
信頼した相手に撃たれる絶望はどれほどのものだろうか。カティアを殺した自分には、ためらう理由になどなり得ないが。

435 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:55:12 ID:O/FQN5Ml
カミーユの腕を解放する。彼は腕をさすりながら、

「ありがとう。……ところで、他に聞きたいことがある。さっき仲間が死んだって言ったが、危険人物に心当たりがあるなら教えてくれないか?」

と言った。すぐに殺すのだから意味はないと思ったが、鬱憤を吐き出す捌け口にはなると思い直す。

「……Jアークって言う戦艦。キラってやつとソシエってやつ。あいつら、最初は協力しようって言ってきて、でも……騙されて、武蔵っていう仲間が殺されたんだ」
「戦艦? そんな強い力を持ってるのに、どうして……くそっ!」

吐き捨てるカミーユの顔には確かな怒りがあった。
さっきの情報交換の時の様子からして、カミーユは戦いに乗った者を積極的に倒そうとしているらしい。
利用したいところではあったが、この分ではテニアの行いを知れば即座に銃を向けてくるだろう。

「それに、基地だね。なんかとんでもない化け物がいて、仲間が……殺されたんだ」

それを聞いたカミーユの顔から一切の表情が消え、「そうか」とだけ言った。
この反応は気になったものの、そろそろ移動しなければナデシコと合流し損なう。話を切り上げ、ベルゲルミルへと足を向ける。

「テニア。俺と一緒に行かないか?」
「うん、こっちからお願いするよ、カミーユ」

うまくいった、と吊り上がりそうになる口元を押さえた。カミーユがVF-22Sに乗り込むのを見届け、ベルゲルミルへと戻る。
やがてVF-22Sとベルゲルミルが浮上する。
片腕のないことを理由に、カミーユに先行してもらう旨を告げた。あとは隙を見て撃つだけだ。



10分ほど北へ向かって飛んだところで、そろそろかな、と機を見計らう。
この10分の間、VF-22Sに特にこちらを警戒するそぶりは見られなかった。今なら容易く破壊できる自信がある。
マシンナリーライフル、シックス・スレイヴをスタンバイ。初撃を外してもカバーできるように――

「ところでテニア」

どのように撃てば確実かと悩んでいたところで、通信。ずっと黙っていたのになんてタイミングの悪い、と舌打ちする。

「……何?」
「さっき、聞き忘れたことがあったんだ」

声色は特に不審なところはない。落ち着いている……いや、穏やか過ぎる?

「今までに会った人物はみんな死んだんだよな?」
「そう、だけど。何かおかしい?」
「いや、それ自体は別に。ただ、気になるんだ……どうして、君がこのバルキリーのものと同じガンポッドを持っているのかが、さ」

言われ、腰のアタッチメントに繋がったままの銃の存在を思い出す。さっき飛び立つときに見られていたのだろう。
迂闊だった! 左腕を落とされて使わなくなったから、すっかりこれのことを忘れていた!
頭をフル回転させる。これはまだ致命的なミスじゃない、どうにでも言い繕うことはできる……!

436 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 18:55:51 ID:EY2wSceG



437 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:56:30 ID:O/FQN5Ml
「あ、アタシはその機体を見たことがあったんだ。そのときは誰も乗ってなかったけど、そう、だからこれを借りたんだよ!」
「なんだ、そうか。いや、これを見つけたときに一緒にいた……やつが、変なことを言ってたんだ」

息を呑んだ。まずい、何かとてもヤバい。あの時見られていた訳はないが、それでもこれ以上言わせてはいけない気がする。
焦るテニアに構わずカミーユは続ける。

「この機体は無傷で放置されていた。スペックは大したものだ、これを捨てるなんてとんでもない。
 俺は仲間の機体に同乗したんじゃないかって言ったんだが、そいつはこう言った。
 『元々この機体を支給された人は、協力を持ちかけてきた仲間に裏切られたんだろう』って。
 見せしめに殺された女の人と、きょ……多分、その恋人だった男性がいただろう。
 つまり元々知り合いだった人たちが連れてこられているってこともあるんだ。もし被害者と加害者がそんな関係だったら、信用するのも当たり前だよな」
「か、カミーユ、あのさ、」
「そう言えばテニア。俺、あそこでお前を見た覚えがあるんだ。
 主催者に喰ってかかって、隣にいた金髪の女の子に止められたよな。その子もお前をテニアって呼んでた」

VF-22Sが一瞬にして反転。そして人型に変形する。
そうと気づいた時には既に、撃つ隙はなくなっていた。

「ああ、そうそう。この機体の近くには墓があって、女の子が埋められていたそうなんだ。
 それも、頭を潰された状態で。たぶん機動兵器の手で握り潰されたんだろう」

さざ波のように穏やかだった声は、いつしか冷たい刃のように感じられた。それが首筋に当てられている――

「その子がパイロットだったんだろうな。首輪もなかったんだから、そのために殺したんだろう。
 惨いことをするやつがいる。許せない……許さない、絶対に」

淡々と呟かれる声。もはや口を挟めないほど、目の前の少年の放つプレッシャーは膨れ上がっている。

「なあ、テニア」
「……な、何よ」
「どうしてなんだろうな。どうして、

 お 前 の 機 体 の 指 に は 、血 が つ い て い る ん だ?」


……絶叫とともに、トリガーを引いた。

放たれた光弾。だがVF-22Sはそれを予測していたかのように易々と回避し、流れるような動きで携えていた長大なライフルを構えた。
ライフルが発射される前にシックス・スレイヴを解き放つ。
別々の軌道を描く六つの勾玉。VF-22Sの予測されうる回避コースを塞ぐように展開したそれを――

すべて、撃墜された。

VF-22Sがライフルを引き戻し、代わりにガンポッドを構えた。
スレイヴが取り囲んだと思った瞬間、VF-22Sは上半身を折り畳んだ。戦闘機に足が生えたようなシルエット。
そして全方位から迫る勾玉を、似たものと戦った経験でもあるのか慣れた様子で次々とかわしていく。
通り過ぎたスレイヴがもう一度仕掛けるべく反転する。その動きを止まった一瞬を見計らったように、VF-22Sが独楽のように激しく回転した。
その状態から火線が奔る。銃弾は吸い込まれるように全てのスレイヴへと命中、爆散させた。
あんな回転の中でも一つとして狙いを外さない。ヤバい、こいつの腕は本物だ。
拡がる爆風の中を、人型でもさっきの異形でもないものが突き抜けてきた。
戦闘機。変形に要する時間が短すぎる!

急速に接近してくるVF-22S。消し飛ぶように彼我の距離が縮まる。
テニアは恐慌を来たし、自分でもよく聞き取れない声を吐き出しつつ機体を後退させる。
マシンセルを散布することも忘れない。胴体の再生は遅れるが、そんなことを考えていられる状況ではない。
VF-22Sは霧のようなナノマシンに突入する手前で足を振り出し急停止した。
突っ込んでいればそれなりのダメージはあっただろうに、尋常じゃない勘働きだ。
しかし僅かとは言え時間は稼げた。少しでも重量を減らすためガンポッドを投棄し、全速で離脱を試みる。
急速に敵機との差が開く――追って来ない?
理由はどうあれチャンスだ。テニアは脇目も振らず逃走を開始した。

438 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:57:28 ID:O/FQN5Ml


強烈なGに耐えながら20分ほど全速で飛び続け、森林を抜けたあたりで追随する機影はなく。振り切れたと確信して機体を止めた。
息をつくと同時に、一気に吐き気が込み上げてきた。長時間の全速移動だけでなく、先の戦闘のプレッシャーのせいもあるだろう。
テニアは機体を手頃な岩山の陰に隠し、転げ落ちるようにコックピットから出る。
地面に四つん這いになり、吐いた。
朝食を摂ったのは4時間ほど前だ。大喰らいなテニアの胃は優秀なのかほぼ消化を終えていて、固形物の代わりに胃液だけが出た。
酸っぱい味が口腔を満たし、鼻の奥がひきつる。気持ち悪さだけが加速する。
吐瀉物で濡れた地面がとても汚く見えて、目を逸らす。2分ほどうずくまって、ようやく吐き気が治まり顔を上げた。
鏡を見たらさぞげっそりしているんだろうな、と思った。

水で口を洗い、気分が落ち着いてきたのでベルゲルミルへ戻る。
まず損傷をチェックしなければ。頬を叩き無理やりにでも気合を入れる。

ガンポッドの損失はさほど問題ではない。どうせ片腕がないのでは使えないのだから。
それよりも、シックス・スレイヴが撃墜されたのは痛い。機体の修復を後回しにしてマシンセルを集中させる。
まともに戦えないのでは動く事も危険だ。まずはどうにか自衛できるレベルまで、機体を修復させる。
ナデシコとの合流は遅れるが、ここはもう北東の4ブロックにほど近い。待っていれば向こうから来てくれるかもしれない。

一通りの設定を終えて、これからどうすべきかを考える。
カミーユを殺すつもりが、秘密を看破され逆に尻尾を巻いて逃げ去る始末。
これでテニアが確実に戦いに乗っていることどころか、親友を手にかけてまで優勝しようとする外道だということまで知られてしまった。
カミーユがこの先誰かと接触すれば、そこから噂はどこまでも広がるだろう。
邪魔なオルバを排除できて、ナデシコを利用して。すべてが上手くいっていたのに、今や追い詰められているのはテニアだ。
狩る側から、狩られる側へ。今生き残っている者全員が、テニアを追いたてる――

「嫌だ……嫌だッ! アタシは生きて帰るんだ! こんなところで死にたくなんかないッ!」

恐怖が重い泥のように絡みついてくる。こうなっては、もはや一人でいることは逆に危険だ。
思いつくのはやはりナデシコの威容、兜甲児や宇都宮比瑪の顔。彼らなら自分の盾になってくれるはずだ。
彼らをどうにかしてJアークやカミーユ、そしてガウルンといった敵と潰し合わせる。
できるかどうかではなく、やらなければこの先生きのこれない。
想いを寄せる少年、統夜。彼もまだ生き残っている。彼がカミーユと接触する前に会い、事情を隠して取り入らねばならない。
身も知らぬ少年の言葉と、共に戦ったテニアの言うこと。さすがに疑われはしないだろう。

急がなければ。自らを囲う鎖が完全にこの身の自由を奪う前に、逆転の一手を打たねば――
焦るテニアの思いに応えることなく、マシンセルの修復は遅々としたものだった。



【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:疲労 激しい焦燥
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中)
        EN40%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:G-3 北部
 第一行動方針:ナデシコの面々に取り入り、敵を排除し尽くした後に裏切る
 第二行動方針:統夜との接触、利用の後殺害
 第三行動方針:参加者の殺害(自分に害をなす危険人物、及び技術者を優先)
 最終行動方針:優勝
 備考1:甲児・比瑪・シャギア、いずれ殺す気です
 備考2:首輪を所持しています】



439 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 18:58:17 ID:EY2wSceG



440 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 18:58:25 ID:O/FQN5Ml
          □


「……撤退したか」

レーダーの中、急速に遠ざかっていくベルゲルミルの反応を目で追いつつカミーユは息を吐いた。
危なかった。あの様子ではやはりこちらを殺そうとしていたのだろう。
気づくのがもう少し遅ければ、カミーユはVF-22Sとともにこの世界から消え去っていたはずだ。
ユーゼスの言っていたことは悔しいが正しかった。テニアの機体ベルゲルミルは、20m前後の機体、あの忠告とも一致する。
この機体の近くに埋葬されていた遺体の頭部が潰されていた、という情報を思い出し。
それとなくベルゲルミルの指を確認してみればまさに動かぬ証拠があった。
ただ、それだけでは確実とは言い難い。彼女がやったのではなく、彼女の前に乗っていた者がやった。
ユーゼスのように口の回る者ならそんな風に切り抜けただろう。
だからこそ、こちらが疑っているという事実を突きつけ対応を見た。すると予想通り攻撃してきた、黒だというのは確定だ。

ここで仕留めたいところではあったものの、敵機のファンネルと思しきものの迎撃でVF-22Sの残り僅かだった弾薬・エネルギーはほぼ枯渇した。
オクスタン・ライフルはまだ使用できるものの、敵機もまた余力を隠していたようだ。
あの霧のようなもの。構わず突入しようとした瞬間、唐突に悪寒を感じ無意識に機体を止めていた。
この世界にはモビルスーツの概念を遥かに超えた未知のテクノロジーが散乱している。あれもまた、そういったものの一部だったのかもしれない。
カミーユは追わなかったのではなく、追えなかったのだ。現状では倒し切れる保証がなかったから。

ともあれ、有益なこともあった。
気絶した自分を起こしてくれたこと。気を失っていたのは数時間であろうが、それでも少し気分は楽になった。
情報。彼女のもたらした情報は、どこまで信用できたものか。
Jアークという戦艦。キラ・ヤマト、ソシエ・ハイム。彼らが本当に戦いに乗っているかは分からないが、とりあえず警戒するに越したことはないだろう。
そして、基地だ。彼女の言う化け物……これの真偽については考えるまでもない。キョウスケ・ナンブ、アインストとなった男のことだろう。
やはりあの人は変わってしまったのだ。忌むべき主催者、その同族として。
歯を食い縛る。
倒さなければならない。これ以上誰かが犠牲になる前に、他ならぬカミーユが、この手で。

ベルゲルミルが放置していったガンポッドを回収し、針路を思案する。まずは補給をしなければ。
この機体が熱核タービンエンジンという、大気圏では燃料を必要とせずに航行できる機体で助かった。道すがら補給ポイントがあればいいのだが。

テニアは北へ逃げた。追撃は現時点では考慮の外。
南は当然、ない。基地へ向かうのは協力者が集まってからだ。
あとは東か西かだが、東に行って光の壁を通過し地図の反対側に出ても、その辺りにさしたる施設はない。
ならここから西。地図の中央、廃墟の都市に向かう。
誰かがいるかもしれない場所としては、森や山岳地帯よりは希望が持てる。
カミーユが接触し、今だ生き残っていて戦いに乗っていない者は……マサキとブンドルだ。
他には、最初の場所で主催者に真っ向から対立する姿勢を示していた黒スーツの交渉人。
できれば彼らと接触したいところだが、まだ生き残っているだろうか?
シャアの名が呼ばれたことに動揺し、放送を聞き逃したことが悔やまれる。

気がかりといえばもう一つ、禁止エリアだ。これまた聞き逃してしまっている。そうと知らずに突っ込んでしまっては目も当てられない。
とはいえ、機動兵器を扱う戦いを演出する以上、その戦闘の激しさから望まず禁止エリアを超えてしまうこともあるだろう。
そんなときのために、エリア侵入即爆発ということはないはずだ。警告機能くらいは備えているだろう。
エリアとエリアの境界を沿うように飛び、警告が聞こえてきたら隣のエリアに退避する。
もし禁止エリアが隣接していたら……お手上げだが、広く参加者が散らばる戦場でそんな不効率なことはしないだろう。
方針を決め、カミーユはVF-22Sを発進させる。
飛ぶように流れていく景色の中。しばらくは神経を擦り減らすことになるな、と嘆息した。

「せっかく休めたのに、また疲れるじゃないか……」

441 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/26(月) 19:00:02 ID:O/FQN5Ml
【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルU(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。精神が極度に不安定
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾-残弾0 EN残量・火器群残弾ともに5%  ガンポッド二挺所持
 現在位置:F-4
 第一行動方針:対主催戦力と接触し、仲間を集める (ロジャー・マサキ・ブンドル優先。Jアークは警戒)
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】

【二日目 10:20】


投下終了です。タイトルは「獲物の旅」で
支援ありがとうございました

442 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 19:02:48 ID:EY2wSceG
GJ!
カミーユまさか死ぬ!?とドキドキしたけど生きてて良かったw
しかしテニアは確実に包囲網が広がってきてるな、トウヤたちに目の仇にされ、カミーユ、Jアーク、ナデシコには睨まれ、
これはそろそろ詰みか? 色々甘いJアークチームとロジャーチーム以外にぶつかったら命がないw

443 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 19:44:09 ID:R7q+1jdI
wikiを更新してる間に投下が!
実にGJ!
バーニィ戦では機体のスペック差のせいかあまり感じなかったけど、やっぱカミーユ強いなぁ
一瞬、戦闘機状態のVF-22Sで突撃を仕掛けるんじゃないかと思ったぜw
カミーユは西に、テニアは北に、今後どうなっていくのか楽しみです

ところでテニアの本性知ってる奴がいない組み合わせって、もうブンドル・甲児組と仮面組だけじゃね?


444 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 20:01:24 ID:H6haDWnH
カミーユとテニア、どちらが先にJアークと接触するのか・・・・・

445 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 20:15:30 ID:JSSPv+FV
>>443
そのどっちの組み合わせもテニアの嘘ぐらいあっさり看破できそうな頭脳派がいるからなあ。
特にユーゼスはカミーユに推論伝えた張本人だし。

しかしテニア完全に積んでないか?
彼女が当てにしてる合流先はどっちも犯行露見して第一殲滅目標に指定されてるんだがw

446 :それも名無しだ:2009/01/26(月) 20:50:33 ID:B02j+BVs
どの集団にとっても
「嘘を見破れる賢い人がいる」
「既に本性がばれている」
「完全に黒とは断定していないが第一種警戒対象扱い」
のどれかになっているもんなぁ…安心だと思っているナデシコもシャギアがいるし。

447 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 00:05:16 ID:3aOKfsjB
投下GJ!
うおお……! カミーユが撃たれるかとドキドキしてたら逆にテニアが追い詰められて緊迫感に溢れる展開ー!
テニアはステルスとしては殆ど詰みに近いけど、元々の機体スペックは悪いものじゃないし応用の利く装備も多いからいくらでも動きようがあると思う。
今までのように華麗に裏切ることは出来なくても、各地で争いの種となるには十分だよなぁ。
Jアーク組登場の二作目にも期待!

……と言いたいところだけど観察日誌作成が間に合ってませんごめんなさいぃーっ!
今日中に仕上げると言ってたのに申し訳ないです……
明日の夜までには仕上げて、新スレ立てまでやりますのでお許しをーorz

448 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:01:33 ID:d4YMEFxd
◆7vhi1CrLM6氏の 生き残る罪 で、登場人物紹介のとこのオルバが死んだのに赤字になってないな
誰か編集できる人お願いします

449 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:05:38 ID:mrw/EGKK
>>448
やっといたぜ!

450 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:17:57 ID:d4YMEFxd
>>449
はやっw
その勢いで次スレも立てるんだ兄弟

451 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:24:39 ID:mrw/EGKK
>>450
立てることは可能だが観察日記は頼むぞ、勇者!

452 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:34:52 ID:mrw/EGKK
第二次スパロボバトルロワイアル8
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1233038003/l50

スレ立て完了、コードATAを実行する

453 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:46:25 ID:3aOKfsjB
>>452
スレ立て乙だ……!
丁度観察日誌も完成したし投下させてもらうぜ!

454 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/27(火) 15:48:41 ID:d4YMEFxd
>>452-453
この気持ち、まさしく乙だ!

流れを止めて申し訳ないが延長お願いします
今日中には投下したいが無理かもしれないので

455 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 15:58:00 ID:3aOKfsjB
延長了解です。
無理に焦って作品に粗を出来てしまうよりは、素直に延長したほうがいいと思いますし、昨日も投下したんだからそこまで待たされるという感覚はないしでw

456 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 22:31:25 ID:P15ivvoy
あまってるのがもったいないので生存キャラの登場ランキングをペタリ

総登場回数
1位 19回
 アキト
2位 17回
 ユーゼス
3位T 16回
 キョウスケ
 キラ
 テニア
 ロジャー
 統夜
8位T 15回
 カミーユ
 ソシエ
10位T 14回 
 ガウルン
 ガロード
 クインシィ
 ブンドル
 甲児
15位T 13回
 アムロ
 シャギア
 比瑪
 バサラ
19位 11回
 竜馬
20位 10回
 アイビス

平均 13.76回

おまけ 10回
 アルフィミィ

457 :それも名無しだ:2009/01/27(火) 22:40:19 ID:P15ivvoy
さらに第二回放送後登場回数

1位T 6回
 甲児
 統夜
3位T 5回
 ガウルン
 ガロード
 クインシィ
 シャギア
 アキト
 テニア
 比瑪
 バサラ
 (アルフィミィ)
11位T 4回
 キョウスケ
 ユーゼス
 ブンドル
14位T 3回
 アムロ
 カミーユ
 ソシエ
 ロジャー
18位 2回
 キラ
19位T 1回
 アイビス
 竜馬

平均 4.00回

総評
ナデシコ組+関係者猛追中
アキトは登場回数安定しすぎw

458 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 15:45:47 ID:RLPWDvU9
予約期間を過ぎてから言うのも申し訳ないのですが・・・
これからしばらく外出するため、夜の10時くらいに投下します。
40kb超えているので、よろしければ支援をお願いします。

459 :それも名無しだ:2009/01/29(木) 21:52:16 ID:MUkyACDv
これより友軍の投下支援の為に待機に入る遠慮なく投下してくれ。

460 :それも名無しだ:2009/01/29(木) 21:59:14 ID:ihSmZnol
応援要員として来ました

461 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:03:45 ID:vv3sPWDv
では投下します

462 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:05:10 ID:vv3sPWDv
三重連太陽系を構成する星のひとつ、赤の星の遺産――Jアーク。
本来の主なき白亜の艦の格納庫に、カタカタとキーを叩く音が反響する。

「これでよし……っと。アムロさん、ガンダムの調整、終わりました」

ガンダムF91から、歳の割に幼さの抜けない顔の少年――キラが顔を出す。
呼びかけた相手は、床に横たわる青いアンチボディ――ネリー・ブレン――の上に立つ青年。
かつて連邦の白き流星と呼ばれた伝説的なパイロット、アムロ・レイ。

「ああ、こっちも終わった。と言ってもブレンは多少の傷なら勝手に治るそうだから、俺がやったのは装甲を磨いたことだけだがな」

アムロは雑巾代わりの布切れを片手にネリー・ブレンから降りた。

「埃を落とした程度だが、喜んでる……無邪気さを感じる。このブレンはまだ子どものようだ」
「アンチボディ……生体メカっていうんでしょうか。僕の世界では考えられない概念です」

感心しきりという体のキラに俺もだ、と笑いかけ、使った道具を片付ける。
アムロがキラ、アイビスと合流した後。
Jアークは集合予定地であるE-3へと移動し、ロジャーの帰還とナデシコの来訪を待っていた。
D-3に留まるよりも、地図を縦に貫く道の方が誰かが通る可能性があると三人の意見が一致したからだ。

機体の整備は終了。酷使したF91のメンテナンスが長引きそうだったのでネリー・ブレンを洗ってやることにしたのだが、思いの他リラックスできた。
予想より時間がかかってしまったが、ともあれこれで首輪の解析に取り掛かれる。
機材に放り込んでおいた首輪を見やる。
トモロがざっとチェックしたところによると、首輪そのものの材質はただの鉄らしい。

やはり怪しいのは内部をスキャンできなかった赤い宝玉。爆発を制御する役割を持っているとすればここだろう。
分解できれば手っ取り早いのだが、最初の場所でアルフィミィと名乗る少女は「力づくで外そうとしたり強い衝撃を与えると爆発する」と言った。
果たしてその条件が死者から取り外された首輪にも適用されるのかは分からないが、一つしかないサンプルを失ってしまっては笑うに笑えない。
現状物理的に外す手段がないとなると、プログラム的な面で攻めるしかない。
禁止エリアに侵入したり24時間の制約があることからして、首輪は単なる時限式の爆弾ではない。
条件を判定するための何らかの発信機なりAIなりが搭載されているのだろう。
それを押さえることができれば、爆発指令を止めつつその間に首輪を解体できるかもしれない。

キラにF91の整備を任せたのは、本人が言うだけありプログラミングがアムロより上手だったからだ。
最終的なチェックはアムロが行うものの、アムロ本人がやるより数十分は早く終わったことは間違いない。
キラなら時間をかければ首輪の解析も可能かもしれない。ここからはその時間をどれだけ取れるかがカギになる。

キラに声をかけ、交代してF91のシートに座る。キラの調整したシステムをチェックしようとして、バイオコンピューターを立ち上げたところ――

「ん? これは……」

数時間前にガウルンと戦ったときと比べ、意識が拡大する感覚は収まっている。
今はあのときのように1エリア全域を知覚するようなことはできない。だが、その知覚範囲の外から何かが向かってくると感じることができる。
その何かの発する気配が大きすぎるのだ。アムロの感覚を遠くまで見える目だとすれば、その何かは山や塔など背の高いものというのが近い。

「キラ、F91を出す。君はブリッジに行ってくれ」

首輪の解析を始めようとしていたキラは怪訝そうに見返してきたものの、何も言わずに走っていった。
彼が格納庫から出たことを確認して、ハッチを開ける。
甲板に出てブリッジに回線を開く。

「アイビス、今から俺の言う方向へ向けて探知波を集中させてくれ。何かが来る」


463 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:06:56 ID:vv3sPWDv


          □


ナデシコが収束させた重力波を解き放つ。受けるJアークの展開したジェネレイティングアーマーは貫かれ、船体が圧壊していく様を呆然と見つめる。
ダメージリポート――大破。
崩れゆくJアーク。内部から炎が吹き上げ、一際大きな爆発が起こる寸前。

『戦闘終了。アイビス、君の13敗目だ』

無常に告げるトモロ。同時にモニターの中、Jアークの最期の瞬間を示す映像も消える。
言い返す気力も湧くこともなく、アイビスはコンソールに突っ伏した。
戦闘シミュレーション。だがそのあまりにもリアルな光景に、実戦ではなくて本当に良かったと思う。

「無理……私には無理! 戦艦の操縦なんてできないよ」
『たしかに、君には素養がないと言わざるを得ない。ここまで見事に連敗を喫するとは、私の想定外だった』

淡々とした声にさらに落ち込む。元々アイビスは機動兵器乗り、得意分野は高速域での機体制御だ。
戦場全体を大局的に見通すことや、敵の次の手を読んで戦略戦術を構築することなど不慣れもいいところ。
一通りの操縦の仕方はマスターしたものの、いざ戦闘となればやってみせる自信はまったくと言っていいほどなかった。

『さあ、14回目だ。今の戦闘の問題点を踏まえて、最良の判断を下せ』
「あうぅぅ……わかったよ。やればいいんでしょ、やれば」

顔を上げモニターを見据える。相手として選んだナデシコは、この13戦の間一度として轟沈していない。
トモロが思考レベルを高めに設定していることもあるが、やはり畑の違うアイビスには荷が重かった。
それでもやるからには手は抜かない。持ち前の生真面目さからか、意気込んでコンソールへと手を伸ばす。
そしてトモロが戦闘開始を告げようとした瞬間。

『アイビス、今から俺の言う方向へ向けて探知波を集中させてくれ。何かが来る』

アムロから通信。返事をする前にトモロが即座にシミュレーションを終了させ、指示を実行する用意を整えた。
アムロの言う通りに探知波を東……やや南東へと集中させる。しかし、特に何かを検知することはなかった。

「トモロ、何か見つけた?」
『いいや。索敵エリアに反応はない』

アムロの勘違いだろうか。問いかけようとしたところで、キラがブリッジに入ってきた。
どういうことかと目で問いかけたが、彼もわからないと言いたげに首を振る。

『キラ、Jアークを東に向けて移動させてくれ。アイビスはネリー・ブレンで待機だ』
「え、いやちょっと。敵が来たの? こっちは何の反応もないんだけど」
『敵かどうかはわからん。ただJアークの探知波を利用してF91のセンサーで長距離まで索敵したが、何かが来るということははっきりわかった。
 よほど興奮しているのか……荒々しい気配だ。先手を取られる前にこちらから迎えに行きたい』

納得がいき、シートをキラと交代する。そのまま格納庫へ向かうべくブリッジを出ようとしたところで、

『この感じ……俺は、この気配を知っている……?』

そんな、独り言のようなアムロの声が聞こえた。

464 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:08:36 ID:vv3sPWDv
          □


E-4、一軍が通れそうなほど幅を持つ大道の上で、J[アーク、F91、そしてネリー・ブレンは接近する反応を待ち受けていた。
やがて彼方から一機の戦闘機が姿を現す。こちらから100mほど離れたところで停止し、人型へと変形した。
その変形のプロセスを見て、キラはオーブで交戦した地球軍の新型を思い出す。
知人のオーブ軍人キサカが調べてくれた情報では、GAT-X370――レイダーだったか。
アスランの機体GAT-X303イージスの後継機らしいそれは、イージスをより発展させた可変機構を有していた。
しかし眼前の戦闘機――アムロはバルキリーか、と言ったが――が見せた変形は、更にその上を行っているような流麗さだった。

『こちらはカミーユ・ビダン。戦う気はない。そちらはJアークか?』

少年の声が聞こえる。感じからして自分とさほど変わらない年頃だろう。
そしてカミーユという名前には心当たりがある。アムロが仲間だと言っていた、ニュータイプと目される少年。

『こちらはガンダムF91、アムロ・レイ。カミーユ、無事だったか』
『アムロ大尉!? 大尉もここに来ていたんですか?』
『ああ……まあ、話は後だ。とりあえずJアークに来い。キラ、誘導を頼む』
「あ、はい。こちらはJアーク、キラ・ヤマトです。誘導します、着艦して下さい」

青い機体が着艦する。続いてF91、ネリー・ブレンも。
数分後、ブリッジに四人が集まった。

自己紹介を済ませ情報を交換しようとしたところで、先にカミーユが切りだした。

「早速で悪いんだが、基地へ向かってくれないか? あそこには今主催者の側の敵がいるんだ」
「何? 奴らが介入してきて基地を押さえたというのか?」
「……はい、そうです。どこかへ移動される前に叩かなきゃならない。一人じゃ手に余るから、力を貸して下さい」
「いや、待て。まずは情報を交換してからだ。どのような経緯でそんなことになったんだ?」

カミーユという少年はアムロの知り合いだというから、アムロが会話の進行役であるのは何ら不満はない。
だが、カミーユは敢えてキラを見ないようにしている――そんな気がする。
時折り向けられる視線は鋭いものだ。まるで警戒されているような。

まずアイビスがここに来てからの顛末を語りだす。
途中でアムロと合流し、共闘するようになったくだりで。

「じゃあ、あなたはクワトロ大尉と一緒にいたんですか? それなのに、あの人を守れなかったんですか!」
「……その通りだ。俺のミスだ、済まない」
「あの人が地球圏に取ってどれだけ必要な人だったか、あなただって知っているでしょう! なのに……ッ!」

カミーユが激しくアムロを責め立てる。シャアという人は二人の共通の知り合いで、彼らの世界では重要な人物だったらしい。
アムロは言われるがまま反論しない。仲裁しようと足を踏み出すも、

「待ってよ! アムロは私達を逃がすために戦ってたんだ。悪いのは、助けてもらってばかりだった私の方だ!」

アイビスが割って入った。カミーユは彼女を睨みつけたものの責めはせず、一つ息をついて話の続きを促す。

「彼女たちと別れた後、俺はブンドルという男に会った。お前も知っているだろう?」
「ブンドル……サイバスターに乗ってた人ですね。そういえばマサキが追って行ったけど、あいつはどこにいるのかな……」

カミーユが何気なく呟いた言葉にキラは身を固くした。マサキと言ったが、彼は放送で名前を呼ばれた。聞き逃したのだろうか?
だとすれば、これはキラから告げなければならない。
アイビスとアムロが一通り説明を終えて。


465 :それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:10:26 ID:ihSmZnol
>>463
つ【応援】

466 : ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:10:33 ID:vv3sPWDv
マサキの名前を出した途端、逸らしていた顔を向けられる。
仲間たちと出会い、別れ。誤解からダイやナデシコと戦い。
そしてロジャー・スミスとの交渉の末彼に二つの依頼をしたこと。
ここに多くの人を集め、ナデシコと和解すること。そのために今はロジャーと別行動していること。
その後アイビス、アムロと合流し、今に至るまで。一連の顛末を語り終え、最後に二回目の放送でマサキの名前が呼ばれたことを伝えた。
カミーユは唇を噛み締め、拳を壁に叩きつけた。彼はカズイと会っていたらしいが、これで初期の仲間は全滅したのだ。気持ちは痛いほどわかった。

「……次はカミーユ、お前の番だ。基地で何があった?」

アムロに促され、カミーユが語り出す。
基地に多くの人が集まり、崩壊し、そして彼の仲間がアインストとなったこと。
キラ達がダイ、ナデシコといった戦艦を所有する集団と交戦していた間、あの基地でも壮絶な戦いがあったようだ。
たしかに放置できない事態。キョウスケ・ナンブという男は早急に駆逐せねばならない――だが。

「……悪いけど、今すぐ動くことはできない。ナデシコと和解してからじゃ駄目かな?」
「そんな悠長なことを言ってられる状況じゃない! 今この瞬間にだって、あの人は誰かを襲っているかもしれないんだ!」
「君の言ってることもわかるけど……主催者に繋がる敵なら、それこそ万全を期して当たるべきだ。ナデシコの戦力を加えてからの方がいいよ」
「万全? 話を聞いた限りじゃ、ナデシコを先に撃ったのも、ダイって戦艦を誤解して戦闘を仕掛けたのもお前からじゃないか。それでよく和解したいなんて言えるな。
 大体向こうがそんな相手と対話してくれるって本気で思ってるのかよ。罠を疑って来るかどうかも分からないのに」
「ロジャーさんなら、きっと彼らを連れてきてくれます。その後は……まだ、何とも言えません」
「……話にならない。アムロ大尉、行きましょう。俺とあなただけで十分です」

舌打ち一つ、カミーユは興味が無くなったとばかりにキラからアムロへと向き直った。

「俺にも、基地でブンドルと合流する約束はあるが……いや、やはり今は駄目だ」
「どうしてです!?」
「ブンドルなら基地でそのキョウスケという男に襲われたとしても切り抜けるだろう。その後、彼が目指すのは俺が向かうと言っておいたD-3の市街地だろう。
 サイバスターのスピードなら今頃基地へ到達していてもおかしくはない。生きていれば、やがて落ちあえるはずだ。
 ……こういう言い方はしたくないが、ブンドル一人とナデシコとなら、俺は後者と合流することを優先する。彼もそれを望むだろう」

しかしアムロは断った。ナデシコとの交渉の時、彼がいてくれれば心強い。その申し出はありがたかった。
カミーユは苛立った様子で足元を蹴りつける。

「だったら、結構です。他の人を探しますから」

言い捨て、ブリッジから出て行こうとするカミーユ。キラは慌ててその前を塞いだ。

「どこに行くんですか!? 一人で行動するのは危険ですよ!」
「俺がどうしようとお前には関係ないだろう」
「待て、カミーユ。俺が基地へ行かないもう一つの理由はお前だ。少し冷静になれ」
「俺は落ち着いてます!」
「そう見えないから言ってるんだ、ここに来るまでにだいぶ消耗しているだろう。そんな状態では誰と戦っても勝てる見込みはないぞ」

そう、傍目から見てもカミーユは憔悴している。なのに意識だけがギラギラと研ぎ澄まされているような、危険な状態だ。
それは自覚していたのか、押し黙ったカミーユ。一つ息をついて、

「補給したら適当にどこかで休憩を取ります。それでいいでしょう」
「休憩するなら、ここで」
「お断りだ。アンタ達の夢みたいな理想論につき合う気はない」

アイビスの提案をばっさりと切り捨てて、キラを手で押しやるカミーユ。
背中を壁にぶつけた痛みよりも、気になったのは。

「理想論……かな?」

呟いた言葉を聞きつけたのか、カミーユが振り返った。

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