5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら15泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/09/03(木) 17:25:57 ID:l9mVDaxY0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら14泊目」
ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1231678560/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dqinn.roiex.net/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/


375 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 02:39:54 ID:eoORbOYd0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

海賊たちへの追撃は行われなかった。
残った二隻の船は、商船の修繕とけが人の治療のため、一時停泊することになる。
さらに船長同士の話し合いで、目的港が同じ方角であることが判明し、
この第二号艇が途中まで同行することが決まる。

商人2「そいつはうちの人気商品。頭痛腰痛をばーんと治すパデキアの軟膏さ。
     ここはひとつ、今回のお礼にどーんと半額にしとくよ。
     ささ、買った買った!」

商人4「如何ですか、そこの御方。
    今は亡き魔法使いエゼボの著書、『魔道詩篇』の写本。
    その弟子イェノックの著書の写本もありますぞ。
    双方、ここいらではなかなかお目にかかれない品ですじゃ。
    今なら・・・・・・・・どうじゃろ。揃ってこれくらいのお値段では」

商人3「おやおやお嬢さん。お首元が寂しいようですねぇ。
    どうです?こちらの蒼く煌(きらめ)くパニア石の首飾り。
    この波のような紋様と輝き。メロワの町原産ならではのモノですよ。
    今なら特別価格、おひとつたったの980G! ぜひこの機会に!」

商売チャンスを逃さない彼らに敬服すべきだろうか。
両船の側面に架けられた平板の足場を介して、皆が行き来し、
ガヤガヤとした二つの主甲板は、ちょっとした見世物市となっている。

第二号艇の主甲板の上、上甲板の一角では、
両船の船長さんとゾクさんが全体を見ながら、何か話しているようだ。

ゾク「・・・・・・・・・・・・・・・・。
   近年の貿易発展は、人々の暮らしに様々なものを与えています。
   その想いは決して―――――・・・・・・・・・・・・・」


出航の知らせが巡ると、皆は各々の船に戻ってゆき・・・・・
やがて、蝶の翅(はね)ように整然と並ぶ櫂が動き出し、
船は、先を往く船団に向け走り出した。


376 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 02:40:57 ID:eoORbOYd0
―――――――――――アーシュの日記――――――――――

蜃気楼のように朧気(おぼろげ)な遠い山の稜線が見え始めた。
湿気の篭(こも)る海の生活も、あと少しで終わる。

今日の昼から夕方にかけて、海鳥の群れが、
船を先導するように周りを飛び回っていた。
彼らの目に、暇を持て余す僕の姿はどう映っていたのだろうか。

知れば知るほど、魔法というものは摩訶不思議なものだ。
夜、甲板の火種が枯れたときに見た、魔導師の人の指先に灯された小火球。
メラという、炎の魔法の一種だという。

その炎を初めて見たときの驚きといったら、まるで生きた赤い人魂が、
この世界の理を理解しきれない僕の頭の中を、夜の帳の力を用いて煌々と照らし、
さらに強く圧迫してきたかのようだった。

夜は、どこでも同じ思いを僕に抱かせる。
野営の人たちの押しころした声。灯りに群がる羽虫の音。
その周りは、月光の下に清澄の波間が支配する世界。

さらに寝床に就けば、日中僕を包む、世界に麻痺した感覚は失われてゆき、
僕は自分を、さながら孤独の城の主のように感じてしまう。

体をスッポリと包み込むふかふかの掛け布団。
滑らか、堅固な木で組まれた、軋(きし)むことのない床や天井。
それらは、客人として扱われる身分を痛く感じさせる。

噴出す様々な思いが自分の内部に戻って交じり合い、
枕元の携帯に視線を合わせなくなる頃には、
周りはゆっくりと温まってゆき、僕の意識は途切れてゆくのだ。
あの世界と同じ暗闇へと。


――――――――――数日後――――――――――

南からの季節風が潮を吹きつけるカルカ海港。

目の前には、賢者一行を人目見ようと裏路地や屋根の上にまで溢れた老若男女と、
彼らを押し戻すように適所に置かれた警備兵、そして、その中に隠れてしまった、
港の主役であるはずの海の男の三者が作り出す、人垣の大通りが広がっている。

やがてクリフトさんが船から姿を現すと、歓声は一際大きくなり・・・・・・
巨躯の動物の背に乗る彼が人垣を進むに従い、歓声の渦は移りゆく。

兵士「アーシュ殿、我らが責任を持って宿までお送り致しますぞ」

僕は一行から離れ、サランという城下町へ向かうことになった。

377 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 02:42:35 ID:eoORbOYd0
―――――三日後 魔法学校本校 研究院地区 学長執務室―――――

・・・・・・・・・・――――それは、暖かな朝に始まった。


職員「学長、書簡が届いております」

部屋を訪れた男は、机の書類から目を離しこちらを見るクリフトに、
両手に携えた茶色い書簡を見せる。

クリフ「ああ・・・・誰からです?」
職員「ラジィ=モモドーラ様とハロシュ様の連名でして、
    急報の印が刻印されておりますが・・・・・」

クリフトは差し出された書簡を受け取り、先方の印を確認する。

クリフ「・・・・確かに。どうもありがとう」
職員「では、これにて失礼致します」

クリフトは机の引出しからナイフを取り出し、丁寧な手つきで書簡の封を切る。
扉が閉められた頃には、彼の手には紐で束にされた数枚の紙が握られていた。
紐は解かれ、魔導師と歴史学者のサインが記された文言が読み進められてゆく。

彼の目が動きを止めるまで、そう長い時間はかからなかった。


――――――――――同日 学長執務室―――――――――

クリフ「ああ、呼び出して悪いね」

一日の講義も大方終わりを迎え、太陽の残光が注ぐ中、
ようやく研究機関としての姿を見せ始めた魔法学校。
畏(かしこ)まった調度品揃う学長室に、彼の一番弟子ダグファが入る。

年齢の割に皺(しわ)の少ないその顔には、
見当の付かない戸惑いの色が浮き出ている。

ダグフ「こんな時間になりすみません。お話があるとか」

クリフトが応え、執務机から近くのソファに座りなおすと、
それに合わせてダグファも、失礼します、と言い対面に座る。

クリフ「二人にも後で伝えるけど、今は時間が合わなくてね。
    僕が話す前に簡単に伝えてくれると助かるんだが。

    ・・・・・実は今朝、ラジィ先生とハロシュ先生から、ある重要な知らせが届いた。
    あの王国の無名叙事詩・・・・・・その一冊が完全に解読された、と」
ダグフ「!!」

378 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 02:52:49 ID:eoORbOYd0
無名叙事詩の解読。それが意味することは、あまりにも、重い。
無名叙事詩といえば、無名書、無名稀覯(きこう)本とも称され、
ある共通の特徴を持ち世界中に散在する、謎多き希少書の通称。

その特徴とは即ち、未だ解読の進まない古代アルテリア語で書かれており、
書名や著者名すらほとんど明らかでないということ。
そしてこれこそ、無名と冠される由来なのである。

辛うじて意味の推測できる書中の挿絵より、
それらは歴史書や魔道書の類とされている。
このため、今に至るまで多くの魔法使い、あるいは歴史学者が、
秘められた古の知識を明らかにすべく努力してきたのだ。

クリフ「驚くのはそれだけじゃない。さらに――――・・・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋の中にぼそぼそと響く二人の会話。
一方はただただ淡々と話し、一方は耳を傾けながら、ときに二、三の言葉を返す。
やがてその顔にまた、驚きの様が見受けられ・・・・・

ダグフ「・・・・・・・・」
クリフ「さっき見せたとおり、具体的なことは手紙では伏せられています。
    ただ、その差し迫った文言から鑑(かんが)みるに、
    先方の提案どおり早急に彼らと会い、かつ適切な時期まで、
    これは内密にして然るべきでしょう」

ダグフ「・・・・・・・・・」
クリフ「すぐに予定を調整します。
    できれば君たちも再び来てほしい。
    彼らの待つ、レオ王国へ」

379 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 03:08:50 ID:eoORbOYd0
―――――――――三日後 城下町サラン 宿屋――――――――

尖塔の背には月が輝き、開け放たれた窓の外には、酒場からの声と、
その背景に溶け込んだ、名も知らない虫の鳴き声が響き渡っている。
そして、そんな情景を巡り巡ってきたであろう衣のような風が、
窓の傍の机に座る僕の横顔に、ときおりふわりと触れてくる。

レオ王国とテララテパ海を挟むここサントハイム王国は、クリフトさんのお膝元だ。
あの学園都市の、威容を誇る建造物の多さと区画整理された様と比べると
ここ城下町サランは、上下左右にうねる通りが何本も走り、城に近づくにつれ
高貴な様式の建物が多く立ち並ぶ、まさに城下の群像を垣間見ることができる。

カーブした石段の上の住宅街。二階の物干し竿から服を取り込むブロンドの女性。
すすけた茶色い石造りの集会所。裏の小庭から見下ろせる城下の建物。
町の外、横に平らに伸びる林の先から突き出た、クリフトさんの治める魔法学校。

石段の根元から伸びる平坦な石畳通り。幌(ほろ)を張る平屋の果物屋や魚屋。
ギルドのバイトのだみ声と客のざわめき。日陰の路地にいるのは、
地べたに座る骨董屋や古本屋や、値切り交渉をする帽子を被った老人。

大通りの交差点に広がる円形の広場。
ベンチに座る恋人たちや、周辺の原っぱで遊ぶ子供たち。
彼らをもてなす、動物による移動式の菓子屋やアクセサリー屋。

大通りの先に見えてくる貴族の屋敷と大庭園。正門に佇む守衛たち。
大きな建物の壁に刻み込まれた、王家の紋章や、流れる描法による何らかの紋様。

そして天を射す数々の尖塔が彩る光景は、空に伸びる人的意志を示すように・・・・。

城を照らす雲間の光。城から伸びるその陰影が包む、城下の影の美しさ。
それを城のテラスから臨み、さらにそこに、ティール国王謁見のため
城を訪れたときに見た、城下の大小様々な鐘の音が響き渡る奇跡、
それを再び見れば、僕は本当の町の生き様を知ることになるだろう。

そして僕はそのとき、思うはずだ。
この世界を発つその日まで、一目でも多く世界の有様を見、掴み取ろう、と。
夜の帳の下では決して見えないものを。

380 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 03:09:45 ID:eoORbOYd0
――――――――――さらに二日後――――――――――

城下町から馬車で三十分ほど。
林の先の開かれた平野に入口が広がるのは、魔法学校ユネストロ・ユカローテ。
別名、『剣と魔法の研究院』というそうだ。

ここに来たのは、クリフトさんとゾクさんに会うため。
僕は、さっき降り出した弱々しい雨が足元の縞々の縁石に染み込む中、
降車場で見取図を確認し、青々とした緑がそこかしこに満ちる中を進んでゆく。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女性「どうぞソファに掛けお待ちになってください。
   すぐ先生がお越しになると思います」

赤い、レンガのような石で組み上げられた四角形の建物の中。
学長室に残された僕は周りを見渡す。

格調高い本棚が、右手の壁に沿い二本据え付けてあり、
・・・・・・どうやら、日光に直接当たらないよう考慮された配置のようだ。
そして左の壁には一面、世界地図らしき図面が貼り付けてある。


・・・・・・・・トスッ。

その瞬間、何か小さな物音が聞こえた。
何事かと辺りを歩き回ると・・・・・本棚の前の床に、
本が、背表紙を上にして開いたまま、床に落ちている。

赤いハードカバーの所々が剥げ、白地が浮き出た分厚い本。
背表紙と、表紙の上部に辛うじて題名らしき文字があるものの、
それはこれまでの人生で、そしてこの世界でもまったく知らない、奇妙な書体だ。
どうやらさっきの物音は、この本が床に落ちた音らしい。

拾い上げると、中の紙のざらざらとした感触が指先に伝わる。
僕はその本を、傍の机にそっと置き、開かれたページをぼんやりと眺める。
そこは何度も見返された箇所らしく、開き癖が付いているようだ。


・・・・・・・・・・あれ?この部分、なんだか見覚えがあるぞ?
この図は、ええと・・・・。記号が違うけど、たぶん・・・・。

381 :修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/04/25(日) 03:10:45 ID:eoORbOYd0
・・・・・・・・・・・ギィ・・・・。

そのとき、後ろの扉が開き、茶色のローブを羽織ったゾクさんが入ってくる。

ゾク「遅れてすまんね。先生も少ししたら来るんだが」

僕は挨拶を返し、本棚から落ちた本のことを伝える。

ゾク「これか。・・・・・・・ありがとう。棚に戻してくれるかい」
僕「わかりました。・・・・・でもこれ、いい本ですよね。
  言葉は僕にはわからないですけど、中身は理解しやすそうですし」
ゾク「!?・・・・理解しやすい?」

僕「ええ。絵や式だけで内容がわかる本はいい本って言いますから。
  うちの国はそういう本が少なくて、羨ましいです。
  それに中身だって・・・・・まさかここで見覚えのあるものに出会えるなんて思
ゾク「ち、ちょっと!・・・・君はこの本に・・・・この書の中身がわかるのかい!?」

僕「ぇ・・・・ええと、恐らくです。
  このグラフとか・・・・・あ、これなんて解析式に似てますし。
  で、こっちのも・・・・・・・・。
  似たものをよく見ていたので、ちょっと頭に浮かんで・・・・・
  ・・・・・・・・・え?あれ?」

ゾク「・・・・・・・・・・・」


・・・・・・・雨は、上がっていた。


アーシュ
HP 14/14
MP  0/0
<どうぐ>携帯(F900i) E:カトゥナ皮の服 ルテールの靴

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/26(月) 06:13:36 ID:gamzzIgf0
執筆&投下お疲れさまでした。
今回も楽しめました^^

アーシュさんが見た本も無名叙事詩なのかもしれませんね。
教科書の類かな・・・?
それもこちら側の世界の化学か物理の・・・?

383 :[1/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:38:31 ID:7sHcHShK0
#01 異邦人、異邦人、聴こえるか?

【0】

 Rex
 Rex tremendae majestatis,
 Qui salvandos salvas gratis,
 Salva me, fons pieatis.


 ×◆×◇×◆×

【1】

 見る者が見れば、あの花を桜か、はたまた桃かと思うのだろうか。
 花柄こそ短く、樹に沿うように咲いているものの、端に切れ込みの入った五弁はうす桃色をしている。つつ
じを思わせて鮮やかな色彩でふちどられた輪郭は鮮明であるくせに、どこかつかみどころがない。それでいて、
花粉をつけたしべは夕暮れどきの空にも埋もれぬほど華やいでいるのだ。先ごろ降った雨を受けて花弁に生じ
た黒ずみや、透きとおった筋の表情も、なるほど、桜や桃の仲間と言われるに相応である。
 そして、いま。花を散らした枝からは、冬に落とした葉がふたたび生まれつつある。残っている花も、散糸
のごとき雨にさえたわんで崩れるだろう。花との別れを惜しむまもなく、黒く感ぜられるほど青い葉を陽にさ
らした樹は実をつける。夏を前にして割れる果肉こそ食用には不適だが、核となる仁そのものと、仁からとれ
る油脂の用途は、街に集う人々の口を湿すにとどまらないはずだ。
 かつて海路を渡ってきたという街路樹を眺めつつ、青年は書物で上澄みをさらっただけの知識をもてあそん
でいた。それこそ、街路樹がこれからつける実――アーモンドとおぼしき堅果の深煎りにも似た色をした髪を
垂らしてなおも秀でて見える額が、眉のうごきに伴ってわずかに平らかなものとなる。彫りの深く、頬骨から
あごにかけた曲線が目立つ顔のなかでもいっとう整い、怜悧さすら醸す鼻筋。その末端からすこしばかり間を
離したくちびるさえ、我が身の夢想にほころべば愛嬌であった。局所的な採寸が不完全であればこそ、体つき
に合わせて仕立てられた白い立て襟をまとう青年の顔から、ひととき清冽なまでのとげとげしさが失せる。つ
つましくも気取って微笑んだ自身に対してか、彼がはにかんで机上に視線を落とせば、頬に落ちたまつ毛の影
の刻んだ青みが、肉は薄くとも骨組みの太い男性の体躯に柔和なものさえ匂いたたせた。
 まったく。所在なく立っているだけにしては嫌気がさすほどのめぐりの良さに、青年は妙な居心地の悪さを
覚える。意図して行ったものではない打算のもつあざとさが嫌になる。あざとさや打算が嫌になる程度には若
い我が身を嫌悪する。嫌悪の根にある種の優越の気配を感じてしまえば、もうなにも言えなくなってしまう。
言語化のできない窮屈さをまえに、出来ることは嘆息くらいだが、いま肩を落とすことはかなわない。
 すぼめた口許から少しく息を抜きつつ伸びをしたそのときに、旅装の男がひとり、街路を折れてきたのだ。
 近くの村からやって来た者か、あるいは山師のたぐいか。綿の入って分厚いマントは、染め抜かれた紫紺の
有する重さとあいまって、青年の目にはずいぶんとくたびれて見えた。ごつごつしていても人好きのしそうな
顔の、陽と酒に焼けた頬の赤みが布のもたつきに引っ張られ、濁った印象を受けるのが“もったいない”。
「部屋は空いてるかい?」
 初対面であることを忘れさせるほどに陽気な声とともに、岩を切り出したような相好が崩れた。それを目に
した青年は、心の底からそう感じたのだ。初対面の人間にずうずうしいことを考えさせてしまう男の無防備さ
が、いやに構えていた胸を衝くほどにまぶしかった。この男のことがうらやましいとまで思わされた。

384 :[2/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:39:36 ID:7sHcHShK0
 けれども、これは。いまの自分が向かっているのは仕事なのだ。
 仕事。脅迫じみた一語をもって絶やさない微笑の裏で、めまぐるしく頭を回転させていたがために。

「ええ。いらっしゃいませ、温めます――か」

 無意識に連ねてしまった言に対して、青年こそが目を白黒とさせていた。
 おかしなことというより、“言ってはならないこと”を言ったとばかりに片手が挙がるも、口をふさげば客
への礼を失すると気付き、中途で動きが止まる。何をやっているんだお前は。問題を解決するまえに胸中で繰
り返される言葉の調子は青年自身を打ち据えるように強く、たくまずして涙袋に力が入りかけた。
 そうした緊張こそが、問題を解決していくための能動性を青年から失わせしめると分かっていてもだ。
 一瞬の無言を経て高まった不安に、けわしさを隠しきれなくなりそうな口角がかすかに吊り上がる。
「確かに冷えるな。ホット・ワインの一杯もあれば、あとで部屋に運んでおくれ」
 追い詰められた者に特有の痙攣的な動作を、笑いと見られる男は真から善良だった。
 彼の善良こそが、青年には救いにして、彼我の相違を痛感させるものに他ならなかった。
 マグをつかむように片手を持ち上げる男の仕草を見てい青年の裡で、混乱の度合いが深まっていく。
 どうしよう。どうしたらいい。どうすれば、どう答えれば、俺は間違っていないのか――。
 すでに懊悩ですらない、子どもじみた思考の円環は、肩を叩く堅い手のひらに吹き払われるまで続いた。
「承知いたしました。夕食のほうはいかがなさいます? 今日は良い野菜が入りまして」
「そうさな。酒はともかく、部屋代とは別にとるのかい?」
「商売ですからね。いえ、代金はまとめておりますから、食事が要らないのでしたら安くしますよ」
 手の持ち主は、この場所の――宿の主人たる男だった。
 青年がちらと見やった指は、恰幅のよい体格の裏を示してひび割れている。
「しかし、こんな匂いの隣で冷たい肉をしがむわけにもいくまい」
 主人と打ち解けたというよりも、互いのために上手く誘導されてやったようにも思える男が笑う。
 水に泳ぐ魚を思わせるやりとりを聞きながら、動揺を払った青年は彼の言葉に心中で同意した。
 簡易な食堂も兼ねる宿の書きつけによれば、今日の献立は黒パンに、早成りの葉菜とチーズのサラダ。そし
て、バターで炒めた香味野菜を焦がさずに仕上げる、鶏の《白い煮込み》だ。胡椒ではなく香草や丁子、八角
を浸けた酒などで引き締めた野菜の匂いが、胸で浅く呼吸する青年の鼻孔をくすぐった。野菜のもつ甘味のせ
いか、普通に食べればかたく、苦味を覚えるパンとて、あの煮込みにひたして食べれば妙にひなびて郷愁を誘
う……いまは裏方にこもって調理を行っている双子の片割れは、今日も良い腕をしているようだ。
 主人とひとしきり笑いあった男はというと、黒塗りの木板を見て「ほう」と息を吐いている。
 ろう石で書かれた献立の、最後の一節に目を向けているのだと、動転していた青年にもよく分かった。
「ここは、甘いものも出すのかい」
「こいつが教会づきで菓子を作ってましてね。天火もありますから、いっそ好きにやらせてみようと」
 主人の手が頭にうつった。いささか乱暴に髪をかきまわされる。
「他のお客様も夕食なんだ。お前ならやれるな」
 疑問の欠片もないささやきに対して、青年は二度三度とうなずく。
 そうして、気を入れ替えるように底の厚い靴のかかとを揃え、客人へ一礼した。

385 :[3/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:40:21 ID:7sHcHShK0
 お手並みを拝見――とでも言いたげな男に対して、青年は胸に当てた左手でもってさり気なく動悸を抑える。
 それでも、礼から転じて裏方へときびすをかえせば、このひととき、体が軽くなるような心地がした。
 菓子。白ワインとクリームを使った煮込みと、赤いワインに合う菓子。そんな菓子を作ること。
 右も左もわからなかった者に、主人が好きに、自由にやらせてくれていること。
 緊張の糸が切れ、呼吸が常態に戻っても、青年の胸はべつの痛みを訴えた。


 ×◆×◇×◆×

【2】

 宿の調理場では、娘がひとり、寸胴を前に玉杓子を構えていた。
 きつくひっつめにした黒い髪と相まって、煮込みの様子を見るさまはどこか勇ましい。
「ジジ、片手鍋とボウルをふたつずつ。泡立て器と木べらも借りるよ」
「かまわないけど、フィズ、発音が違う。それじゃ兄さんだわ」
 熱伝導のよい銅の鍋を受け取りながら、フィズと呼ばれた青年は眉をひそめた。母音のはっきりとした発音
に原因があるか、生活に慣れてきた今となっても、指摘されなかった日をとっさには思い出せない。
「――妹のほうのジジ」
 考えあぐねた末の答えを聞いて、ジジはのどの奥で笑った。そばかすの散ったほほが、かまどの熱を受けて
上気している。健康的であり娘らしさでもある薔薇色と、それを浮かべた皮膚の白さは、堅果にも似て黄色み
を帯びたフィズの血色とは別種のものだった。そばかすは仕方ないとしても、そこには日焼けのあとも簡単に
残るまい。乾いた空気に乗って近づく夏の気配を前にしても、なんとはなしに信じられる。
「服がしわになってるけど、また何か失敗したのかしら」
 昼下がりに焼いて、冷ましておいたビスキュイ――
 卵黄と卵白を別に泡立て、アーモンドの風味を極力引き出せるようにした生地が、ココットの中で揺れた。
「いや……なんで、分かったの?」
 このまま握りつぶさなかったことを幸いに思う反面、恥ずかしさに指先がふるえる。
 先ほどの、街路樹を眺めてのひとり芝居やら、応対における失態を見られたわけではない。それが分かって
いるからこそ、青年にはこの娘の慧眼がなんともいえず恐ろしかった。
 しかして恐ろしいと思われた娘の側は、青年が動揺する理由をかけらも理解できないらしい。
「だって、あなたが分かりやすいんだもの。黙ってれば見られる顔だし、けっこう器用なくせに、いざ失敗す
るとなかなか立ち直れなくなる。そういうのって傍から見ててもあからさまで、ちょっと面白いから」
 つまりは“フィズ自身が隙だらけであるから読みやすいのだ”と言いつつ、寸胴を火から下ろす。
 毒舌をとばす間でも、つばは飛ばさないように。仕事をこなして料理の味を損なうことがないように。
 ジジは体の横に配置した皿へ鶏肉と根菜を盛り付け、しずかにソースを流していく。サラダのドレッシング
となるワインビネガーとオリーブ油、すりおろした玉ねぎに香草を合わせた液体は、小さな器に添えていた。
「でも、そういうのは分かってても言わないでくれよ」
「あら。先に訊いたのはそっちでしょう? それに、ほら」
 瞬間。おおげさに肩を下げて嘆息したフィズの視界をジジの手が独占する。
 父のそれと同じく、あかぎれにひび割れた人差し指がつついたのは、フィズの眉間だった。
「しわが伸びた」
「……ありがとうよ」
 遠まわしだが妙に素直なジジの気遣いかたは、青年にとっては親しい。

386 :[4/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:41:26 ID:7sHcHShK0
 もういちど胸もとの布をつかんでひと呼吸おき、改めて、小麦粉や牛乳、卵といった材料を揃えていく。
 ふたつの片手鍋の中には、それぞれ砂糖と水、牛乳を注ぎ入れ、まずは牛乳の方をとろ火にかける。昨夜の
うちに水を含ませた刷毛で掃除し、よく乾かしておいた木のボウルには卵黄と砂糖が、銅のそれには卵白を入
れた。冷えていた方が泡立ちやすくなる後者には、水を含ませて絞った布巾を底に噛ませておく。
 計量と手順の確認が終わるがはやいか、フィズは泡立て器で卵黄を手早く、丁寧にすり混ぜていった。手が
早くなければ外気に触れた卵もへたってしまうが、だからといって荒い仕事をしてしまえば、その行いは口当
たりか外見(そとみ)か、どこかに必ずあらわれてしまうものだからだ。一考すれば矛盾しているとしか思え
ないふたつの要素を前にすればこそ、対立する概念の穴を全力でつき、ベストをつくそうという気にもなる。
 作業の合間に、木べらで混ぜていた牛乳が沸騰するかどうかというところで火から下ろした。ジジが手ずか
ら縫い上げた鍋敷きに移す動作に続けて、ボウルには小麦粉を散らし入れ、だまも粘りも出ないように混ぜる。
白っぽくなった卵黄へ糖蜜から作った酒を垂らし、温かい牛乳を少しずつ注いで、注ぐたびに溶き伸ばす。
 ……金がなくとも手間をかければ、料理は旨いものが作れる。ジジや婦人たちのように、ありふれた材料を
風土になじんだやり方で調理して、人の口をよろこばせるというのも素晴らしいことだと思う。けれど自分は、
料理ではだめなのだ。料理では、自分はこんなふうに作ろうとは思えない。牛乳の入っていた鍋と泡立て器を
手早く洗う。手間をかけていいとなれば、それこそクリームがだれるまで何も、何も出来ないだろうから。馬
毛の漉し器にとおした生地を鍋に流して煮る。最後は木べらから泡立て器に持ち替え、一気に煮上げてやる。
糖蜜から作ったラムが匂いたち、砂糖の甘さと卵黄のコクを引き立てる《クレーム・パティシエール》――
 カスタードをボウルに移したフィズは、きつく絞った布巾をクリームにかけて、口の端から息を抜いた。

「……あれ? もう行ったのか?」

 濃密な闘いの数瞬、彼は皿を携えたジジが給仕に向かったことにすら気付けなかった。
 いつものこととはいえ、あの少女は、先刻、がむしゃらに動いていた自分をどう見たのか。
 そんなことを、いまのフィズは考えない。考えることすらもったいない。
 すでに、もう一方の片手鍋――メレンゲに使う砂糖と水を入れたものを火にかけているのだ。銅のボウルに
入れていた卵白を泡立てながら木べらを使って、焦がさないように鍋の底をさらう。温度計のような高級品は
ここにはないが、糸をひくようになったのを見計らって、ボウルの端からシロップを流し入れた。そのまま、
人肌に近い温度になるまで手を動かす。ボウルの縁に沿うようにして丸く、大きく。しっかりと熱を入れたら、
傾けたボウルへ叩きつけるように激しく混ぜる。卵白につやが生まれ、泡立て器を持ち上げればきめ細かな泡
で角が立てば完璧だ。まだ熱のとれていないクレーム・パティシエールにメレンゲを加えて、木べらでもって
切るように混ぜあわせてやる。それこそがフィズの頭のなかにあった《クレーム・シブースト》――
 軽くやわらかなクリームを受け止めるものは、ココット型に敷いてあるビスキュイだ。
 先日、堅果から粉に砕いてもらったために、生地に混ぜ込んだアーモンドの香りは失われていない。

387 :[5/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:42:14 ID:7sHcHShK0
 生地で作った土手のなかばまでクリームを流し入れ、いまが最も美味しい時期となるいちごを丸ごと据える。
そうして、ココットの天辺までクリームを詰めた。表面に焼いたパレットナイフをあててもよかったが、同じ
いちごをワインと砂糖で煮詰めたナパージュを刷毛で塗りつけることを選んだ。
 黒ぶどうから作られた赤ワインの強さと合うものは、赤い果実がもつ酸味の他にないと、フィズは信じる。
直径にして6センチほどの器を満たすものに、青年はいまの彼がもてる思考や情感、技術のすべてを賭けた。

 ……すべてを賭けても、報われるかどうかは分からないというのに。
 そんな考えが浮かんだのは、夕食を終えてくつろぐ客に、この小品を出したときである。

「すげえじゃねえか、坊主」
 呆れるほどになにも考えていなかった青年は、自分を呼んだ男の賛辞にどう応じるべきか分からなかった。
 卵と、砂糖と、水と、果物と。どこにでもある材料を、どうやればここまで旨くできるのか。
 黙っていれば、菓子を作っている最中に思い浮かべていたことが、そのままフィズ自身に返ってくる。
「記録どおりに作れば、誰にでも出来るものですよ」
「それでもよ。若いのにこれだけ出来りゃ、職人として十分やっていけるだろうさ」
 木のマグに注がれたホット・ワインを脇に、小さな木さじを指先でつまむ彼は、他者の微笑を誘う見た目よ
り器用にクリームとビスキュイをすくう。塩か、あるいは木の枝で磨いているのか。存外に白く、健康そうに
並んだ歯と、いちごの赤みが好対照をなしている。どんなに壮麗な見目の菓子より、その菓子を生き生きと口
にできる人間のほうがどれだけ美しいものか――本人すら意図しない居ずまいで表されてしまった。
 どうして普通に生きていて、こんなにも輝けるのか。どこにでもいる人間が、どう生きていればこんなにも
良い人になれるのか。質問に質問で返せない。主人のような技巧も、割り切るだけの勢いも、青年にはない。
「それに、私はもう、二十二になるんですから」
 彼に出来ることといえば、ただ、くちびるに微笑を浮かべること。
 微笑みながら、何度目になるか分からない余人の勘違いを糺してやることくらいであった。


 ×◆×◇×◆×

【3】

 この街の夜は早い。
 街路の可視性を高めるため、そして、魔物よけのために、各所にろうそくが立てられてはいる。それでも、
強い光に慣れていた青年にとっても住民にとっても、夜は作業をするによい環境であるとは言えなかった。
 だからこそ、深夜までだらだらと仕事をするような者は真面目、あるいは不器用だと評されこそすれ、褒め
られることはけっしてない。学者のような人種は別だが、あれでは早晩目を悪くしてしまう。菓子を作るにし
ても、暗闇のなかでぼやを出したり、皿を割るようなドジをやらかすわけにはいかない。
 ゆえに、人々にならってひととおりの仕事を切り上げたフィズは、暖炉の残り湯を使って体を拭いていた。
「それで、言われたのかい? 男でも、その年なら所帯を持つべきだ、かぁ」
 彼の隣では、同じように汗を落としている少年がしなやかな筋肉のついた腕を伸ばした。
 暖炉の持ち主の、息子。「兄のほうのジジ」の友達は、友達のところの養子にも変わらず接してくれる。

388 :[6/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:44:02 ID:7sHcHShK0
「でも、俺もそう思うかな。教会の前に住んでるひとたちだって、十六で一緒になったっていうからさ」
 赤ん坊が出来たときには、ふたりともほんとうに幸せそうだった。少年の言葉を受けて、フィズが思い返す
のは教会のミサで顔を合わせる夫婦と、彼らの娘の姿だ。おしゃまで利発な印象を抱いたが、蜜蝋の副産物で
ある蜂蜜で作った菓子をほおばりすぎて、はちきれそうになった頬のほうが、彼の記憶には鮮やかだ。
 結婚願望はとくにないのだが――傍から見る分には、ああいう子なら育てたいと思えなくもない。
「でもきみはお菓子に夢中で、赤い顔して黙ってたって?」
「いいさ、アルス。笑いたかったら遠慮せずに笑ってくれ」
 年かさの男の声を受けた少年は、ごめんのひと言も言わずに裸の腹を抱えた。天を衝くかと思わせるほどに
逆立った黒髪が薄闇のなかでもふるえる様子が見えるものの、これ以上男の裸を見たいとも思わない。
 ただ、相手が遠慮せずに笑ってくれたからこそ、フィズの胸の内はすっきりとしていた。
 いくら格好をつけて、外見を取り繕っても、これでは残念としか言いようがないのも事実だ。
 ひとしきり続いたアルスの笑いがおさまるにつれ、どうして、彼はこんなふうにいられるのかとも思う。
「なんつーか、さ。とてもじゃないが、俺には世界を守ったりなんか出来ないな」
 異邦人を受け入れて、別け隔てなく付き合えるほどの博愛主義者。あるいは、すべてのものを平等に愛する
しかない、すなわち誰かを愛するということも出来ない冷血漢。勇者オルテガの息子と呼ばれ、勇者としての
未来を期待される少年にいずれがあてはまるのかは、彼と付き合いはじめて間もない青年に量れるわけもない。
 夕方の男といい、容易には量りきれないからこそ、遠すぎるからこそ羨望を覚えるのかもしれなかった。
 アルスに言ったとおり、いざ自分が勇者になったとしても、世界を守るほどの意地が出せないことも理解し
ている。父の死を、母や祖父の期待を背負えている時点で、この少年はすでにして勇者だとも思える。
 《地球のへそ》があるくせに、地球のどこにも存在しない、アリアハンという大陸の城下街。近くて遠い冬
の街で倒れてしまった自分に、ただひとり躊躇なく手を伸ばせた彼は、きっと根っから勇者なのだ。
 その手で剣を振るうだけではなく、他人を掬い上げて、掬ったものを抱えるだけの力を有しているのだ。
「……そうだな。とてもじゃないけど、俺にはお菓子なんか作ったり出来ないよ」
 来年には成人するのだという彼の笑みには、およそ十五の少年と思えないものがにじんでいた。
 すぐさま解け消えた感情の発露。そこにこもったのは諧謔か自嘲か、それとも寂寥だろうか。故郷で触れな
かったということはないというのに、どうにも、他人の思っていることが読みきれない。
 その一因は、外国では口を隠さずはっきりと笑うことが良いと言われるような文化の違い、なのだろうか?
 よくあるひと言で片付けようにも、嫌悪の根は深かった。自分を助けたときにみせたアルスの真剣な目や、
宿屋の主人や家族の厚意を踏みにじり、それこそ、彼のおこないを《よくあるもの》におとしめていく――
 彼らそのものを無遠慮に踏みにじってしまうような感覚を覚えてしまうのだ。
 洗いざらしの長袖シャツを頭からかぶり、貫頭衣に似た麻の半袖を重ねる動作で、青年は思考の澱を払う。
 そこにアルスもつづいて、ようやく、男ふたりの身づくろいが終わった。

389 :[7/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:44:58 ID:7sHcHShK0
「生き返ったよ」頭だけは洗えなかったが、それでもフィズの声は明るい。「夏になれば水浴びかな」
「ああ。川から水を引く必要もあまりないし、おおっぴらに水を使えるのは暑くなってからさ」
 そろそろ草木染めが始まる頃だ。言いながら帯を締めたアルスは、机上に載っているものに目をやった。
「これ、食べてもいいかい」
 アリアハンの宿屋で使っている、樫のプレートである。艶出しのなされている台にふたつ並んだ陶製のココ
ットは、今晩フィズが作ったデザート――ビスキュイを土台に置いた、いちごのシブーストだ。
「もちろん。妹のほうのジジも、兄さんをよろしくってさ」
「マメだなあ、あの子も。そんなの、いちいち気にしなくていいのにな」
 暖炉の残り火のもとに、器の片方を手にした少年がやってきた。
 木さじを繰る前にまぶたを細めて、ナパージュに隠れたいちごの香りを鼻先でたしかめる。
 艶出しに使った液体の糖度は、およそ57パーセント。あるいはそれ以上。高価すぎるゼラチンの力を借りず、
砂糖と果物のペクチンだけで表面を固めたために、砂糖の占める割合はジュレほどに大きくなっていた。
「すごいね。ちゃんといちごの匂いがする」
 だからこそ、フィズには少年の評価が嬉しい。材料がなんであろうと、作る側がきちんと仕事をしていれば、
先に素材の味が出るものだからだ。クリームに糖蜜の酒を使っていようと、それは変わらない。まだ熱の残っ
ていたクリームがいちごの香りを開かせたあとに、素材のなかでつなぎを務める砂糖の甘さがやってくる。果
物や堅果がビスキュイの中で活きる。そうなるように、青年は頭の中で完成図を組んでいた。
 単純に甘さを感じさせたいのなら、砂糖だけ舐めさせればいい。果物の良さなど、そのままかじれば十分に
伝わる。どうして作るのか、どうして熱を入れるのか。加工に意味をもたせることこそが、作る側の義務だ。
 そこをいくと、生地にはまずアーモンドが入り、甘味は蜂蜜のそれを主体としていた土地に暮らす者には、
これでもまだ、前に出る甘さが足りないのではないかと思ったものだが――
 この少年は優しい。勇気がある以前に、ほんとうに優しい。作り手の真意を汲んだ感想を言えるカンの良さ
は、「妹のほうのジジ」がもつそれとはまた違った怖さがある。
「そう言ってもらえると、少しは自信が湧いてくるんだがね……」
 けれど、アルスからプレートにひとつ残った菓子に視線を外したフィズは、望外の喜びを振り捨てた。
 甘い。アルスは優しいが、甘いのだ。今まで、彼にきつい評価を戴いたことは一度たりとてない。
「仕方がないよ。アルメルは――フィズのだけじゃなくて、甘いのが苦手だから」
 すべてをひとりで抱え込んでしまう勇者候補は、二階に続く階段を振り見る。調理器具の手入れを終えたと
きには灯っていたはずの明かりは、当然ながら見えない。門の前にたいまつがあっても、目が慣れていても、
青年にはまだ足りない。見たいものは、そんなものではないのだから。
「あの子も旅に出るんだろ。勉強するにも、甘いものは悪くないんだけどな」
「本当にね」
 アルスが立ち上がる。戸棚から持ち出していたさじを白砂でかるく擦る音が、フィズの耳にも入った。
 器をそのままに中座するわけにもいかずに座っていると、板を張りの床から背筋に寒気がはいあがってくる。
「……湯冷めか。やっぱりまだ、夜は寒いよ」
 水気混じりのくしゃみについて何か言われるまでに、青年は手の甲で鼻の下を擦った。

390 :[8/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:45:38 ID:7sHcHShK0
 ×◆×◇×◆×

【4】

 宿屋の主人とともに使っている一室で、フィズは天井を見上げていた。
 教会で修練を重ねている「兄のほうのジジ」。少し前に宿を出た少年の代わりに、彼はいま、ここにいる。
「最後の一個、なんだよなぁ……」
 夜闇に慣れた視界のなかで、しわくちゃの袋が星明かりを照り返した。ビニールの、ちゃちなつくりをした
包装の中に入っているのは《フレーズ・タガダ》と呼ばれる菓子だ。人工着色料のそれらしい、どぎついピン
ク色――いちどで覚えられる色味のとおりに、いちご味をしたマシュマログミ。乾燥剤も地面に落としてしま
った今となっては、夏になれば溶けてしまうだろう。頼りない……けれども大事な、駄菓子である。
 主人のいびきの影で、何度か大きく呼気を押し出していたフィズは、目をつぶって菓子をつまんだ。
 ふるえる五指から霧のように噴き出していた汗が、柔らかい生地に吸い込まれるのが分かる。
 それでも。コンフィズリー(砂糖菓子)と呼ばれるとおり、フレーズ・タガダは甘かった。
 甘くて、甘くて、香料のそれと分かるいちごが鮮やかに鼻へと抜けていく。
 その味で思い出すのは、故郷のことではなく――

 教会のミサ。正確には、天火や広い調理台を備えた教会の一室だった。
 アーモンドの花が咲く前だったか。意識を取り戻したあと、主人からミサの概要を聞いたそのときに、青年
は「そこしかない」と真から感じたものだ。だから、果実酒の造成が終わったとき、余った卵黄でなにか作ろ
うとしていた婦人たちを押しのけて調理場に向かわせてもらった。《そうでありますように》。彼の知る教会
と同一であった結びの句を知っていたことで、神父様が女性たちの抗議を止めに入ってくれた。

 だが、その時に作った菓子は「最悪」の一語につきた。
 調理台の上に載っている材料から選んだのは、フレジエである。
 《ジェノワーズ・オ・ダマンド》――全卵を泡立て、アーモンドパウダーを混ぜて作るケーキ生地に旬であ
ったいちごとクリームを挟んだ「いちごのショートケーキ」に近いものを選んで、作った。
 失敗だと思った要因も含めて、その時のことはよく覚えている。
 まず、クリームの選択がいけなかった。バターと砂糖、卵をすり混ぜ泡立てて作る《クレーム・オ・ブール》。
バタークリームとカスタードを合わせて使うのが、フレジエの基本である。バタークリームは概して重いと思
われがちだが、カスタードと合わせた《クレーム・ムースリーヌ》はなめらかで、口当たりがよい。
 だのに、クリームの特性を活かせなかった。活かす前に、使おうとも思えなかったのだ。
 温めた牛乳を突き棒で撹拌しただけの、生白い色をしたバター。
 そして、故郷では考えられないほどに香り高い果物。
 見た目からして旨いと思えない素材と、宝物のようにも思えた素材を並べて見た自分は、だから、間違えた。
果実酒の澱を取り去るために使った卵白と、卵黄の数が合わないことを気にも留めることもなく、フィズ自身
だけが惚れ込んだいちごを活かすためだけに、《クレーム・シブースト》を選んだのだ。
 それも、クレーム・パティシエールに泡立てた生クリームではなく、不足であるとされていた卵白から作る
メレンゲを混ぜ込んだものを、これしかないと決めつけて、ジェノワーズに挟んでみせた――。

391 :[9/9] ◆MobiusZmZg :2010/04/27(火) 21:52:03 ID:7sHcHShK0
 結局、あの時は作業における手の早さと、アーモンドパウダーの混ざって重い生地の、ともすればぼそぼそ
としてしまう食感を埋めるクリームの出来で、直截な非難だけは避けられた。
 しかして、ミサとは名ばかりの集会が終わって言われた言葉は、フィズの胸になおも深々と刺さっている。


(“自分が楽しいだけで作ってたでしょ”、だって――)


 少女の言葉が正鵠を射ていたからこそ、なにも反論出来なかった。
 余った卵黄をどうするかと考えて、結局は婦人の知恵を頼った自分も情けなかった。
 だからこそ、今日は同じクリームを使って、いちごを巧く扱おうとした。そう考えて、素材を活かすことが
できた。ワインを望んだ客の口にも合うような、香りの工夫も凝らすことができた。
 それは、嬉しい。ただ生地をいじることが楽しい自分でも、それは、とても嬉しく思われることだ。
「だけど、最初に失敗したら……ホントに失敗、なんだよなぁ」
 改めてフィズが言及するまでもなく、いちど失った信頼を取り戻すことは難しい。
 そして、この世界では異邦人にすぎない彼に出来ることは、あまりに少ない。
 だからこそ、ルールがあることにも気付けないときに失した点が、非常に大きく思われる。

 アルメル。
 勇者アルスの、双子の妹。
 彼女の、とげしかなかった言葉をもう一度思い返して、フィズはまぶたを閉じた。
 靴こそ慣れたものだとはいえ、ほとんど一日立ち続けた足は鉛のようなのだ。
 それに――次のミサの日までに――なにか――彼女を喜ばせるようなものを――


 考えなくてはならない。


-----
以上、初めて投下させていただきました。
ふと再プレイしたら、やっぱりいいなあ……と思ったDQ3の短編連作です。
製菓の部分は、本気で志している方が見れば穴を潰しきれていない印象を受けると思われますが――
雰囲気づくりに重きを置くことで、なんとか見られるレベルになっていれば幸いです。

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/08(土) 22:59:09 ID:SZSVyLSM0
保守だけでごめんよ

393 : ◆MobiusZmZg :2010/05/09(日) 07:00:32 ID:97TvahLm0
……予想はついてたんで、べつに謝ることはないかと。
全五話の初手で突き放すのを選んだのに、文章力で引き込めなかった自分が悪い。
書きたい主題がなきゃ書きませんが、望まれないものでスレ容量を圧迫するのも
イヤなんで、素直に消えときます。レスやまとめなどの収録も不要です。

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/09(日) 07:32:09 ID:WSYE6vDO0
ごめんね、お菓子はすごくおいしそうで、食べたくなっちゃうし、宿屋の客の男も(男だけど)とっても魅力的でした。

あえて言うと、描写が緻密なのはいいのだけど、ちょっと地の文がもの長くて、イメージがすんなり頭に入ってこなかった。
3/9以降の調理の描写はスピード感があって読みやすかったけど1/9〜2/9あたりがね。
俺の想像力や活字への抵抗力の不足が原因なので作者さんの責ではないんだけど、なんて感想かいていいかわからなかった。

誰も無反応だったことで作者さんの気力を削いでしまったのだったらすいません・・・。

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/10(月) 01:19:47 ID:EFmtQyOI0
ずっと書き込みたかったが携帯もプロバイダも規制で書き込めませんでした.
自分は小説の体裁について偉そうなこといえる立場にないですが、結構好きな話でしたよ.
では

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/10(月) 01:48:37 ID:vJsMAPSZ0
>>393
感想もらえてない作品なんて他にもある。
最近投下も減って過疎ってるし、誰が悪いとかじゃないけど
それくらいで拗ねたような捨て台詞残していくのって正直どうかと思うわ。

俺は、オリジナル要素が強すぎてあんまり読めなかった。
もうちょっとDQらしさを大切にしてほしい。

397 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/15(土) 14:08:15 ID:KcnpkOuI0
・・・保守いたしますの

398 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/22(土) 03:45:43 ID:kTtMG9kt0
保守ですの・・・

399 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/01(火) 02:05:19 ID:AaEXH2dc0
保守なの〜

400 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/05(土) 21:33:45 ID:SMW0Y8z+0
保守

401 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/06(日) 23:44:21 ID:T6CHzwTk0
朝起きたら、俺は見知らぬ店の店員をしていた。
よくあるベッドで目を覚ますとかじゃなくて、起きたら店の番をしていた。
しかも、銃刀法違反になりそうなものばかり扱っている店だ。
刃渡り80cmくらいあるんじゃないかというくらい長い剣や、金属でできたハンマーまである。
いくらなんでも日本で堂々とこんな危ないものを売っていたら、お巡りさんのお世話になってしまう。
警察が怖いので客がいない今のうちに逃げようとしたが、案の定客が来た。
こんな店に来るのだから、あっち方面の方々しかいらっしゃらないだろう。
俺はとりあえずいらっしゃいませと言い、こいつをやり過ごしてから逃げることにした。

しかしこの客、なんとも悪趣味だ。ピンクの鎧を着ている。こんな893初めて見たぞ・・・
ピンク鎧は棚に並べられた武器をじっと見ている。何もしゃべらない。
気まずすぎる。下手に「この剣はどうですか?特攻するのに最適ですぜ!」などと声をかけようものなら隠し持ってるチャカで消されかねないから何も言えない。
5分くらいこの沈黙が続いたあと、ピンク鎧は「これをくれ」と言って鎖がついた鎌を持ってきた。
ああ・・・これで殺してまわるんだ・・・と思ったが、今はそんなときじゃない。
値段を知らなくてあせったが、ピンク鎧が鎌と一緒に金を出してきたので金を受け取ってその場はなんとかなった。
そして俺はピンク鎧が出て行ったのを確認すると、ダッシュで逃げだした。
店の奥から何か聞こえたような気がしたが、もちろん無視した。
しかし、店から出て唖然とした。

402 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/06(日) 23:45:56 ID:T6CHzwTk0
そこには大きな城があり、槍をもった門番らしき人もいる。城下町には金髪の人や、鎧を着てる人がたくさんいた。
ここは日本じゃなかったのか・・・
言葉が通じなかったらと思ったが勇気を出してその辺の人に話しかけたら、言葉が通じた。よかった。
その人によると、ここはバトランドというところらしい。ヨーロッパか?だけどヨーロッパで日本語が通じるわけがないか・・・。
それ以前にこんな街中でそこらじゅうに武器を持った奴がいるなんて、こんなところには怖くていられないので、町から出ることにした。

一歩外へ出ると、一面緑だった。
まじかよ・・・なんかショックだったので戻ろうとしたら、目の前に巨大なミミズがいた。
アナコンダくらいのでかさで、余裕からか笑ってやがる。俺はミミズが大嫌いなんだ。
逃げようとしたが、腰が抜けてしまって動けない。ああ、襲ってきた・・・
もうだめだと思ったその時、ミミズが真っ二つになった。
そして苦しそうにうねっていたがやがて動かなくなった。
見たことあるピンクの鎧が鎌からミミズの体液を拭いながら大丈夫かと聞いてきたが、あまりのショックで何も言えなかった。
なんかピンク鎧が丸腰で出るとはどういうことだとか怒っていたような気がするが、覚えていない。
気付いたころには、元の店に帰ってきていた。ピンクもいなくなっていた。

今では立派なバトランドの武器屋です。目標はトルネコです。帰りたいです。

403 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/06(日) 23:50:14 ID:T6CHzwTk0
皆が戻ってきてくれるよう保守

404 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/07(月) 00:01:47 ID:FVRteSc30
頑張れ新米武器屋

いやトルネコを目標にするのなら既に新米レベルではないな。
トルネコを目標にする意味が、その商才か財産か、はたまた腹のサイズかリア充度のどれであるかは問題だが。

405 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/07(月) 23:41:00 ID:2PqolkIF0
山海堂の店員乙(ぉぃ
がんばれ〜

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/10(木) 03:34:37 ID:6XuLTKB3O
>>401>>402
初心に帰れて、しかも面白かったです
単発かもしれませんが、ありがとうございました!

407 :Stage.20.5 総集編(B) [OP] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 02:45:14 ID:6Sr6DGmW0

タツミ「……――というわけで、2人はその薄暗い森をさまようことになったんだ」
アルス「そ、それで……?」
タツミ「しばらく行くと急に生暖かい風が吹いてきて、2人は背後に異様な気配を感じた。
   振り向くとそこには、ゆらゆらした黒い影が今にも掴みかかろうと手を伸ばしていて……!」
アルス「うわー! それ絶対あやしい影だろ!? あやしい影なんだな!?
   しかも中身がトロル級の反則な強敵とかなんだろ!? ヤバイって、マジ怖ぇよ!」
タツミ「あ、いや、それは人間の幽霊だったんだけどね」
アルス「なんだ。ならそいつに道を聞けば森を抜けられそうだな。良かった良かった」
タツミ「でもあの、その人はあんまりいい幽霊じゃなくて、人魂とかも飛んでて……」
アルス「ああ! 炎タイプの亡霊か。あいつら『なにも聞こえぬ』とか『メラメラ』とか、まともに話せないのが多いからなぁ」
タツミ「えーと」
アルス「わかった。ようやく道が聞けるかと安心したのに、そいつがロクに話もできない亡霊で、
   結局宝箱ひとつ取れずに入り口まで戻っちゃいましたって、そういう話なんだろ」
タツミ「……」
アルス「おもしろかったけど、オチがちょっと弱いな」
タツミ「うん。ごめんね」
アルス「なんでそんなつまんなそうな顔してんだよ。
   ところで、さっきからなんかカメラ回ってないか?」
タツミ「ええ? うわ、もう始まってるじゃないか! 早く言ってよ!」

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。みなさんお久しぶりです。総集編の間は撮影が無いんでつい雑談に興じてしまいました、すみません」
アルス「それではさっそくサンクスコール行きまーす」

タツミ「>>317様、はい、まさに正月特番のつもりで組んだ企画でした。
   僕も振り返ってみて懐かしく思いましたよー」
アルス「でも実際はゲーム内時間で1ヶ月も経ってないんだよな。俺なんかまだ現実生活3日目だし」
タツミ「大丈夫、ドラクエ関連の大ヒット作『ダ○の大冒険』だって、
   初巻〜最終巻まで、作中じゃわずか3ヶ月ちょっとの話だし」
アルス「マジで!!??」
タツミ「>>318様、作者本人もたまに流れ忘れて読み直してたりします」
アルス「ダメじゃん」


アルス・タツミ『それでは総集編(後編)【Stage.11〜20】スタートです!』
タツミ「ここまでのお話しすべてネタバレしてますので、まだ読んでいない方はご注意ください」


【Stage.20.5 総集編(後編)】
 [Stage.11〜20]
 Prev >>308-316
 
■登場人物・用語解説は下記をご参照ください。
[PC版ガイド]
ttp://dqinn.roiex.net/user-dwarf/novels/IFDQR/PC-GUIDE/PC-guide00.shtml 
[MB版ガイド]
ttp://dqinn.roiex.net/user-dwarf/novels/IFDQR/MOBILE-GUIDE/IFDQ_Rg00.html

408 :Stage.20.5 総集編(B) [8] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 02:51:17 ID:6Sr6DGmW0

■Stage.11 勇者試験(前編)

【ゲームサイド】タツミ視点
 勇者試験の内容は、ランシールの神殿奥にある洞窟を単独で探索し、最深部に収められ
 ているブルーオーブを取ってくるというものだった。試験当日、受付に向かったタツミ
 たちは一級討伐士「レイ・サイモン」と出会う。「東の二代目」の異名を持つレイもま
 た、資格更新試験を受けるためにランシールを訪れていた。ランシールの勇者試験は一
 日に1名までしか受けることが出来ず、レイもまた期限が今日までだという。
 常に世界中を飛び回っている一級討伐士同士で試験がバッティングするという前代未聞
 のできごとに神殿側も混乱し、世界退魔機構の本部に判断を仰いだ。ところが本部が出
 した結論は、二人の一級討伐士に同時に試験を受けさせ、より優秀な成績を出した方を
 合格にするというものだった。貴重な人材である一級討伐士をまるで潰し合わせるかの
 ような方針に怒りを覚えるエリスたちだったが、タツミは洞窟内では監視がつかないこ
 とを逆手に取り、互いに協力し合おうとレイに提案する。レイはタツミの案に乗り、二
 人で洞窟探索に向かうことになった。


■Stage.12 リアルバトル

【リアルサイド】アルス視点
 勇者試験のことをタツミに知らせるのをすっかり忘れていたアルス。だが自分と同等の
 実力を持つレイがタツミに同行することがわかり、ひとまず安心した彼はその後の経緯
 もモニターごしに大人しく見守ることにした。
 そこにタツミの伯母が帰宅する。夜の仕事をしている彼女とは今までほとんど顔を合わ
 せなかったのだが、その日は勤め先でボヤ騒ぎがあって休みになったという。アルスは
 ひとり気まずく思いながらも、なんとかタツミ役を演じる。
 と、玄関のチャイムが鳴り、玄関先に謎のダンボール箱が置き去りにされていた。中に
 は猫の死骸が詰められており、それを見て恐慌状態に陥った伯母は、アルス相手に「出
 て行け!」「疫病神!」などと罵声を浴びせる。あまりの剣幕にアルスが途方に暮れて
 いると、そこへショウが訪ねてきた。彼がうまく伯母の気持ちを静めてくれたお陰で、
 ひとまずその場は収まった。
 「夢」で把握していたタツミの生活と「現実」とがあまりに違っており、アルスは悩ん
 だ末ショウにタツミの過去を調べてほしいと頼んだ。

409 :Stage.20.5 総集編(B) [9] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 02:55:31 ID:6Sr6DGmW0

■Stage.13 勇者試験(後編)

【ゲームサイド】タツミ視点
 レイと二人で勇者試験に臨んだタツミは、地下二階で突然大量の魔物に襲われる。桁違
いの強さを持つレイのお陰で難を切り抜けることが出来たが、その過程でレイがタツミの
血液恐怖症をロダムから聞いて知っていたことが判明する。気遣ってくれるレイにタツミ
は、自分の記憶力の良さが仇となり精神が不安定になりやすいことと、その切っ掛けが血
を見ることだという話をする。
 洞窟探索を続ける途中、タツミはレイが気付かないうちにスカイドラゴンにさらわれて
しまう。そして連れて行かれた先で、石の人面越しに魔王バラモスと対面する。バラモス
はタツミに、このDQ3の世界そのものが「ゲーム」であるがゆえに壮大な無限ループになっ
ていること、その事実にアルスが気付き悩んでいたことを告げた。
 バラモスとの対面後、タツミはレイに勇者試験の合格を譲ってしまう。この世界そのも
のが無限ループである、という根本的な大問題を前に、勇者試験の合否などどうでも良く
なっていたのだ。


■Stage.14 Cursing My Dear

【リアルサイド】アルス視点
 4度――タツミが暇潰しにDQ3をプレイした回数の分だけ、アルスは魔王討伐の旅を繰
り返していた。アルスはタツミに、なぜか自分だけが前回の冒険の記憶を引き継いでおり、
父の死や地下世界の取り残されるエンディングなど、どんなにあがいても変更できないス
トーリーをなんども体験しなければならないことに気が狂いそうになっていたと告げる。
 携帯ごしにじっと耳を傾けていたタツミは、「だからといってプレイヤーを巻き込むの
は単なる八つ当たりだ」とアルスを冷たく突き放すのだった。


■Stage.15 喧嘩と恋とエトセトラ(前編)

【ゲームサイド】タツミ視点
 アルスとの対話を打ち切ったタツミは、彼の話から、アルスが自分の本当の現実をまる
でわかっていなかったのだという事実を知った。アルスがうらやましがっている「三津原
辰巳」という少年の生活は、実はタツミが理想として描いていたただの妄想であって、本
来の自分の姿とはかけ離れたものだった。
 しかしもともと自分の暗い過去をアルスに知られたくなかったタツミは、その方が都合
がいいと割り切る。そして一人でアリアハン王の元に向かうことにした。勇者試験に落ち
た以上、約束通り厳刑を受けなければならない。それもタツミの計算の内であり、彼を
「アルスに成り代わろうとしている不貞の輩」と思いこんでいるアリアハン王のうっとう
しい干渉を打ち切るため、これで決着をつけるつもりでいたのだ。
 だがいよいよ刑が執行される寸前で、刑場に思いがけない人物が飛び込んできた。


■Stage.16 喧嘩と恋とエトセトラ(後編)

【ゲームサイド】タツミ視点
 刑場に駆けつけたのはエリスたち仲間3人と、「東の二代目」レイだった。驚いている
アリアハン王らに、レイは堂々とタツミの無実を訴える。自分が代わりに刑を受けてもい
いとまで言い切るレイにタツミも慌てるが、レイはタツミに「惚れているからだ」と突然
の告白をし、その場は騒然となった。そこでレイが実は女性であったことが判明したり、
そのままタツミのパーティに加わることになったりと騒ぎは続き、うやむやのうちに刑の
執行は取りやめになってしまった。

410 :Stage.20.5 総集編(B) [10] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 02:57:22 ID:6Sr6DGmW0

■Stage.17 うちの勇者様

【ゲームサイド】サミエル、エリス、ロダム、それぞれの視点
 アリアハン王は恩赦と引き替えにすべて説明しろとタツミに命令する。タツミは城の一
室を借りると、皆の前で自分は別の世界に住む人間でアルスと入れ替わりでこちらに来た
ということや、ルビスの使命を受けたというのも魔王が裏で手を引いているというのもデ
タラメで、実際はなぜ入れ替わったのか理由はわからないと告白する。ただ「向こうの世
界」は魔物もいない平和な世界なので、アルスに身の危険はほとんど無いと語った。一応
の納得を見せた王から正式に許可をもらい、タツミ一行は旅を続けることになった。
 その夜、ルイーダの酒場で新たにパーティに加わったレイの歓迎会が行われた。ふと宴
席から姿を消したタツミを探して外に出たロダムは、スライムのヘニョを抱えて涼んでい
るタツミを見つけて話しかける。本当はまだ隠していることがあるのでは? と問うロダ
ムに、タツミは謎の言葉を返す。
 それは、自分は「誰か」とゲームで競っていること。そして、彼自身が元の世界に帰る
ことを拒否すれば、彼の負けとなってしまうという内容だった。
 この世界で自分たちと楽しく過ごすことが、逆に勝負の上で不利になるという話に、ロ
ダムはひとり胸を痛めるのだった。


■Stage.18 SAKURA MEMORY -Part2-

【リアルサイド】アルス視点
 タツミに「こんなゲームは一方的な八つ当たりだ」と強く責められたアルスだったが、
その言葉が決して彼の本意ではないことに、アルスも最初から気付いていた。だからこそ
タツミの真意がわからず混乱する。とりあえず彼の願い通りTVを消し、その夜は大人しく
眠りに就いた。
 翌朝ユリコから電話があり、アルスに前もって頼まれていたものが見つかったので渡す
ついでにデートはどうか?と誘われる。ユリコの案内で街の中心部へと向かったアルスは、
地下鉄や巨大なミラービルなどに驚いたりしつつ、駅前のファーストフード店に入った。
そこで彼女から「住み込みOKの働き口」の資料を受け取る。現実で生活していくにあた
り自分でも勤まりそうな就職口の斡旋をユリコに頼んでいたのである。
 そこにショウから「アレフが逃走した」という電話が入る。だがショウにはアレフと交
戦したことを一切語っていないことから、ショウが自分を監視していたことが明白となっ
た。指示に従う気はないと断り、アルスはユリコには違う電話だと嘘を重ね、そのままデー
トを続ける。映画やショッピングなどしてつかの間の平和を楽しんでいたアルスだったが、
今度はユリコの携帯にカズヒロから連絡が入る。カズヒロはなぜかタツミがアルスと入れ
替わっていることを知っており、どうも様子がおかしい。その電話が切れた直後、今度は
アルスの携帯が鳴った。相手はカズヒロの番号からだったが、出たのはアレフだった。

411 :Stage.20.5 総集編(B) [11] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 03:01:45 ID:6Sr6DGmW0

■Stage.19 望むか、臨むか

【リアルサイド】アルス視点
 アレフがカズヒロを誘拐したらしい。驚愕する二人の元にショウが現れる。ショウの現
実の親が警察関係者であることを知っているアルスは、この件はそのままショウに任せる
ことにした。「助けに行ってくれないの?」と問うユリコにアルスは「自分はただの子供
だ」と冷たく突き放す。ユリコは納得いかない様子だったが、ショウが予め連絡していた
片岡家の迎えの車が来ると、素直に帰って行った。
 アルスもショウの組織で保護されることになった。そちらに移動する前にタツミのマン
ションに寄って欲しいと頼む。マンションに戻ったアルスは、ショウを玄関の前に待たせ
たままタツミの自室で彼に電話する。電話に出たタツミに、なぜタツミが自分を恨まない
のかわからない、と疑問をぶつける。プレイヤーを犠牲にしたことや、その上で現実の人
間として生活していくことに悩んでいることを言外に読み取ったタツミは、だがあっさり
と「やっちゃったもんや仕方ないんだから、グダグダ考えてないで好きしなよ」と彼を肯
定した。その言葉で吹っ切れたアルスは、マンションのベランダからこっそり出てショウ
から離れ、ひとりアレフの元に向かう決意をする。

【ゲームサイド】タツミ視点
 アルスから意外な弱音を聞き、少し言い過ぎたかと反省するタツミ。アルスにぶつけた
言葉のほとんどは本音ではなく、単にしばらくの間モニタリングさせないために心理操作
だった。
 タツミたち一行は今、女海賊ジュリーの本拠地に来ており、レッドオーブを譲ってもら
うよう交渉中だった。タツミたちの乗る船リリーシェ号の船長が過去にジュリーと交戦し
たことがあり、最初はぶつかり合う寸前だったが、ジュリーの母国サマンオサの異変をな
んとかしてくれるなら、という条件でレッドオーブを渡してもらう。すぐにもサマンオサ
問題を片付けるべく、最後の鍵が無い現状でイベントをこなせないか思索するタツミ。レ
イの協力でそれは実現できそうだったが、その話し合いの過程で、なんとレイがガイアの
剣を所持していることが判明する。


■Stage.20 最大効率優先主義

【ゲームサイド】タツミ視点
 効率良くイベントをこなすため、タツミはチームを二分し同時進行することにする。サ
マンオサ周辺の問題をエリスたちに任せ、自分はレイと二人でネクロゴンドへシルバーオー
ブを取りに行くことにした。レイのずば抜けた戦闘力であっという間にネクロゴンド奥の
祠に辿り着いたタツミたちは、そこでひとり生き残っていた男から、この地にはかつて一
つの王国がありバラモス襲撃により滅んでしまったことを聞かされる。そしてその国の将
軍であった男もまた、自身の知らないうちに勇者をおびき寄せる罠として魔物化させられ
ていたのだった。レイが男の首をはね、勝負は一瞬で決した。タツミに「勇者なんかやっ
てると、ああいうのはよくあるんだ」と語る。
 そこに電話がかかってくる。レイから離れ出てみると、相手は知らない少年だった。
「ショウ」と名乗った少年は、アルスが無限ループで苦しむハメになったのはタツミのせ
いだ、と彼を糾弾する。そのことに少なからずショックを受けたタツミだったが、しっか
りしろと自分に言い聞かせるのだった。

412 :Stage.20.5 総集編(B) [EN] ◆IFDQ/RcGKI :2010/06/11(金) 03:03:29 ID:6Sr6DGmW0

タツミ「以上、【Stage.11〜20】をざっくり紹介いたしました!」
アルス「こうして並べてみると、やっぱりゲームサイドは話の進み方が早いな」
タツミ「仕方ないんじゃない? 現実とゲームでは時間の流れが5倍くらい違うみたいだし」
アルス「あ、基準あったのか」
タツミ「作者も時系列を合わせるためにしょっちゅう電卓たたいてたよ」
アルス「小説書くのに電卓たたくって変わってるよな……」
タツミ「次回からは本編です。まずはリアルサイドだね。アレフとの対決!」
アルス「現実の人間がゲームに入り込んでしまう、ってのは割と多いと思うが、
   ゲームの人間が現実に来た時にどうなるかっていうのはあんまり無いと思う」
タツミ「能力も抑制され呪文も使えない勇者が、さてどんな戦いを見せるのか」
アルス「請う、ご期待!」


----------------------------

本日はここまで。

すっかりご無沙汰してしまいました。
またこれから少しずつ本編を進めていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/12(土) 06:15:15 ID:qlHJJRO+O
ビアンカが宿屋のおかみさんで俺歓喜
何泊もしちゃう

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/14(月) 12:23:17 ID:v7cVTOqo0
保守

415 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/19(土) 14:09:09 ID:OqDR6H8gO
お、久々に来たらR氏が! まとめ乙です。
しかしもうStage.20か。早いものですなあ。

416 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/19(土) 21:53:13 ID:bEzDkTxb0
保守

417 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/25(金) 20:55:19 ID:Ob7hjO/E0
保守

418 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/01(木) 17:16:41 ID:Q5aGkXqm0
ほっしゅ

419 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/05(月) 07:32:06 ID:XQc5b/OzO
ぬるぽ

420 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/06(火) 06:06:18 ID:Rc7tU4vuO
>>419ガッ

421 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:49:08 ID:WcTpltZ20
ほしゅ

422 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/15(木) 12:43:36 ID:UPOboxFa0
ほしゅ

423 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/21(水) 12:47:18 ID:oWqClV0/0
ほしゅ

424 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/26(月) 21:24:10 ID:NxmLDcVc0
ほしゅ

459 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)